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寄与分を獲得するために知っておくべき6つのこと

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親の相続にあたって、自分だけは、他の兄弟よりも親孝行をした、親の遺産を増やしたのは、自分の働きが大きいのだ、その努力を遺産相続に反映してほしい。

そのための制度が、「寄与分」です。

今回の記事では、

  • 寄与分とは、どのような場合に認められるのか
  • そもそも寄与分とはどのような内容なのか
  • 寄与分を受け取る手続きは?

などについて、べリーベスト法律事務所の弁護士が、寄与分に関する全てがわかるように解説します

相続関連でお悩みの方のご参考になれば幸いです。

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1、寄与分とは

寄与分とは何でしょうか

「寄与」するとは、役に立つこと、貢献することです。

相続における寄与分制度とは、被相続人(死亡した方)の財産の維持又は増加について特別の貢献(寄与)をした相続人がある場合に、その貢献を相続に反映させることで、相続人間の公平を図るものです。

例を挙げましょう。

父Aが死亡して、子X、Yが残されました。Aの遺産が、預金5,000万円とします。

法定相続分は、子X、Yはそれぞれ2分の1です。したがって、各2,500万円を相続することになります。

しかし、実は、父Aの預金は、その経営する個人商店からの営業収入によるもので、Aは名義上、個人商店の店主であったものの、経営から身をひいてから、既に25年が経過しており、個人商店を事実上経営していたのは、長男Xでした。次男Yは、大学卒業後、すぐにサラリーマンとなって独立し、個人商店の経営にはノータッチでした。

Aの預金5,000万円は、長男Xの貢献によって得た資産です。

この場合、法定相続分どおりの相続を認めることは、実質的には不公平です。

Xの貢献を認めて、Yよりも取り分を多くするべきです。これが寄与分です

2、寄与分が認められるための条件

では、寄与分が認められるには、どのような条件が必要なのでしょうか。

寄与分の条件は、次のとおり定められています(民法904条の2第1項)。

  • (1)相続人による寄与であること
  • (2)被相続人の財産の維持又は増加に寄与したこと
  • (3)特別の寄与といえること
  • (4)被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法による寄与であること

(1)相続人による寄与であること

まず、寄与分を認めてもらえる者(寄与者)は、相続人である必要があります。

 そもそも相続人でない者の貢献は、評価されません。

この点、問題となるのが、被相続人の内縁の妻の貢献、被相続人の兄弟姉妹の貢献、被相続人の子どもの配偶者の貢献です。

例えば、事実上の夫婦が、家業である青果店を二人で長年切り盛りしてきた場合、内縁の妻は、そもそも相続人ではないので、どれだけ財産形成に貢献しても、寄与分は認められません。

また、その青果店を、被相続人と長男夫婦が切り盛りしてきた場合、長男には寄与分が認められても、長男の妻は、そもそも相続人ではないため、寄与分は認められません。

さらに、例えば被相続人に子や孫がいれば、被相続人の兄弟姉妹は、相続人とはなれないので、やはり寄与分は認められません。

寄与分制度は、あくまでも、共同相続人の間の公平を図る制度として作られているため、相続人であることが前提なのです。

 亡くなった方の資産形成に貢献してきた人間は、必ずしも相続人だけとは限りません。

 しかし、そのような貢献者を、広く寄与者に取り込んでしまうと、際限がなくなり、遺産分割紛争を長期化させてしまう危険があります。

 そこで、制度としては、共同相続人であることを要求して割り切っているのです。

ただ、先の長男の妻のような事例では、長男の妻による貢献を、長男の貢献と同一視して、長男の寄与分に反映させてやるべきとされています。

これは、長男の妻を一種の「履行補助者」(仕事の補助をする者。補助者の行為は、仕事をする本人の行為と一体と評価できる)のように評価して救済するという考え方で、実務では定着した処理方法です(東京高裁平成元年12月28日決定等)。

(2)被相続人の財産の維持又は増加に寄与したこと

相続は、故人の遺産という財貨を承継する制度です。

寄与分制度は、その財貨の取り分を決めるための制度ですから、考慮される貢献も、あくまでも財産に関するものだけです。

その者の行為で、故人が如何に精神的に慰められ、肉体的に救われても、財産の維持、増加に関わらない貢献は、ここでは考慮されません。

なお、財産の維持又は増加は、相続開始の時点(被相続人の死亡時)に認められる必要があります。

相続の発生後に、遺産の維持、増加に貢献しても、寄与分は認められません(東京高裁昭和57年3月16日決定)。

但し、共同相続人の一部が、相続発生後に遺産を管理したことによる支出は、遺産の中から回収することが認められています(民法885条1項)。

(3)特別の寄与といえること

貢献は、通常のものではなく、「特別の」ものでなくてはなりません。

「通常」とは、夫婦の協力扶助義務(民法752条)や、親族の扶養義務(民法877条)の範囲内と認められるものを指します。

「特別の」寄与と言えるためには、それらの範囲を超えた顕著な貢献でなくてはなりません。

もっとも、夫婦の協力扶助義務や親族の扶養義務の内容は、その夫婦、親族の個別事情によって千差万別です。

例えば、親族の扶養義務は、当事者間の協議で決まらない時は、扶養される者の需要、扶養する者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が定めるとされており(民法879条)、裁判所の広い裁量に委ねられています。

そして、他方で、寄与分の有無も、後述するように、当事者の協議が整わない場合は、裁判所が「一切の事情を考慮して」定める(民法904条の2第2項)と、やはり裁判所の広い裁量を認めています。

したがって、「特別の」寄与に当たるかどうかは、まさにケース・バイ・ケースとしか言いようがありませんが、一般的な妻の家事労働や家族が病気になった際の看病程度では、これに該当しないことは異論がありません。

(4)被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法による寄与であること

ここでは、寄与の方法として、

  • (1)「被相続人の事業に関する労務の提供」
  • (2)「被相続人の事業に関する財産上の給付」
  • (3)「被相続人の療養看護」
  • (4)「その他の方法」

の4つが規定されています。

しかし、(1)〜(3)は、(4)「その他の方法」の例示に過ぎませんので、結局、貢献はどんな方法でも良いのです。

((1)〜(3)の具体例は、事項で説明します)

以上から、寄与分が認められるには、「相続人が、被相続人の財産を維持・増加させることに、方法の如何を問わず、顕著に貢献した」ことが条件であることがわかります。

3、寄与分が認められる具体的事例

では、寄与分が認められる具体的なケースを見てみましょう。

(1)「被相続人の事業に関する労務の提供」にあたる事例

典型的には、夫婦や親子で、農業や個人商店のような家業を行ってきた場合です。

これは、「家事従事型」の寄与と呼ばれるケースです。

例えば、被相続人Aが死亡し、妻B、子C、子Dが相続人となった場合で、Aは長年、B及びCと農業を営んできたが、Dは大学を卒業後、サラリーマンとなり独立し、農業には関わっていないケースが想定できます。

このケースで例えば、B及びCに寄与分が認められるには、次の①〜④の各諸要素を考慮する必要があります

①家事労働に対する対価支払いの有無

仮に、B、Cが農業労働に対して、賃金の支払いを受けていた場合は、寄与分を認めることは、労働を二重に評価することになり不当です。

したがって、無償での労働か、少なくとも、通常の労働者が受け取るであろう賃金よりも、相当低額の賃金支払しか受けていない場合でなくてはなりません。

②家事労働期間の長短、労力負担の程度

家事従事が、短期間に過ぎないものや、著しく負担が軽いものである場合は、「特別の」貢献と評価することはできません。

したがって、専業として従事していたか、少なくとも、稼働時間の多くの部分を割いていたことが要求されます。

③財産の維持又は増加の有無

先にも説明したとおり、寄与分は、あくまでも資産形成に対する貢献を評価するものであり、財産をプラスとしたか、少なくともマイナスとなることを防いだことが必要です。

④「家事」が個人営業か、法人形式かの問題

もっとも問題になるのが、家業が個人経営ではなく、「会社」という法人形式をとっていた場合です。

例えば、次のようなケースです。

被相続人Aが死亡し、妻B、子C、子Dが相続人となった場合で、Aは、町工場である甲株式会社を創業し、長年、社長として働いてきました。

子Cは、高校卒業後、すぐに甲株式会社の従業員となり、Aと共に働き続けました。

他方、子Dは大学を卒業後、サラリーマンとなり独立し、町工場には関わっていません。

Aが残した遺産は、預金5,000万円と甲株式会社の株式でした。

またAの収入は、甲株式会社からの役員報酬だけでしたので、預金5,000万円は、甲株式会社からの収入で形成されました。

このケースで、子Cの寄与分は認められるのでしょうか。

残念ながら、寄与分は認められない可能性が高いでしょう。

ポイントは2つあります。

第1のポイントは、Cが甲株式会社の従業員として、甲社から、労務の対価として賃金の支払いを受けていることです。

前述のとおり、相応の対価を受けている以上、その労働を相続にあたって評価してやる理由はありません。

もちろん、Cが従業員とは名ばかりで、お小遣い程度の賃金しか受け取っていなかったという場合は別です。

ただ、その場合であっても、家族経営の中小企業では、税務対策上、家族に実労働以上の賃金を支払った形にしている場合がほとんどですから、実際は、小遣い程度しか払っていなかったとしても、帳簿上、あるいは申告書上の金額と実際の賃金が異なることを裁判所で立証することはかなり難しいことです。

仮に、Cが無償か、低額の対価しか受けていなかった場合でも、第2のポイントが障害となります。

第2のポイントは、Aの預金5,000万円は、甲株式会社という法人からの収入である点、さらにCの労務提供は、甲株式会社という法人に対してなされているという点です。

個人営業の工場であれば、工場の資産は、そのままイコールAの資産です。

Cが努力して工場の収入が増加した場合、それは、CがAの財産を増やしたとストレートに評価できます。

しかし、間に甲株式会社という法人が介在する場合、Aの資産を増やしたのは甲社であり、Cが努力して増やしたのは、甲社の資産です。

法的には、会社という法人は、あくまでも個人とは別個の独立した人格だからです。

つまり、AとCの間には、甲という第三者が存在していることになるのです。

このため、Cが、Aの財産を増加・維持したという関係にあると言えないのです。

実際、東京家庭裁判所の審判例(平成21年1月30日東京家裁審判)は以下の通り判断しています。

被相続人A、相続人は妻B、長男C、次男D。被相続人Aは、不動産賃貸業である甲株式会社を経営

同社の経営は、昭和47年から平成3年までは、妻Aが担当し、平成4年以後は、次男Dが担当した

B及びDが、寄与分を主張して、長男Cを相手方として、家庭裁判所に審判を申し立てた(事案の一部を抜粋しています)

このケースで、東京家裁は、Aが得ていた役員報酬は、甲社から給付されていたものであって、BやDが実質的な経営者であったとしても、BやDから支給されたものではないことが明らかであるという理由で、いずれにも寄与分を認めませんでした

このケースでは、甲株式会社の規模、営業実態など詳細が不明です。

仮に、甲社の株式の全部をAが所有している一人会社であり、実際に働いていたのは、B及びDだけで、両名が経営者兼従業員だったという名目だけが法人である事案であったとしたら、たとえ法人形式が介在していても、Aの財産を増やしたのは、BとDの貢献であると評価するほうが実態に適合します。

逆に、BとDが実質的な経営者であったとしても、甲社の株主がAの他にも存在し、従業員も数多く在籍しているような場合は、甲社を通じて得たAの財産は、他の株主の出資や他の従業員の労働の成果とも言えるので、B、Dだけの貢献と評価することは困難でしょう。

この点に関連して、被相続人の経営する会社に対する寄与には、原則として寄与分は認められないとしつつも、小規模零細会社においては、会社に対する相続人の貢献が、会社を通じての被相続人の財産増加に直結していると言える場合があるとし、寄与分を認めた審判例(平成3年11月19日高松家丸亀支部審判・家裁月報44巻8号40頁)があります。以下の通りです。

被相続人Aは、昭和28年、有限会社たる運送会社を設立し経営していた。

相続人は、子供4人(B、C、D、E)。B以外のC、D、Eは、昭和40年ころから昭和57年まで、無償ないし低賃金で運送会社を手伝っていた。

遺産である約9,600万円は、C、D、Eが働いていた期間に増加した財産であり、かつ、その期間は、Aが50歳代後半から80歳という老年にかかる期間だった。

ここから、C、D、Eの貢献を相当顕著であったと認定し、9,600万円の35%はCの寄与分、10%はDの寄与分、20%はEの寄与分とした(つまり、9,600万円の65%を3人の寄与分としている)。

(2)「被相続人の事業に関する財産上の給付」にあたる事例

被相続人が個人営業の店鋪を出店する際に、その開業資金を出してやったなどが典型的で、「金銭等出資型」の寄与と呼ばれるケースです。

このケースでは、通常は、寄与者の支出が明確であり、遺産の増加、維持に役立っていれば、寄与分を認めることに、ほとんど問題はありません。

ただし、単なる金銭貸付であれば、貸し付けた相続人は、債権としての返還請求権を有していますから、相続財産の中から、返済を受けることができますので、あえて寄与分主張をする実益は乏しくなります。

金銭支出の事実ははっきりしているが、貸金なのか出資だったのかが、今ではわからなくなってしまったというケースであれば、寄与分を主張する実益があります。

また、ここでも「被相続人の事業」が、会社形式であった場合には、財産上の給付の相手方は、あくまでも会社であり、被相続人ではないので、寄与分を認めることが困難となることは、先ほどの「家事従事型(3(1)「被相続人の事業に関する労務の提供」にあたる事例)」と同様の難しさがあります。

なお、先にも説明したとおり、「(被相続人の事業に関する)財産上の給付」とは、貢献方法の例示に過ぎませんので、財産上の給付は、被相続人の「事業」に関するものである必要はありません。

例えば、被相続人の自宅購入資金を出した場合でも、寄与分は認められます。

(3)「被相続人の療養看護」

「療養看護」は、病気である被相続人の世話をすることですが、それによる財産が増加することはありませんので、財産の維持すなわち、第三者に療養看護を委ねることで、その人件費分が流出するという事態を免れた場合だけが対象となります。

介護事例が増加した昨今では、一番、問題となりうる型です。

ここで考慮される要素は、次のとおりです。

①療養看護の必要性

これは、被相続人が、療養看護を担当する第三者を有料で雇用しなくてはならない健康状態かどうかという問題です。

そのような必要性までは認められないのに、被相続人の便宜のために付き添い看護したという場合は、財産の増加、維持に貢献してないので、寄与分は否定されます。

②療養看護の対価の有無

これは家業従事型の場合と同じく、相応の対価を得ていたならば、二重に評価するべきではありません。

また、その場合は、そもそも財産の流出を免れたと評価できないでしょう。

したがって、無償か、少なくとも療養看護者を雇用した場合よりも相当に低額の対価しか得ていないことが必要です。

③療養看護の内容及び期間

例えば、有料の付添人が不在となる短期間だけ、代わりに家族が付き添ったという場合は、夫婦や親族の扶助義務の範囲内と評価されるべきであって、「特別の」寄与とは言えません。

④「その他の方法」

貢献は、どのような方法によっても良く、要は、被相続人の財産を増加、維持することに、特別に貢献したかどうかがポイントです。

上記の方法以外にも、「扶養型の寄与分」、「財産管理型の寄与分」と称されるものがあります。

ただ、これらは説明の便宜上、そのような名称で分類されているだけであって、法律上は区別されているわけではないことに注意してください。

「扶養型の寄与分」とは、被相続人を養ったことで、被相続人が生活費を支出しなくて済み、財産の流出を免れた場合のことです。

このケースのポイントは、それが「特別の」貢献か否かです。

夫が妻を養うことは、夫婦の扶助義務の範囲内ですので、寄与分は否定されます。親族の場合も、通常は、扶養義務の範囲と評価されるでしょう。

子どもが、親の面倒をみる場合も同様です。

ただ、例えば、4人の子どものうち、1人だけが親の生活費を出していたというような場合は、相続人間の公平を図るという寄与分制度の趣旨から、特別の貢献が認められる場合があります。

「財産管理型の寄与分」とは、被相続人の財産を管理して、増加、維持させたケースです。

実際に生じるのは、被相続人の不動産を賃貸したり売却したりする役目を担って、資産を増加させた場合で、「家事従事型」とは、家業であるかどうかが違うだけと言っても良いでしょう。

当然、相応の対価を得ていた場合は、寄与分は否定されます。

4、寄与分の計算方法

寄与分が認められる場合に、具体的に、どのような結論となるかを説明します。

それには、「寄与分の算出」と「具体的な相続分の算出」の2段階を理解する必要があります。

寄与分の算出とは、寄与分が認められる場合に、それを幾らと評価するかの問題です。

具体的な相続分の算出とは、算出された寄与分を前提に、どのように相続額を算出するかの問題です。

(1)具体的な相続分の算出

説明の便宜のために、まず、「具体的な相続分の算出」の方から説明します。

遺産から寄与分を差し引いた残りを相続財産とみなし、これに法定相続分を適用して遺産を分け、寄与者には寄与分を加算した財産を相続させます(民法904条の2第1項)

冒頭の例をもう一度あげます。

父Aが死亡して、子X、Yが残されました。Aの遺産が、預金5,000万円とします。法定相続分は、子X、Yはそれぞれ2分の1です。

したがって、各2,500万円を相続することになります。

しかし、実は、父Aの預金は、その経営する個人商店からの営業収入によるもので、Aは名義上、個人商店の店主であったものの、経営から身をひいてから、既に25年が経過しており、個人商店を事実上経営していたのは、長男Xでした。次男Yは、大学卒業後、すぐにサラリーマンとなって独立し、個人商店の経営にはノータッチでした。

Aの預金5,000万円は、長男Xの貢献によって得た資産です。

仮に、この場合の長男Xの寄与分を、3,000万円としましょう。

次の計算となります。

遺産5,000万円−寄与分3,000万円=残2,000万円

この2,000万円を相続財産とみなします。

これを「みなし相続財産」(※)と言います。

みなし相続財産を、法定相続分で分けます。

法定相続分は、XYともに2分の1です。

寄与者Xの相続分は、これに寄与分を加えた額です。

Xの相続分 2,000万円☓2分の1+3,000万円=4,000万円

Yの相続分 2,000万円☓2分の1=1,000万円

このように、寄与分がある場合の具体的な相続分の計算は、機械的にできるもので、難しいものではありません。

※「みなし相続財産」は、特別受益があるケースにも用いられます。

例えば、相続人の中に、被相続人から生前贈与を受けていた者がいた場合は、その贈与を受けた財産の価額を、遺産に加えた総額を相続財産とみなします。

その上で、各人の法定相続分に応じて具体的な相続分を計算します。

つまり、寄与分における「みなし相続財産」は、遺産から寄与分を差し引くのに対し、これとは逆に、特別受益の場合は、遺産に特別受益を加えるのです。

(2)寄与分の算出

次に、「寄与分の算出」です。

こちらは、非常に難しい問題です。

先にも説明しましたとおり、民法では、「裁判所が、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める(民法904条の2第2項)」と規定しているだけです。

つまり、法律上は、寄与分を算出する基準はありません。

裁判官の広範な裁量に委ねられています。

しかし、裁量と言っても、不合理な判定は許されません。

そこで、実務上は、いくつかの考え方が提案され、審判例に採用されています。

ただし、基本はケース・バイ・ケースですので、以下に説明する考え方も、目安のひとつ程度に理解する必要があります。

①家事従事型

被相続人Aの個人商店を、同居の長男Xが、10年間、専業で手伝っていた。

同種の個人商店の場合、通常の給与は、月額20万円(年収240万円)。

なお、Xは、無給であったが、毎月5万円(年額60万円)の小遣いをもらっていた。

(240万円−60万円)☓10年間=1800万円

通常の給与(通常得られたであろう給付の額)は、賃金センサス等の各種統計資料を参考にします。

ここでは小遣い額を控除していますが、仮に全くの無償であった場合でも、同居して光熱費、食費、住居費などをAが負担していたとしたら、その分は、支給されていたものと同じことです。

したがって、その実費が判明する場合は、それを控除することになります。

実費が不明の場合でも、裁量により何割かを控除される場合があります。

②金銭等出資型

被相続人Aが、個人商店を開業する際に、妻Xは、店鋪(建物)購入費用の一部1,000万円を負担した。

寄与分は、支出額1,000万円です(但し、支出から長期間を経ている時は、貨幣価値の変動を考慮する場合があります)。

上のケースで、妻Xは、現金ではなく、店鋪用土地建物をAに贈与した。

寄与分は、土地建物の時価(相続開始時の時価)です。

③療養看護型

寄与分は、療養看護を行う第三者を有償で雇用した場合の報酬相当額(日額☓日数)です。

報酬相当額は、介護保険における介護報酬基準などを参考とします。

④扶養型

寄与分は、扶養のために実際に負担した金額です。

どのような形態で負担したかによって多様です。

生活費として金銭を送金していた場合は単純明快ですが、同居して扶養していた場合、扶養のための支出と相続人自身の生活費を区別することは実際上困難です。

そのような場合は、各種統計を参考として、被相続人の生活に必要な金額を算出します。

⑤財産管理型

財産管理する第三者を、有償で雇用又は委託した場合の報酬相当額です。

例えば、不動産業者、弁護士、司法書士などを雇用した場合の報酬額は標準額を知ることは容易ですので、この型は問題が少ないといえます。

なお、以上は、寄与分を金額で算出する場合ですが、これとは異なり、遺産の全体に対する割合で寄与分を評価する場合もあります(前出の平成3年11月19日高松家丸亀支部審判を御参照)。

これは、裁判所が「一切の事情」を考慮して、公平の見地から裁量により定めるものです。

貢献を数字の積み上げで計算できないけれども、財産の増加、維持に貢献している事実は明らかであるという場合の最後の手段とも言えますし、裁量によって、相続人間の利益の微調整を図る技術ともなり得ます。

5、より多くの寄与分を獲得するためのポイント

寄与分を認めてもらうために必要なものは証拠です。

話だけでは、他の相続人に否定されてしまえば、裁判所は、寄与分を認めることはできません。

特に、寄与分は、被相続人の財産を増加、維持したことを評価してもらう制度ですから、どのように資産が増加し、維持されたのか、その数字がわかる資料が最も重要です。

家業従事型では、その労務の実態がわかる資料(日報、日記)に加えて、被相続人の資産がどのように推移したのかを示す資料(帳簿、申告書、過去の預貯金通帳など)も必要です。

金銭等出資型では、支出の時期と内容を示す資料(借用証、領収書、振込明細書、帳簿等)とその支出が被相続人の資産の増加、維持に役立ったことを示す資料(通常は、被相続人の資産の推移を表す経年資料で足りるでしょう)が必要です。

療養看護型では、被相続人の健康状態がわかるもの(カルテ、診療記録)、看護の経過、実態がわかるもの(看護記録、日記など)が必要です。

相続人が本来の仕事を欠勤して療養看護に務めたのであれば、その欠勤の記録も必要です。

扶養型では、扶養のための支出の時期と内容がわかるもの(家計簿、日記等)が必要です。

財産管理型では、管理内容とその結果がわかる資料(賃貸借契約書や売買契約書)で十分でしょう。

以上の各資料は、証拠の一例ですので必須ではありません。

しかし、これらの資料がない場合には、他の代替証拠で、寄与の事実を裏付けることができないかを検討する必要があります。

6、寄与分を獲得するための流れ

寄与分は、共同相続人たる当事者の協議で定めるものです(民法904条の2第1項)。

これには、2種類の方法があります。

  • 【1】当事者の任意の話し合いで定める方法
  • 【2】裁判所の調停を利用して、裁判所の調停委員を仲介役として、当事者が協議して定める方法

【2】を「寄与分を定める処分調停」といいます(家事事件手続法244条)。

これは、共同相続人であれば、誰でも、申し立てることができます。

さて、任意の話し合いや調停で話がまとまらなかった場合や、そもそも協議ができない場合は、裁判所に寄与分を決めてもらうことになります。

これが、「寄与分を定める処分審判」です(民法904条の2第2項、家事事件手続法39条、別表第二第14の項)

この審判の申立ては、寄与分を主張する者だけができます(民法904条の2第2項)。

また、この申立てと同時に、裁判所に対して、遺産分割審判の申立ても行うか、又は既に、遺産分割審判の申立がなされていることが必要です(民法第904条の2第4項、同907条2項)。

先に説明したように、寄与分が認められた場合、遺産からその金額を差し引いた残りが、相続財産とみなされて、それを法定相続分で分割することになります。

したがって、寄与分の有無及び内容が決まらなければ、遺産分割ができないのであって、寄与分の確定は、必ず遺産分割に先行する必要があります。

このため、寄与分を定める処分審判は、それだけを申し立てることはできず(これだけを申立てしても不適法なので、却下されます)、遺産分割審判と同時に申し立てるか、既に遺産分割審判が申し立てられている場合に限られるのです。

この場合の管轄は、既に遺産分割審判が係属している場合は、その家庭裁判所となります。同時に遺産分割審判も申し立てる場合は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所となります(家事事件手続法191条)。

なお、先に説明したとおり、寄与分の問題は、遺産分割の前提問題であることから、遺産分割審判が係属して進行中に、誰かが寄与分を主張した場合は、寄与分を定める処分審判が申し立てられないと、寄与分の判断ができないため、遺産分割手続きがストップしたままになってしまいます。

ところが、寄与分に関する審判を申立てできるのは、寄与分を主張する者だけなので、その者が審判申立てをしない限り、手続きは進行しません。

それでは、何らかの事情で、遺産分割を進行させたくない者は、根拠がなくとも、寄与分の主張だけしておいて、審判申立てをせず、遺産分割を頓挫させてしまうという嫌がらせが可能となってしまいます。

そこで、このような事態を避けるため、裁判所は、一ヶ月を下らない期間を定めて、その期間内に寄与分の審判申立てを行うよう命ずることができ、期間経過後に寄与分の審判申立てがなされても却下することができるとされています(家事事件手続法193条1項、2項)。

裁判所が期間を定めなかった場合でも、時期に遅れて寄与分の審判申立てを行った場合は、これを却下することができます(同法同条3項)。

つまり、寄与分の主張をする場合は、事実上、ぐずぐずしてはいられないということです。

遺産分割協議が始まる前に、寄与分主張に必要な証拠資料は押さえておく必要が高いのです。

(1)追加その1

なお、寄与分と遺留分の関係について、簡潔に説明しておきます。

例をあげます。

被相続人A 相続人は、子B、C、D。遺産は、現金6,000万円

B、C、Dは、それぞれ6分の1、すなわち各1,000万円の遺留分を持ちます

このケースで、Bの寄与分が、4,000万円と評価されたとします

みなし相続財産は、6,000万円−4,000万円=2,000万円です

法定相続分は、各3分の1ですから、次のとおりとなります

B 2,000万円☓3分の1+4,000万円=4,666万円

C 2,000万円☓3分の1=666万円

D 2,000万円☓3分の1=666万円

このように、CとDは、寄与分によって、遺留分で保証された金額を割り込んだ金額となります

しかし、遺留分減殺請求の対象は、遺贈と贈与だけで、寄与分は含まれません(民法1031条)

よって、CとDは、Bに対して、遺留分を侵害するから寄与分を減らすように主張することはできません(東京高裁平成3年12月24日決定)

では、上のケースで、Bが、Aから4,000万円の生前贈与を受けていたため、CとDから、遺留分減殺請求を受けた場合に、Bは、自分は4,000万円相当の寄与分があるのだと主張して、減殺請求に抗弁することは可能でしょうか。

これは認められません(東京高裁平成3年7月30日決定)。

寄与分は、当事者の協議か、裁判所の審判によって初めて定まるものだからです。

したがって、Bは、減殺請求を受け入れざるを得ません。

その結果、生前贈与の効力は、遺留分を侵害した限度で否定されます。

Bとしては、裁判所に寄与分の審判を求めることで対抗することになります。

(2)追加その2

寄与分が認められた場合の相続税について説明しておきます。

前述のとおり、寄与分は、遺産から控除したうえで、みなし相続財産としますが、これは具体的な相続分を計算するための処理に過ぎず、最終的に、寄与者は、みなし相続財産に自己の法定相続分率を乗じた財産に、寄与分を加えたものを、相続財産として相続するのです。

言い換えれば、寄与分制度は、相続する財産の分配方法を定めただけの制度ですから、寄与分も遺産であることには変わりがないのです

したがって、承継した遺産の一部が寄与分であるか否かは、相続税には、何の影響もありません。

まとめ

寄与分について説明しました。

相続争いは避けたいものですが、あなたの正当な努力が公平に評価されないのであれば、それは故人の意思にも沿わない結果となるのではないでしょうか。

寄与分は、遺産相続の結果を正しい方向に導くための手続と捉えるべきです。

今回の内容が、相続問題において、あなたに満足のゆく結果をもたらすことに繋がれば嬉しく思います。

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