
離婚調停とは、その正式名称を「夫婦関係調整調停(離婚)」といい、裁判所(家庭裁判所)にて、夫婦関係(離婚)について夫婦間で話し合いをして結論を出す制度です。夫婦だけでの話し合いがまとまらず、離婚調停の申し立てを検討されている方も少なくないでしょう。
今回は、離婚調停について絶対に知っておくべき7つのことをまとめました。
ご参考頂き、離婚調停で望ましい結果を獲得していただければ幸いです。
目次
1、そもそも離婚調停とは?
(1)調停とは?裁判との違い
実は、調停とは、裁判とは全く別ものです。
両者とも裁判所で行われるため、その違いを熟知される方は少ないと思います。
何が決定的に違うかというと、問題解決の方法(手段)が違います。
ご存知の通り、裁判では、裁判所は、当事者の持ち寄る事実関係をもとに、判決という形で結論を出す役割を果たします。
一方、調停では、裁判所は、調停当事者双方の合意を導き出す役割を果たすのです。
つまり、同じ問題解決を目的としたものでありながら、
- 裁判は第三者(裁判官)が結論を出す
- 調停は当事者の話し合い(調停委員が話し合いを支えます)で結論を出す
という点が違うわけです。
(2)離婚調停における「調停委員」とは誰?
離婚調停では、当事者の話し合いを進め、支える役割として「調停委員」が用意されています。
調停委員とは、当事者のトラブルに耳を傾け、当該トラブルにおいてどこが落とし所なのかを考え、両者の納得を導く役割をする人です。
調停委員に資格などは必要ありませんが、以下の要件が求められています。
- 弁護士資格を有する者
- 民事・家事の紛争解決に役立つ専門知識を有する者
- 社会生活において豊富な知識を有する者
- 年齢は40歳〜70歳くらい
離婚調停における調停委員も、この要件に従った方たちが選ばれることになりますが、他の民事調停と違う特色は、1名ずつ男女が選ばれるということです。
性別による考え方の偏りをなくすことを目的としています。
(3)離婚調停は何を決める場なの?
「離婚調停」と聞くと、一方が離婚をしたい、もう一方は離婚をしたくない、という構図が浮かぶかと思いますが、当然決められるべきことはそれだけではありません。
離婚することはお互いに合意しているが、条件の内容について合意ができないというケースも多々あります。
たとえば、
- 財産分与を行うか?行うとしたらいくらか
- 養育費を支払うか?支払うとしたらいくらか
- 親権をどちらが持つか、また身上監護権(子と同居する権利)を持たない方について面会交流の実施するか、するとした場合その条件
- 浮気やDVなどを原因とする離婚においては慰謝料を支払うか?支払うとしたらいくらか
などです。
もっとも、調停でこれらを決定する場合、調停におけるこれまでの結論など一定のルールに従って額などが決定されることになります。
ですから、一般的な額以上に支払ってほしいなどの場合は、協議離婚で一気に解決を図る方がおすすめです。
交渉においては、有利に進めるために事前に弁護士のアドバイスを仰ぐことをご検討ください。
なお、離婚調停の正式名称は、「夫婦関係調整調停(離婚)」と言います。このカッコ書きのところを前に出す形で通称とされているわけです。
実は、「夫婦関係調整調停(円満)」というものもあります。これがいわゆる「円満調停」です。
円満調停は、夫婦関係を再構築したいのにうまく話し合いが進まない、という場合に利用すべき制度です。詳しくはこちらのページをご覧ください。
(4)離婚調停はどこで行われるの?
離婚調停が行われる場所は裁判所ですが、裁判所はその機能から以下の通り5つの種類が存在しています。
(出典:裁判所ナビ)
「民事調停」は基本的に「簡易裁判所」で行われますが、離婚調停は、民事調停の中でも「家事調停」です。
家事調停とは、家庭内で起こる問題に関する調停という意味です(家事調停以外の民事調停は、例えばお金を返してくれないなどのトラブルを対象としています)。
このような家事調停は、裁判所の中でも特別な位置付けとなる「家庭裁判所」で行われることになっています。
2、離婚調停の申し立てにおける必要書類とは?
では、離婚調停の申し立てについて見ていきましょう。
(1)誰が申し立てられるの?
離婚調停の申立てができるのは、夫または妻です。
家庭裁判所で行われるというと弁護士に依頼しないとできないと思われそうですが、調停は弁護士に依頼しなくても行うことができます。(もちろん、弁護士に依頼して申し立てることも可能です)。
(2)どこに申し立てるの?
先ほど、離婚調停は「家庭裁判所」で行われると話しましたが、申し立て先も家庭裁判所です。
家庭裁判所といっても全国にたくさんありますが、申し立てる場合、基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
例外的に、事前に夫婦間で調停をする家庭裁判所を決めていた場合には、その家庭裁判所で行われることとなります。
管轄裁判所の場所についてはこちらをご参照下さい。
(3)申し立てにおける必要書類は?
申し立てにおける必要書類は、次の通りです。
- 夫婦関係調整調停申立書
- 照会回答書
- 事情説明書
- 申立人の戸籍謄本
- 連絡先等の届出書
- 相手方の戸籍謄本
- (年金分割についての調停を含む時)年金分割のための情報通知書
これらのうち、記載した内容がそのまま相手に通知されてしまうものもあります。
離婚は、どうしても感情が伴うトラブルですから、なるべく相手の感情を逆立てないように、相手に通知される書面については事実のみの記載に留めることがおすすめです。
書類に不備があると、裁判所で受け付けてもらえないこともあります。
スムーズに申し立てるために、各書面をまずはダウンロードしましょう。
書面のダウンロード、また注意点については、こちらの記事でご確認ください。
(4)申し立てたらどのように相手に通知されるの?
裁判所で申し立てが受理されると、その2週間後くらいに、当事者双方に「調停期日通知書」が届きます。
記載されている期日に、記載されている場所へ向かうことになります。
3、離婚調停に費用はかかるの?
イメージ的に、一度(一回話し合ったくらい)では終わらなさそうな離婚調停ですが、とすると、何度も裁判所という場所を利用し、調停委員の方に足を運んでもらうことになることを考えると、一定の費用がかかるようにも思えます。
しかし、離婚調停自体にかかる費用は2000円ほどです。
費用について詳しくは、「離婚調停の費用を抑えつつ有利な結果を獲得するために知っておくべき3つのこと」をご参照下さい。
関連記事4、離婚調停は弁護士に依頼すべき?
離婚調停はご自身で行うこともできますし、弁護士に依頼することもできます。
そうすると、離婚調停を検討する段階では、「弁護士に依頼すべきか否か?」ということが気になるのではないでしょうか。
(1)離婚調停は弁護士に依頼すべき?
離婚調停を弁護士に依頼すべきかどうかは、弁護士に依頼した場合のメリットとは何かを考えることです。詳しくはこちらのページで解説しています。どうぞご覧ください。
関連記事(2)弁護士に依頼した場合の費用は?
いくらメリットがあるとはいえ、費用がどのくらいかかるのか、これは必ずチェックしておかなければなりません。
離婚調停を弁護士に依頼した場合の費用について、詳しくはこちらのページで解説しています。どうぞご確認ください。
5、離婚調停の手続きは?
落ち着いて離婚調停に臨むためにも、あらかじめ流れを知っておくことが重要です。
離婚調停は大きくは以下の流れで進みます。
- 家庭裁判所へ調停の申立て
- 調停期日の決定
- 第一回の調停
- 第二回以降の調停
- 調停の終了
離婚調停の流れについて詳しくは、「離婚調停の流れと有利に進めていくための方法」をご参照下さい。
関連記事6、離婚調停にかかる期間は?
期日には家庭裁判所へ行かなければならないわけですから、調停が終了するまでにどれくらいの期間を要するのか知りたい所でしょう。
離婚調停にかかる期間の相場としては半年から1年ほどです。
期間について詳しくは、「離婚調停の期間と調停を有利に進める方法」をご参照下さい。
関連記事7、その他、離婚調停で気になる問題リンク集
離婚調停には細かい点で気になることがたくさんあると思います。
本項では、これまでにご相談いただいた中から、よくある質問についてまとめてみました。どうぞご活用ください。
(1)離婚調停を欠席したらどうなる?
最後に、離婚調停を欠席したらどうなるでしょう?急遽仕事などで調停に行けなくなることもあるでしょう。
そのような場合にデメリットがあるのかが気になる所ですが、きちんと裁判所に事前に連絡すればデメリットはありません。しかし、何度も欠席する場合は注意が必要です。
離婚調停を欠席した場合について詳しくは、「離婚調停欠席のデメリットと欠席すべきではない場合」をご参照下さい。
関連記事(2)離婚調停で親権を獲得したい場合に注意すべきことは?
離婚調停の争点が親権であるケースも多いでしょう。
この場合の注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
(3)離婚調停で慰謝料を獲得したい場合に注意すべきことは?
離婚調停の争点が慰謝料であるケースも多いでしょう。
慰謝料を確実に獲得し、かつ可能な限り高額を勝ち取るための方法についてはこちらの記事をご覧ください。
(4)有責配偶者からの離婚調停で気をつけるべきことは?
浮気、DV、ハラスメントなどをしてしまっていた方からでも離婚調停を申し立てることも可能です。
このようなケースにおける注意点については、こちらの記事で解説しています。ご確認ください。
(5)離婚調停が不成立になったらどうなるの?
離婚調停は、いつでも当事者の合意が得られる結果を迎えられるわけではありません。
当事者の合意が得られなければ、その離婚調停は不成立となり、離婚裁判へと進みます。
離婚は、その約90%が当事者だけでの協議離婚で完結しており、調停での離婚は離婚全体の約9%です。そして、残りの1%が裁判での離婚です。
離婚調停が不成立になった場合についてはこちらの記事で解説しています。
関連記事まとめ
今回は、離婚調停に関してよくある相談をまとめてみましたが、参考になりましたでしょうか。
話し合いで解決できず、離婚調停を申し立てる準備をしている方のご参考になれば幸いです。