調停委員とは調停委員会を構成する裁判所の職員を指します。
また、調停とは裁判所を介した話し合いにより紛争を解決する手続きのことです。離婚調停などで裁判所に行ったとき、必ず話をする相手が調停委員です。
調停を有利に進めるためには担当の調停委員を味方につけることが重要になります。
そこで今回は
・調停委員とは?
・調停委員にはどのような人がなる?
・調停委員を味方につける方法
などについて解説します。
また、具体的にイメージできるように離婚調停における調停委員の役割などについて重点的にご紹介します。調停委員の役割や選び方について理解を深め、調停を有利に進めるための情報を提供します。
離婚調停の流れについては以下の関連記事をご覧ください。
1、調停委員とは?
まずは、調停委員についての概要をご紹介します。
(1)裁判官とともに「調停委員会」を構成するメンバー
離婚調停を含む家事調停は「調停委員会」によって進められます。調停委員会を構成するのは「裁判官1名+調停委員2名」の計3名です。
調停は基本的に、調停委員が当事者双方から話を聞く形で進みます。裁判官は調停の終了時など重要なタイミングにしか同席しませんので、当事者が主に顔を合わせるのは調停委員です。調停委員は、調停を有利に進めるためには大きなカギになる存在といえるでしょう。
(2)離婚調停では男女ひとりずつ
調停委員は2名ですが、離婚調停の場合には基本的に男女ひとりずつとなります。離婚調停は男女間で行われるため、双方の主張を公平に聞く観点から、男女バランスが重視されています。
(3)役割は話し合いの手助けをすること
調停委員の役割は話し合いの手助けをすることです。
最終的に判決が下される裁判とは異なり、調停は当事者の話し合いの場です。当事者双方が納得のいく解決を目指すため、本来は解決策を裁判所が押しつけるものではありません。
そのため調停委員には、話し合いがうまくいくように、一方に肩入れしすぎずにサポートすることが求められます。
2、調停委員にはどのような人がなる?
ここではどのような人が調停委員になるのかについてご紹介します。
(1)年齢は原則として40歳から70歳
調停委員の年齢の条件は、原則として40歳以上70歳未満であることです。実際に、この範囲内の年齢の調停委員がほとんどです。特に50歳代から60歳代が多く、9割程度を占めます。
参考:日本調停協会連合会サイト
(2)調停委員になれる人の条件
調停委員に任命されるためには、以下の条件のいずれかを満たさなければならないとされています。
- 弁護士資格を有している
- 民事・家事の紛争の解決に有用な専門的な知識を有している
- 社会生活の上で豊富な知識・経験を有している
「専門的知識を有している」人の例は士業です。公認会計士、税理士、不動産鑑定士などが調停委員となっていることがあります。
「社会生活の上で豊富な知識・経験を有している」という条件は広く、学校の校長経験者や、地元の名士などが例です。
3、調停委員が話を聞いてくれない状況は変えられるのか?
調停委員は様々なバックグラウンドを持つこともあり、当事者と相性が合わないことがあります。
「相手の味方ばかりしている」
「話を全く聞いてくれない」
と感じるケースは珍しくありません。そうした場合、調停委員を変更することはできるのでしょうか?
(1)変更は原則として認められない
結論から言うと、調停委員は原則として変更できません。
裁判では、不適切な訴訟運営をする裁判官に対しては、「忌避」を申し立てて変更を請求できる制度があります。
ところが調停では、調停委員の変更を申し立てる制度はありません。
調停委員と当事者との間に一定の関係がある場合には変更されますが、これは調停委員と当事者が親戚であるような場合に限られます。
いくら裁判所に要求しても、基本的に変更はできないとお考えください。
(2)苦情を言うと逆効果になる可能性も
いくら不満があるからといって、裁判所に苦情を入れすぎると不利になることも考えられます。
調停委員も人間ですので、苦情を受けていると知れば印象が悪くなってしまうためです。
変更が期待できない以上、下手に申し入れしてもメリットは考えづらいです。
どうしても自分に不利な結論を強要されている場合には、調停を不成立にしてしまうのもひとつの手といえるでしょう。
4、調停委員を味方につける方法
委員の変更は難しい以上、調停委員を味方につけるのが、有利な結果で調停を終えるためには得策といえます。
ここでは調停員を味方につける方法をご紹介します。
(1)身なりや言葉づかいに気をつける
まずは、身なりや言葉づかいが調停の場にふさわしいものになるようにしてください。
表面的な部分ではありますが、与える印象は重要です。
例えば、相手から「DVをしていた」と主張されている人が乱暴な言葉づかいをしていれば、「本当にDVをしていそうだな」と思われかねません。
いくら正当な主張をしていても、先入観を持たれてしまってはもったいないです。身なりや言葉づかいには注意してください。
(2)感情的になりすぎない
あまりに感情的にならないことも重要です。
調停委員は話を聞くのが仕事であるとはいえ、思うがまま発言する人に対する印象はよくありません。
たしかに、ある程度感情が入るのはやむを得ないですし、同情を得るのが有効なケースもあります。
しかし、ただ言いたいことを長々と言うだけだと、主張がわかりづらくなってしまい信用されづらいです。
主張をまとめ、わかりやすく伝えることは、調停委員を味方にするためには重要です。
(3)証拠があれば提示する
主張する際には、できるだけ証拠を示してください。
証拠に基づく主張であれば調停委員も納得しやすく、調停委員が相手を説得することも期待できます。
例えば「DVを受けた」と主張するのであれば、患部の写真や、診断書などの証拠を示した方がより説得力が増すことはご理解いただけるでしょう。
調停では証拠に基づいて主張するのが有効な方法といえます。
(4)弁護士をつける
自分だけではどうしようもない場合には、弁護士をつけるのがよい方法です。
弁護士は証拠をもとに、法的に説得力のある主張をします。
また、ご自身では思うように言いたいことを伝えられないという場合でもサポートを受けられるので、意見を確実に調停委員に伝えることが可能です。
当事者の意見をわかりやすくまとめる弁護士をつけることにより、調停委員を味方につけ、有利に調停を進めることできます。
調停委員のQ&A
Q1.調停委員とは?
離婚調停を含む家事調停は「調停委員会」によって進められます。調停委員会を構成するのは「裁判官1名+調停委員2名」の計3名です。
Q2.調停委員にはどのような人がなる?
調停委員になれる人の条件
- 弁護士資格を有している
- 民事・家事の紛争の解決に有用な専門的な知識を有している
- 社会生活の上で豊富な知識・経験を有している
Q3.調停委員を味方につける方法は?
- 身なりや言葉づかいに気を付ける
- 感情的になりすぎない
- 証拠があれば提示する
- 弁護士をつける
まとめ
ここまで、調停委員の属性や、味方につける方法などについて解説してきました。
調停をひとりで進めるのはストレスが大きいでしょう。
もし疑問点や困ったことがあれば、ぜひ弁護士にご相談ください。