自分で強制執行をして養育費を回収するために知っておくべき8つのこと

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「養育費の支払いが滞って困っている」

毎月養育費をもらっている方にとっては、支払いが滞ることは重大な問題です。

支払いが滞っている場合には生活していけるか不安だと思いますので、一刻も早く養育費を支払ってもらいたいところでしょう。実際、「養育費の支払いが止まってしまって困っているのですが」という相談を戴くことは少なくありません。

では、どのようにすれば早期に確実に支払ってもらうことができるでしょうか?

方法としては、給料や預金口座に対して強制執行(差し押さえ)することによって、養育費を回収することができます。強制執行というと裁判所を利用する手続きなので、敷居が高く感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、正しく方法を知れば、弁護士に依頼せずにご自身で行うことも可能です。

以下では、ご自身で養育費を強制執行で回収できるよう、具体的な方法について書いていきます。

1、話し合いで養育費を支払ってもらうことが難しい場合には養育費の強制執行を利用!

口約束や、一般的な書面(自分たちで作成した離婚協議書等)等の場合には、相手方の支払いが滞り、相手方に支払いを請求しても任意に支払ってくれないとき、そのままでは強制執行という手続きを利用することができません。まずは、裁判等の手続きをして勝訴判決等を獲得することが必要となります。

これに対して、以下の場合には強制執行が可能です。

  1. 養育費の支払いについて裁判で勝訴した場合
  2. 養育費の支払いについて、調停で成立した場合
  3. 離婚協議書などに養育費について記載され、これが公正証書として作成された場合
    →なお、公正証書に「養育費の支払いが不払いになったら、強制執行をしてもよい」という旨の記載(執行認諾文言といいます。)が必要となります。

2、強制執行手続きの内容は?

「強制執行して養育費を回収しよう!」と考えても、きちんと相手の財産が存在しているポイントを対象としなければ費用をかけてもお金(もしくは金銭的価値ある物品)を回収できないという事態となります。しかし、相手の財産がわからなければ強制執行しても意味がありません。なぜならば、費用をかけてもお金(もしくは金銭的価値ある物品)を回収できないという事態となってしまうからです。ですから、裁判等を起こす前に、まずは財産調査が必要なのですが、この財産調査とは、まさに強制執行できる財産を探すことなのです。

強制執行(差押え)のできる財産としては、大きくは不動産、動産、債権の3つがあります。

  1. 不動産 →具体的には、土地、建物のことをいいます
  2. 動産 →不動産以外の物のことです。具体的には、時計や宝石など、売却することによって金銭となるものをいいます
  3. 債権 →相手(債務者)が他人に対して持っている請求権です。具体的には、給料と預貯金等があげられます。

例えば、自分に対してお金を払ってくれない相手(債務者)は、他人(第三債務者)に対しては債権を持っているかもしれません。誰かにお金を貸していれば、貸金債権という債権を持っていますし、駐車場やアパートを経営していれば、地代や家賃といった賃料債権という債権を持っているということになります。つまり、債務者が他人に対して持っている債権を差し押さえて、本来なら債務者に支払うべきところを自分に支払ってもらうというわけです。

3、強制執行前にやっておかなければならないことは?

強制執行をする前に以下のことをしておかなければなりません。

(1)債務名義の送達申請

①債務名義とは?

債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。強制執行するには、この債務名義が必要です。債務名義の例としては、以下のものがあります。

  • 確定判決 →「100万円を支払え。」又は「○○の建物を明け渡せ。」などと命じている判決のことをいいます
  • 和解調書、調停調書
  • 公正証書 →執行認諾文言(強制執行されても文句無いよという文言」付きのものに限ります

まず、債務名義の送達申請が必要となります。
以下の流れで手続きを進めます。

②判決書、公正証書の場合

  • 強制執行したい側が執行官に対しその謄本を、強制執行前、または執行と同時に相手方に送達すべき旨を裁判所に申立て
  • 申し立てを受けて執行官が謄本を送達
  • 申立人が、執行官から送達したことの証明をもらう

③和解調書、調停調書の場合

これに対して、和解調書や調停調書の場合には、調停や和解をした裁判所の裁判所書記官が送達を行ないます。
送達後、申立人は、裁判所書記官から送達したことの証明をもらいます。

(2)債務名義の送達付与申請

裁判所の確定判決、和解調書や公正証書等によって強制執行を行うには、これらの債務名義の正本に「執行文」が付与されていることが必要です。執行文とは、「債権者は、債務者に対し強制執行をすることができる。」旨の記載です。そのため、債務名義の送達付与申請が必要となります。

①確定判決、和解調書の場合

もしまだ債務名義の正本に執行文がなければ、執行文付与申請書に印紙300円を貼って債務名義の正本と一緒に申請しましょう。

裁判所のページからダウンロードできますので、必要な方は以下の文字をクリックしてダウンロードしてみて下さい。

執行文付与申請書

執行文付与申請書記載例

②調停調書の場合

家庭裁判所の調停調書等は執行文が不要となる場合があります。

③公正証書の場合

公正証書正本の末尾に、「債権者は、債務者に対し、この公正証書によって強制執行をすることができる。」という「執行文」が付与されているか確認してください。

ちなみに、執行文は申請をしなければ付与されません。付与されていない場合には,公証人役場に「執行文付与の申立て」を行い、執行文の付与を受けて下さい。このとき、手数料が1700円かかります。

(3)債務名義の送達証明申請

その後、判決等を行った裁判所に対して、債務名義の正本の送達証明申請をします。
申立手数料は、証明事項1項目につき,印紙150円です。
なお、公正証書の場合は、執行文、送達証明とも、公正証書を作成した公証役場にお問い合わせください。

4、養育費を強制執行で獲得するなら、給料と預貯金口座の差し押さえを狙う!

養育費の強制執行で一番回収できる可能性が高いのは、給料と預貯金口座の差押えでしょう。
もっとも、預金がない方もいらっしゃるので、相手が働いているのであれば、やはり給料の差し押さえが一番効果的であるといえるでしょう。

(1)差し押さえとは?

養育費を支払っている者が会社員など給料を受け取っているのであれば、会社に対して給料を支払えという債権を持っていることになります。養育費を獲得するために、この給料債権を差し押さえることとなります。

これが、給料の差し押さえです。

ちなみに、相手に貯金がある場合には、銀行や郵便局に対して利息付で預けたお金を返せという債権を持っていることになるので、この預金債権を差し押さえることになります。

(2)給料を全額差し押さえることができる?

もっとも、給料の全額を差し押さえることはできません。

養育費等獲得のために差し押さえをする場合、原則として給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1が差押え禁止となります。
もっとも例外的に、給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1が33万円をこえる場合、差押え禁止金額の上限は33万円となります。

ちなみに、給与債権は一度差し押さえてしまえば、毎月差し押さえる必要はありません。
翌月以降発生する将来の給料に対しても差押えの効果が及びます。
もっとも、相手が退職してしまうと、差し押さえの効果はなくなってしまいます

給料を差し押さえるメリットは、このように自分の請求債権額を満たすまで、毎月継続して回収することができる点にあります。

なお、給料の差押えは会社に通知されることになるので、支払いがない時点で給料を差し押さえる旨の通知をすれば、あきらめて支払いに応じることも多いです。

5、強制執行で給料を差し押さえるのに必要な書類は?

前述の通り、差し押さえを行えば、支払いを拒む相手からも、強制的に財産を取り上げ、支払いを受けることができます。
このように強力な効力があるので、手続きの利用には書類の準備などが必要となります。給料の強制執行にあたっては、どのような書類が必要となるでしょう?

(1)強制執行できる権利を証明する公的文書

まず、差し押さえを行おうとする者が、間違いなくその権利を持っていることを証明する必要があります。
具体的には、以下のようなものが必要となります。

①裁判所による判決書

→裁判で判決を獲得した際にもらえる書面となります。

②離婚調停や、養育費請求調停の調停調書

→離婚調停などが成立した場合に裁判所からもらえる書面となります。

③離婚協議書等を公正証書にしたもの

→公正証書とは、公証役場で作成してもらえる公的な書面です。離婚協議書を公正証書にしたものとなるでしょう。なお、「これは謄本である。」という記載された文書では給料の差押えはできません。その場合、公証人役場に対して公正証書正本取得の申立てを行ってください。このとき、公正証書の枚数1枚あたり250円の手数料がかかります。

(2)差し押さえの対象となる財産の情報

差し押さえは、裁判所の許可を得て、裁判所の主導により行われます。
もっとも、裁判所は相手が誰で、相手がどのような財産を持っているかまでは調査してくれません。
大変な作業ですが、これは自分で調べなければなりません。

差し押さえを行う場合には、このように、「どこにある」「どの財産を」差し押さえてほしいのかを裁判所に説明しなければならないのです。

具体的には、

  • もし給与を差し押さえるのであれば、勤務先の情報
  • 預金口座を差し押さえるのであれば、銀行名、支店名、口座番号(分かる場合)などの口座の情報

をあらかじめ得ておき、裁判所に伝える必要があります。

(3)強制執行申立書の作成・提出

いま見てきたような2つの条件をクリアした場合、それをもとに裁判所に差し押さえの申請を行います。
その際には、「この債務名義に基づいて」「相手の持っているこの財産をこのように差し押さえたい」という申し立てを行います。

差し押さえの申し立てにあたっては、債権差押命令申立書というものを記載する必要があります。
このとき、申立手数料として収入印紙代(基本金額は4000円)、郵便切手代(裁判所により異なりますが、2500円前後)がかかります。

(4)その他の提出書類は?

その他の提出書類は以下の通りです。

①申立書の目録部分の写し、宛名付封筒

②給与差し押さえの場合、相手の会社の登記簿謄本(資格証明書)
→住民票等(債務名義と現在の当事者の住所が違う場合等に必要となります)

③請求債権目録
→請求する債権の内容について記載した書面です。養育費を請求する権利の内容について書くこととなります。
記載する内容は、債務名義(確定判決か、公正証書か、等)によって異なってきます。

④差押債権目録
→差し押えする債権の内容について記載した書面です。給与を差し押さえる場合には、給与を支払う会社や給与の金額などについて書いていくことになります。預金を差し押さえる場合には、口座について書いていくこととなります。

⑤当事者目録→給与を差し押さえる場合には、申立人、相手方、そして相手方の務める会社について書いていきます。

6、強制執行の申し立ての方法は?

書類がそろったら、相手の勤務する会社の住所地の地方裁判所の執行係に書類を提出して申し立てしましょう。

7、強制執行がうまくいったら?

差押えがうまくいったら、お金を支払うようにあなた自身が直接相手が勤務する会社と話をしないといけません。
おおよそ以下の内容について話し合うことになるでしょう。

  • 養育費分を給与から天引きするか
  • 天引きした給与を申立人のどの口座に支払うか

8、強制執行の注意点!

強制執行する時に気をつけなければならないことは、「もし財産がなければ費用が無駄になってしまう」ということです。そのため、財産がある可能性が高いポイントを狙って差し押さえする必要があります。とはいえ、相手が勤務中であれば、給与債権を差し押さえすれば空振りということはあまり考えにくいでしょう。

まとめ

今回は養育費の支払いが滞った場合の強制執行について書いていきましたが、参考となりましたでしょうか。養育費の支払いが滞っていると、不安な状態が続いてしまうでしょう。強制執行の手続きは、正しいやり方を知ればご自身でも進めることができます。書いた内容を参考に早い段階で養育費を回収できるようにして下さい。

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