後遺障害9級の障害が残ってしまう(残ってしまった)かもしれない……。
等級認定を受ける方法などについて詳しく知りたい。
もしかしたらあなたは今そうお考えではないでしょうか?
この記事では、ベリーベスト法律事務所の交通事故専門チームの弁護士が、そもそも後遺障害とは何かということから、後遺障害等級認定を受ける方法まで説明していきます。お読み頂ければ今後何をすべきかが分かるはずです。
この記事が交通事故に遭いお悩みの方のご参考になれば幸いです。
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目次
1、後遺障害9級を含めた「後遺障害が残る」とはどのような状態か?
(1)後遺障害とは?
交通事故によって負傷すると、治療を受けます。そのまま治療を受け続けていると、症状は改善していきます。
そして、そのまま完治すれば問題はありません。
しかし、ある一定のところまで回復した後、もう、それ以上は、どのような治療をしても回復しないと医学的に判断されることがあります。
この段階になると、「症状固定」となります。症状が固定したときに、残存している症状が後遺障害です。
(2)後遺障害等級認定とは?
後遺障害は、あらかじめ、1級から14級までに分類され、それぞれ要件が決まっています。
この要件に当てはまっているかどうかを損害保険料算出機構の調査事務所が審査し、認定することを後遺障害等級認定と言います。
なお、14級にも当てはまらなければ、非該当と認定されることになります。
2、後遺障害等級9級の認定を受けることができるのはどのような場合?
以下の表が後遺障害別等級表・別表第2とよばれるものです。これらの1号~17号のいずれかに当てはまると、後遺障害等級9級と認定されます。
9級1号 | 両目の視力が0.6以下になったもの | 視力が「0.6以下になったもの」と認められるには、交通事故の前には、その数値を超える視力があったことを証明する必要があります。 |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの | 視力が「0.06になったもの」と認められるには、交通事故の前には、その数値を超える視力があったことを証明する必要があります。 |
9級3号 | 両目に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | 3号の「半盲症」は、視野障害の1つです。 「半盲症」とは、視神経繊維が、視神経交叉または、それより後方で侵されるときに生じます。両目の視野の右半分又は、左半分が欠損した状態です。 3号の「視野狭窄」とは、視野が狭くなることです。 3号の「視野変状」とは、半盲症、視野狭窄以外で、視野に暗点や欠損があることです。 |
9級4号 | 両目のまぶたに著しい欠損を残すもの | 4号の「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、普通に目を閉じたときに、まぶたを失ったことによって、角膜を完全に覆うことができない程度のものです。 |
9級5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | 「鼻の欠損」とは、鼻軟骨部の全部又は、大部分を失ったことです。 「機能に著しい障害を残すもの」とは、鼻呼吸が困難になったか、もしくは、嗅覚を失った状態(嗅覚脱失)のことです。 |
9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | 固形食物の中に咀嚼できないものがあるか、または、咀嚼が十分にできないものがある場合に、この6号に該当します。 |
9級7号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 「両耳が平均純音聴力レベル60dB以上」又は、「両耳の平均純音聴力レベル50dB以上で、最高明瞭度が70%以上」の場合。 |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | 「1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上で、もう片方の耳の平均純音聴力レベルが50dB以上」の場合。 |
9級9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの | 「1耳の平均純音聴力レベルが、90dB以上」の場合。 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 下記のような症状によって、通常の労務に服することができるけれど、就労可能な職種の範囲が相当程度制限された場合です。 |
9級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 下記の症状に該当し、通常の労務に服することができるけれど、就労可能な職種の範囲が相当程度に制限された場合です。 ②心機能の低下による運動耐容能の低下が中等度であるもの |
9級12号 | 1手のおや指又はおや指を含み2以上の手指を失ったもの | 「手指を失った」とは、母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったものとされており、具体的には、①中手骨又は基節骨で切断した場合、②近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)において、基節骨と中節骨を切断した場合が該当します。 |
9級13号 | 1指のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの | 「手指の用を廃した」とは、手指の母指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものといいます。 |
9級14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの | 「足指を失ったもの」とは、中足指関節(指の付け根)から先を失うことです。 |
9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの | 「用を廃したもの」とは、親指の場合は、末節骨の半分以上、その他の指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節関節若しくは近位指節関節(親指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を残すものとされています。 |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | 「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のように、手足以外で日常露出する部分のことです。 |
9級17号 | 生殖器に著しい症状を残すもの | 生殖機能は残存しているけれど、通常の性交では生殖を行うことができないものが該当します。 |
3、後遺障害等級9級認定の場合に獲得できる損害賠償額について
(1)損害賠償総額の計算方法について
交通事故の損害賠償には、治療費、入院雑費、通院交通費、文書料、休業損害、入通院慰謝料などがありますが、後遺障害が残った人には、さらに、後遺障害慰謝料と後遺障害による逸失利益が認められます。
(2)後遺障害等級9級が認定された場合の慰謝料の金額について
裁判基準における後遺障害等級9級の慰謝料は、690万円を基準として、事案の特性によって増減されます。
なお、慰謝料の基準には弁護士基準と任意保険基準と自賠責基準があります。弁護士がご本人に代わり保険会社と交渉する場合には弁護士基準が利用されます。
慰謝料の基準 | 慰謝料の金額 |
弁護士基準(裁判基準) | 690万円 |
任意保険基準 | 約300万円 |
自賠責基準 | 245万円 |
保険会社に慰謝料の金額算出を任せると自賠責基準や任意保険基準で算出されてしまうことがあるので注意しましょう。
(3)後遺障害等級9級が認定された場合の逸失利益について
逸失利益とは、後遺障害がなかったら、得られたはずの利益のことを言います。
例えば、年収300万円の人は、後遺障害がなければ、翌年も翌々年も働いて、同程度の収入を得られたであろうと考えられます。
それが、交通事故に遭って、後遺障害が残ったことにより、将来、収入が得られなくなったり、減ったりすることになるのであれば、それは損害として、加害者に払ってもらう必要があるということになります。
後遺障害による逸失利益の計算は、「年収×労働能力喪失率×ライプニッツ係数」という計算式で算定します。
①年収
交通事故の前年の収入もしくは、交通事故直前3ヶ月の平均賃金で計算します。
②労働能力喪失率
労働能力喪失率は、後遺障害等級によって決まります。
後遺障害等級9級に該当する場合は、労働能力喪失率は35%です。
つまり、本来なら、年収300万円を稼げた人が、交通事故の後遺障害を負うことによって、本来稼げた額の35%である105万円を稼げなくなったとみなされます。
③労働可能年数とライプニッツ係数
労働可能年数は、症状固定日の年齢から67歳までとされています。
ただし、年長者については、67歳までの年数と平均余命の2分の1の年数とを比べて長い方を利用するのが原則となります。
収入は、これから毎年毎年得るはずだったものですが、損害賠償は、これを前倒しで、一括で受け取ることになります。
仮に、預金が年利5%で増えるとしたら、今年もらった105万円は、来年110万2500円になっています。再来年は、115万7625円になります(複利で増えていくからです)。
交通事故がなければ、来年働いて、ようやく300万円もらえるだけなのに、前倒しでもらったら、315万円になっているのはおかしいということになります。
そこで、この増えていく分をあらかじめ控除することを「中間控除」と言い、その計算に用いられる係数をライプニッツ係数と言います。
2020年4月1日以降に発生した交通事故では、3%の中間控除を行うライプニッツ係数が利用されています(それ以前は5%)。
ライプニッツ係数は、覚えられるものではありませんので、インターネットなどで検索して探してみるか、保険会社に聞いてみるといいでしょう。
④計算例
例えば、年収300万円だった人が、45歳で症状固定して、後遺障害等級9級と認定されたとします。
45歳の人は、67歳まで働けたと想定されますので、労働可能年数は、22年です。そして、22年のライプニッツ係数は、「15.937」です。
そうすると、この人が受けとる後遺障害による逸失利益は、16,733,850円になります。
(計算式)
年収300万円×労働能力喪失率35%×ライプニッツ係数15.937
=16,733,850円
(4)損害計算シュミレーション
①総損害額
まずは、すべての損害項目を足していって、総損害額を算定します。
上記の年収300万円の人が、入院約1週間(7日)、通院約7ヶ月(210日)、通院日数30日を経て、45歳で症状固定し、後遺障害等級9級に認定されたとして、計算例を示します。
この人は、交通事故から3ヶ月休業し、4ヶ月目からは、仕事に行きながら治療をしていたものとします。
実際には端数まで計算しますが、ここでは数字を簡単にします。
治療費(事案によります) 100万円
入院雑費(1日1,500円です) 10,500円
交通費(事案によります) 3万円
文書料(1通5,000円であることが多いです) 1万円
休業損害(90日×300万円÷365日) 74万円
入通院慰謝料 1,317,000円
後遺障害慰謝料 690万円
後遺障害による逸失利益 16,733,850円
合計2,674万1,350円
なお、事案によっては、付添看護費、付添交通費、器具装具代などが認められる場合もあります。
②過失相殺
総損害額から、自分の過失分の損害賠償金は控除されます。
上記の例で、総損害額が2,674万1,350円であったとしても、過失割合が、加害者75:被害者25である場合、被害者が受けとるべき損害賠償金は、2,674万1,350円の75%の2,255万7,887円になります。
③既払金控除
治療費などは、保険会社が病院に直接払っていることが多いので、既払金になります。
その他に、自賠責保険から支払いを受けた損害賠償金も既払金です。
また、治療途中に交通費や文書料などをすでに受け取っている場合もありますから、すでに受け取っている金額を差し引きます。
例えば、任意保険会社から治療費、交通費等として110万円がすでに払われており、さらに自賠責保険から616万円受け取っていたとしたら、既払金は、726万円です。
そこで、被害者が、最終的に加害者の任意保険会社から受け取る損害賠償金は、1,529万7,887円になります。
4、適切な後遺障害等級認定の獲得方法
(1)申請手続きは被害者請求で
後遺障害等級認定の申請は、相手が加入している自賠責保険に対して行います。
交通事故を取り扱った警察署が発行してくれる「交通事故証明書」を見れば、相手が加入している自賠責が分かります。
後遺障害等級認定申請を受けた自賠責保険会社は、損害保険料算出機構の調査事務所に後遺障害等級の認定を依頼します。
加害者がどこの自賠責保険に加入していようとも、後遺障害を判断する調査事務所は変わりません(地域によって変わります)。
自賠責保険への請求は、「(一括請求のための)事前認定」と「被害者請求(非一括請求)」いう2つの方法があります。
一括請求とは、加害者が加入している任意保険会社が、自賠責保険の損害賠償金もまとめて被害者に払うことです。
任意保険会社は、被害者に支払う損害賠償金額を決めるためには、後遺障害が何級であるかを知る必要があります。
そこで、任意保険会社が、自賠責保険に対して、事前に「被害者の後遺障害の等級を認定してほしい」と申請します。
これを「事前認定」と言います。
任意保険会社は、自賠責保険によって認定された後遺障害等級を基に、損害賠償金を被害者に払います。
その後、任意保険会会社は、自賠責保険分の損害賠償金を自賠責保険から取り戻します。
一方、「被害者請求」は、文字通り、被害者が直接、加害者が加入している自賠責保険の損害賠償額の支払いと後遺障害等級認定の申請を行うことです。
被害者は、後遺障害等級認定を受け、まず、自賠責保険分の損害賠償金を払ってもらいます。
その後、足りない分の損害賠償金を加害者の任意保険会社に請求します。
自賠責保険会社と任意保険会社の2つに別々に損害賠償金を請求するため、「非一括請求」と呼ばれることもあります。
調査事務所は、後遺障害等級の認定の結果を被害者請求の場合には、被害者本人に送りますが、事前認定の場合には、任意保険会社に送ります。
被害者本人は、任保険会社から、結果を聞きます。
被害者請求の方が、自分できちんと資料を精査してから、直接自賠責保険に申請することができますし、任意保険会社との示談を待たずに一部だけでも損害保険金を受け取ることができるというメリットがあります。
また、事前認定では、事前認定結果を口頭で伝えるだけで、書面を引き渡さない任意保険会社もありますので、任意保険会社の言うことが本当かどうかが分からないというデメリットもあります。
(2)適切な後遺障害等級認定を受けるためのポイント
後遺障害等級認定の申請のためには、医師に後遺障害診断書を記載してもらう必要があります。
後遺障害診断書を受け取ったら、上記の後遺障害9級の要件と照らし合わせて、記載に不足がないかチェックします。
不足していると考えられる部分については、医師に追加の記載を求めたり、意見書を作成してもらったりすることもあります。
5、弁護士に依頼した方がいい?依頼する場合のメリットとデメリットについて
(1)弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼するメリットは、事案ごとの問題点を把握し、これに対して、どのような証拠を集めたり、提出したりすればいいのかをきちんと判断してもらえるところにあります。
多くの人にとって、自分もしくは、家族が交通事故に遭い、後遺障害が残るなどという出来事は、人生に1回あるかどうかです。
それでは、この交通事故で争われるポイントはどこになるか、そのために何を準備すればいいかなどを的確に判断することは難しいでしょう。
交通事故案件の経験が豊富な弁護士であれば、これらを判断し、症状固定前から必要な準備をしていくことができます。
被害者請求においても、弁護士が、あらかじめ、カルテを精査し、意見書を作って提出することもあります。
また、交通事故の損害基準は、自賠責基準、保険会社基準、裁判基準の3つがあるとよく言われますが、弁護士が示談交渉を行う場合、保険会社も保険会社基準ではなく、裁判基準で損害額を計算するようになります。
そこで、示談で終わらせるにしても、弁護士に交渉してもらうことには意味があります。
(2)弁護士費用特約に加入していれば弁護士費用の負担が軽くなる
弁護士に依頼することをためらう一番の要因は、弁護士費用のことだと思います。
しかし、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士報酬と実費を合わせて300万円までは、保険会社が支払いをしてくれます。
自分の自動車保険に弁護士費用特約を付加していないか確認してみてください。
なお、交通事故の被害者の場合、弁護士費用は、受けとった損害賠償金の中から支払えばよいですし、弁護士が関与することで、損害賠償額が増えればその中から弁護士費用を払えるわけですから、最終的に損をしてしまうということはほとんどありません。
(3)弁護士の探し方
医師に専門分野があるように、弁護士にも専門分野があります。
企業法務に特化した弁護士、刑事事件に特化した弁護士、倒産事件に特化した弁護士などさまざまです。
しかしながら、弁護士は、医師と違って、自分の主な専門分野以外は一切扱わないというものではありません。
専門分野も1つだけではなく、いくつか持っているものですし、広く民事事件全般を専門にしているという弁護士もいます。
そのような状況から、主な専門分野が別でも、交通事故案件を受任する弁護士は大勢います。
しかし、やはり、交通事故を専門分野にしている弁護士は、知識と経験が違いますから、弁護士の主な専門分野や実績はよく確認した方がいいでしょう。
弁護士を選ぶときには、最初に相談した弁護士に決めてしまうのではなく、交通事故を専門分野としている弁護士何人かに相談してみましょう。
その際に、いろいろと質問してみて、実績や話しやすさ、説明の分かりやすさなどから、自分に合う弁護士を選びましょう。
まとめ
後遺障害等級9級は、それほど軽い後遺障害ではありません。
適正な後遺障害等級の認定がなされるように、9級の要件を知り、きちんと準備してから後遺障害等級認定を受けましょう。