「和解離婚」と「認諾離婚」の違いをご存知でしょうか?
離婚が裁判に発展すると、親権や財産分与、慰謝料などについて当事者同士の話し合いが泥沼化して、精神的に大きな負担となります。
このような状況を改善するため、平成16年より「和解離婚」と「認諾離婚」という、新しい離婚の形が選択できるようになりました。
今回は、
- 和解離婚と認諾離婚の違い
- 和解離婚の適切なタイミングとメリット
についてお伝えします。
現在、離婚の訴訟中で、なるべく早期に、より良い条件で離婚したい方の参考になれば幸いです。
目次
1、和解離婚と認諾離婚|和解離婚に関する基礎知識
和解離婚の基礎知識、および認諾離婚との違いについて解説します。
(1)和解離婚とは
和解離婚(わかいりこん)とは、離婚訴訟中の夫婦が歩み寄り、離婚が合意に至った場合の離婚方法です。
裁判所に訴訟を提起していても、裁判の途中で和解が成立すれば和解離婚が成立します。
夫婦の話し合いによる離婚には、どの段階で合意をしたかにより協議離婚・調停離婚・和解離婚と区別します。
離婚調停前に合意をした場合は協議離婚、離婚調停で合意をした場合は調停離婚、離婚訴訟中に合意をした場合は和解離婚です。
(2)認諾離婚との違い
認諾離婚(にんだくりこん)とは、離婚訴訟を起こしている間に、被告が原告の訴訟の言い分を全面的に受け入れることで訴訟が終わる離婚方法です。
和解離婚が両者の譲歩によって離婚する方法とすれば、認諾離婚は訴訟を起こされた被告が争いを避ける目的などで、原告の請求の認諾を行います。
ただし、認諾離婚は離婚に付随する親権や財産分与といった問題を含めないことが条件となっています。
2、和解離婚の際に取り決めておくべき条項
和解離婚の場合、次に挙げる親権、財産分与といった事項について、最終的には夫婦双方の合意で決め、話し合いでまとまった内容を裁判官に伝えることにより、それらが和解条項に記載されます。
和解離婚の際に夫婦間で取り決めておくべき条項は次のとおりです。
- 親権者の取り決め(未成年の子供がいる場合)
- 養育費の額及び支払時期・方法(未成年の子供がいる場合)
- 面会交流の有無・頻度・方法についての取り決め(未成年の子供がいる場合)
- 財産分与の内容・分与方法
- 婚姻費用の分担額・支払方法(離婚前に別居期間がある場合)
- 慰謝料の額・支払方法(夫婦の一方に非がある離婚の場合)
3、和解金が発生するケースも
和解離婚の際には「和解金」が支払われる場合があります。
和解金が支払われる理由・経緯には次のようなケースが挙げられます。
- 離婚を請求された側が早期に離婚に応じる代わりに和解金の支払いを求める
- 離婚理由に不貞行為はないが、和解金名目の金銭を支払い問題の早期解決を図る
和解金は離婚の解決金として、お互いにこれ以上の訴訟の長期化を避けるという目的で、一定の金銭が支払われるケースがあるのです。
4、和解離婚が成立するタイミングと手続き
どのタイミングで和解離婚が成立するのか、どのような手続きが必要なのか、具体的に解説していきます。
(1)タイミング
和解離婚が成立するタイミングは、人事訴訟法37条1項(民事訴訟法267条準用)により、和解の内容が和解調書に記載された時点です。
和解調書には「原告と被告は、本日、和解離婚する。」と記載されます。
参考:人事訴訟法
(2)手続き
夫婦間で離婚の合意がなされたら和解調書が作成され、これにより和解成立となり離婚裁判は終了します(離婚届の提出を待たずにただちに離婚の効力が発生します)。
さらに、和解離婚成立の日から10日以内に、和解調書謄本を添付して市区町村役場に離婚届を提出してすべての手続きが終了となります。
申立人(訴えた側)は、和解調書と一緒に、離婚届を市区町村役場に届け出ることで離婚手続きは全て終了です。
5、和解離婚を選択するメリット
和解離婚は泥沼化していく離婚裁判に歯止めをかけるための、原告・被告ともにメリットを享受できる離婚方法です。
(1)早期の離婚成立が目指せる
離婚訴訟を判決が出るまで継続するとなると、1年くらいかかることも多いでしょう。
一方で、和解離婚を選択すると判決を待たずして、訴訟を早期に終わらせることができます。
離婚の裁判は原告と被告、両者の家族ともに肉体的、精神的な負担が大きいため、早期解決を図るために和解離婚を選択するケースも少なくありません。
(2)相手が譲歩してくれる可能性がある
一般的に、和解を選択することで親権、財産分与といった事項について相手が譲歩したり、軟化したりしてより良い条件での離婚、より早い問題解決が図れます。
(3)裁判離婚よりもいい条件で離婚できる可能性がある
一般的に、和解による離婚は裁判離婚よりも良い条件で離婚できると言われています。
たとえば慰謝料や養育費などを支払う側は、裁判で離婚すると一括での支払いとなり、支払いがでいない場合は財産の差し押さえなどのリスクがあります。これが和解であれば、分割払いや減額の可能性もあります。
一方のお金を受け取る側は、相手が金を支払わない場合は強制執行の手続きが必要になります。
万が一、相手に支払えるだけの財産がない場合には、強制執行も無駄に終わる可能性もあります。
和解を選択すれば、相手が支払える範囲内で任意の履行を求めることができ、判決よりも有利な条件で離婚できるというケースが多いです。
6、協議離婚ではなく和解離婚を選ぶメリットはあるの?
和解離婚も協議離婚も、夫婦の話し合いによって離婚する点については共通しています。
両者の違いはどの段階で合意に至ったかです。
離婚調停前に合意をした場合は協議離婚、離婚訴訟中に合意をした場合は和解離婚となります。
さらに、最も重要なことは離婚が成立するタイミングです。
和解離婚は「和解内容が和解調書に記載された時点」ですが、協議離婚は「離婚届が市区町村役場に受理された時点」です。
つまり、協議離婚の場合は市区町村役場に離婚届を提出する前に相手が心変わりして、合意した事項について異議申し立てをする可能性があるというリスクが生じます。
まとめ
離婚の裁判は納得の行く形で終わらせていという気持ちがある反面、費用や時間がかかることはもちろん、肉体的にも精神的にも負担が大きいため、なるべく早く終わらせたいという方も多いでしょう。
なるべく好条件で、なおかつ早期に離婚の裁判を終了させたいとお考えであれば、和解離婚を検討されることをおすすめします。