尾てい骨骨折で後遺症が残ってしまったらどのように示談を進めればよいのだろう……。
尾てい骨骨折は、1~3ヶ月程度で治癒することが多いといわれています。
しかし、長期間にわたって、痛みや痺れなどの症状が残ることもあります。
交通事故による尾てい骨骨折で後遺症が残った場合には、傷害自体に対する賠償金とは別に、後遺症に対する賠償金を請求できる可能性があります。
そのためには、後遺障害等級の認定を受けることが必要です。
後遺障害等級の認定を受けるとどれくらいの賠償金がもらえるのか、後遺障害等級の認定を受けるためにはどうすればよいのかということが気になるでしょう。
今回は、
- 尾てい骨骨折の後遺症は何級の後遺障害等級となるのか
- 尾てい骨骨折の後遺症で賠償金をいくらもらえるのか
- 尾てい骨骨折で後遺障害等級を獲得するためのポイント
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。
この記事が、交通事故による尾てい骨骨折の後遺症でお悩みの方の手助けとなれば幸いです。
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目次
1、尾てい骨骨折の後遺症で示談する前に~尾てい骨骨折とは?
尾てい骨とは、背骨の一番下にある骨のことです。
正面から見ると逆三角形になっていて、横から見ると末端が前方に屈曲しています。
医学上は「尾骨」と呼ばれますが、一般的には「尾てい骨」と呼ばれることが多いです。本記事では、「尾てい骨」と称して解説していきます。
この尾てい骨が折れたり、変形したり、ヒビが入ったりした状態が「尾てい骨骨折」です。
(1)尾てい骨骨折の原因
尾てい骨骨折は、転倒して尻餅をついたり、何かがお尻にぶつかったりなどして、尾てい骨に強い衝撃が加わった場合に発生します。
交通事故では、バイク・自転車に乗車中や歩行中に車と衝突し、地面に尻餅をついた際に発生するケースが多くなっています。
自動車に乗車中の場合は、シートに座っているため症例はさほど多くありませんが、追突事故などで尾てい骨骨折が生じることがあります。
(2)症状
尾てい骨骨折の主な症状は、患部の痛みと腫れです。
初期には、強い痛みや痺れのために歩きにくい状態になることもありますが、通常1~2週間すると尾てい骨の痛みと腫れのみになってきます。
打撲に過ぎない場合も尾てい骨の痛みと腫れがありますが、打撲の場合は受傷後1~2週間で治まってきます。
その後も、痛みと腫れが続くような場合は骨折が疑われます。
骨折している場合には、発熱や吐き気、嘔吐などが見られることもあります。
(3)治療方法
尾てい骨骨折の治療方法は、湿布などで患部を冷やすほか、できるだけ安静にしてお尻に荷重をかけない生活を心がけることがメインになります。
骨折の程度が著しい場合には手術などの外科的処置が行われる場合もありますが、ほとんどのケースでは保存的に治療し、自然治癒を待ちます。
(4)治療期間の目安
尾てい骨骨折が完治するまでの期間は1~3ヶ月程度が平均的といわれていますが、半年以上痛みや痺れが続くケースも少なくありません。
治療期間は骨折の程度によって異なりますし、個人差もあります。
ただ、骨折後に十分な安静を保っているケースほど治癒が早くなる傾向にあります。
後遺障害等級を獲得するためには十分な治療を受けることが前提となるので、目安として半年は治療を続けた方がよいでしょう。
2、尾てい骨骨折で該当する可能性がある後遺障害等級
交通事故による負傷で後遺症が残った場合、1級~14級の14段階に分類された後遺障害等級のいずれかの認定を受けた上で、損害賠償請求をすることになります。
尾てい骨骨折の後遺症で該当する可能性がある自賠責保険の後遺障害等級は、以下の3種類です。
(1)14級9号
14級は、後遺障害等級の中で最も低い等級です。
「局部に神経症状を残す」場合に14級9号に認定されます。
神経症状とは、痛みや痺れのことです。
骨折した骨は元に戻ったものの、受傷直後から後遺障害等級認定申請のときまで、骨折した部位やその周辺に一貫した痛みや痺れがある場合には、14級9号に認定される可能性があります。
(2)12級13号
12級13号に認定されるのは、「局部に頑固な神経症状を残す」場合です。
14級9号との違いは神経症状が「頑固」であるかどうかですが、実務上は残った神経症状が医学的に「証明」できるかどうかで区別されます。
患者の自覚症状だけでなく、神経症状の原因について他覚的所見がある場合に、医学的に証明されたと判断されます。
尾てい骨骨折の場合、レントゲンやMRIの画像検査によって、「骨が変形して神経を圧迫している」ことが判明したような場合には、12級13号に認定されるのです。
他覚的所見がなくても、一貫した痛みや痺れがあり神経症状の残存が医学的に「説明」可能な場合は、14級9号に認定されます。
他方、骨折した骨が元に戻り、痛みや痺れもいったん治まった数ヶ月後に再発したように、神経症状の残存が医学的に説明不可能な場合は後遺障害等級「非該当」となります。
(3)11級10号
稀にですが、尾てい骨骨折に伴い膀胱・尿道・直腸の機能を損傷し、排尿・排便に支障をきたすこともあります。
女性の場合はさらに、産道が狭くなり正常分娩が困難となるケースもあります。
これらの場合は、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」として11級10号に認定される可能性があるでしょう。
認定を受けるには泌尿器科や内科、産婦人科を受診し、交通事故が原因でその障害が残ったことを証明してもらう必要があります。
複数の後遺障害が認定された場合には、等級の併合処理が行われます。
尾てい骨骨折の後遺障害等級に適用される併合のルールは以下のとおりです。
- 13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合:最も重い等級を1つ繰り上げる
例えば、12級13号に該当する神経症状と11級10号に該当する膀胱障害が認定された場合なら、重い方の11級が1つ繰り上げられ、併合10級の後遺障害として認定されます。
3、尾てい骨骨折で後遺障害等級が認定された場合に受け取れる賠償金
後遺障害等級の認定を受けると、「後遺症慰謝料」と「逸失利益」の2つを受け取ることができます。それぞれ、いくらもらえるのかを解説します。
(1)後遺症慰謝料
後遺症慰謝料とは、交通事故の後遺症のために、今後の仕事や日常生活に支障が出ることで受ける精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金のことです。
慰謝料の算定基準には、「自賠責保険基準」・「任意保険基準」・「弁護士基準」(裁判所基準とも言われます。)の3種類があります。
どの基準が適用されるかによって、以下のように慰謝料額が異なります。
等級 | 自賠責保険基準 による慰謝料額 | 任意保険基準による 慰謝料額(推定) | 弁護士基準による 慰謝料額 |
第10級 | 190万円(187万円) | 200万円 | 550万円 |
第11級 | 136万円(135万円) | 150万円 | 420万円 |
第12級 | 94万円(93万円) | 100万円 | 290万円 |
第14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合の慰謝料額です。
任意保険基準の内容は公表されていないため、上記の金額は推定値です。あくまでも目安として参考になさってください。
交通事故の被害者の大半は任意保険基準による慰謝料額で示談していますが、弁護士基準で請求すれば慰謝料が大幅に増額されます。
弁護士基準で慰謝料を請求するには、訴訟等の手続を行うか、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
(2)逸失利益
逸失利益とは、後遺症がなければ将来に得られたであろう利益のことです。
後遺症が残ると、基本的には、労働能力が制限され収入が減ると考えられるので、将来の減収分の補償を請求することができます。
逸失利益として補償される金額は、次の計算式によって求められます。
基礎収入 ☓ 労働能力喪失率 ☓ 労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数
労働能力喪失率は、事案によって個別に判断されることもありますが、以下のとおり、労働能力喪失率表(昭和32年7月2日付基発第551号)の数値が適用されることが多いです。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第10級 | 27% |
第11級 | 20% |
第12級 | 14% |
第14級 | 5% |
例えば、以下の事案では、最大で、約1,300万円の逸失利益を受け取ることができます。
【事案】
- 尾てい骨骨折後の神経症状で12級13号の後遺障害の認定を受けた
- 被害者は症状固定時40歳
- 事故に遭う前年の年収は500万円
※なお、事故は、令和2年4月1日以降に発生したものとする
(計算式)
500万円(基礎収入) ☓ 14%(労働能力喪失率) ☓ 18.327(労働能力喪失期間27年(67歳-40歳)に対応するライプニッツ係数) = 1,282万8,900円
※なお、12級13号の神経症状の場合、事案によっては、労働能力喪失期間が10年程度に制限されることもありますので、注意が必要です。
逸失利益の計算方法について詳しくは、下記記事をご参照ください。
4、尾てい骨骨折で後遺障害等級を獲得するためのポイント
尾てい骨骨折で後遺症が残った場合、正当な補償を受けるために後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
しかし、ケースによっては適正な後遺障害等級を獲得することが難しい場合もあります。
後遺障害等級認定申請の基本的な手順については、こちらの記事でご確認ください。
本章では、尾てい骨骨折で適正な後遺障害等級を獲得するためのポイントを紹介します。
(1)普段から医師に症状を具体的に伝えておく
後遺障害に認定されるためには、受傷直後から一貫した症状が残存していることが前提となります。
その症状の存在は、医師が毎月発行する診断書やカルテの記載によって証明されなければなりません。
特に14級9号の神経症状に該当するかどうかが問題となるケースでは、診断書やカルテから一貫した症状が読み取れるかどうかが重要となります。
普段の診察で医師に痛みや痺れを伝えていなかったり、「ときどき痛む」「寒いときだけ痛む」というような伝え方をしていたりする場合は、症状に一貫性がないと判断される可能性があります。
自覚症状については、普段から医師に対して具体的に伝えておくべきです。それが後遺障害等級の申請のための証拠作りにもなるでしょう。
(2)詳しい検査を受ける
尾てい骨を骨折しているにもかかわらず、打撲と誤診されるケースが少なくありません。
痛みが強い場合や、なかなか軽減しない場合には画像検査や神経学的検査をはじめとする詳しい検査を受けることが大切です。
特に12級と14級のどちらに該当するかが問題となるケースでは、検査結果に基づく他覚的所見があるかどうかが重要となります。
神経症状が残った場合、レントゲン検査では骨が元に戻ったように見えても、CTやMRIの画像検査を受けてはじめて、骨が神経を圧迫していることが判明することもあります。
(3)後遺障害診断書の記載内容を確認する
治療を続けても症状が残り、医師が「これ以上治療を続けても治らない」と判断すると症状固定となり、後遺障害診断書を作成してもらいます。
後遺障害等級認定の審査では後遺障害診断書の記載が最も重視されますので、申請前に記載内容を確認することが大切です。
自覚症状が漏れなく記載されているか、他覚的所見が記載されているか、今後の見通しについて「やがて寛解する見込み」などと記載されていないかを確認しましょう。
記載内容が不十分または不当である場合には、再検査を受けるなどして後遺障害診断書を修正してもらったり、再発行してもらったりすることも考えるべきです。
(4)保険会社からの治療費打ち切りの打診に応じない
尾てい骨骨折で後遺症が残るような重症な場合、少なくとも半年は治療を継続すべきことが多いですが、途中で任意保険会社が治療費の打ち切りを打診してくることがあります。
尾てい骨骨折の場合、そこまで症状が重くなければ、1~3ヶ月で完治することが多いと考えられているため、治療開始から3ヶ月が経過すると治療費打ち切りを打診されることがあります。
しかし、打ち切りを打診されても、安易に応じてはいけません。
早期に治療を打ち切ると、怪我の治療も不十分になってしまうばかりか、治療期間の短さを理由に「軽傷である」「治療の必要性が低い」と判断され、後遺障害等級認定の審査で不利になるおそれがあるからです。
入通院慰謝料の金額も、治療期間が短くなってしまう分、本来もらえるべきであった金額より低くなってしまう可能性があります。
いつまで治療すべきかを決めるのは、一次的には、保険会社ではなく、主治医です。
治療費打ち切りの打診を受けた場合、まずは主治医と相談し、治療継続の必要性を相談して、主治医から聞いた内容を訴えましょう。
それでも保険会社が強引に打ち切ろうとする場合は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士であれば、適切に治療の延長交渉を行うこともできますし、仮に打ち切られてしまった場合であっても、適切に対処することが可能です。
(5)被害者請求で申請する
後遺障害等級認定の申請は、加害者側の任意保険会社の担当者に任せれば、すべての手続きを行ってくれます。この申請方法のことを「事前認定」といいます。
ただし、任意保険会社は申請の際に基本的な必要書類を提出するだけであり、被害者に有利な資料を積極的に収集して提出することはまずありません。
一方で、被害者自らが後遺障害等級認定の申請を行う方法のことを「被害者請求」といいます。
被害者請求では、自分で有利な資料を自由に収集して提出できるので、適正な後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
ただし、被害者請求の手続きは意外に複雑であり、どのような資料を提出すれば有利となるのか、分かりにくいことが多いでしょう。
被害者請求を的確に行うためには、弁護士に依頼することが得策です。
(6)認定結果に納得できない場合は異議申し立てをする
後遺障害等級の認定結果に納得できない場合は、異議申立てをして再審査してもらうことができます。
ただし、単に「異議がある」というだけでは認定結果を覆すことはできません。
- 再検査のデータ
- 医師の意見書
- 症状の経過などを自分で記載した陳述書
など、新たな医学的資料を提出する必要があります。
異議申し立てによって認定結果を覆すためには高度な専門知識が要求されますので、弁護士に依頼して行う方がよいでしょう。
5、尾てい骨骨折の後遺症で示談する前に弁護士に相談を
交通事故による尾てい骨骨折で治療が終了すると、保険会社が示談案を提示してきます。
後遺症が残っている場合には、示談する前に弁護士に相談してみることを強くおすすめします。
示談案が提示された段階では、
- 後遺障害等級認定申請をしていない
- 申請したが認定結果が不当
- 認定結果は適正だが保険会社が算出した賠償額が不当
など、被害者に不利な事情があることが多いものです。そのまま示談すると、経済的に損をする可能性が高いです。
弁護士に相談すれば、適正な賠償額についてアドバイスが受けられます。
弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の申請(被害者請求)や異議申立ての手続きを代行してもらうことができ、その上で示談交渉も代行してもらえます。
また、弁護士基準で慰謝料を請求してもらえるので、弁護士に依頼するだけで賠償額が大幅に増額される可能性もあるでしょう。
自己判断で示談せず、弁護士の専門的なアドバイスを受けることがおすすめです。
まとめ
尾てい骨骨折は基本的にこれといった治療法がなく、患部を冷やし、できるだけ安静にしつつ自然治癒を待つことになります。
事案にもよりますが、少なくとも週に1~2回は通院して医師に症状を伝えることも大切です。
あまり通院していなければ、治療の必要性がないと判断されてしまい、後遺障害等級認定の審査で不利になってしまうことがあるからです。
医師の指示に従って通院を続けても後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定を受けた上で保険会社と示談交渉を行います。
尾てい骨骨折の後遺症での示談について不安なことや分からないことがある場合は、早めに弁護士へ相談してみましょう。