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【妻の機嫌が悪い原因】産後クライシスとは?産後クライシスの症状と対処法

産後クライシス

出産後、夫婦のコミュニケーションがスムーズでなかったり、夫の行動にイライラを感じることがあるため、多くの人が不安や悩みを抱えています。これが一般的に「産後クライシス」と呼ばれ、産後うつやマタニティーブルーとは異なる特徴を持っています。

この記事では、産後クライシスについて、原因や症状、いつまで続くのか、その対処法などについて詳しく解説します。

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1、産後クライシスとは?

「産後クライシス」とは、子どもを出産した後に、夫婦仲が急に悪くなる状況を意味します。

具体的には、出産後の妻と夫の生活ペースや心理状況の違い、ホルモンバランスの変化などによって、夫婦間のすれ違いが大きくなった状況です。

出産後、妻は生活の大半が子ども中心になるのに対し、夫は変わらず仕事を続け大きな変化がないことから、双方の生活ペースに差が生じます。

また、個人差はありますが、妻からすると夫の面倒を見る余裕がないのに対し、夫からすると妻が急に冷たくなったと感じ、機嫌を取ろうとして失敗し一緒に過ごすことが苦痛になる、といった状況に陥りがちです。

このような生活ペースや気持ちの変化によってすれ違いが大きくなり、更に妻のホルモンの変化による脱力感やイライラ、性欲の減退などで、セックスレスに繋がったり、夫が浮気に走るといった事態につながる可能性もあります。

産後クライシスがひどいと、離婚に繋がってしまうことも。

「産後クライシス」という言葉は、NHKが2012年に提唱したものですが、産後の夫婦間の状況を言い当てたものとして、昨今は大きな問題として認識されています。

ご自身の状況が「産後クライシスなのだ」と認識することで、状況を受け入れやすくなったり、有効な対策を講じる可能性にもつながります。

2、産後クライシスの原因

産後クライシスの原因は、産後うつやマタニティブルーと異なり、ホルモンバランスの変化だけではなく他の要素が複雑に絡んでいます。

主な原因としては、つぎの4つが考えられます。

(1)生活・生活ペースの変化

出産後、妻の生活は子どもを中心に回ります。

おむつ交換、授乳、夜泣きの対応、離乳食の準備と、多忙な時期はしばらく続きます。

加えて、出産は実家に帰って里帰り出産をするケースも多く、勝手分かった実家から夫婦の生活に戻り家事の負担が増加することで、産後クライシスを招くこともあります。

このように、妻の生活は大きく変化しても、夫の生活は大きく変化しないため、生活ペースの差によるすれ違いが、夫へのイライラを増幅させることになり、産後クライシスの原因となりえます。

(2)産後のホルモンバランスの変化

出産後、妻はホルモンのバランスが大きく変化します。

妊娠中に最大限に高まった女性バランスが激減する一方、授乳ホルモンが増え、母性が一気に高まる時期になります。

これにより、妻はイライラしやすくなり、動物的なほど攻撃的になることから、この時期は「ガルガル期」と言われることもあります。

夫や周りはもちろん、本人でさえも、なぜこれほどイライラするのかわからないほどだと言われています。

(3)育児疲れ

前述のように、出産後、妻の多忙は数年続きます。

出産はそれだけで母体に大きな負担となりますが、それに加えて育児の疲れや寝不足が重なると、妻の心身の疲労は極めて大きなものとなります。

一人目の子どもを出産した時は大丈夫だったけれど、育児疲れが蓄積し、二人目の子供の出産を機に産後クライシスになることもあります。

出産、育児に慣れたら大丈夫というものではないのが、産後クライシスの特徴です。

(4)夫の関与の低さ

子どもが生まれても、夫はホルモンの変化も生活の変化もさほどありません。

育休を取る男性もいるとはいえ、まだまだ少数派なのが実情です。

夫とすれば、「育児は妻に任せるのがベスト」と思うこともあるでしょうし、「妻が急に冷淡になった」「家事がいい加減になった」と感じることもあるかもしれません。

他方、妻からすれば、こうした夫の態度が「夫が非協力的」「育児で大変なのに出産前と同じことを要求し思いやりがない」と伝わり、気持ちのすれ違いに繋がります。

また、夫が浮気をしていた際などには、一層ストレスとなり、夫への不満が募ることになります。

このように、出産後の妻に余裕がなくなり夫の行動を許せなくなる、ホルモンバランスの変化で気持ちが抑えられない、夫の家事や育児への関与に不満やストレスを感じるなどが、産後クライシスの原因になると言われています。

3、産後クライシスの症状チェックリスト

産後クライシスは、夫婦間の不仲から離婚につながる可能性もある状態です。

また、産後クライシスから産後うつを発症し、うつ症状が悪化すると子どもの虐待につながる可能性も指摘されています。

ご自身や夫婦の状況で産後クライシスに思い当たることがあれば、大事に至る前に解決を目指すためにも、まずは以下のチェックリストを参考に診断してみてください。

  • 夫に対してイライラが募る
  • 出産後、セックスレスの状態である
  • 他人の夫と自分の夫を比べて、がっかりしたり焦ることがある
  • 夫にもっと育児や家事の手伝いをして欲しい
  • 出産後、夫婦で一緒に過ごす時間が短くなり会話も減った
  • 出産後、夫に父親としての自覚がないと感じる
  • 出産前後に夫の浮気が疑われる

4、産後クライシスは、いつからいつまで?

(1)産後の「ガルガル期」を超えても続きうる産後クライシス

産後クライシスは、人によって生じる時期に大きな違いがあります。

主に、出産後2年以内に生じると言われていますが、すぐに回復する夫婦もいれば、出産後10年以上たっても継続するといったケースもあるのが実情です。

「産後の『ガルガル期(ホルモンバランスにより出産後の妻の気性が荒くなる時期)』を乗り越えられたら大丈夫」という声もありますが、この期間のすれ違いが禍根を残し、長期化することもあるのが産後クライシスなのです。

(2)産後うつとマタニティブルーの違いとは

産後クライシスと同視されやすい状況に「産後うつ」や「マタニティブルー」がありますが、産後クライシスとは異なる点がいくつかあります。

まず、産後うつ・マタニティブルーは、妊婦や産後すぐの女性が、ホルモンバランスの変化によって、精神的に不安定で不調な状態に陥り、脱力感やイライラといった症状が出るのを指すのに対し、産後クライシスは、産後の夫婦双方の関係が悪化する状態を指します。

また、時期の面から見ても、産後うつの場合は産後1か月から発病しやすく治療によって1ヶ月程度で改善されるケースも多くみられ、マタニティブルーの場合は妊娠中と産後2日ないし10日、長くて3カ月くらいの間に起こると言われています。

対して、産後クライシスは、発生時期が出産後から多くの場合で2年、人によっては10年以上と長期化するケースも多いことが特徴として挙げられます。

また、出産した妻のホルモンバランスの変化といった妻側だけではなく、夫側にも生じる可能性がありますし、夫婦双方の問題として捉えていく必要がある点も違います。

5、産後クライシスになったら別居すべき?

産後クライシスになったからといって、すぐに別居につなげるのは得策ではありません。

産後クライシスは、女性のホルモンの変化なども関係するため、別居だけで解決できるとは限らないからです。

産後クライシスで別居をすると、行動の全てがイライラしていた夫から離れることで気持ちに余裕ができ、冷静になれるというメリットがあります。

夫の家事もしなければならなかった場合には、時間的精神的に余裕がうまれ、ストレスの軽減につながることもあるでしょう。

他方、別居によって夫が浮気に走ったり、愛情が取り戻せなくなるというデメリットが生じる可能性も否定できません。

別居が原因で離婚にいたるケースが多いことを考えると、産後クライシスを理由とした別居は、慎重に検討をしたいところです。

別居しても連絡は取り合う、子どもの様子を報告するといった対応を取ることが必要です。

最終的に離婚したいのか、産後クライシスの辛い時期を乗り越えて一緒にいたいのか、なんのために別居をするのか、冷静に考えてからでも、別居は遅くありません。

6、夫が産後クライシスになることも

産後クライシスは、妻だけの問題ではありません。夫も、産後クライシスになることがあるのです。
海外では、産後の時期は夫もうつになりやすいことが報告されています。

理由としては、会社での業務に加えて、子育てについて自身にプレッシャーをかけてしまう、といったことが考えられます。

実際、少し古いデータですが、日本の企業では妻の出産後も夫の勤務時間は変わらないという調査もあり、1日の平均勤務が10時間を超える割合が過半数を超えるという結果になっています(ベネッセ次世代育成研究室「第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(2011年)」)。

また、妻は出産後に女性ホルモンが大幅に減り、代わりに授乳ホルモンが出て母性が高まるのに対し、夫側のホルモンバランスは出産で変わることは当然ありません。

加えて、出産後は夫婦間の愛情面でも差が見られます。

ベネッセが288組の夫婦を対象に「妻・または夫に対して愛情を感じている」かを尋ねたところ、出産前には男女共に75パーセントが愛情を感じていたのが、子どもが2歳に達する頃には、妻は34パーセントにまで落ち込み、夫側は依然51.7パーセントを維持しているというデータが出ています。

妻に夫婦関係を求めても拒否されたり、夫は妻の機嫌を取ろうとしても怒られるといった気持ちの違いも、夫が産後クライシスになる一因と言えるでしょう。

7、産後クライシスの解決法・乗り越え方

産後クライシスを乗り越えるには、妻・夫双方が取り組む必要があります。

また、出産前から産後クライシスの可能性を想定しておくことも有効です。

(1)妻ができること

①夫を育てる

産後クライシスでは夫のちょっとした言動でイライラすることも少なくありません。

夫は子育てにはそもそも無知なのだということを認識した上で手助けを頼み、デキたら褒めることでイクメン化することも期待できます。

子育てで大変なのに夫まで育てる余裕はないと思うかもしれませんが、良好な夫婦関係を築き、ご自身の育児の負担を減らすためと思い、一度トライしてみてはいかがでしょうか。

②子どもから離れる

赤ちゃんが可愛いとはいえ、1日中子どもとずっといることは、時につらいものです。

まして、産後体力が回復していない時は、負担も一層大きくなります。

親や夫に子どもを任せられるなら、子どもを預けてリセットの時間を持つことは、産後クライシスの解消に有効です。

身内が頼れない場合には、「産後レスパイトプラン」を利用することも検討してみてはどうでしょうか。
「産後レスパイトプラン」とは、一般社団法人産前産後ケア推進協会と旅行会社によるプランで、ホテルで助産師による産後ケアや、赤ちゃんのケアを受けられるというものです。
値段は、ケア料金、宿泊費、食事で一泊約80,000円からと高額ですが、産後クライシスで悩んでいる場合には家族の援助を受けるなどするのもいいでしょう。

③ホルモンのせいと割り切る

産後クライシスでは、自分の意思と無関係にイライラすることがあります。

夫のせいでも、子どものせいでもなく、ホルモンのせいだと割り切って考え、なぜイライラしたのかを書きだすことも効果的です。

(2)夫の産後クライシスの対処法

①妻の体調を理解する

産後クライシスでは、妻の豹変ぶりに戸惑う夫は少なくありません。

しかしこれはホルモンのせいだと理解して、受け入れることを心がけてみてください。

②積極的に育児・家事に関与する

育児に手を出すと妻の機嫌が余計悪くなるといった経験を持つ男性もいるかも知れませんが、積極的に関与していくことで妻の負担が減り、結果産後クライシスの解消につながることが期待できます。

イライラする妻と一緒にいるのが辛いと、外出しがちになる男性もいるでしょうが、敢えて家族と過ごす時間をゆっくり取るようにしてみてください。

(3)出産前の対処法

出産前から、夫婦でベビーグッズを買いに行ったり、出産後の役割分担を決めておくことも、産後クライシスの解消に効果的です。

家事は夫がやってくれるという妻の安心感が、イライラの緩和につながり、落ち着いて子育てできる環境に役立ちます。

また産後クライシスが起こりうることを、夫婦の双方が知っておくだけでも、気持ちが大きく変わり、産後クライシスの解消や緩和に役立ちます。

8、産後クライシスの相談先、カウンセリング

産後クライシスは、誰にでも起こり得る問題です。一人で悩まず、周りの人にまずは相談してみましょう。

実家の家族や夫に相談できればベストですが、身内が頼れない、客観的なアドバイスが欲しいといった場合は、自治体の相談窓口を利用することも検討してみてください。

自治体の相談窓口としては、以下のようなものがあります。

(1)女性健康支援センター

厚生労働省が行う、女性の出産や健康に関する悩みを聞いてくれる窓口です。

各都道府県にあるので、インターネットなどで確認してみましょう。

(2)全国子育て、女性健康支援センター

日本助産師会が行っている相談窓口です。

全国に相談窓口があり、原則として平日の10時~16時の間、助産師による電話相談を行っています。

また、その他の相談窓口として、カウンセラーや弁護士に相談する方法もあります。

相談窓口の例としては、以下のようなものがあります。

(3)岡野あつこのカウンセリング

NPO法人日本家族問題相談連盟の理事長を務める専門カウンセラーが、全国で出張カウンセリングを行っています。

詳細につきましては、「岡野あつこの離婚相談救急隊」をご確認ください。

(4)離婚に強い弁護士に相談

離婚も検討している場合には、早めに弁護士に相談し、準備を進めておくことも可能です。

当ベリーベスト法律事務所では、離婚問題に強い弁護士が無料で親身に相談に応じますので、お気軽にご相談ください(電話番号:0120-711-765)。

9、産後クライシスは離婚すべき?離婚すると後悔するケース

産後クライシスになったからと言って、即離婚を結論付けることだけが解消の方法ではありません。

ご自身の状況を冷静に把握したうえで、結論を出しましょう。

具体的には、産後クライシスを機に夫が離婚したケース、配偶者が親の自覚を持てないといったケースでは、離婚を検討する余地はあるかも知れません。

ただし、離婚して子どもを一人で育てていくのは大変です。

浮気をした場合には、証拠をしっかり押さえた上で、慰謝料を十分取れるようにした上で離婚に至るべきです。

また、相手の親としての無自覚が続き、家に帰らず生活費すら入れなくなったというような場合には、悪意の遺棄にあたるとして離婚を申し出ることも考えられます。

他方、離婚後の生活のプランが立てられない、親権者を決めたり養育費の支払いについて考えるのは面倒だけれどひとまず別れたいというようなケースでは、離婚を即断すべきではありません。

幼い子どもを抱えて離婚するには、自分と子どもの2人の生活を続けられるプランを考えておく必要があります。

心配な場合には、離婚の結論を出す前に弁護士に相談し、財産分与や年金分割でいくらくらいのお金が入りそうか、親権者・監護権者になった場合に養育費は毎月どのくらいもらえそうかといった状況を把握したうえで、離婚の検討を進めることをお勧めします。

10、産後クライシスの離婚率

産後クライシスは離婚に影響しているのでしょうか。

実は、厚生労働省の調査では、出産後2年以内の離婚が増加しており、全体の35.1パーセントにも及ぶのが現状です。

加えて、離婚した夫婦の76.5パーセントが、出産後10年以内に離婚している結果も出ています。なお、全体の離婚率については以下の記事をご参照ください。

前述のように、出産後2年で、「配偶者に愛情を感じている」割合が、夫婦で大きな差が出ます。

また、産後クライシスを乗り越えたと思う夫婦でも、夫が妻に当時の不満を聞いてみると、驚くほど詳細な不満話が出てくるというケースもあります。

産後クライシスは、真っ只中の産後早い段階はもちろん、ある程度の時間が経過した後でも離婚の引き金になっている状況です。

産後クライシスは、離婚に繋がる可能性が高いことを認識したうえで、夫婦双方が離婚を望まないのであれば、早い時期から産後クライシスの解消に向けて、双方の歩み寄りをしていくことが求められます。

11、産後クライシスを原因とした離婚請求は認められるか?

(1)離婚の流れ(協議、調停、裁判)

離婚には、3つの段階があります。

離婚は、まず当事者間の話し合いによって行われ、双方が合意に達すれば離婚の理由は問いません(協議離婚)。そのため、産後クライシスを理由として離婚することも可能です。

当事者間で離婚の話し合いがまとまらない場合は、第三者である調停委員を介した「調停離婚」が行われます。

調停でも離婚の合意ができなかった場合は、裁判所で裁判官に離婚を判断してもらう「裁判離婚」を行うことになります。

(2)裁判で離婚が認められるには?法定離婚事由

当事者間の合意で離婚する際と異なり、裁判で離婚が認められるためには離婚の理由が法律で決められた理由(法定離婚事由)であることが必要です。

具体的な法廷離婚事由は以下の5つです。

不貞行為

いわゆる浮気、不倫です。

夫婦は、婚姻中に相互に助けあう扶助義務を負いますが、貞操義務もこれに含まれるため、配偶者以外と浮気をすると不貞行為として離婚事由になります。

悪意の遺棄

正当な理由がないのに、別居されたり、生活費を入れない等、相互扶助義務に反するような場合に、具体的な事情を考慮して悪意の遺棄と認められる場合があります。

3年以上の生死不明

配偶者の生死が3年以上不明の場合に認められる離婚事由です。

回復の見込みのない強度の精神病 

夫婦として生活ができないほど強度な精神病の場合、専門医の鑑定によって離婚が認められる場合があります。

婚姻を継続しがたい重大な事由

上記の明確な離婚事由以外でも、婚姻関係が破綻したと評価されるような場合は、裁判離婚が認められます。

(3)産後クライシスは離婚原因として認められる?

裁判離婚の場合は、離婚の理由が法定離婚事由にあたることが必要なため、「産後クライシスで離婚したい」というだけでは離婚できません。

産後クライシスが、婚姻を維持できないほどの重大な理由になっているということを、客観的な証拠を示して主張していくことになります。

まとめ

今回は、産後クライシスについて、その内容や対処方法について説明しました。

もしかしたら、自分も産後クライシスかもしれないと思いあたった方もいるかもしれません。

産後クライシスは、自分一人で解決するのは難しい問題です。

夫婦や周りの人はもちろん、場合によってはカウンセラーや弁護士などの専門家の意見を聞き、公的支援も利用しながら、対処していくことをお勧めします。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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