
離婚問題で相手方となかなか折り合えない場合は弁護士に依頼するのが有効ですが、弁護士費用が安いのか高いのか、相場が気になる方は多いことでしょう。
弁護士費用は各事務所において自由に定めることになっているので、一概にこの程度ということはできません。
ただ、弁護士費用は離婚問題のうち何を争っているのかや、依頼するタイミングによって異なってきます。
また、最近は上記の旧報酬規定にかかわらず、より依頼者が利用しやすい独自の報酬基準を備えている法律事務所も増えてきています。
弁護士費用を安く抑えながら、離婚問題を解決できればいいと思われている方がほとんどだと思います。
そこで、今回は、
- 離婚問題を弁護士に相談、依頼した場合の費用の相場
- 離婚問題での弁護士の選び方
の内容について解説したいと思います。
ご参考になれば幸いです。
離婚に関する弁護士の選び方を詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください
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目次
1、離婚の弁護士費用の相場は?
自由に金額を決められるとなれば、高額であるところとそうでないところがあるでしょう。
高額だからサービスが良いかといえば、一概にはいえません。
まずは弁護士費用の「相場」を知っておくことが大切です。以下、みていきましょう。
(1)旧報酬規定の基準は?
平成16年までは日弁連が作成した旧報酬規定が適用されており、現在でも多くの事務所はこれを基にして弁護士費用を定めています。旧報酬規定では、離婚問題の弁護士費用について、以下のように定められています。
旧報酬規定で定められていた弁護士費用は本記事の冒頭でご紹介しましたが、かなり高額だと思われたのではないでしょうか。
【法律相談料】
一般法律相談料 | 30 分ごとに5,000 円以上2万5,000円以下 |
【交渉事件および調停事件】
着手金 | 20万円~50万円 離婚交渉から離婚調停を依頼する場合は、さらに上記の額の2分の1。 |
報酬金 | 20万円~50万円 |
【訴訟事件】
着手金 | 30万円~60万円 離婚調停から離婚訴訟を依頼する場合は、さらに上記の額の2分の1。 |
報酬金 | 30万円~60万円 |
【財産分与、慰謝料などの金銭請求】
離婚そのものだけでなく、財産分与や慰謝料などの金銭請求を依頼する場合には、上記とは別に、以下の着手金および報酬金がかかります。
【着手金】
経済的利益の額 | 着手金 |
300万円以下の場合 | 8%(最低10万円) |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 5%+9万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 3%+69万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 |
以上は、訴訟事件についての着手金の基準です。
調停事件および示談交渉事件の場合は、それぞれの額が3分の2に減額されることがあります。
ただし、示談交渉から調停、示談交渉・調停から訴訟に進む場合は追加着手金として以上の金額の2分の1が別途かかります。
【報酬金】
経済的利益の額 | 着手金 |
300万円以下の場合 | 16% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 4%+738万円 |
【日当】
半日(往復2時間を超え4時間まで) | 3万円以上5万円以下 |
1日(往復4時間超え) | 5万円以上10万円以下 |
例えば、弁護士に依頼して協議離婚が成立し、慰謝料200万円を獲得した場合の弁護士費用は以下のようになります。
- 着手金 36万円~(税抜き)
- 報酬金 52万円~(税抜き)
これに法律相談料や日当、実費がかかることもあります。
実際のところ、旧報酬規定を機械的に適用して弁護士費用を計算すると高額になりすぎるケースが多いと言われていました。
そのため、多くの事務所ではこの基準の範囲内で、妥当と思われる弁護士費用を定めていたのが実情です。
平成16年4月に弁護士報酬が自由化された後、実態に即した報酬基準を備える法律事務所が現れ始めました。
その後、最近では依頼者がより利用しやすい報酬基準を独自に定めている法律事務所が増えてきています。
そのような流れで形成されつつあるのが、次にご説明する「近時の相場」です。
(2)近時の相場はどれくらいか
近年は、インターネットのホームページ上で事務所の報酬を公開している法律事務所はたくさんあります。
それらを見ていると、およそ次のような数字が相場だといえそうです。
①相談料
1時間1万円というところが一般的ですが、初回相談は1時間まで無料というところも多く見受けられます。
②着手金
いずれの段階でも20万円~50万円というところが多いようです。
旧報酬規定では、財産分与や慰謝料を請求する場合は別途着手金がかかることになっていますが、最近ではこれらの着手金も含めて20万円~50万円とするのが一般的です。
また、費用について細かい規定がある事務所ですと、何について問題になっているかによっても(例えば、親権が問題になっているのか、財産分与が問題となっているのか)、費用が分かれることがあるようです。
③成功報酬
成功報酬について見ていきましょう。
事件を無事に終了させたことについての基本的な報酬は20~30万円程であることが少なくないようです。
離婚成立・離婚阻止についての報酬は、好ましい結果(例えば離婚を求めていた側が離婚できたなど)を得られた場合には、上記に加えて、20万円ほどの報酬金がかかる事務所も多いようです。
親権獲得についての報酬は、父母のどちらが親権者になるか争いになっていたケースで親権が獲得できた場合には報酬が発生することが多いです。
これも相場としては20万円ほどのようです。
④日当
多くの事務所は、かかる時間に応じて半日日当と一日日当の2つの種類段階に分けていることが多いようです。
半日(移動時間が2~4時間程度)の場合3万円程度、1日(移動時間が4時間程度以上)の場合5万円程度に設定していることが多いようです。
(3)離婚問題における弁護士の費用は争点や段階によって異なる
以上、基本項目における費用相場となりますが、実際は、離婚の何を争っているのか、また協議段階なのか調停・裁判へ進む段階なのかという段階によっても金額は異なってきます。
もめている場合は、トータルで100万円程度はかかる場合が多いと考えておくとよさそうです。
詳しくは各法律事務所で料金を確認してみることをお勧めします。
離婚調停を依頼する場合の弁護士費用、離婚裁判を依頼する場合の弁護士費用についてはこちらをご覧ください。
関連記事 関連記事2、離婚事件を弁護士に依頼した際にかかる費用の種類は?
離婚にあたり弁護士に依頼するうえでは、一般的に次のような費用がかかります。
(1)相談料
離婚事件を弁護士に依頼する前の段階で、弁護士への相談にかかる費用です。
現在の状況を弁護士に伝え、今後どのように離婚の手続きを進めたら有利な結果を得ることができるか相談するために必要な費用です。
(2)着手金
弁護士が事件に着手するためにかかる費用です。
一般的には、着手金を支払ってからでないと弁護士は事件に着手しません。
事件処理の結果に不満があったとしても、また、依頼者が途中で弁護士を解任したとしても、原則として支払った着手金は返ってこないことが多いです。
(3)成功報酬
事件終了時点で弁護士に支払う費用です。
事件を無事に終了させたことに対する報酬の他、相手方から実際に得られた経済的利益に対する報酬がかかることが一般的です。
慰謝料等相手方から金員を得られる場合、通常は一旦弁護士の銀行口座に振り込まれますので、そこから成功報酬を差し引いた金額が依頼者の手元に支払われることになります。
(4)日当
弁護士が事務所を離れて事件に対応した場合に支払う費用です。
相手方の元に交渉に赴いたり、裁判所に出頭したりした場合などに支払う必要があります。
所要時間によっては日当が発生しないこともありますし、所要時間が半日かかるのか丸一日かかるのかによっても金額は違ってきます。
日当は、(3)と同様に相手方から支払われた賠償金から差し引かれることが多いのですが、月ごとに計算して請求されることもあります。
(5)消費税
また、これらの費用には消費税がかかります。
(6)実費
また、弁護士費用ではありませんが、弁護士が事務所を離れて移動した場合の交通費、依頼者や相手方への郵便物を送付した場合の切手代、裁判所に収める印紙代、依頼者等にお金を振り込む際の振込手数料などの実費は依頼者が負担します。
3、離婚問題は弁護士費用がかかっても依頼したほうがいい?
これらの費用をかけてまで弁護士に依頼をすべきなのか?考えるのはこの点です。
弁護士に依頼すべきかどうかは、一般的には以下のような状況にあるかどうかが基準となると考えられます。
(1)相手が離婚に応じない、相手から離婚を求められているが応じたくない
離婚の交渉は、ある意味一番プライベートな関係にある配偶者との交渉となります。
そのため、仕事上の話し合いと違い、話し合いの席を設けることすらなかなか実現できないこともあるでしょう。
近しい関係だからこその、遠慮のない言い合いとなってしまうこともあります。
このような場合は、第三者を同席させることです。
そうなれば、2人きりで話す場合と違い、多くのことがスムーズに運びます。
弁護士は離婚に関する法的知識と離婚立会いの豊富な経験、そして何より、あなたの「味方」になるため第三者としては適任です。
交渉が決裂した際は、調停へと進みます。
調停では、その手続き、どのように説明すべきか等、ミスのないよう進めていくべきですので、交渉以上に弁護士のアドバイスを受けながら行うべきでしょう。
さらに裁判まで進んだ場合、様々な書面の作成も求められますが、これについても弁護士に全てを任せることにより、1人で進めるよりも精神的にグッと余裕が生まれます。
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(2)相手と子どものことでもめている
離婚するのはいいけれど子どもは譲れない……。
お互いにこう思っていると、離婚まで行き着かず、時だけが過ぎていきます。
子どものことでの揉め事は、大きくは以下の2点です。
①親権(監護権)の帰属
子どもと一緒に暮らすのはどちらか、それが親権(監護権)の帰属です。
どちらと住むことが子どもにとって本当に有意義なのか、これはとても難しい問題です。
なぜなら、どちらの子どもでもあるからです。
これまでの育児の負担が一方の配偶者に偏っていた場合であっても、父親であり、母親であることに変わりはありません。
スムースにいく方がおかしいと言っても良いでしょう。
この点も、弁護士が現状をヒアリングし、どのように落とし所をつけていくか、アドバイスをすることでしょう。
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②養育費の額
親権の帰属にかかわらず、子育てにかかる費用はどちらの親も平等に負担すべきです。
ですが、払いたくない、払えないという方には、それなりの理由があるもの。
請求したい側も、請求された側も、どうすれば子育てにかかる費用をまかなっていけるのか、弁護士があらゆる知見をもってともに解決策を検討してくれます。
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関連記事(3)相手からDVを受けている
相手からDVを受けていて離婚を考えている場合は、ぜひとも弁護士に相談してください。
DVに関する相談先は自治体等にもありますが、離婚を考える場合は慰謝料の請求やつきまとい等を禁止する保護命令の手配など法的な手続きが必要になるケースが多々あります。
一刻も早く別居をした方が良いので、別居に関する公的制度のご案内もしてくれるでしょう。
DVの相手と別れるあらゆる手続きをしてもらうことができます。
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(4)相手に慰謝料請求したい、相手から慰謝料請求されている
浮気、モラハラ等、今まで我慢をしてきた方、逆に自由に行動されてきた方は、慰謝料の問題に直面します。
慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償ですので、どれだけ傷ついたのかはケースバイケースです。
当事者で金額を話し合っても水掛け論になる可能性があります。
自分のケースでの相場はどれくらいなのか、法律のプロである弁護士に入ってもらい、自身に有利な解決を導いてもらいましょう。
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関連記事(5)自らが有責者であるが円満に離婚を成立させたい
浮気をした、モラハラをしてきた等、自らが有責配偶者でありながら、円満に離婚を成立させたい方も多いでしょう。
このような方は、相手の気持ちを可能な限り傷つけないよう、やはりクッションとして1人味方をつけて交渉をすべきです。
弁護士があなたの代わりとなり、より良い離婚条件を目指して上手に配偶者との交渉をしてくれます。
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(6)できるだけ多く財産分与をもらいたい、できるだけ財産分与分を減らしたい
離婚では、夫婦であった期間に築き上げた財産は、すべて折半することが原則です。
夫婦の期間が長ければ長いほど、預貯金だけでなく、不動産、車、株式、債券などのさまざまな資産を保有していることでしょう。
可愛がっていたペットも財産の一部です。
離婚における交渉相手は、これ以上「いい顔」をしなくてもいい相手です。
そのため、どのように分けるか、当事者間の話し合いは、想像以上にスムースにいかないことでしょう。
このような場合は、弁護士に依頼し、自分に不利益がないよう解決してもらいましょう。
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関連記事(7)離婚したい理由が受け入れてもらえないかもしれない
相手が行方不明や病気、セックスレスなど、第三者に相談しても「頑張って」などと言われてしまいそうな理由での離婚は、辛いものです。
こんなときは弁護士に相談し、相手にも配慮した離婚の仕方を目指しましょう。弁護士はあなただけの味方です。
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4、離婚の弁護士費用を安くおさえる4つの方法
弁護士に依頼したいけれども、一括で費用を工面するのは難しい方もいらっしゃることでしょう。
本項では、できるだけ弁護士費用の支払いの負担を軽くする方法をご紹介します。
(1)早期決着
裁判から依頼する、など、離婚問題が佳境に入ってしまうと、弁護士がこれまでの状況を把握するのに時間がかかってしまうこともあり、費用がぐんと上がってしまいます。
そのため、もめている場合、もめそうだという場合はなるべく早期に相談に行きましょう。
早ければ早いほど決着をつける時間も短く済み、お互いの傷も浅くて済みます。
さらに、弁護士費用も比較的低料金で済むでしょう。
(2)複数の事務所をみて回り比較考量
弁護士費用は、事務所によって異なります。
そのため、費用対効果を事務所ごとに感じることが大切です。
無料相談を活用して複数の事務所を見て回り、比較考量されることをお勧めします。
(3)分割払いが可能か確認
弁護士費用は、相談料は相談時、着手金は依頼時、成功報酬は解決時、というように、支払うタイミングが何段階かに分かれていることが多いでしょう。
そのため、一括で総額を支払うということは少ないかと思いますが、基本的に事務所ごとに支払い方法を自由に定めることができますので、まずは確認することが大切です。
相談料と着手金については、離婚成立前に支払うことが考えられるわけですが、もし専業主婦などで固有の財産がない(すべて夫婦の財産である)場合は、弁護士に相談してください。
夫婦の財産から支払ってしまうと、財産分与や慰謝料等の金銭問題において、考慮することが必要となってくるからです。
また、成功報酬が高額となってくるケースもありますが、プラスに経済的利益を得た(財産分与を受けたなど)場合はこの中から支払うとすることもできます。
それ以外のケースでは分割払い等柔軟に対応してくれる事務所も増えていますので、無料相談の際に確認してみましょう。
(4)法テラスを活用
一定の所得制限がありますが、法テラスでは弁護士費用の立替払いをしてもらえます。
こちらのページで詳しく解説していますのでご覧ください。
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5、離婚に強い弁護士の見分け方
弁護士に依頼しようと決意したところで、ではどこの弁護士に依頼するのが良いのでしょうか?
弁護士ならどの弁護士に依頼しても結果は同じでしょうか?
実は、弁護士にも得意・不得意な分野があります。
本項では、離婚事件に精通している弁護士とそうでない弁護士の見分け方をご説明します。
(1)離婚問題に関する知識と経験
まず、離婚問題に関する知識をしっかりと持ち合わせていることが重要です。
弁護士は法律の知識はありますが、細かい法律についてすべて熟知しているわけではありません。
そのため、弁護士になってからの数年は特に、案件に当たってから調べていくこととなります。
ですので、離婚問題の実績が、そのまま知識となっていくわけです。
細かい相手方の気持ちの動きや出方など、経験があればあるほど読めてくることになります。
(2)離婚問題に真摯に取り組む気持ち
もしその弁護士自身は経験が浅くても、事務所自体で離婚事件を積極的に扱っている場合は、これは大きなメリットです。
弁護士であれば法律の基礎はありますから、離婚実務の先輩や資料がそろっていれば、問題なくフォローされていくことでしょう。
こういう場合に大切なのは、その弁護士に離婚問題に真摯に取り組む姿勢があるかどうかです。
弁護士の中には、刑事事件しか興味がない、企業の不祥事問題しか興味がないなど、興味が偏っている人も。
そのため、デリケートな離婚問題に細やかに対応する姿勢があるかどうか、見極めることが大切です。
6、離婚に強い弁護士の探し方は?
では、離婚問題に精通している弁護士はどのように探せばいいでしょうか。
(1)親族や知人等の紹介
親族や知人などに弁護士を紹介してもらうというのも一つの手段です。
実際に親族等が利用した弁護士であれば信頼できるでしょうし、弁護士も、紹介の場合、より丁寧な対応をしてくれることもあります。
(2)インターネットで検索する
離婚に強い弁護士を探すためには、離婚に関して詳しく情報が載っているウェブサイトを持っている法律事務所を当たってみるのもよいでしょう。
インターネットで離婚に関する事項を検索して、表示された法律事務所のウェブサイトを確認してみるといいでしょう。
離婚の弁護士費用まとめ
離婚の弁護士費用について、ご理解いただけたでしょうか。
弁護士費用の項目、相場、また支払い方法についてご説明いたしました。
そして、弁護士費用を支払ってまで依頼すべきケースかどうか。
ご自身で目指す結果と、そしてそれまでの労力と問題点を明らかにした上で、検討してみることが大切です。
弁護士に依頼すれば、ご希望の結果を共に全力で目指します。
全国の離婚に精通した弁護士が、最高の味方としてあなたのお役に立つことでしょう。
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