DVチェックリストを探していませんか?
DV被害というと身体的な暴力だけが想像されるケースが多く、それ以外はDVと呼んで良いのか、この辛さはなんなのか、DVの特徴ってなんなのか、整理がつかないこともあるでしょう。そんなときに欲しいのが「DVチェックリスト」です。
今回は
- DVチェックリストで夫婦間にDVが存在していないか確認
- DVから身を守るための具体的な対策
について解説していきます。
DVは決して許されるべきではありません。この記事があなたのDV被害への対策のお役に立てば幸いです。
1、DVチェックリストでのチェックの前に|DVとは
(1)DVとは
DVは日本語では「配偶者からの暴力」と訳され、配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいいます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第1条第1項)。
(2)配偶者とは
配偶者とは法律上の婚姻関係にあることは必要とされず、内縁関係にある者、また、離婚後の元配偶者もさします。
(3)暴力又は言動
DVは身体的な暴力のみならず、言動を含みます。
つまり、精神的暴力や性的暴力も含まれます。
(4)児童虐待にも
さらに、平成16年の「児童虐待の防止等に関する法律」の改正により、子供の目前で行われるDVも児童虐待(心理的虐待)に当たることが明確化されています。
(5)DVの報告件数
警視庁が発表した2017年の配偶者などパートナーに対するDV被害は、把握できているだけで7万件を突破、過去最多となりました。
DV被害は14年連続の増加で、被害者の8割は女性でしたが、男性の被害も5年前と比べて3.8倍に膨らんでいます。
2、DVの種類
パートナーに対する身体的な暴力に限らず、精神的、性的な暴力もDVとみなされます。
これらのDVは単独で起きることもありますが、被害の多くは何種類かの暴力が重なって起こっています。
(1)身体的暴力
平手で打つ、足で蹴る、首を絞める、監禁するなど肉体に直接的に振るわれる暴力が身体的暴力です。
暴力の証拠が傷やアザとなって残るため比較的発見される可能性の高いDVですが、服で隠れる部分を殴ったり、跡が残らない程度に留めたりするなど加害者が考えて暴行を加えるケースもあります。
したがって、身体的暴力を受けたときは必ず負傷箇所を写真に撮っておくなどしましょう。
また、診断書も有効な証拠となるため、軽度のケガであっても病院で治療を行うことをおすすめします。
身体的暴力は刑法第204条の傷害や第208条の暴行に該当する犯罪で、加害者は懲役や罰金または拘留もしくは科料に処される可能性があります。
(2)経済的暴力
経済的暴力には、パートナーが生活のためのお金を渡さない、勝手に自分の貯金を使う、自分名義で借金を作るなどの行為が該当します。
お金を握ることで夫婦間、家庭内に上下関係を生み出し、相手よりも優位な立場になろうとするもので、社会的地位のある男性に比較的多く見られるDVです。
加害者は経済的な締め付けだけでなく、日常的に人格を否定するような言葉を発する傾向にあるため、モラル・ハラスメントの一種であるともみなされます。
(3)精神的暴力
精神的暴力は、嫌がらせや暴言、中傷、無視、脅迫など言葉によって精神的な苦痛を負わせる暴力です。
言葉による暴力であるため証拠が残りにくく、その有無を巡っては「言った言わない」の水掛け論になりがちで、明確な証拠がなければ裁判所も被害者の主張をなかなか認めてくれません。
したがって、精神的な暴力についてはボイスレコーダーなどで記録する必要性があります。
(4)性的暴力
性的暴力には望まない性行為や妊娠、ポルノ映像など見たくないものを強要されるなどが該当します。
性的なことであるがゆえに他人に相談しにくい、第三者が踏み込みにくいという特徴があり対処に遅れ出がちです。
3、DVチェックリスト
DVをする男性は一般的に他人に対して優しく世間体の良い、普通の人に見えるものです。
実際のDV被害者の中には、パートナーからDVを受けていると感じていない人も多く、知らずのうちに自分がDV被害者になっている可能性もあります。
DVの種類ごとのチェックリストを使って、夫からの行為がDVに該当するかどうか確認してみましょう。
(1)身体的暴力チェック
- 平手で打たれたり足で蹴られたりして、体にアザを作ったことがある
- タバコの火を押し付けられるなどして火傷を作ったことがある
- 首を絞められたことがある
- バットやゴルフクラブなどで殴られたことがある
- 階段から突き落とされた(突き落とす素振りをされた)ことがある
- 髪を引っ張られたり唾をかけられたりしたことがある
- 食べ物や薬を摂らせなかったり、眠らせなかったりする
- 襟元を掴んで壁に押し付けられたり、殴るふりをしたりして脅される
- 家具や窓ガラスを壊すなどして脅される
(2)経済的暴力チェック
- 生活費を渡してもらえない
- 生活費を渡すときに土下座を強要されたことがある
- 病気などあっても無理やり働かされたことがある
- 働きたくても働かせてくれない
- 無断で借金をしたり、妻名義で無理やり借金をさせたりする
- 家族にはお金を使わせないで自分だけ使ったりする
- 生活費などに余裕が無いのにギャンブルなどで浪費する
- レシートや家計簿を必要以上にチェックする
(3)精神的暴力チェック
- 人前でけなしたり恥ずかしい思いをさせたりする
- 常に中傷や非難をして人格を否定される
- 会話をしたくても常に無視されるので孤独を感じる
- 「バカ」「無能」「死ね」「離婚してやる」などののしられる
- 外出で帰宅が遅くなると猛烈に怒る
- 自分の友達や両親に会うことを許してもらえない
- 子供や親を引き合いに出して脅迫される
- 夫の上手くいかないことはすべて自分(わたし)のせいにされる
- 常に誰かと比較して馬鹿にされる
(4)性的暴力チェック
- 気が進まないのにセックスを要求される
- 病気で辛いのにセックスを要求される
- 殴る、首を絞めるなど暴力的なセックスを強要する
- 避妊に協力しない
- 中絶を強要したり強要されたりしたことがある
- (夫から)性病をうつされたことがある
- 子供ができないことを一方的に自分(わたし)のせいだと非難する
- 無理やりポルノビデオやポルノ雑誌を見せられる
- 裸や不快なポーズの写真や動画を無理やり撮られる
(5)DVチェックリストで該当する項目がある場合
(1)~(4)までのDVチェックリストで1つでも該当する項目があり、なおかつ「怖くてだれにも相談できない」「子供がいるから離婚できない」など、どうにもならない状況で辛いと感じていたら、それは夫からあなたへ向けての明らかなDVです。
夫からDVを受けているときに自分や子供の身を守るために何をするべきか、具体的な対策を紹介します。
4、夫からDVを受けたときにやるべき3つのこと
DVの対策は早めが肝心です。
取り返しのつかない事態になる前に取るべき具体的な行動を紹介します。
(1)自分や子供の安全のため別居する
夫からDVを受けたときは、自分や子供の身の安全を確保することが先決です。
DVがエスカレートすれば監禁されて外部との接触を遮断されたり、生命が危機にさらされたりするケースも考えられます。
ただし、子供が別居を嫌がっているのを無理に連れて行くことは「連れ去り」とみなされる場合があります。
無理やり子供を連れて行くことは、後の離婚裁判で親権者としてふさわしくないと判断されてしまうリスクがあるため避けるべきでしょう。
実際に別居を行動に移すときは、将来的な生活や子供のことなどで不安がよぎりますが、それらは夫の暴力が届かない場所で落ち着いて考えれば良いことです。
別居するときには当面の生活費に当てる現金や通帳、キャッシュカードなども持って行きましょう。
別居するときの注意点は、転居先の選択です。
DVの危険性がそれほど高くない場合には実家に避難することも手立ての一つですが、危険性が高い場合には夫が容易に居場所を突き止めることができるため、実家は避けた方が得策でしょう。
各市区町村はDV防止法で定められた配偶者暴力相談支援センターが設置されています。
実家への避難が危険な場合は無料で利用でき、所在地も非公開となっている支援センターに非難されることをおすすめします。
その他、配偶者の暴力に関する相談先は、こちらのサイトの一覧をご覧ください。
(2)離婚の可能性がある場合は弁護士に相談する
別居が成功したら、離婚の手続きを進めましょう。
離婚は協議離婚といって、夫婦の話し合いで離婚するのが基本ですが、DVがある場合、協議離婚はお勧めできません。
DV加害者の口車に乗せられ、前に進むものも進まなくなる可能性が高いからです。
非対面で離婚手続きを進めるためには、弁護士への相談をお勧めします。
弁護士に相談すれば、離婚を成功させるのみならず、別居中の生活費の請求、離婚時の財産分与、慰謝料の請求、親権・養育権の獲得まで行います。
(3)DVの証拠を集める
裁判で離婚を確定されるためには、DVの証拠が必要と説明しました。
DVの証拠として認められるものには、次のようなものが挙げられます。
①写真
夫からの暴力によって負った傷跡や火傷跡、壊された物品などの写真は有力な証拠の一つです。
生々しい傷跡の写真などで裁判官や裁判員に視覚的に訴えられれば、裁判を有利に進めることができます。
②医師の診断書
夫の暴力によってケガをしたときは、すみやかに医師の診断を受け、診断書を作成してもらいましょう。
医師の診断書はDVを理由とした離婚裁判でよく提出される証拠の一つですが、診断書は障害を追った事実は証明できても、それがDVによるものであるとは必ずしも立証できません。
傷跡の写真や後述の日記、録音などで補強することが必要です。
③ICレコーダー
言葉による精神的暴力などは傷などの目に見える形で残るものではないため、同居中に受けた暴言や中傷などをICレコーダーに録音しておくと、DVの証拠として認められる場合があります。
④電話等の録音、メール
夫からの電話で暴言を受けた録音、夫から必要もないのに頻繁に着信がある場合などは、迷惑行為の証拠として残ります。
⑤メモ、日記
メモや日記はそれ自体がDVの証拠として有効なものではありませんが、写真や医師の診断書などの客観的な証拠としての補強として活用できます。
夫からいつ、どこで、どのような状況で、どのような暴行を受けたか、どのような痛みがあり、どのように感じたかを細かく記録に残しましょう。
メモや日記の記録が継続されているほど信憑性が高まります。
まとめ
DVには直接的な暴力だけでなく、精神的、経済的、性的に追い詰めるものもあり、後者の暴力ほど気づきにくいという特徴があります。
そのため、DVがエスカレートして自分や子供の生命が危機にさらされる前に、身の安全を確保することが重要です。
「これはDVに該当のかな?」「もしかしたら愛情表現なのかもしれない」など、DVかどうか迷ったときには、チェックリストで客観的に判断して、DVが発覚した場合はすぐに専門家にご相談ください。