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寄与分とは|被相続人に貢献した人が遺産をもらうためのポイント

寄与分

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして、相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、共同相続人間の公平を図る制度です。

例えば、父Aが死亡して、子X、Yが残されたとしましょう。
子X、Yの法定相続分はそれぞれ2分の1ですから、本来は半分ずつの遺産を相続するはずです。

しかし、実は、遺産である父Aの預金は、Xが経営する個人商店からの営業収入によるものだったとします。Aは経営から身をひいてから既に25年が経過しており、個人商店を事実上経営していたのは長男Xでした。

次男Yは、大学卒業後、すぐにサラリーマンとなって独立し、個人商店の経営にはノータッチでした。Aの預金は、長男Xの貢献によって得た資産といえる可能性があります。

このような場合にXの貢献を認めて、Yよりも取り分を多く認める制度が「寄与分」です。

ただし、寄与分が認められるためにはいくつかの条件があります。
また、何が寄与分として認められるかについても、上記の例以外に様々なケースがあります。

そこで今回は、

  • 寄与分とは何か
  • 寄与分としてどのくらい多く遺産をもらえるのか
  • 寄与分をもらうためにはどのような対応をするのか

などを中心に、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、寄与分に関して解説します。

相続に関することでお悩みの方のご参考になれば幸いです。

遺産分割協議の進め方について、知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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1、寄与分とは

寄与分とは

一般的に「寄与」するとは、役に立つこと、貢献することです。

相続における寄与分制度とは、被相続人(死亡した方)の財産の維持又は増加について特別の貢献(寄与)をした相続人がある場合に、その貢献を相続に反映させることで、相続人間の公平を図るものです。

寄与分が認められる相続人は、他の相続人よりも多くの遺産を相続することができます。

2、寄与分が認められるための条件

寄与分が認められるための条件

では、寄与分が認められるには、どのような条件が必要なのでしょうか。

寄与分の条件は、次のとおり定められています(民法904条の2第1項)。

  1. 相続人による寄与であること
  2. 被相続人の「財産」の維持又は増加に寄与したこと
  3. 「特別の寄与」といえること
  4. 寄与行為と被相続人の財産の維持または増加との間に因果関係があること

以上のうち、ここでは1.〜3.の条件について詳しくご説明します。

(1)相続人による寄与であること

まず、寄与分を認めてもらえる者(寄与者)は、相続人である必要があります。
 そもそも相続人でない者の貢献は、評価されません。

この点、問題となるのが、被相続人の内縁の妻の貢献、被相続人の兄弟姉妹の貢献、被相続人の子どもの配偶者の貢献です。
これらの人たちは相続人ではないので、どれだけ財産形成に貢献しても、寄与分は認められません。

ただし、例えば長男の嫁(被相続人の子どもの配偶者)の貢献については、相続人である長男の貢献と同一視して長年の寄与分に反映させる可能性もあります。
また、後記「6」でご説明する「特別の寄与料」として子どもの配偶者の貢献が評価される場合もあります。

(2)被相続人の「財産」の維持又は増加に寄与したこと

相続は、故人の遺産という「財貨」を承継する制度です。

寄与分制度は、その財貨の取り分を決めるための制度ですから、考慮される貢献も、あくまでも「財産」に関するものだけです。その者の行為で、故人が如何に精神的に慰められ、肉体的に救われても、財産の維持、増加に関わらない貢献は、ここでは考慮されません。

なお、財産の維持又は増加は、相続開始の時点(被相続人の死亡時)に認められる必要があります。寄与分の評価時点は、相続開始の時点を評価時点とします。相続の発生後に、遺産の維持、増加に貢献しても、寄与分は認められません(東京高裁昭和57年3月16日決定)。

なお、相続財産に関する費用はその財産から支弁することも許されます(民法885条本文)。

(3)「特別の寄与」といえること

貢献は、通常のものではなく、「特別の」ものでなくてはなりません。

「通常」とは、一般的に夫婦の協力扶助義務(民法752条)や、親族の扶養義務(民法877条)の範囲内と認められるものを指します。

「特別の」寄与と言えるためには、それらの範囲を超えた顕著な貢献でなくてはなりません。

もっとも、夫婦の協力扶助義務や親族の扶養義務の内容は、その夫婦、親族の個別事情によって千差万別です。

例えば、親族の扶養義務は、当事者間の協議で決まらない時は、扶養される者の需要、扶養する者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が定めるとされており(民法879条)、裁判所の広い裁量に委ねられています。

そして、他方で、寄与分の有無も、後述するように、当事者の協議が整わない場合は、裁判所が「一切の事情を考慮して」定める(民法904条の2第2項)と、やはり裁判所の広い裁量を認めています。

したがって、「特別の」寄与に当たるかどうかは、まさにケース・バイ・ケースとしか言いようがありませんが、一般的な妻の家事労働や家族が病気になった際の看病程度では、これに該当しないことは異論がありません。

3、寄与分に当たるもの

寄与分に当たるもの

寄与分として認められる具体的な行為は、次の5つに分類されます。

  1. 家事従事型
  2. 金銭等出資型
  3. 療養看護型
  4. 扶養型
  5. 財産管理型

以下、それぞれについてご説明します。

(1)家事従事型

典型的には、夫婦や親子で、農業、林業、漁業の個人商店のような家業を行ってきた場合です。
例えば、被相続人Aが死亡し、妻B、子C、子Dが相続人となった場合で、Aは長年、B及びCと農業を営んできたが、Dは大学を卒業後、サラリーマンとなり独立し、農業には関わっていないケースが想定できます。

このケースで例えば、B及びCに寄与分が認められるには、次の①〜④の各諸要素を考慮する必要があります。

①家事労働に対する対価支払いの有無

仮に、B、Cが農業労働に対して、賃金の支払いを受けていた場合は、寄与分を認めることは、労働を二重に評価することになり不当です。
したがって、無償での労働か、少なくとも、通常の労働者が受け取るであろう賃金よりも、著しく低額の賃金支払しか受けていない場合でなくてはなりません。

②家事労働期間の長短、労力負担の程度

家事従事が、短期間に過ぎないものや、著しく負担が軽いものである場合は、「特別の」貢献と評価することはできません。
したがって、専業として従事していたか、少なくとも、稼働時間の多くの部分を割いていたことが要求されます。

③財産の維持又は増加の有無

先にも説明したとおり、寄与分は、あくまでも資産形成に対する貢献を評価するものであり、財産をプラスとしたか、少なくともマイナスとなることを防いだことが必要です。

④「家事」が個人営業か、法人形式かの問題

もっとも問題になるのが、家業が個人経営ではなく、「会社」という法人形式をとっていた場合です。
例えば、次のようなケースです。

被相続人Aが死亡し、妻B、子C、子Dが相続人となった場合で、Aは、町工場である甲株式会社を創業し、長年、社長として働いてきました。

子Cは、高校卒業後、すぐに甲株式会社の従業員となり、Aと共に働き続けました。
他方、子Dは大学を卒業後、サラリーマンとなり独立し、甲株式会社には関わっていません。
Aが残した遺産は、預金5000万円と甲株式会社の株式でした。
またAの収入は、甲株式会社からの役員報酬だけでしたので、預金5000万円は、甲株式会社からの収入で形成されました。
このケースで、子Cの寄与分は認められるのでしょうか。

残念ながら、寄与分は認められない可能性が高いでしょう。

ポイントは2つあります。
第1のポイントは、Cが甲株式会社の従業員として、甲社から、労務の対価として賃金の支払いを受けていることです。

前述のとおり、相応の対価を受けている以上、その労働を相続にあたって評価してやる理由はありません。
もちろん、Cが従業員とは名ばかりで、お小遣い程度の賃金しか受け取っていなかったという場合は別です。

ただ、その場合であっても、家族経営の中小企業では、税務対策上、家族に実労働以上の賃金を支払った形にしている場合がほとんどですから、実際は、小遣い程度しか払っていなかったとしても、帳簿上、あるいは申告書上の金額と実際の賃金が異なることを裁判所で立証することはかなり難しいことです。

仮に、Cが無償か、低額の対価しか受けていなかった場合でも、第2のポイントが障害となります。

第2のポイントは、Aの預金5000万円は、甲株式会社という法人からの収入である点、さらにCの労務提供は、甲株式会社という法人に対してなされているという点です。
個人営業の工場であれば、工場の資産は、そのままイコールAの資産とも考えられます。
Cが努力して工場の収入が増加した場合、それは、CがAの財産を増やしたとストレートに評価できます。
しかし、間に甲株式会社という法人が介在する場合、Aの資産を増やしたのは甲社であり、Cが努力して増やしたのは、甲社の資産です。

法的には、会社という法人は、あくまでも個人とは別個の独立した人格だからです。
つまり、AとCの間には、甲という第三者が存在しており、「被相続人の事業に関する労務の提供」には当たらず、また被相続人の財産の維持または増加との因果関係も認められス、原則として、寄与分は認められないのです。

実際、東京家庭裁判所の審判例(平成21年1月30日東京家裁審判)は、以下の通り判断しています。
被相続人A、相続人は妻B、長男C、次男D。被相続人Aは、不動産賃貸業である甲株式会社を経営。

同社の経営は、昭和47年から平成3年までは、妻Aが担当し、平成4年以後は、次男Dが担当した。

B及びDが、寄与分を主張して、長男Cを相手方として、家庭裁判所に審判を申し立てた(事案の一部を抜粋しています)。

このケースで、東京家裁は、Aが得ていた役員報酬は、甲社から給付されていたものであって、BやDが実質的な経営者であったとしても、BやDから支給されたものではないことが明らかであるという理由で、いずれにも寄与分を認めませんでした。

このケースでは、甲株式会社の規模、営業実態など詳細が不明です。

仮に、甲社の株式の全部をAが所有している一人会社であり、実際に働いていたのは、B及びDだけで、両名が経営者兼従業員だったという名目だけが法人である事案であったとしたら、たとえ法人形式が介在していても、Aの財産を増やしたのは、BとDの貢献であると評価するほうが実態に適合します。

逆に、BとDが実質的な経営者であったとしても、甲社の株主がAの他にも存在し、従業員も数多く在籍しているような場合は、甲社を通じて得たAの財産は、他の株主の出資や他の従業員の労働の成果とも言えるので、B、Dだけの貢献と評価することは困難でしょう。

この点に関連して、被相続人の経営する会社に対する寄与には、原則として寄与分は認められないとしつつも、小規模零細会社においては、会社に対する相続人の貢献が、会社を通じての被相続人の財産増加に直結していると言える場合があるとし、寄与分を認めた審判例(平成3年11月19日高松家丸亀支部審判・家裁月報44巻8号40頁)があります。以下の通りです。

被相続人Aは、昭和28年、有限会社たる運送会社を設立し経営していた。

相続人は、子供4人(B、C、D、E)。
B以外のC、D、Eは、昭和40年ころから昭和57年まで、無償ないし低賃金で運送会社を手伝っていた。

遺産である約9600万円は、C、D、Eが働いていた期間に増加した財産であり、かつ、その期間は、Aが50歳代後半から80歳という老年にかかる期間だった。

ここから、C、D、Eの貢献を相当顕著であったと認定し、09600万円の35%はCの寄与分、10%はDの寄与分、20%はEの寄与分とした(つまり、9600万円の65%を3人の寄与分としている)。

(2)金銭等出資型

被相続人が個人営業の店鋪を出店する際に、その開業資金を出してやった場合などが金銭等出資型の典型的なケースです。

このケースでは、通常は、寄与者の支出が明確であり、遺産の増加、維持に役立っていれば、寄与分を認めることに、ほとんど問題はありません。

ただし、単なる金銭貸付であれば、貸し付けた相続人は、債権としての返還請求権を有していますから、相続財産の中から、返済を受けることができますので、あえて寄与分主張をする実益は乏しくなります。

金銭支出の事実ははっきりしているが、貸金なのか出資だったのかが、今ではわからなくなってしまったというケースであれば、寄与分を主張する実益があります。

また、ここでも「被相続人の事業」が、会社形式であった場合には、財産上の給付の相手方は、あくまでも会社であり、被相続人ではないので、寄与分を認めることが困難となることは、先ほどの「家事従事型(3—(1)「被相続人の事業に関する労務の提供」にあたる事例)」と同様の難しさがあります。

なお、先にも説明したとおり、「(被相続人の事業に関する)財産上の給付」とは、貢献方法の例示に過ぎませんので、財産上の給付は、被相続人の「事業」に関するものである必要はありません。

例えば、被相続人名義で不動産を取得する購入資金を出した場合、その提供した金銭(又は不動産そのもの)について、財産給付の内容が被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えている場合には、寄与分が認められる可能性があります。

金銭等出資型の寄与分の評価方法は、給付した財産の相続開始時における価格を寄与分算定の基準とし、それに裁量割合を乗じて計算するのが一般的です。

(3)療養看護型

「療養看護」は、病気である被相続人の世話をすることですが、それによる財産が増加することはありませんので、財産の維持すなわち、第三者に療養看護を委ねることで、その人件費分が流出するという事態を免れた場合だけが対象となるでしょう。

介護事例が増加した昨今では、一番、問題となりうる類型です。
ここで考慮される要素は、次のとおりです。

①療養看護の必要性

被相続人が、「療養介護を必要とする健康状態であったこと」と「近親者による療養介護を必要としていたこと」の双方を満たす必要があります。病状が重篤であっても、完全介護の病院に入院しているような場合には、原則として寄与分は認められません。

療養監護の必要性までは認められないのに、被相続人の便宜のために付き添い看護したという場合は、財産の増加、維持に貢献してないので、寄与分は否定されます。

②無償性

これは家業従事型の場合と同じく、相応の対価を得ていたならば、二重に評価するべきではありません。
また、その場合は、そもそも財産の流出を免れたと評価できないでしょう。
したがって、無償か、少なくとも療養看護者を雇用した場合よりも相当に低額の対価しか得ていないことが必要です。

③療養看護の内容及び期間

例えば、有料の付添人が不在となる短期間だけ、代わりに家族が付き添ったという場合は、夫婦や親族の扶助義務の範囲内と評価されるべきであって、「特別の」寄与とは言えません。
療養監護が相当期間に及んでいることが必要です。

④介護費用の出費免除

相続財産の維持に寄与したことが必要なので、寄与者の療養監護により、職業看護人に支払う報酬などの監護費用の出費を免れたという結果が必要です。

相続人の看病で精神的な安心を与えたという程度では足りません。

⑤その他

その他、被相続人との身分関係、療養監護を行うに至った経緯、看護の内容、専従性、継続性、非相続人との同居の有無、生活費の負担状況、被相続人の要介護認定の内容等について総合的に判断する必要があります。

(4)扶養型

「扶養型の寄与分」とは、被相続人を養ったことで、被相続人が生活費を支出しなくて済み、財産の流出を免れた場合のことです。
このケースのポイントは、それが被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える「特別の」寄与か否かです。

たとえば、夫が妻を養うことは、夫婦の扶助義務の範囲内ですので、寄与分は否定されます。
親族の場合も、通常は、扶養義務の範囲と評価されるでしょう。

子どもが、親の面倒をみる場合も同様です。
ただ、例えば、4人の子どものうち、1人だけが親の生活費(扶養料)を出していたというような場合は、相続人間の公平を図るという寄与分制度の趣旨から、特別の寄与が認められる場合があります。

(5)財産管理型

「財産管理型の寄与分」とは、被相続人の財産を管理して、増加、維持させたケースです。
たとえば、被相続人の賃貸不動産の管理をすることで管理費用の支払いを免れた場合などです。
当然、相応の対価を得ていた場合は、寄与分は否定されます。

4、寄与分の計算方法

寄与分の計算方法

寄与分が認められる場合に、具体的に、どのような結論となるかを説明します。
それには、

  • 寄与分そのものの算出
  • 寄与分を考慮した相続分の算出

の2段階を理解する必要があります。

寄与分そのものの算出とは、寄与分が認められる場合に、それを幾らと評価するかの問題です。
寄与分を考慮した相続分の算出とは、算出された寄与分を前提に、どのように相続額を算出するかの問題です。

(1)寄与分を考慮した相続分の算出

説明の便宜のために、まず、「寄与分を考慮した相続分の算出」の方から説明します。

遺産から寄与分を差し引いた残りを相続財産とみなし、これに法定相続分を適用して遺産を分け、寄与者には寄与分を加算した財産を相続させます(民法904条の2第1項)

冒頭の例をもう一度あげます。

父Aが死亡して、子X、Yが残されました。Aの遺産が、預金5000万円とします。法定相続分は、子X、Yはそれぞれ2分の1です。

したがって、各2500万円を相続することになります。

しかし、実は、父Aの預金は、その経営する個人商店からの営業収入によるもので、Aは個人商店の経営から身をひいてから、既に25年が経過しており、個人商店を事実上経営していたのは、長男Xでした。次男Yは、大学卒業後、すぐにサラリーマンとなって独立し、個人商店の経営にはノータッチでした。

Aの預金5000万円は、長男Xの貢献によって得た資産です。

仮に、この場合の長男Xの寄与分を、3000万円としましょう。

この場合次のように計算します。

遺産5000万円-寄与分3000万円=残2000万円

この2000万円を相続財産とみなします。これを「みなし相続財産」(※)と言います。

みなし相続財産を、法定相続分で分けます。

法定相続分は、XYともに2分の1です。

寄与者Xの相続分は、これに寄与分を加えた額です。

Xの相続分 2000万円☓2分の1+3000万円=4000万円

Yの相続分 2000万円☓2分の1=1000万円

このように、寄与分がある場合の具体的な相続分の計算は、機械的にできるもので、難しいものではありません。

※「みなし相続財産」は、特別受益があるケースにも用いられます。例えば、相続人の中に、被相続人から生前贈与を受けていた者がいた場合は、その贈与を受けた財産の価額を、遺産に加えた総額を相続財産とみなします。その上で、各人の法定相続分に応じて具体的な相続分を計算します。つまり、寄与分における「みなし相続財産」は、遺産から寄与分を差し引くのに対し、これとは逆に、特別受益の場合は、遺産に特別受益を加えるのです。

(2)寄与分そのものの算出

次に、「寄与分そのものの算出」です。こちらは、非常に難しい問題です。

先にも説明しましたとおり、民法では、「裁判所が、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める(民法904条の2第2項)」と規定しているだけです。

つまり、法律の明文上は、寄与分を算出する計算式が定められているわけではありません。
裁判官の広範な裁量に委ねられています。
しかし、裁量と言っても、不合理な判定は許されません。

そこで、実務上は、いくつかの考え方が提案され、審判例に採用されています。

(3)具体的な計算例

それでは、前記「3」でご紹介した5つの類型ごとに、審判例で採用されている算定方法をご紹介します。

ただし、基本はケース・バイ・ケースですので、以下にご説明する考え方も、目安のひとつ程度に理解する必要があります。

①家事従事型

被相続人Aの個人商店を、同居の長男Xが、10年間、専業で手伝っていた。

同種の個人商店の場合、通常の給与は、月額20万円(年収240万円)。

なお、Xは、無給であったが、毎月5万円(年額60万円)の小遣いをもらっていた。

(240万円-60万円)☓10年間=1800万円

通常の給与(通常得られたであろう給付の額)は、賃金センサス等の各種統計資料を参考にすることが多いです。

ここでは小遣い額を控除していますが、仮に全くの無償であった場合でも、同居して光熱費、食費、住居費などをAが負担していたとしたら、その分は、支給されていたものと同じことです。

したがって、その実費が判明する場合は、それを控除することになります。

実費が不明の場合でも、裁量により何割かを控除される場合があります。

②金銭等出資型

被相続人Aが、個人商店を開業する際に、妻Xは、店鋪(建物)購入費用の一部1000万円を負担した。

寄与分は、支出額1000万円に裁量割合を掛けた金額です(但し、支出から長期間を経ている時は、貨幣価値の変動を考慮する場合があります)。

上のケースで、妻Xは、現金ではなく、店鋪用土地建物をAに贈与した。

寄与分は、土地建物の時価(相続開始時の時価)に裁量割合を掛けた金額です。

③療養看護型

寄与分は、療養看護を行う第三者を有償で雇用した場合などを参考に定めた報酬相当額(単価☓日数)に裁量割合をかけた金額です。

報酬相当額は、介護保険における介護報酬基準などを参考とします。

④扶養型

寄与分は、扶養のために実際に負担した金額に裁量割合をかけた金額です。
どのような形態で負担したかによって多様です。

生活費として金銭を送金していた場合は単純明快ですが、同居して扶養していた場合、扶養のための支出と相続人自身の生活費を区別することは実際上困難です。

そのような場合は、各種統計を参考として、被相続人の生活に必要な金額を算出します。

⑤財産管理型

財産管理する第三者を、有償で雇用又は委託した場合の報酬相当額を参考に定めた相当と思われる財産管理費用に裁量割合をかけた金額です。

例えば、不動産業者、弁護士、司法書士などを雇用した場合の報酬額は標準額を知ることは容易ですので、この型は問題が少ないといえます。

なお、以上は、寄与分を金額で算出する場合ですが、これとは異なり、遺産の全体に対する割合で寄与分を評価する場合もあります(前出の平成3年11月19日高松家丸亀支部審判を参照)。

これは、裁判所が「一切の事情」を考慮して、公平の見地から裁量により定めるものです。

貢献を数字の積み上げで計算できないけれども、財産の増加、維持に貢献している事実は明らかであるという場合の最後の手段とも言えますし、裁量によって、相続人間の利益の微調整を図る技術ともなり得ます。

5、寄与分の主張方法

寄与分の主張方法

寄与分として他の相続人よりも多くの遺産を取得したい場合は、以下の流れで寄与分を主張していくことになります。

(1)遺産分割協議

まずは、相続人間で話し合いをします。通常は遺産分割協議の中で寄与分を主張することになります。
話し合いがまとまって他の相続人に寄与分を認めてもらえたら、遺産分割協議が成立します。

寄与分が認められた場合は法定相続分とは異なる割合で相続することになるので、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。

(2)調停

相続人間での話し合いがまとまらない場合や、そもそも話し合いができない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。

調停で寄与分を主張する場合には、次の3つの方法が考えられます。

  • 「寄与分を定める処分調停」を申し立てる方法
  • 「遺産分割調停」を申し立て、その中で寄与分を主張する方法
  • 「遺産分割調停」と「寄与分を定める処分調停」の両方を申立てる方法

どの方法でも寄与分について協議することはできますが、通常は3つめの「両方を申し立てる方法」をとります。
なぜなら、調停がまとまらずに審判に移行した場合に、片方しか申し立てていなければもう一方の問題を解決することができないからです。

遺産分割の前提問題に争いがないにも関わらす遺産調停がまとまらない場合、遺産分割調停は審判に移行します。
そのとき、寄与分を定める処分調停しか申立てていなければ、遺産分割については、当然審判が出ることはありません。

逆に、遺産分割調停しか申立てていなかった場合は、その後の審判では家庭裁判所が寄与分について判断することはできません。
そのため、寄与分が決められないままに遺産分割についての審判が下されてしまうことになります。

両方を申し立てておけば、審判に移行した場合に寄与分の問題を含めた遺産分割について家庭裁判所の判断を求めることができます。

(3)審判

審判では、家庭裁判所の審判官(裁判官)が様々な事情を考慮した上で、寄与分と遺産分割について相当と考えられる内容を決定します。

審判の結果に納得できないときは、即時抗告をすることができます。
即時抗告をすれば、高等裁判所で再度、審判が行われます。
即時抗告ができる期限は、家庭裁判所から審判結果の告知を受けた日の翌日から2週間です。

6、寄与分と特別の寄与の違い

寄与分と特別の寄与の違い

「特別の寄与」とは、被相続人の一定の親族(相続人ではない人)が、無償で被相続人の介護や看護などをすることによって、その財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に、相続人に対して一定の金銭の支払いを求めることができる制度のことです。

たとえば、被相続人の長男の妻が長年にわたって被相続人の介護や看護に従事するようなケースが典型的です。
特別寄与料に関する民法の定めは、2019年(令和元年)7月1日に施行されているので、同日以降に開始した改正民法によって実施されています。

これに対して「寄与分」は、被相続人の相続人に当たる人がその財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に主張できるものです。

相続人が貢献した場合は「寄与分」、相続人ではない一定の親族が貢献した場合は「特別の寄与」と覚えておきましょう。

7、寄与分と特別受益が両方あるときの注意点

寄与分と特別受益が両方あるときの注意点

寄与分を主張する相続人が、同時に被相続人から特別受益を受けていることもよくあります。
特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前贈与や遺贈によって受けた特別の利益のことです。

特別受益を受けた相続人がいる場合の遺産分割では、まず特別受益の価額を相続財産の価額に加えた上で相続分を算定します。
特別受益を受けた人の相続分は、算定された相続分から特別受益の価額を控除した価額となります。

同一の相続人に寄与分と特別受益の両方が認められる場合は、相続分を算定した後に、まず特別受益の価額を控除して、その後に寄与分の価額を加算します。

例えば、父Aが亡くなり、子X、Yが残されたケースで、Aの遺産として1000万円の預金があったとしましょう。そして、Xには1000万円の寄与分があるものの、2000万円の特別受益もあるとします。

この場合のX、Yの取り分は、以下のように計算します。

まず、みなし相続財産は以下の計算により2000万円となります。

預金1000万円+特別受益2000万円-寄与分1000万円=2000万円

X、Yの法定相続分はそれぞれ2分の1ずつなので、2000万円を2人で分けると1000万円ずつになります。

Xの取り分を計算するときは、この1000万円からまず、特別受益の2000万円を引きます。
そうすると、マイナス1000万円となります。

しかし、特別受益はいくらあってもマイナスにはならないというルールがあるので、この段階でXの取り分は0円となります。

次にXには1000万円の寄与分があるので、0円に1000万円を加算した1000万円がXの取り分となります。

結果的に、Yの取り分も同額の1000万円となります。

以上の計算の順序を間違うと、金額が異なってくるケースが出てきますので、ご注意ください。

8、寄与分によって遺留分の侵害を主張されたときの注意点

寄与分によって遺留分の侵害を主張されたときの注意点

寄与分の主張によって、他の相続人の遺留分を侵害してしまうようなケースもあります。
遺留分とは、被相続人の遺言などによっても侵害されない、法定相続人が最低限取得できる相続割合のことです。

父Aが亡くなって子X、Yが残された場合、X、Yにはそれぞれ相続財産の4分の1ずつの遺留分が保障されています。

Xが寄与分を主張したことによって、Yの遺留分が侵害されたという主張が出された場合、結論としてはXの寄与分の主張の方が優先されます。

例えば、Aの遺産が5000万円あり、仮にXの寄与分が4000万円あると判断された場合、Xの取り分は4500万円、Yの取り分は500万円となります。

Yには1250万円(5000万円×1/4)の遺留分が保障されているのですが、寄与分の方が遺留分よりも優先されるため、Yは500万円しか取得できないことになります。

まとめ

被相続人に長年貢献してきた場合は、寄与分を主張することで他の相続人よりも多くの遺産をもらうことができる可能性があります。
ただ、寄与分を正確に算定することは難しいですし、相続人間の話し合いでもめやすいという実情もあります。

お困りのときは、弁護士に相談・依頼することによって寄与分を合理的に算定してもらい、相続人間の話し合いを代理してもらうことができます。
寄与分の問題でお困りの方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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