盗撮がバレたら、刑事責任や民事責任を負い、実生活上の不利益などを被ります。
このようなデメリットを避ける目的から、盗撮行為がバレたときに証拠隠滅や逃走を図ろうとする犯人は少なくありません。
しかし、これは必ずしも適切な対応とは言えません。なぜなら、監視カメラの映像やさまざまな物証などにより、捜査機関に犯罪事実が発覚するリスクがあるからです。
そこで今回は、
- 盗撮がバレたときに生じるデメリット
- 盗撮がバレたときに問われる刑罰
- 盗撮がバレたときにやってはいけないこと
- 盗撮がバレたときの正しい対処法
- 盗撮で逮捕されたときに弁護士に相談するメリット
などについて、弁護士が分かりやすく解説します。
「過去の盗撮行為がバレたときにどうなるか心配」などと不安を抱える方の助けになれば幸いです。
目次
1、盗撮がバレたらどうなる?
盗撮がバレたときに生じるデメリットは以下4点です。
- 警察に逮捕されて刑事責任を問われる
- 有罪になると前科がつく
- 慰謝料などの民事的な賠償責任を追及される
- 家族や知人、職場等にバレて社会的信用を失う
(1)逮捕されることがある
盗撮は、各自治体の迷惑防止条例違反や建造物侵入、軽犯罪法違反などの犯罪行為です。したがって、盗撮がバレると警察に逮捕されることがあります。
後述するように、警察に逮捕されると、最大72時間(場合によっては勾留されて、さらに最大20日間)にわたり、身柄が拘束されます。
したがって、最終的に不起訴処分を獲得できたとしても、数日間~数週間は社会生活から隔離された状態で厳しい取り調べを受けなければいけないので、大きな精神的ストレスや実生活への支障を強いられます。
(2)有罪になれば前科がつく
盗撮の疑いで逮捕されて、検察官による起訴処分が下されると刑事裁判を受けることになります。
わが国の刑事裁判における有罪率は99.9%なので、起訴処分の判断が下された時点で有罪になる可能性が相当高い状況に追い込まれたといえます。
そして、盗撮行為に対して有罪判決が下されると前科が付きます。
盗撮事案の場合には、略式起訴をされて罰金刑で終わる可能性も高いですが、罰金刑でも有罪判決を受けたことに変わりません。
盗撮で有罪になり前科がつくと、以下のような不利益を被ります。
- 検察庁や警察に記録が残る
- 再犯で逮捕されると累犯として重い刑罰が科される可能性がある(刑法第57条)
- 職場の就業規則等により何かしらの懲戒処分を受ける可能性がある
- 就職活動、転職活動の際に申告を求められるケースがある(秘匿すると経歴詐称になる)
- 前科があると就けない職業がある
- 前科が離婚事由になる可能性がある(民法第770条1項5号)
(3)慰謝料等の支払い義務が生じる
盗撮事件が発覚すると、被害者が負った精神的損害に対する賠償責任が発生します(民法第709条、第710条)。
また、小型カメラなどを設置する際に建物の備品などを壊した場合や、逃走時にもみ合いになって追跡者に怪我をさせてしまった場合などでは、修繕費用や治療費などの支払義務も生じます。
盗撮行為の態様や被害状況にもよりますが、盗撮事件の慰謝料は10万円~50万円程度が相場です。
(4)家族や知人、職場に知られる可能性が高い
盗撮事件が発覚すると、家族や知人、職場にバレる可能性が高いです。その結果、社会的信用は失墜することが考えられます。
まず、盗撮がバレて逮捕されると一定期間の身柄拘束を避けられません。
会社や学校を休まざるを得なくなると、その理由として盗撮事件を起こしてしまったことを説明しなければならない場合があります。
同居家族や近しい友人と連絡を取ることも難しいので、事件が職場や学校にバレるのは時間の問題です。
また、職場や学校で盗撮事件を起こしてしまうと、警察が現場を捜査することになります。
警察による実況見分等の捜査活動は職場や学校の協力のもと行われるので、隠し通すことは不可能です。
さらに、盗撮事件が報道されるとインターネット上に情報が流布されることになるので、いつ自分の周囲の人に過去の盗撮事件を知られるか分からない状況に追い込まれます。
2、盗撮がバレたときに問われる罪と刑罰
盗撮がバレたときに問われる可能性がある犯罪と法定刑は以下の通りです。
罪責 | 法定刑 |
迷惑防止条例違反 | 各自治体が定める内容による(東京都の迷惑防止条例の場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」) |
窃視の罪(軽犯罪法第1条23号) | 拘留または科料 |
児童ポルノ製造の罪(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条5項) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法第130条) | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
たとえば、勤務先の更衣室に小型カメラ等を設置して女性の下着姿を撮影した場合には、迷惑防止条例違反及び建造物侵入罪の両罪に問われる可能性が高いです。
なお、迷惑防止条例違反と建造物侵入罪の関係は牽連犯となり、重い方の刑罰で処断されます(刑法第54条1項後段)。
東京都の迷惑防止条例違反と建造物侵入罪の場合であれば「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」の範囲で判決が言い渡されます。
盗撮がバレたときに問われる罪と刑罰について、さらに詳しくは「盗撮って犯罪なの?盗撮してしまう4つの原因と罰則を弁護士が解説!」をご参照ください。
3、盗撮がバレたときの刑事事件の手続きの流れ
盗撮行為が発覚して警察に逮捕されると、通常は以下のような流れで刑事手続きが進められます。
- 警察における48時間以内の取り調べ
- 検察に送致された後24時間の取り調べ(場合によっては最大20日間の勾留延長)
- 検察官による起訴・不起訴の決定
- 刑事裁判にかけられて判決が言い渡される
(1)逮捕
盗撮行為が捜査機関に発覚すると、警察に逮捕されて身柄を拘束される可能性があります。
警察段階の取り調べは最大48時間です。48時間以内の間に供述調書が作成されるなどして、事件を検察官に送致されるかが判断されます。
48時間以内の取り調べは身柄拘束を受けた状態で行われ、弁護士以外とは面会できません。
自分から職場に連絡を入れるなどの行為もできないので、実生活上にさまざまな悪影響が生じることになります。
ただし、すべての盗撮犯人が警察に逮捕されるわけではありません。
警察が逮捕する必要があると判断するのは、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いケースなどに限られます。
したがって、以下のような場合には、盗撮行為が警察に発覚しても逮捕されずに事件終結を目指せる可能性があります。
- 警察からの出頭要請に応じて素直に任意聴取を受ける
- 現行犯で逮捕されそうな状況であっても、氏名や連絡先、勤務先等を明らかにして逃亡のおそれがないことを説明する
- すでに被害者との間で話し合いが進んでおり民事的な解決が近い
- 初犯である
(2)勾留
盗撮の嫌疑で逮捕されて警察で取り調べを受けた後は、検察官に身柄が送致されます。
検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内に勾留請求の要否を判断します。
検察官が勾留請求を行い、裁判所が許可すれば、最低10日間、最大で20日間にわたって身柄を拘束されたまま取り調べが続きます。
被疑者の精神的負担が重くなるだけでなく、社会生活への復帰の道がさらに険しくなってしまいます。
なお、盗撮がバレて逮捕されたケースでは、以下のような状況であれば検察官が勾留請求の必要はないと判断し、検察官送致から24時間以内に釈放される可能性もあります。
- 防犯カメラの映像や盗撮用カメラの画像データなどの物証がそろっている
- 家庭環境が安定しているなど、逃亡のおそれが低い
- 逮捕段階での取り調べに真摯な姿勢で向き合い、不自然な供述や否認をしていない
- 被害者との間で示談が成立している、告訴が取り下げられている
- 初犯で、かつ、反省の態度を示しているなど、再犯リスクが低いと判断できる
(3)起訴・不起訴の決定
勾留された場合には勾留期間が満了する前に、検察官は起訴・不起訴の判断を下します。
勾留されなかった場合も在宅事件として捜査が進められ、最終的には検察官による起訴・不起訴の判断が下されます。
起訴処分とは、検察官が盗撮事件を刑事裁判にかけるという判断のことです。
公開の裁判手続きで審理されるため、判決言い渡しまではさらに数カ月程度の期間を要します。
不起訴処分とは、検察官が盗撮犯人に対して刑罰を下す必要がないと判断し、刑事裁判にかけずに捜査を終了させることです。不起訴処分を獲得できれば前科はつかずに刑事手続きは終了します。
たとえば、初犯で前科がなく、すでに示談金の支払いが済んでいるような事情があれば、不起訴処分を獲得できる公算は高いでしょう。
なお、迷惑防止条例違反などの嫌疑で盗撮犯人が逮捕された場合には、罰金刑に処するのが相当であると判断される場合が少なくありません。
100万円以下の罰金や科料に処するのが相当であると認められる盗撮事件の場合には、被疑者が異議を申し立てなければ略式起訴・略式命令(略式手続き)という簡易な刑事手続きで事件が終了する可能性も高いです(刑事訴訟法第461条)。
ただし、略式手続きを選択する場合には、早期の身柄解放と事件終了が確約される一方で、罰金刑の前科が付くことは避けられません。
盗撮事件で無罪を目指す場合には、異議を申し立てて通常裁判手続きへの移行を求める必要があります。
(4)刑事裁判
盗撮がバレて検察官が起訴処分を下すと、公開の刑事裁判で事件が審理されて判決が言い渡されます。
公判手続きは、冒頭手続・証拠調手続・弁論手続を経て判決に至るのが通常ですが、被告人が盗撮行為などの事実関係を認めていて特に争いがない状況であれば、第1回公判期日で審理が終了し、その後1カ月以内を目安に判決が言い渡されます。
判決内容を受け入れると有罪判決が確定し、前科が付きます。
4、盗撮がバレたときにやってはいけないこと
盗撮がバレても以下3つの行為は厳禁です。
確かに、盗撮犯人は、「捕まりたくない」「隠し通したい」という心情に陥りがちですが、厳しい刑事処分が下される可能性が高まって自分の首を絞めることになるだけだからです。
- 逃走する、行方をくらます
- 証拠映像の削除などの証拠隠滅行為
- 虚偽の証言や安易な否認
(1)逃走しない
盗撮行為がバレても逃走してはいけません。
なぜなら、捜査機関に「逃亡のおそれがある」と判断されると逮捕される可能性が高まりますし、犯行現場からの逃走時に追跡者ともみ合いなどになると暴行罪や傷害罪などの罪責に問われる危険性も生まれるからです。
運良く犯行現場から逃走できたとしても、監視カメラの映像や目撃者の証言などから、いずれ身柄が確保されるのは間違いないでしょう。
それならば、盗撮行為がバレた時点で適切な防御策を講じて合法的に軽い刑事処分獲得を目指すのが賢明だと考えられます。
(2)証拠隠滅をしない
盗撮行為がバレても証拠隠滅は厳禁です。
なぜなら、証拠隠滅のおそれがあると身柄拘束の必要性が高いとして逮捕される可能性が高まりますし、証拠隠滅を図る被疑者は反省の態度がみられないとして起訴され、懲役刑を下されるリスクも生じるからです。
また、スマートフォンのデータを削除したり、盗撮用カメラやハードディスク等を破壊したりしても、捜査の過程でこれらのデータは復元される可能性が高く、完全に隠滅することはできません。
盗撮データ等の隠滅を図ることに実益はない以上、提出を求められた犯罪関係の物証は素直に提出して、刑事処分を軽くする方向で適切な防御策を講ずるべきと考えられます。
(3)虚偽の否認をしない
任意聴取や逮捕後の取り調べで嘘ついたり、不合理に否認したりするのは逆効果です。
なぜなら、捜査機関はすでに盗撮事件についてある程度の物的証拠を掴んでいる可能性が高く、虚偽の供述や不合理な否認は捜査機関による厳しい追及に拍車をかけるだけだからです。
もちろん、警察が証拠を掴んでいない余罪などについて自ら進んで自供する必要はありませんが、事実関係と齟齬が生じるような回答は厳しい刑事処分の可能性を高めるだけなので、誠実な姿勢で取り調べに向き合うべきでしょう。
5、盗撮がバレたときの正しい対処法
盗撮行為がバレたとしても冒頭で述べたすべてのデメリットが確定するわけではありません。
状況次第ですが、適切なタイミングで効果的な防御策に踏み出せば、家族・知人・職場に知られたり、前科がついたりすることを回避できます。
盗撮がバレたときの正しい対処法は以下3つです。弁護士に相談のうえ、状況を総合的に考慮して適切な対策を提案してもらいましょう。
- 被害者との間ですみやかに示談交渉を進めて示談金を支払う
- 取り調べでは反省の態度を示す
- 具体的な再犯防止対策を説明して更生可能性をアピールする
(1)速やかに示談をする
まず、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始して、和解契約の締結を目指す必要があります。
被害者との間で民事的な解決が済んでいる状況であれば、逮捕による身柄拘束を回避できる可能性が高まるからです。
また、すでに逮捕されている場合でも、示談金の支払いによって早期に身柄が釈放されたり、勾留請求・起訴処分・懲役刑を回避できたりする効果も期待できます。
比較的軽微な犯罪類型に分類される盗撮事犯では、被害者の処罰感情が刑事処分の内容を大きく左右します。
したがって、厳しい刑事処分を避けて実生活上への支障を軽減するために、速やかに示談交渉を開始して示談金の支払いを済ませましょう。
(2)反省の態度を示す
任意聴取や逮捕後の取り調べでは、反省の態度を示すことが重要です。
なぜなら、反省の態度は再犯防止のアピールを意味するので、厳しい刑事処分を回避できる可能性が高まるからです。
たとえば、任意聴取の段階で丁寧な対応をすれば、逮捕の必要はないと判断されて身柄拘束なしで事件の解決を目指せます。
すると、仕事や学校を休んだりする必要もなく、家族や知人などにバレるリスクも少なくなるでしょう。
盗撮がバレたときには、身柄拘束自体を避ける・身柄拘束期間を短縮化することが最大の課題です。
否認や証拠隠滅をするのではなく、真正面から取り調べに向き合うことが目標達成の近道だと言えるでしょう。
(3)再犯防止対策を立てる
盗撮のような性犯罪は再犯リスクの高い種類の犯罪に分類されます。
そして、再犯可能性があると判断されると厳しい刑事処分が下される可能性が高まるのが実情です。
そこで、任意聴取や逮捕後の取り調べでは、できるだけ具体的な再犯防止対策を説明するのが有効だと考えられます。
家族と同居する、専用クリニックに通院するなどの具体的な対策を提示できれば、再犯可能性が低いとして軽い刑事処分を期待できるでしょう。
6、盗撮がバレたらすぐ弁護士に相談を
盗撮行為がバレたときにはできるだけすみやかに弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、性犯罪事件の実績豊富な弁護士に相談すれば、以下6つのメリットが得られるからです。
- 感情的になっている被害者との間に入って冷静に示談交渉を進めてくれる
- 警察に自首するなど、幅広い選択肢から状況に応じた対策を検討してくれる
- 盗撮がバレた状況を踏まえて取り調べへの対応についてアドバイスをくれる
- 接見の機会を通じて逮捕後不安を抱える被疑者を励ましてくれる
- 勾留決定、勾留延長決定などに対して準抗告を行って早期の身柄釈放を目指してくれる
- 職場からの違法な懲戒解雇などにも対応してくれる
盗撮がバレたときには、捜査機関への防御策だけではなく、被害者や職場などへの対応方法も同時並行的に検討しなければいけません。
性犯罪の弁護実績豊富な弁護士なら相応のノウハウを備えているので、適切な社会復帰への道を照らしてくれるでしょう。
盗撮がバレたらどうなる?に関するQ&A
Q1.盗撮がバレたらどうなる?
盗撮がバレたときに生じるデメリットは以下4点です。
- 警察に逮捕されて刑事責任を問われる
- 有罪になると前科がつく
- 慰謝料などの民事的な賠償責任を追及される
- 家族や知人、職場等にバレて社会的信用を失う
Q2.盗撮がバレたときにやってはいけないこと
盗撮がバレても以下3つの行為は厳禁です。
確かに、盗撮犯人は、「捕まりたくない」「隠し通したい」という心情に陥りがちですが、厳しい刑事処分が下される可能性が高まって自分の首を絞めることになるだけだからです。
- 逃走する、行方をくらます
- 証拠映像の削除などの証拠隠滅行為
- 虚偽の証言や安易な否認
Q3.盗撮がバレたときの正しい対処法
盗撮行為がバレたとしても冒頭で述べたすべてのデメリットが確定するわけではありません。
状況次第ですが、適切なタイミングで効果的な防御策に踏み出せば、家族・知人・職場に知られたり、前科がついたりすることを回避できます。
盗撮がバレたときの正しい対処法は以下3つです。弁護士に相談のうえ、状況を総合的に考慮して適切な対策を提案してもらいましょう。
- 被害者との間ですみやかに示談交渉を進めて示談金を支払う
- 取り調べでは反省の態度を示す
- 具体的な再犯防止対策を説明して更生可能性をアピールする
まとめ
盗撮がバレた状況を放置すると、警察に逮捕されて前科が付いたり、職場から厳しい懲戒処分を下されたりする危険性が高まります。
証拠隠滅や逃亡を図っても逆効果なので、警察への対応方法や被害者との示談交渉などの防御策を早期に検討する必要があります。
とはいえ、刑事手続きに詳しくない一般の方では捜査機関による取り調べにどのように向き合えばよいか分からないでしょうし、示談交渉を行うとしても、性犯罪被害者との間で直接連絡を取り合うことも難しいのが実情です。
刑事事件の実績豊富な弁護士に相談をして、できるだけ早期の事件解決を目指すべく尽力してもらいましょう。