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不要な別荘を相続してしまった場合のリスクと対処方法

不要な別荘を相続してしまった場合のリスクと対処方法

近年では、別荘の相続に頭を悩ませている人が増えているようです。バブル景気の頃に別荘を買った世代が高齢化し、その子たちへの相続が行われるケースが増えていることがその要因として考えられます。
特に、老朽化、値崩れを理由に、使用することも売却することも簡単ではない「負動産」となっている別荘が増えていることも大きな問題といえます。

そこで今回は、

  • 相続人にとって不要な別荘を相続しなければならなくなった場合のコスト・リスク
  • 不要な別荘を相続した場合の対処方法

などについて解説していきます。ご参考になれば幸いです。

不動産の相続に関して詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。

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1、不要な別荘を相続した際のコスト・リスク

別荘のような不動産は、財産価値が高い反面、それを維持するために、一定以上のコストやリスクを負担しなければなりません。「今は使わなくても将来値上がりするかもしれない」と考える人もいるかと思われますが、使う予定のない別荘を相続(所有)する場合には、そのためにかかるコスト・リスクを正確に見積もっておくことが大切です。

(1)相続税

被相続人が所有していた別荘も、相続税額を算出する際の基礎となる財産に含まれます。

たとえば、相続人が子3人という場合であれば、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税の基礎控除内にあるので、相続税は非課税ですが、別荘などの不動産があると相続財産が多額になる可能性があるので、相続税の課税対象になってしまうということも十分考えられます。

また、別荘は、小規模宅地の特例などによって減税措置を受けることもできません。

(2)別荘の相続税評価額の計算方法

別荘の相続税評価額は、自宅などの不動産と同様に、土地・建物にわけて課税評価額を計算します。

別荘の敷地の相続税評価額

路線価地域

路線価地域の土地の相続税評価額=路線価×面積(㎡)×(各種補正率・加算率)

倍率地域

倍率地域の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

別荘(建物)の相続税評価額

固定資産税評価額×1.0(固定資産税の課税明細書等で固定資産税評価額は確認できます)

なお、それぞれの土地の路線価図・評価倍率表については、下記ウェブサイトで調べることができます。

路線価図・評価倍率表(国税庁ウェブサイト)

(3)別荘の評価額が時価よりも高すぎる場合の対処方法

別荘地には購入当時から大幅に時価の下落してしまった物件も少なくありません。特に不動産価格の高かったバブル時代に購入した別荘の場合には、いまの時価は購入時の何分の1以下ということもあるでしょう。

さらには、このような物件の場合には、相続税評価額が時価より高いということもあるかもしれません。

相続税評価額と時価とに大きな開きがある場合には、不動産鑑定を行った上でその評価額に基づいて相続税を申告することも可能です。

ただし、不動産鑑定を行えば相応の費用が発生しますし、不動産鑑定を行っても税務署が認めてくれないというケースもないわけではありません。このようなケースでは、税理士などの専門家の助言にしたがって適切に対処するようにしましょう。

(4)別荘を維持・管理にかかるコスト

別荘を相続することを選択した場合には、相続税の負担だけでなく、相続した別荘を維持・管理していくためにも一定のコストが発生します。

①公租公課の負担

別荘を持っている場合には、自宅不動産の場合と同様に税金を負担しなければなりません。別荘にかかる税金の典型例は固定資産税ですが、そのほかにも、都市計画税・住民税(住民票がない場合でも均等割該当額を負担する必要があります)を負担する義務が生じます。

平均的な別荘であれば、税金の負担は、毎年数万円~10万円程度というケースが多いと思われますが、別荘を保有する限り毎年支払わなければならないということを考えると、その負担は決して軽くありません。

②別荘の維持管理費用

別荘の維持管理にはさまざまな費用がかかります。たとえば、電力会社との契約内容によっては、「電気を全く使わない場合」であっても基本料金の負担が発生することもあります。

また、人の利用がない不動産は傷むのも早くなりますので、修繕費用や別荘の手入れのために現地に行くための交通費の負担が重くなってしまうことも珍しくありません。

③別荘の管理を放置するリスク

使う予定のない別荘を相続してしまった場合には、管理を放棄してしまう人も少なくありません。しかし、適切な管理をせずに別荘を放置してしまった場合には、固定資産税が加算されたり、修繕にかかった費用を別荘のある市区町村から請求される可能性があります。

別荘の管理の行き届かないことで周囲に危害を加える可能性のある状況になってしまった場合には、市区町村から「特定空き家」に指定されてしまう可能性があります。

特定空き家の指定を受けた後に、市区町村からさらに「管理(修繕)の勧告」がなされた場合には、固定資産税における小規模宅地の特例の適用から除外され、固定資産税は6倍になってしまいます。

また、勧告後も状況が改善しない場合には、市区町村は必要な修繕措置の代執行を行い、それに要した費用を別荘(空き家)の所有者に請求できることになっています。

十分な管理をせずに、別荘が廃空き家になってしまうことは、これらのデメリットだけでなく、放火・空き巣被害に遭う原因にもなってしまいます。

さらに、別荘が老朽化したことで、外壁や屋根などが崩落し周囲の人に危害を与えてしまった場合には所有者として損害賠償責任を負うことにもなります(民法717条)。所有する以上はしっかり管理するようにしましょう。

2、不要な別荘を相続放棄する場合の注意点

不要な空き家を相続した場合には「使いもしない空き家の相続は放棄したい」と考える人も多いと思います。しかし、空き家の相続を放棄することは実際には難しい場合が多いといえます。

(1)別荘のみの放棄は不可能

不要な空き家の相続を放棄することが難しい一番の理由は、「空き家のみの相続を放棄することはできない」ということです。民法に定められている相続放棄は、「すべての相続財産を放棄する(相続人となることを放棄する)」場合しか認められていないからです。

したがって、不要な空き家の相続を放棄できるのは、他の財産も含めてすべて放棄しても良いと考える場合や、負債の方が多い相続の場合に限られるといえます。

また、すべての法定相続放棄をしたとしても、相続財産管理人を選任しなければ、放棄する予定の相続財産(別荘)の管理責任はなくならない点にも注意する必要があります。

(2)相続放棄ができなくなってしまう2つの場合

相続放棄をしてもかまわないという場合でも、次のような事情があるときには相続放棄が認められなくなってしまいます。

  • 相続放棄の申述期間を過ぎてしまった場合
  • 相続放棄前に相続財産を(私的に)処分してしまった場合

相続放棄は、原則として相続開始を知ったときから3ヶ月以内(熟慮期間)に行わなければなりません。この熟慮期間の間に家庭裁判所に相続放棄の申述がなされなかったときには、通常通り相続する(単純承認する)ものとみなされてしまいます。

また、相続放棄前に、相続財産を処分してしまった場合にも単純承認したものとみなされてしまう(相続放棄が事後に否定される)可能性があることにも注意する必要があります。

相続放棄の認められない相続財産の処分行為としては、次のようなものを例に挙げることができます。

  • 被相続人名義の預貯金の解約・払戻
  • 被相続人名義の携帯電話等の名義変更、解約
  • 被相続人名義の不動産や動産の名義変更
  • 他の相続人との間で遺産分割協議の合意をする

相続が発生した場合には、葬儀の対応など、さまざまなことに追われたために誤った対応をしてしまう可能性も低くありません。

相続放棄を検討している場合には、早めに弁護士などの専門家に相談し助言にしたがって正しく対応するようにしましょう。

3、別荘を物納するための要件

不要な別荘の相続を回避する方法としては、相続税の支払いを物納する(別荘を国に納める)方法も考えられます。

しかし、これから説明するように相続税の物納は要件が厳しく実際には難しい場合が多いといえます。

(1)「別荘が不要」というだけでは物納できない

国税である相続税は「金銭による納付」が原則となっています。

相続税における物納は、被相続人の死亡という偶然の事由によって多額の納税負担を強いられる相続人のための例外的な救済措置です。

したがって、物納が認められるのは、「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること」などの要件を満たす必要があるので「別荘が不要だから」という理由だけで物納が認められることはありません。

【参考】相続税法41条1項e-Gov法令検索)

【参考】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm

(2)物納することのできない別荘の具体例

相続税を金銭で支払えないという場合であっても、物納の対象となる財産(別荘)に問題がある場合には、物納することはできません。
物納できる財産の要件は、一般の人が思っているよりもかなり厳しいので注意しておく必要があるでしょう。

特に、別荘が以下の条件を抱えているときには、物納に不適合な物件と判断されてしまいます。(管理処分不適格財産といいます)

  • 担保権の設定の登記がされている
  • 権利の帰属について争いがある不動産
  • 敷地の境界が明らかでない
  • 隣接地と土地・建物の利用などについてトラブルを抱えている
  • 別荘の敷地が公道に接していない(いわゆる囲繞地(いにょうち))
  • 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明
  • 他の不動産と社会通念上一体として利用されている不動産
  • 共有に属する不動産
  • 建物が古く(耐用年数を超えていて)通常の使用ができない状態にある
  • 別荘の敷地に土壌汚染がある
  • 物件の財産価値が低すぎて、競売までの管理や競売実施の費用の方が高くつく場合

被相続人の代から全く利用されていない期間が長く、手入れの行き届かない別荘などは、そもそも物納できない物件である可能性も低くないので注意しましょう。

相続税の物納(国税庁ウェブサイト)

まとめ

不要な別荘の相続は、非常に難しい問題です。相続の放棄や物納といった方法で対応することは実際には難しいことが多いため、結局は、「満足のいかない金額でも売却する」か「コストを負担して相続(所有)する」かの二択になってしまうケースが多いからです。

そもそも物件の状況によっては売却することすら難しく「相続税や管理コストを負担する」ほか選択肢がないというケースも少なくないでしょう。

とはいえ、「自分にとっては利用価値がないから」と別荘を放置してしまうことは、コスト・リスクを増大させるだけなのでおすすめできません。

別荘の売却は、一般的な仲介取引だけでなく、専門業者による買取りの方法もあります。それぞれの状況に応じて必要とされる専門家のアドバイスをもらうことが最も良い解決を導いてくれるといえるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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