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法定離婚事由とは?離婚の要件や手続きについて解説

法定離婚事由(原因)とは何かご存知ですか?

離婚したい場合、まずは協議離婚、すなわち、当事者同士の話し合いで離婚やその条件について合意し離婚届を提出する方法を検討します。

しかし、任意の話し合いができない、あるいは相手方と顔を合わせるのも嫌だということになると、調停離婚、すなわち裁判所での調停で離婚やその条件について合致した場合に離婚をする方法をとることになります。

もっとも、調停も話し合いの手続きである以上、離婚やその条件について同意できないと離婚はできません。したがって、調停を行っても離婚できない場合もありえます。それでもなお離婚したい場合にはどうしたらいいでしょうか。実は、相手方が離婚に同意していなくても裁判を起こせば離婚できる場合があります。

これを法定離婚事由といいます。

今回は、

  • 法定離婚事由とは?
  • 法定離婚事由が認められる場合とは?

についてご説明していきます。ベリーベスト法律事務所の弁護士が監修している内容です。ご参考になれば幸いです。

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1、法定離婚事由について知る前に!そもそも離婚できるのはどのような場合?

法定離婚事由について知る前に!そもそも離婚できるのはどのような場合?

では、そもそも離婚できるのはどのような場合でしょうか。これは、いま述べたように、離婚について当事者が合意している場合と、合意がなくても法定離婚事由がある場合の2つです。

2、裁判で離婚が認められる場合とは?法定離婚事由について

裁判で離婚が認められる場合とは?法定離婚事由について

民法によって、一定の事由がある場合には裁判によって離婚できるとされています。この事由を法定離婚事由といいます。そして民法770条1項では次の5つを離婚事由としています。

  • 不貞行為(770条1項1号)
  • 悪意の遺棄(同条項2号)
  • 3年以上の生死不明(同条項3号)
  • 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと(同条項4号)
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があること(同条項5号)

もっともここで注意が必要なのは、これらの原因が相手方にあることが必要です。これらの原因を自ら作出した者、たとえば自分が不貞をした者からの離婚請求を認めたのでは、社会一般の正義感覚に反します。こうした法定離婚事由を作出した配偶者は有責配偶者と呼ばれ、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められず、厳しい条件のもとで例外的にしか認められないとされています。

次からは、各法定離婚事由について具体的に見ていきたいと思います。

3、法定離婚事由「不貞行為」により離婚できるのはどのような場合?

法定離婚事由「不貞行為」で離婚できるのはどのような場合?

ここで不貞行為の意味をしっかりと確認しておきましょう。民法にいう不貞行為とは、配偶者があるものが、自由意思で配偶者以外の異性と性的関係を持つことを言います。

したがって、単にデートをしたとかプラトニックな関係であれば不貞行為ではありませんから、世間一般にいう不倫より限定的な場面を指すといえるでしょう(もっともこのような場合でも、程度等によっては後で説明する「婚姻を継続し難い重大な事由」とされる可能性はあるでしょう)。

そして、不貞行為により離婚できる場合とは、このような不貞行為によって婚姻関係が破壊されたといえる場合、すなわち、不貞関係と婚姻関係の破綻に因果関係がある場合です。したがって、既に別の原因で婚姻関係が破綻していた後に、性的関係があったとしても、これによって婚姻関係が破壊されたわけではないので、770条1項1号にいう不貞行為にあたらず離婚はできないということになります。

4、法定離婚事由「悪意の遺棄」により離婚できるのはどのような場合?

法定離婚事由「悪意の遺棄」により離婚できるのはどのような場合?

(1)悪意の遺棄とは

悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく、他方の配偶者との同居を拒む、協力しない、他方配偶者と同一程度の生活を保障してくれないという場合です。夫婦は同居協力扶助義務という義務を負っています(民法752条)がこの義務を正当な理由なく果たさないのが悪意の遺棄です。

具体的には、次のような場合が考えられるでしょう。

  • 理由なく同居を拒む
  • 生活費を渡さない
  • 他方配偶者を虐げ家から追い出す

など

いずれも「正当な理由なく」というところがポイントです。したがって、仕事の関係で単身赴任する必要があり別居せざるを得ない、病気で働けないために生活費を渡せないといった場合は悪意の遺棄にはならないでしょう。

(2)悪意の遺棄と別居

悪意の遺棄で問題になるのは、離婚に向けての別居が悪意の遺棄にあたるかという点です。

離婚に向けて別居をするということはよくあることですが、別居をすれば同居協力扶助義務に違反することになるわけですから、黙って家を出ると、相手方から悪意の遺棄と非難される場合があります。また、別居の態様によっては婚姻を継続し難い重大な事由とされる可能性もありますから、別居に当たっては、話し合いの上、別居について相手方から同意を得ておくことにこしたことはないでしょう。

5、法定離婚事由「3年以上の生死不明」で離婚できるのはどのような場合?

法定離婚事由「3年以上の生死不明」で離婚できるのはどのような場合?

(1)生死不明とは

相手方配偶者が、最後の消息があったときから3年以上生死不明である場合には離婚ができます。

行方不明でも、生存していることが分かっている場合には生死不明には当たりません。また、単に連絡を取らないから消息が分からないというのでは、生死不明とは認められません。警察に捜索願を出して捜査をしてもらう、戸籍を追うなど手を尽くしても見つからなかったということが求められます。

(2)失踪宣告を利用することも検討する

失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないときの普通失踪と、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないときの危難失踪の2種類があり、これらの場合は、家庭裁判所は、申立てにより、失踪宣告をすることができます。

失踪宣告を利用するメリットは、配偶者の財産一切を相続することができる点です。お子さんがいるので、配偶者の財産は少しでももらいたいというような場合には失踪宣告の制度を利用することも検討するといいでしょう。

6、法定離婚事由「強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと」とは

強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと

(1)回復の見込みがないことが必要

夫婦は同居協力扶助義務を追っていますが、相手方が強度の精神病に罹ったような場合こそかかる義務を果たすべき時であるということができます。しかし、夫婦関係の基礎は精神的なつながりですから、精神病によってこれが失われ、しかも回復の見込みがない時まで他方配偶者を形骸化した婚姻関係に拘束するのは酷です。

したがって、民法は相手方が強度の精神病に罹り、回復の見込みがない場合には離婚できるものとしています。回復の見込みがないかは、精神科医の診断を参考に、最終的には裁判官が認定します。

(2)さらに具体的方途を尽くす必要がある

もっとも相手方が、強度の精神病に罹り、回復の見込みがなければすぐ離婚できるわけではありません。判例(最判昭和33年7月25日)は、夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活などについて、できる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついたうえでなければ、離婚の請求は許されないとしています。

すなわち、精神病になってしまった配偶者の離婚後の生活に目途を立てなければ離婚できないとされているのです。

7、法定離婚事由「婚姻を継続し難い重大な事由」で離婚できる場合とは?

婚姻を継続し難い重大な事由で離婚できる場合とは?

(1)婚姻を継続し難い重大な事由とは

婚姻を継続し難い重大な事由とは、1号から4号までの事由に限らず、夫婦関係を修復不能なほどに破綻させ、円満な夫婦生活の継続が困難とするようなで事由です。個々具体的なケースごとに判断されるものですから、あるケースでは婚姻を継続し難い重大な事由とされたことも、違うケースではそうではないと判断されることもあり得ます。

(2)婚姻を継続し難い重大な事由の例

過去の裁判例では、次のような事情が婚姻を継続し難い重大な事由であると判断されたことがあります。

  • 長期間の別居
  • ドメスティックバイオレンス(DⅤ)、モラルハラスメント
  • 性の不一致
  • アルコール中毒、薬物依存
  • 過度な宗教活動
  • 犯罪行為にともなう服役
  • 過渡の浪費

もっとも、前述の通り、どのようなケースでもこれらがあれば婚姻を継続し難い重大な事由があるということにはならないという点は注意が必要です。当該夫婦の全ての状況に照らして、ある事柄が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるのかを判断するためです。

よく「性格の不一致」で離婚をしたいと相談される方がおられますが、単に「性格の不一致」というだけでは婚姻を継続し難い重大な事由があることにはならず、いかにかかる事由があると認められるだけの個別具体的な事実を証明できるかが重要だといえます。

8、法定離婚事由で離婚裁判をする流れは?

離婚裁判をする流れは?

離婚の裁判は、原則として離婚調停の後でないと申し立てられないこととされています。これを調停前置主義といいます。離婚調停を行ったものの調停における話し合いがまとまらなかったとき(不調といいます)に限って離婚裁判を起こすことができるのです。

調停が不調になった後、それでもなお離婚を求める側が家庭裁判所に訴状を提出することによって裁判が開始します。その後、裁判の期日でお互いに主張とそれを証明する証拠と出し合い、最終的にこれらを基に裁判所が離婚を認めるかどうかを判断します。

離婚裁判の流れや必要書類の詳細については、「離婚裁判に勝つために知っておくべき9つのこと」を参照してください。

まとめ

以上のように、相手方が離婚に応じなくても裁判まで持ち込めば離婚できる可能性はあります。どうしても離婚したい場合、ご自身が離婚したい理由が法定離婚事由に該当するかどうか、まずは弁護士に相談して確認するとよいでしょう。

また、以下の記事もご参照ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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