両親や祖母、祖父の介護をする毎日。介護施設に通っての介護ならまだしも、自宅介護は症状によっては特に負担が多いと思います。
介護自体、肉体的にも、精神的にもキツいものである上、介護をしながら日常の家事や仕事をこなし暮らしていくとなるとさらなる苦痛でしょう。誰かに助けて欲しいと感じるのは当然です。
本記事では、介護に疲れた方に向けて
- 介護疲れの解消法、対処法
- 介護を続けるためのコツ
- 介護者の相続について
の3点についてご紹介します。
介護は一時的なものではなく長旅です。介護を続けるためには、コツをつかむことが必要です。
目次
1、介護に疲れた・・・介護疲れの主な理由5つ
介護疲れが生じる原因は、介護者や被介護者のおかれている環境によってさまざまではありますが、介護疲れ固有の共通する理由はあるものです。
介護疲れの共通しがちな理由を5つ見ていきましょう。
(1)自分のタイミングで生活ができない
まず、自分のタイミングで生活できないということが挙げられます。
寝たきりの被介護者であっても、比較的に元気に動ける被介護者であっても、介護者は被介護者のタイミングに合わせて生活することが余儀なくされます。
食事、入浴、排泄、外出のサポートなど、基本的に被介護者の任意のタイミングで行われるものです。
精神的にも肉体的にも苦痛を感じても不思議はありません。
(2)被介護者と話が通じない
被介護者と話が通じないことでストレスを感じるシーンも多くあるのではないでしょうか。
もしも被介護者が認知症であるならばなおさらです。
認知症でなくても介護が必要な高齢者特有のわがままや、話したことがコロコロ変わることにも嫌になってくることでしょう。
大変なストレスを感じる方は多いはずです。
(3)夜眠れない
夜はまとめて睡眠が取れないケースが多いでしょう。
被介護者に呼び出され、排泄のお世話をしなければならない場合もあると思います。
さらには被介護者に徘徊癖などがあれば、目を離す暇はないでしょう。
また、被介護者がうめき声を発するなどのケースもあるはずです。
睡眠不足は健康を害しますし、疲れが取れずに苦痛を感じます。
以上3つは、乳児の世話と似ています。
育児ノイローゼと共通する状況に置かれているといえるでしょう。
(4)今まで頼ってきた親の老化を受け止められない
これまで頼ってきた親の老化を受け止められないケースもあるかもしれません。
楽しかった母との会話。
自分を叱ってくれた父親の背中。
当時の面影とのギャップに、どうしようもない脱力感を感じてしまうこともあることでしょう。
大好きな親の世話をしているはずなのに苦しい。
そんななんともいえない気持ちが、あなたを苦しめているかもしれません。
(5)被介護者との言い争いに疲れる
被介護者と言い争いになって疲れるケースもあります。
被介護者が、介護してもらう自分を受け入れてない場合があります。
プライド高く生活してきたからこそ、自分の立ち位置が下がってしまうことが怖くて「ありがとう」と素直に言えない状態が続くこともあるでしょう。
介護者も、多くのものを犠牲にして世話をしているからこそ、そんな被介護者の態度はなかなか受け入れがたいかと思います。
相容れない気持ちが混ざり合い、毎日の生活が苦しくなってしまいます。
2、介護に疲れた人の体験談
介護に疲れたと感じている人はたくさんいます。
体験談を2つご紹介しましょう。介護の疲れが壮絶なことがわかります。
(1)母の介護に疲れ切った男性の体験談
50歳代の男性の体験談です。
実親の介護を長年に亘り行いました。
母は認知症で介護施設に入所してもらっていましたが、腸閉塞を何度も患い、その都度夜間でも病院に駆けつけなければいけません。
仕事も継続できず、収入がなくなりました。
それでも高い介護料や入院費用が請求されてしまいます。
最近では、母の介護を巡り介護施設の職員ともトラブルに発展することもあり、介護度が上がったことから介護施設との契約は解除されてしまいました。
毎日父の仏壇のそばで「母を早く引き取ってくれ」と母の死を願うようになっています。
母が生きている限り、精神面も身体面も対人面も経済面も良くなることはありません。
引用:Yahoo!知恵袋
(2)母の介護が辛い独身女性の体験談
40代独身女性が実親の介護をしている体験談です。
精神を患った母親の介護をしていますが、デイサービスや施設を嫌がり、全て1人で介護をしています。
仕事はしていますが、母の年金は受給できないため、お給料は介護などの生活費に全て消えてしまう毎日。
母には味覚障害があり、お昼を作って会社に言行っても「まずい」と言って食べてくれずお惣菜を用意しなければいけません。
病気になり入院してもすぐに退院してきてしまいます。
「退院させなければ恨んでやる」「死ねばいいと思っているんだろう?」などと悪態をつくため口論も絶えません。
買い物に行くことも母はいい気分がしないらしく外出もほぼできない毎日です。
会社の飲み会にも参加できず、外出できるのは年に2〜3回程度。何のために生きているのかがわかりません。
引用:Yahoo!知恵袋
3、介護に疲れた場合の対処法と解消法5つ
では、介護に疲れた場合の対処法を5つご紹介します。できることから始めてみてはいかがでしょうか。
(1)親族に相談する
あなたさえ問題なければ、どうぞ親族に相談してみてください。
介護は1人だけでする必要などないのです。
ただ問題なのは、相談する親族がいない、もしくは、相談する気になれないというケース。
こういうときの相談先は、公的サービスです。
自治体の介護相談窓口である「地域包括支援センター」を活用しましょう。
地域包括支援センターは、よろず介護相談窓口です。
ぜひ相談してみましょう。
(2)高齢者支援サービスを利用する
各種高齢者支援サービスを利用することで介護の疲れは軽減されるはずです。
①介護保険サービス
介護保険サービスとは、介護保険を使った国によるサービスです。
まず介護認定を受けることから始まります。
自治体の介護保険課等の担当課に申請すると、被介護者の状態の確認によって、介護レベルが認定されます。
介護レベルは7段階で、要支援が2段階、要介護が5段階となっています。
各段階によって受けられる支援が異なりますが、通所介護から訪問介護まで、適切な支援を受けられるサービスになっています。
ケアマネージャーという責任者がつき、介護全般を相談することができます。
②その他自治体の高齢者支援サービスの利用
自治体の担当課では独自の高齢者支援サービスを実施しているケースが多いもの。
主に65歳以上の高齢者に対して支援しているケースがたくさんあります。
例えば、愛知県名古屋市では、介護者のためのサロンを開催して意見の交流会などを図り、同じように介護に疲れている人の癒しの場になっています。
また栃木県佐野市では、介護が必要な高齢者に向けて通院時にはリフト付きの送迎車を手配してくれるサービスなどがあります。
それぞれご自身の地域の高齢者支援サービスを受ければ、介護に疲れた状態を軽減できるかもしれません。
③民間の介護保険外サービス
介護保険サービスは国の保険でまかなわれています。
そのため、ある意味サービスとしては「最低限」といえるでしょう。
たとえば、家の掃除をする回数も、介護保険の範囲では週に1回程度ですが、それ以上やって欲しいご家庭もあるかもしれません。
このような時に活用したいのが、民間の介護サービスです。ケアマネージャーに相談すれば、具体的に提案してもらえます
(3)カウンセラーなど専門家に相談する
介護疲れの精神的な苦痛は、カウンセラーへの相談がおすすめです。
病院では介護者のための介護鬱に対するカウンセリングも行っています。
介護疲れが悪化する前に一度専門家へ相談するといいでしょう。
(4)介護施設への入居を検討する
あまりに介護に疲れ果てているなら、介護施設への入居も検討するべきでしょう。
介護者が倒れてしまっては元も子もありません。
なお、介護施設のなかには、血縁以外の方からの入居申請を受け付けていないという施設もありますので、介護施設に一度問い合わせてみてから手続きを行いましょう。
また、介護と仕事の両立が厳しいと感じていても、仕事は続ける方が介護疲れから少しでも解放されます。
介護施設への入居と並行して行えば、自分の時間も少しはできるはず。
その間に無理のない程度に働き、気分転換と経済的な余裕を手に入れることが期待できます。
介護者は常に家にいなければいけないという固定観念はNGです。
(5)介護家族の会への参加
また、もしも被介護者が認知症でお悩みの場合には、「認知症カフェ」や「認知症の人と家族の会」などに出向いて、愚痴を吐き出したり、セミナーを受講したりすることもおすすめ。
「認知症の人と家族の会」は全国47都道府県に支部がありますので、随時相談にも乗ってもらえます。
各自治体でも介護家族の会などを実施しています。
担当課の窓口に問い合わせてみればすぐにわかりますので、チェックしてみてください。
介護疲れは誰にも相談できないことが原因の可能性もあるでしょう。
家族の会や認知症カフェに赴き、同じ境遇の人と共感できればそれだけで救われた気持ちになるものです。
4、介護のコツ!介護に疲れたからと介護のために仕事を辞めるべからず
介護のために仕事を辞める選択をする人は多いですが、ちょっと待ってください。
(1)介護を理由に仕事を辞める理由
介護を理由として仕事を辞める理由は大きくは2つあり、
- 被介護者と一緒に居たいから
- 会社に申し訳ないから
という理由が挙げられます。
前者は、もし経済的な余裕があるのであれば、引き止める理由はありません。
ただし、世にいう「専業主婦のストレス」を覚えるだろうことは覚悟してください。
「他に世界がない」ということは、それ相応のストレスがあるものです。
次に後者、といっても、大抵、前者と後者どちらもあるというケースであると思いますが、後者もある場合は、もう一度考えてみることをお勧めします。
会社、つまり周囲の人に迷惑をかけるという思いから身を引くお考えがあるのであれば、まずは可能な限り、介護と仕事の両立を目指してみてください。
従業員の中に介護者がいたことがない職場では、理解を得ることが難しいということもあるかもしれませんが、高齢化社会へ突入する今、誰もがあなたの立場になり得るのです。
自分の後輩たちのためにも、介護と仕事の両立をなし得る環境の実現を目指すことは、会社にとってもとても大切です。
(2)法定されている介護と仕事の両立支援制度
会社には、介護休暇と介護休業という制度が法律により整っています。
介護休暇とは半日や1日単位で急な介護が必要になった場合に取得できる休暇のこと。
有給休暇とは別に取得できます。
介護休暇は被介護者の直接のお世話だけではなく、オムツの買い物などの用事でも取得が可能。
年に5回まで取得でき、介護者が2人以上いる場合には年に10回取得できると法律で定められています。
対して介護休業とは、負傷や疾病、精神的な病などで取得できる介護のための休暇で93日まで取得が可能です。
年間で93日間取得でき3回まで分割して取得できます(ただし、介護休暇や介護休業は勤務先に1年以上勤務している方が資格対象です。日雇い労働の場合には法律で認められていませんのでご注意ください)。
パート勤務でも介護休業や介護休暇は取得できます。
これらの制度を上手に活用し、どうか仕事と介護の両立を目指してください。
あなたが職場のリーディングケースになることは、会社にとってもメリットです。
ワークライフバランスの必要性もうったえながら、会社との交渉もスマートに。
ぜひこちらの記事もご覧ください。
5、介護に疲れた・・・|介護者の相続とは?
介護に時間をかけて心を尽くしてきたなら被介護者から相続ができるのか?と考えることもあるでしょう。
介護者は被介護者から遺産を相続できるのかをご紹介します。
(1)介護者は介護を理由に多くもらえるの?
介護者は介護を理由に遺産を多く相続することも、場合によっては可能です。
もしも介護者が相続人ならば「寄与分」を主張することで、他の相続人よりも多く相続できることもあるでしょう。
寄与分とは、被相続人の療養看護等により被相続人の財産の維持等について特別の貢献をしたといえる場合に主張できる権利です。
あくまでも、財産の維持等への貢献が必要ですので、例えば本来であれば被相続人の費用で看護者を雇わなければいけなかったところ、相続人の看護のおかげでその支出を免れたといった事情等が必要です。
寄与分を主張できるかどうか、できるとして他の相続人を納得させられるかどうかなど、法的判断や交渉力が重要になりますので、弁護士へ相談してみるといいでしょう。
(2)夫の親の介護をしてきた嫁は相続できるの?
夫の親の介護をしてきたお嫁さんは、その親との関係では相続人ではありません。
しかしながら、相続人ではない場合にでも、2019年7月より金銭請求権が認められるようになりました。
上記のとおり、現行法上では基本的には寄与分を主張できるのは相続人に限られていましたが、例えば被相続人の子の配偶者など、相続人以外の人でも、介護に積極的に取り組み、被相続人の財産維持に貢献するということはあるでしょう。
そのような場合に、相続人でないからと言って何も権利を主張できないのかという点が従前問題視されてきました。
そこで、相続法改正を経て、特別寄与料が新設され、被相続人の相続人ではない親族による金銭請求権が一定の要件のもとで認められました。
この特別寄与料の主張も、やはり法的な判断等が重要になるものですので、思い当たる方は弁護士に相談してみるといいでしょう。
6、介護を巡った職場でのトラブル、相続のトラブルでお困りの際は弁護士へ相談を
介護を巡った介護休業の取得時のトラブルや、特別寄与に関するトラブルでお困りの場合には弁護士に相談してみてください。
経験豊かな弁護士が介護疲れの相談と共に、あなたの介護に対するお悩みや問題を解決してくれることでしょう。
介護に疲れたときに余計なトラブルを抱えては精神的な苦痛がさらに大きくなってしまいます。
1人で解決しようとせずに、弁護士に任せてみてはいかがでしょうか。
まとめ
心を尽くして介護しているわけですから介護に疲れたと感じるのは当然のことです。
罪悪感をもつ必要はありません。
介護に心身ともに疲弊してしまう前に、まずは行政のサービスなどを上手に使っていくといいでしょう。
また、仕事は辞めないほうが、結果的に介護に疲れずに済む可能性が高いといえます。
もしこれまで専業主婦なら、逆に思い切って外に働きに出てもいいでしょう。
そしてもしも介護にまつわるトラブルが起こったなら、迷わずに弁護士に相談しましょう。
あなたの介護疲れが報われて、幸せな生活が訪れることを祈ります。