サイレントモラハラを夫にされているかチェックしたい……。
近年では、「モラハラ」という言葉が浸透し、家庭内でもモラハラがあることが一般的に知られるようになりました。
モラハラというと、一般的には「言葉の暴力」ですが、言葉のない「サイレントモラハラ」というモラハラをご存知でしょうか。夫から無視されたり睨みつけられたりすることが日常的になっている場合、サイレントモラハラの可能性があります。
そこで今回は、サイレントモラハラに焦点を当て、
- サイレントモラハラのチェックリスト
- サイレントモラハラをする夫の特徴
- サイレントモラハラの注意点
- サイレントモラハラが原因で離婚や慰謝料請求が可能か
について、ベリーベスト法律事務所が解説します。
本記事で、サイレントモラハラチェックをして、夫の行動がサイレントモラハラに該当するかどうか確認してみてください。
目次
1、サイレントモラハラのチェックリストの前に~サイレントモラハラとは?
そもそも、モラハラとは「モラルハラスメント」の略で、倫理や道徳に反した嫌がらせで相手を精神的に追い詰める行動を指します。DVとは異なり、言葉や態度によって行われる精神的な嫌がらせです。
サイレントモラハラとは、一般的なモラハラのように直接的に相手に向かって暴言を吐いたり屈辱したりするようなものではありません。直接的に言葉で言わず、態度や表情で相手を傷つけるような行為をすることを指します。相手に気を遣わせるような空気を出して精神的なプレッシャーを与えるため、その場の空気で暴力を与えているといえるでしょう。
2、夫からサイレントモラハラを受けている?サイレントモラハラチェックリスト
サイレントモラハラは、通常のモラハラのように直接的に暴言を吐かれたり屈辱を受けたりするわけではありません。そのため、モラハラなのか判断できずに悩んでいる方も多いでしょう。
夫からサイレントモラハラを受けているのかどうか判断するために、本章の「サイレントモラハラのチェックリスト」で当てはまるか確認してみてください。
(1)話しかけてもずっと無視する (2)大きなため息や舌打ちをする (3)不機嫌な表情をする (4)何も言わずに睨みつける (5)そっけない態度をとる (6)ひとり言のように文句や批判を言う |
該当するものが多いほど、サイレントモラハラを受けている可能性が高いと言えます。
それぞれの項目が、具体的にどのようなことを示すのか確認していきましょう。
(1)話しかけてもずっと無視する
妻を無視することは、モラハラ夫の定番の攻撃法であるといえるでしょう。
妻が話しかけても、気に入らないことがあればモラハラ夫はひたすら無視を続けます。無視される時間は数時間で終わることもあれば、数日から数週間、何ヶ月と続くこともあります。まるで自分が存在しないように無視されれば、妻は「自分が夫に何かしてしまったのだろうか……。」と不安になるでしょう。無視をされているだけで、特に夫に何も言われていないにも関わらず、妻は夫の顔色を伺うことになってしまいます。
夫に対して以上のような態度で接すれば、夫は一層つけ上がり、モラハラが悪化するという悪循環を招く可能性があるのです。
(2)大きなため息や舌打ちをする
夫が思っている通りに妻が行動しない場合、夫は「はぁ」と大きなため息をついたり、舌打ちをしたりすることも、サイレントモラハラといえるでしょう。
明らかな暴言がなくても、大きなため息や舌打ちは、不機嫌な態度を表す行動といえます。妻に聞こえるように、わざと大きなため息や舌打ちをすることで、夫は自分の苛立ちを妻にアピールしているのです。
(3)不機嫌な表情をする
何かにイライラして不機嫌になってしまうことは、誰にでもあることです。
ただ、「不機嫌になる」とすぐに不機嫌な表情になることは通常とは異なります。突然何の理由もなく不機嫌になり、あからさまに不機嫌な表情をすることは、モラハラする人に多い行動です。不機嫌な表情で相手に威圧感を与え、わざと相手に気を遣わせようとしているといえます。
不機嫌な表情や態度をとることが多い場合、モラハラの可能性が高いでしょう。
(4)何も言わずに睨みつける
何も言わないものの、睨みつけられれば不安や不快な思いになってしまいます。
サイレントモラハラでは、妻に対して睨みつけるような冷たい視線を向けることが多いです。
例えば、妻が手をすべらせてお皿を割ってしまったとしても、「大丈夫?怪我をしていない?」など優しい言葉をかけません。真っ先に、「しっかりしろよ」と言わんばかりの視線で睨みつけられてしまいます。言葉で批判をしないものの、視線によって批判しているのです。
(5)そっけない態度をとる
楽しい会話をしていても、サイレントモラハラをする夫は、突然そっけない態度をとります。話しかけても「へー」「だから何?」など会話が続かず、冷たい態度をとられてしまいます。
そのため、妻は話しかけることが怖くなり、相手の顔色を伺うようになってしまうでしょう。
サイレントモラハラをする夫の機嫌が悪くなるスイッチは突然切り替わるため、楽しかった雰囲気が、一気に緊張感のある雰囲気に変わってしまうことも多いです。
(6)ひとり言のように文句や批判を言う
サイレントモラハラでは、直接的に暴言を吐かれるようなことはなくても、独り言のように文句を言われます。何か言っているようなので、耳をすませば自分への批判を言われていたり、わざと聞こえるような独り言で小言を言われていたりするケースがあります。
この独り言に対して謝罪や弁明をしても、「お前に言ってない」と冷たくあしらわれてしまうこともあるのです。
文句を独り言のように言い続けられると、妻は「自分が悪い」と思うようになり、夫にコントロールされていくようになってしまいます。
3、サイレントモラハラをする夫の特徴
サイレントモラハラをする夫には、共通する特徴があります。サイレントモラハラチェックだけでは、モラハラの確証が持てないという場合、サイレントモラハラをする夫の特徴についても確認してみてください。
サイレントモラハラをする夫に共通する特徴として、次の5つが挙げられます。
(1)家庭内で優位に立とうとする
サイレントモラハラをする夫は、家庭内で妻よりも優位に立とうとする傾向にあります。
夫婦は対等な関係であり、互いに支え合うことが一般的な夫婦の関係性です。
しかし、モラハラをする夫は相手を支配したいと考えており、モラハラをすることで相手に恐怖や罪悪感を植え付け、家庭内で自分が相手を支配できるように優位に立とうとします。
(2)自分が全て正しいと考えている
モラハラ夫は、基本的に自分が全て正しいと考えています。自分が全て正しいと考えているからこそ、相手の行動や言動は全て間違えだと考えて批判ばかりします。夫に何か不都合なことがあったとしても、全て妻の責任として押し付けられることも多いでしょう。
モラハラ夫は自己中なことが多いので、自分の過ちがあっても認めるようなことはありません。
(3)妻の欠点ばかりを探している
モラハラ夫は妻にモラハラをすることで、自分のストレスや苛立ちを発散しています。そのため、妻の欠点を探し、モラハラする理由を常に探しているのです。
無理矢理怒りをぶつける理由を探しているため、欠点を見つけては文句を言ったり、冷たい態度を取られたりするようになります。小さなミスも注意され、人格までも無視されるような行動や言動をとられてしまいます。
(4)まともに話し合いができない
モラハラ夫は常に自分が正しく、夫婦関係が対等ではありません。
妻側は夫に対して恐怖を感じていたり、支配されていたりするような状況なので、まともに話し合うようなことは難しいでしょう。
また、モラハラ夫は自分が中心の考え方なので、相手の気持ちは考えていません。モラハラ夫は、いかに自分に屈服させるかということしか考えていないのです。話し合いをしようとしても、話がすり替えられたり屁理屈や揚げ足をとったりして、まともな話し合いは難しいでしょう。
(5)外では良い顔をする
モラハラ夫は、妻には厳しいものの、外では良い顔をすることが多いです。そのため、周囲の人からは優しくて人当りの良い夫だと思われています。妻も、結婚するまでは夫が優しく、モラハラをするような人だとは思わなかったというケースが多いでしょう。
外では良い顔をしているものの、家に帰ると人が変わったように豹変し、顔つきまでも変わります。周囲の人たちは、モラハラをするような人とは思われていないからこそ、家庭内でのモラハラは周囲に気付かれにくい傾向にあります。
4、サイレントモラハラの注意点
サイレントモラハラには、いくつか注意すべき点があります。
(1)サイレントモラハラを受けていることに気付きにくい
サイレントモラハラは、一般的なモラハラよりも本人が被害に気付きにくいという点が問題として挙げられます。
通常のモラハラのように、暴言を直接吐かれることは少ないため、「夫はただ機嫌が悪いだけかもしれない」「自分(妻)が悪いから仕方がない」と考えてしまいがちです。
しかし、モラハラ夫は自分が正しくて妻が悪いという考えなので、些細なことや理不尽なことでも夫から責められるような態度をとられてしまいます。
夫にいつも責められているように感じたり、夫の顔色ばかりを窺って過ごしていたり、自分がいつも悪いと罪悪感を持っていたりする場合は、モラハラの可能性が高いです。
(2)協議で離婚することが難しい
サイレントモラハラをする夫と離婚をしたいと考えても、協議離婚をすることは難しいでしょう。前章でも説明したように、モラハラ夫とはまともに会話ができない可能性が高いからです。離婚話をすれば逆切れしたり、不機嫌になって会話が出来なかったりという状態になってしまいます。
当事者同士の協議で離婚を成立させることは難しく、弁護士を代理人として立てて話し合いを行うことや、裁判で離婚を争うことになると考えられます。
(3)サイレントモラハラは証明しにくい
離婚で慰謝料を請求する場合や、裁判で離婚する場合には、サイレントモラハラを証明できる証拠が必要です。
しかし、サイレントモラハラは言葉で直接的なモラハラ発言を受けるわけではないため、証明することが難しいケースも少なくありません。
モラハラされた内容を日付と一緒に記載している日記や、モラハラをしている様子が分かる音声や動画など、少しでも多くの証拠を集めるようにしましょう。
5、サイレントモラハラが原因で離婚や慰謝料は請求できるのか?
サイレントモラハラが辛くて離婚したいと考え、離婚や慰謝料を請求することを検討している方もいるでしょう。
サイレントモラハラが原因で離婚や慰謝料を請求することは可能なのでしょうか?
(1)協議では相手が合意すれば離婚できる
当事者同士の話し合いによる「協議」で双方が離婚に合意すれば、離婚をすることができます。
サイレントモラハラをしている夫が離婚に合意すれば、離婚をすることができます。
しかし、前章でも説明したように、モラハラ夫が離婚に合意する可能性は低いと考えられます。離婚に関する話し合いをしようとしても、モラハラ夫が話し合いに応じずにモラハラ被害がエスカレートする恐れもあるでしょう。
(2)証拠があれば裁判で離婚ができる
モラハラ夫との協議離婚が難しい場合、裁判で離婚を争うことになります。
裁判で離婚をするには、法定離婚事由と呼ばれる法律で定められた離婚理由が必要です。
一般的なモラハラやDVは、「その他の婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると認められれば法律上で離婚が認められます。
サイレントモラハラも、証拠を提出して裁判でモラハラであることが立証されれば、離婚も認められます。
(3)サイレントモラハラもモラハラの一種なので慰謝料が請求できる
モラハラは、民法の不法行為に該当します。
不法行為は、他人の権利や利益を不法に侵害する行為であり、加害者は被害者に対して損害を賠償する責任が生じます(民法第709条)。
モラハラは精神的苦痛に対する慰謝料や、モラハラによって精神疾患になった場合の治療費などの請求が可能です。
サイレントモラハラは、モラハラの一種になるため、慰謝料を含んだ損害賠償を請求することが可能となります。
6、サイレントモラハラで離婚や慰謝料請求するには弁護士に相談しましょう
サイレントモラハラで離婚や慰謝料を請求する場合、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、モラハラに該当するのかどうかという判断や、必要な証拠のアドバイスを得ることができます。また、代理人としてモラハラ夫と離婚の話し合いを行ってくれるので、ご自身で離婚の話を進めるよりもスムーズかつトラブルを大きくせずに話が進めやすくなるでしょう。
サイレントモラハラに関するQ&A
Q1.サイレントモラハラとは?
一般的なモラハラのように直接的に相手に向かって暴言を吐いたり屈辱したりするようなものではありません。直接的に言葉で言わず、態度や表情で相手を傷つけるような行為をすることを指します。
Q2.サイレントモラハラのチェックリストは?
- 話しかけてもずっと無視する
- 大きなため息や舌打ちをする
- 不機嫌な表情をする
- 何も言わずに睨みつける
- そっけない態度をとる
- ひとり言のように文句や批判を言う
Q3.サイレントモラハラをする夫の特徴は?
- 家庭内で優位に立とうとする
- 自分が全て正しいと考えている
- 妻の欠点ばかりを探している
- まともに話し合いができない
- 外では良い顔をする
まとめ
サイレントモラハラは、被害を受けている本人も気付かないケースが多くなっています。
夫と一緒にいる時間の居心地が悪く、相手に怯えて過ごしているようであればモラハラの可能性があります。まずはサイレントモラハラかどうかという確認や、今後の離婚についてアドバイスしてもらうためにも弁護士に相談してみましょう。
モラハラは我慢していても改善されず、被害者は精神的なダメージが蓄積されていく一方です。一人では解決が難しい問題でもあるので、弁護士など第三者のサポートを受けてモラハラ夫と離れる勇気を持ってください。