レンタカーを利用する旅行に不安を抱える方も多いかと思いますが、交通事故を起こしてしまった場合の対処法や保険の適用範囲を理解しておくことで、安心して旅行を楽しむことができます。
レンタカーでの交通事故は、「保険」に入っているからと安心されている方も多いと思いますが、保険でカバーできるのは民事責任に限られており、刑事責任や行政上の責任まで免責されるわけではないので、注意が必要です。
今回は、
- 交通事故を起こした場合の責任について
- 使える保険の範囲と限界
- 交通事故発生時の対処手順
- レンタカーでの安全な運転方法
など、安心してレンタカーでご旅行ができるよう、出発前に知っておきたい4つのポイントについてご紹介します。
交通事故の加害者について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1、レンタカーで交通事故を起こした場合の責任
まず、皆様がおそらく一番関心のある「レンタカーで交通事故を起こした場合の責任」についてご案内します。
(1)刑事責任
交通事故によって怪我をさせたり、さらには相手が亡くなってしまったような場合には、刑事責任を負う可能性があります。単純な不注意で起きた事故で人を死傷させると、通常は「過失運転致死傷罪」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 第5条)に問われることになります。
その法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金(編注:平成29年4月24日現在)と、けっして軽いものではありません。
(2)行政上の責任
このような刑事責任とは別に、たとえ交通違反がなくても、事故を起こしたこと自体によって違反点数が付加され、場合によっては免許停止などにつながってしまいます。
(3)民事責任
そして、怪我した相手の治療費や壊れた車の修理費用を弁償しなければならないのは、通常の事故と同じです。
さらに、借りていた車も壊われてしまった場合には、レンタカー屋さんに生じた損害も賠償する必要があります。車自体の修理費用や、車の修理が終わるまでの営業損失(その車を貸すことで得られたはずの利益が失われた、という意味です)、などが考えられます。
もっとも、このような「お金を支払う責任」については、保険によって支払いを肩代わりしてもらえる可能性があります。
2、レンタカーによる交通事故で使える保険
(1)「対人補償」・「対物補償」・「車両補償」
まず、多くのレンタカー屋さんで基本プランに含まれているのが「対人補償」(他の人に怪我をさせてしまった場合の補償)、「対物補償」(他の人の車などを壊してしまった場合の補償)、「車両補償」(借りた車が壊れてしまった場合の補償)の3つの保険です。これらの保険は非常に重要なものなので、レンタカーを利用される際に必ず内容を確認しておきましょう。
「対人補償」については、無制限に補償してくれる内容であることが多いです。一方、「対物補償」についても、無制限のものもありますが、3000万円までなどと上限のあるものあります。「車両補償」については、通常車両時価額までとされているものが多いです。
また、「対物補償」・「車両補償」については、通常、「免責額」が定められています。支払わなければならない賠償額のうち、免責額までは利用者が支払い、それ以外の部分はレンタカー屋さんが支払う、ということです。
この免責額は、「対物補償」・「車両補償」それぞれ5万円ずつと定められていることが多いため、互いの車が壊れるような事故を起こした場合、10万円程度は支払わなければならないことになります。
10万円もけっして安くはない金額ですが、互いの車の修理費用総額はその何倍、何十倍になることもあるため、これらの基本的な保険に自分が加入できていることを確認した上で出発することが大切です。
(2)「免責補償制度(CDW)」
結局10万円は負担しなければならないのか…とご不安な方にオススメなのが、「免責額」も免れることができる「免責補償制度(CDW)」です。事前に24時間あたり1000円程度で加入できますので(たとえば1泊2日の旅行ならたったの2000円!)、ご不安な方は検討されてはいかがでしょうか。
(3)「ノン・オペレーション・チャージ(NOC)」
もっとも、この「免責補償制度」に加入していても、レンタカー屋さんがしばらく車を使えなくなる「営業損害」については補償してもらえません。通常は「ノン・オペレーション・チャージ(NOC)」という名称で、自走できる場合は2万円、自走できないほど壊れていると5万円など、定額の支払いが定められています。
(4)自動車保険の特約
これらのレンタカー屋さんとの契約に基づく制度とは別に、自家用車の任意保険に他車運転危険補償特約がついていたり、ドライバー保険に入っている方は、それらの保険によっても支払いを肩代わりしてもらえる可能性があります。
3、レンタカーで交通事故を起こしてしまったときの初期対応
では、ご紹介した責任の内容や保険制度を踏まえ、「レンタカーで交通事故を起こしてしまったときの初期対応」についてご案内します。
車を安全な場所に移す、怪我人の確認、救急車の手配、警察への連絡といったことが最優先なのは、普通の交通事故と同じです。
交通事故の加害者となってしまった際の事故直後の対応について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
さらに、レンタカーで交通事故を起こしてしまった場合には、車を貸してくれたレンタカー屋さんにも必ず連絡してください。
今後の対応について相談できますし、レンタカー屋さんへの連絡が保険利用の条件になっていることも多いからです。
余裕があれば、自家用車の任意保険会社に連絡して、保険適用の有無を確認しておいてもいいかもしれません。
4、安心してレンタカーを利用するための注意事項
最後に、やってはいけない運転・初期対応について整理しておきます。これらの事項に該当してしまうと、多くのレンタカー屋さんで保険利用ができなくなるため注意してください(つまり、発生した損害を全額負担しないといけなくなるということです!)。
- 出発時に申請していない人が運転して事故を起こしてしまう
- 無免許運転、飲酒運転によって事故を起こしてしまう
- レンタカーの延滞中に事故を起こしてしまう
- 警察に連絡しておらず事故証明書がない
- レンタカー屋さんに連絡しない
- 勝手に相手と示談してしまう
まとめ
簡単ではありますが、レンタカー利用から生じる複雑な責任と、その対処についてご案内させていただきました。最終的にはレンタカー屋さんとどのような契約で車を借りたのかが重要なので、万が一のために補償内容などは出発前に一度、パンフレットや店頭でご確認いただくことをオススメいたします。
ご旅行にレンタカーを利用される際はこれらの点にご留意いただき、素敵な休日をお過ごしください(もちろん、安全運転で!)。