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離婚時の特有財産とは?財産分与で失敗しないための6つの知識

特有財産とは、夫婦の一方が単独で有する財産のことで、結婚前から持っていた財産や、結婚後に自己の名で取得した財産のことを指します。

離婚の際に財産分与を行う場合でも、特有財産は原則として分ける必要がありません。

しかしながら、婚姻生活をある程度の年数続けていると、どの財産が夫のものであり、どの財産が妻の物であるのかがわかりにくくなっていることが多々あります。
そのため、財産分与としてどこまでの財産を分けるべきかについて、夫婦間で意見が対立することが少なくありません。

この点を曖昧にしたまま財産分与を行うと、財産を渡す側の配偶者は損をする可能性が高いことに注意が必要です。

そこで今回は、

・特有財産とは
・特有財産と共有財産を区別する方法
・特有財産であることを証明する方法
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

離婚時に財産分与を求められ、ご自身の固有財産は渡したくないとお考えの方に、この記事がお役に立てば幸いです。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、特有財産とは?

特有財産とは?

特有財産とは、夫婦の一方が単独で有する財産のことです。

夫婦は互いに助け合って生活していくものですから、円満に婚姻生活を送っている間は、どの財産がどちらの物なのかを気にする必要は特にないかもしれません。
しかし、離婚して財産分与を行う際には、どれが特有財産に該当するのかが重要な問題となります。

(1)財産分与では分け合うのは共有財産のみ

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚時に公平に分け合う制度のことです。
夫婦が婚姻中に協力して得た財産のことを、共有財産といいます。

婚姻中の夫婦は、互いに協力して生活していくこととされています(民法752条)。
そうである以上、婚姻中に夫婦の一方が得た収入や、その収入で得た財産は、すべて共有財産ということになります。

たとえ夫婦の一方が専業主婦(専業主夫)であったとしても、家事や育児で家庭を守って配偶者の生活を支えるからこそ、配偶者は仕事をして収入を得ることができるのです。
そのため、財産の形成・維持に対する貢献度は基本的に夫婦対等であると考えられています。
したがって、財産分与では共有財産を2分の1ずつ分け合うことが一般的です。

(2)特有財産は財産分与の対象外

しかし、夫婦の一方が配偶者の協力とは無関係に得た財産(特有財産)については、財産分与の際に分け合うべき理由がありません。
特有財産まで分け合わなければならないとなると、不公平な結果が生じてしまいます。そのため、特有財産は財産分与の対象外とされています。

特有財産の定義について、民法では「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産」とされています(同法762条1項)。

ただ、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」であっても、婚姻後に配偶者がその財産の維持・増加に協力している場合もあるでしょう。
また、形式的には「婚姻中自己の名で得た財産」であっても、実質的には夫婦が協力して得た財産に該当することもあるはずです。

したがって、特有財産に当たるか共有財産に当たるかを判断するためには、夫婦の協力によってその財産が形成・維持されたのか、そうでないのかを実質的に考慮する必要があります。

そこで、以下、原則的に特有財産に該当する財産を具体的に確認した上で、特有財産と共有財産の区別で注意が必要なケースについてもみていきましょう。

2、特有財産に該当するもの

特有財産に該当するもの

以下のものは、原則的に特有財産に該当します。

(1)結婚前から所有していた財産

夫婦の一方が結婚前から所有していた財産は、夫婦の協力とは無関係であることが明らかなので、特有財産となります。

結婚前に貯めていた預貯金や、結婚前に購入した自動車などが典型的です。
その他にも、人によっては結婚前に支払った生命保険の掛け金(に相当する解約返戻金)、結婚前に購入した不動産などを有していることもあるでしょう。

(2)相続や贈与により取得した財産

結婚後に夫婦の一方が取得した財産でも、相続や第三者からの贈与によって得たものは夫婦の協力とは無関係なので、特有財産となります。

例えば、婚姻中に夫が多額のお金や不動産を相続したとしても、妻が離婚時にその分与を請求することはできません。

贈与については注意が必要で、夫婦の一方の親が「夫婦の生活費の足しに」という趣旨で資金援助をした場合、その資金は共有財産と判断されます。

それに対して、相続税対策の目的で生前贈与が行われ、受け取った財産をそのまま保有している場合には、特有財産ということになります。

(3)社会通念上、固有の所有物と考えられるもの

婚姻中に、夫婦の一方の収入で指輪や宝石などのアクセサリー類、洋服やバッグなどのブランド品を購入することもあるでしょう。
夫から妻にプレゼントすることもあれば、逆に妻から夫にプレゼントしたり、夫が自分のために購入することもあると思われます。

こういった高価な財産にも換金価値があり、理論上は夫婦の協力で得た財産に当たるといわざるを得ません。

しかし、これらの身の回り品については、社会通念上は固有の所有物であると考えられています。
よほど高価な物が使い切れないほどあるような場合は別として、一般的に身の回り品は財産分与の対象外となります。

(4)別居後に取得した財産

離婚前に別居している夫婦の場合、生活状況にもよりますが、婚姻費用のやりとりや子どもとの面会交流を除いて特段の交流がないようなであれば、もはや夫婦が協力して財産を築いているという関係にはありません。
したがって、このような場合、別居後に夫婦の一方が取得した財産は特有財産となります。

例えば、別居後に夫が昇進して増収したことにより貯蓄が増えたとしても、増加した部分は財産分与の対象にはなりません。

3、特有財産と共有財産の区別で注意が必要なケース

特有財産と共有財産の区別で注意が必要なケース

もともとは特有財産であっても、婚姻生活を営んでいるうちに共有財産と渾然一体となったり、一部が共有財産化したりすることも少なくありません。

ここでは、よくある5つのケースを挙げて、特有財産と共有財産とをどのように区別すればよいのかを解説します。

(1)結婚前の預貯金と結婚後の預貯金が渾然一体となっているケース

結婚前の預貯金は特有財産ですが、結婚後の預貯金と渾然一体となってしまうケースは多々あります。
その場合、特有財産を主張することは難しいケースが多いのが実情です。

例えば、夫が結婚前に300万円の預金を有しており、結婚後もその口座を給料受取口座として使い続け、様々な料金の引き落としにも利用していたとします。
こうなると、離婚時にその口座に300万円が残っていたとしても、そのお金が特有財産のまま残ったものであるのか、特有財産としては消滅して共有財産として新たに築いたものであるのか、判別することは難しくなるのです。

その結果、家庭裁判所の審判や離婚裁判では「判別不能」として、共有財産として扱われることがあります。
なぜなら、民法上、夫婦のどちらに属するかが明らかでない財産は共有財産であると推定されるからです(同法762条2項)。

婚姻期間が長くなればなるほど判別が難しくなるので、共有財産と判断されやすくなります。

ただ、通帳の記載や銀行の取引履歴などで、特有財産の300万円には一切手を付けることなく、結婚後の支出は共有財産としての収入のみで賄ってきたことを立証できれば、推定を覆して特有財産を主張することができます。

(2)結納金で家財道具を購入したケース

婚約時に夫側から妻側へ支払った結納金で、結婚後に家財道具を購入するケースも多いことでしょう。

結納金は婚姻前に夫側から妻側へ贈与されるものなので、妻の特有財産に当たります。
しかし、結婚後に夫婦の生活ために家財道具を購入した時点で共有財産となります。したがって、その家財道具が財産分与の対象となります。

例えば、結納金100万円を全額使って家財道具を購入した場合、離婚時に妻が「結納金100万円は特有財産だったから返してください」と主張しても認められません。
購入した家財道具の時価が合計10万円だとしたら、その半分に当たる5万円を財産分与として請求できるのみです。

(3)住宅ローンの頭金を特有財産で支払ったケース

婚姻中に夫婦が取得した住宅は、原則として共有財産となり、離婚時の残存価値が財産分与の対象となります。

しかし、夫婦の一方が住宅ローンの頭金を特有財産で支払った場合は、マイホームの残存価値の一部が特有財産となり、財産分与の対象から除外されます。

この場合の特有財産の計算方法は少し複雑なので、簡単な事例を挙げて解説します。

3,000万円のマンションを購入する際に、夫が結婚前から貯めていた500万円と、夫の両親から贈与された500万円を頭金として支払ったとします。
そして、残りの2,000万円については住宅ローンを組み、夫婦で協力して返済してきたとしましょう。

この夫婦が離婚することになり、その時点でマンションの時価は2,000万円、住宅ローンの残高が1,000万円あるとします。

このケースでマンションの残存価値は、「時価-住宅ローン残高」の1,000万円です。

そして、夫が頭金と支払った合計1,000万円は夫の特有財産でしたが、全額をマンションの残存価値から差し引けるわけではありません。
なぜなら、マンションの時価が下落しているため、それに応じて特有財産も減額しなければ夫婦間で不公平が生じるからです。

マンションの時価が3,000万円から2,000万円に下落しているので、夫の特有財産は「1,000万円×2/3」で約667万円となります。

そうすると、共有財産として財産分与の対象となるのは、「マンションの残存価値-夫の特有財産」で約333万円です。この金額を、基本的には2分の1ずつ分け合うことになります。

住宅ローンが残っている場合の財産分与については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

(4)特有財産である住宅の維持に配偶者が貢献したケース

夫婦の一方が婚姻前に取得した住宅は特有財産ですが、その住宅で夫婦が生活し、配偶者が住宅の維持に貢献した場合には、離婚時の住宅の残存価値の一部が共有財産となる可能性があります。

この点、婚姻中に夫が自分の親から借地権の贈与を受けたケースですが、参考となる裁判例があります(東京高裁昭和55年12月16日判決)。

この事例では、夫名義となった借地上で店舗を経営していましたが、夫が病気で入通院している間、妻が店を切り盛りして家計を支えていました。裁判所は、妻が夫名義の借地権の維持に貢献したことが明らかであるとして、離婚時の借地権価格の1割に当たる金額について財産分与を認めました。

財産分与として何割の価格が認められるかは、個別の事案ごとに裁判所が具体的な事情を考慮して決めますので、ケースバイケースであるとしかいえません。

ただ、上記の裁判例のように妻の貢献度が高いと考えられるケースでも1割とされていますので、高い割合は認められにくいと考えられます。5割を主張することは難しいでしょう。

とはいえ、夫婦間の話し合いで合意ができれば、自由に分与割合を決めることが可能です。

(5)退職金を財産分与するケース

退職金も、既に受け取ったものを使い切らずに残している場合や、今後受け取る可能性が高いと認められる場合には、共有財産として財産分与の対象となります。

ただし、共有財産となるのは、あくまでも夫婦の協力によって得たと認められる部分だけです。つまり、退職金のうち、婚姻期間に相当する部分のみが財産分与の対象となります。

例えば、夫が勤続40年で3,000万円の退職金を受け取って離婚するとしましょう。婚姻期間が30年だとすれば、共有財産となるのは「3,000万円×3/4」で2,250万円です。財産分与では、2,250万円を基本的に2分の1ずつ分け合うことになります。

ただ、離婚時に夫が在職中で、実際に退職金受け取るまでに年数がある場合には、中間利息を控除するなどして夫婦間の公平を図る必要もあります。

退職金の財産分与の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

4、へそくりは特有財産か?

へそくりは特有財産か?

婚姻中に夫婦の一方がコツコツと貯めたお金は、特有財産となるのでしょうか。特に、主婦がへそくりを貯めているケースでは気になるところでしょう。

結論をいえば、へそくりは基本的に特有財産にはなりません。なぜなら、婚姻中の夫婦の収入は共有財産であり、その中から貯めたお金も共有財産のままだからです。

夫が自分の収入の中から確保した小遣いを貯めていた場合も同様に、その貯金は共有財産となります。

ただし、夫婦の一方が倹約して貯金していたにもかかわらず、配偶者が浪費していたような場合には、その貯金は共有財産となるものの、倹約して貯めた側が財産分与の割合で優遇されることはあります。

5、特有財産を主張するには証明が必要

特有財産を主張するには証明が必要

婚姻期間がある程度の年数になると、特有財産と共有財産の区別が難しくなっていることが多くなります。
でずが、財産分与の際に特有財産を除外するためには、その財産が特有財産を証明しなければならないことに注意が必要です。

(1)証明できなければ共有財産となる

「3」(2)でもご説明しましたが、民法上、夫婦のどちらに属するかが明らかでない財産は共有財産であると推定されます(同法762条2項)。

推定されるというのは、「そうではない」と主張する側が、そうではないことを立証しない限り、「そうである」として取り扱うということです。
そのため、特有財産なのか共有財産なのか判別しがたい財産については、特有財産であると主張する側がそれを立証しない限り、共有財産となってしまうのです。

結婚前の貯金と結婚後の生活資金が渾然一体となっているケースは、共有財産であると推定されやすい典型例といえます。

(2)特有財産の証明方法

特有財産であることを証明するには、客観的な資料を示すことが必要です。以下の財産については、立証が比較的容易であるといえます。

財産の種類   

立証に必要な資料                     

不動産     

登記事項証明書や売買契約書

自動車     

車検証や売買契約書

退職金     

 

 

・既に受け取っている場合は通帳、今後受け取る場合は就業規則や退職金規程など

・雇用契約書など、入社年月日がわかる資料

保険      

 

・加入年月日がわかる資料(保険証券など)

・婚姻前に支払った掛け金の額がわかる資料(通帳など)

 株などの有価証券

証券や取引の契約書など

相続した財産  

遺言書または遺産分割協議書

贈与を受けた財産

贈与契約書

一方で、結婚前の貯金が特有財産として残っていることを立証するのは、難しいことが多いです。

立証方法としては、結婚当時から離婚または別居に至るまでの通帳(通帳を紛失している場合は銀行から取り寄せた取引履歴)で入出金の流れを把握し、結婚前の貯金には手を付けていないと説明することが考えられます。

ただし、銀行の取引履歴は、一般的に10年前の分までしか開示されないことにも注意が必要です。厳密な立証が難しい場合には、話し合いで決着をつける必要があることも多くなっています。

6、財産分与で損しないためには弁護士に相談を

財産分与で損しないためには弁護士に相談を

財産分与の際に特有財産か共有財産家の問題でもめたときは、弁護士のサポートを活用することが有効です。

弁護士に相談するだけでも、特有財産と共有財産の区別について的確なアドバイスが得られます。

配偶者と感情的に対立している場合でも、弁護士を間に入れて冷静かつ論理的に交渉すれば、柔軟な解決が期待できます。

財産分与の調停や審判、離婚裁判といった法的手続きが必要となった場合でも、弁護士がいれば複雑な手続きをすべて任せることが可能です。
特有財産を証明するための証拠集めについてもサポートしてもらえるので、有利な結果が期待できます。

配偶者と言い争いを続けるよりも、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

離婚時に財産分与を公平に行おうと考えても、特有財産と共有財産の区別が意外に難しく、特有財産の証明も難しいことに気付かれた方が多いのではないでしょうか。

一般的には、特有財産と共有財産の区別を曖昧にしたまま、適当に財産分与を行うケースが多いようです。
しかし、このような対応では、特有財産を所有している側が損をする可能性が高いことに注意しなければなりません。

財産分与で困ったときには、弁護士から専門的なアドバイスを受けて、的確に対処することをおすすめします。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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