妻の話を聞かない夫の相手をするのはストレスが溜まるもの、人によっては本格的に離婚を検討している人もいらっしゃるでしょう。
確かに、夫婦間のコミュニケーション不足、特に、こちらから話しかけても相手にしてもらえないと、些細な喧嘩が増えたり、夫に対する愛情が薄くなったりして、結婚生活を継続する意味を感じにくくなるのも当然です。
ただ、「妻の話を聞かない夫だから離婚したい」というのは少し乱暴ではないでしょうか。
たとえば、妻の話を聞かない夫側も何かあなたに不満を抱えているのなら、離婚に向けた話し合いをする前に真剣にコミュニケーションととれば関係を修復できることもあるでしょう。
そこで今回は、
- 夫が妻の話を聞かない代表的な原因
- 妻の話を聞かない夫に耳を傾けてもらうコツ
- 妻の話を聞かない夫と離婚する方法・流れ
- 妻の話を聞かない夫がモラハラをしているときの対処法
- 妻の話を聞かない夫との離婚を弁護士に相談するメリット
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。「話を聞いてもらえなくて毎日うんざりしている」「妻の話を聞かない夫とは将来を考えられない」というように、離婚を含めてさまざまな悩みを抱えている方の手助けになれば幸いです。
目次
1、離婚を考える前に~妻の話を聞かない夫はモラハラなのか
妻の話を聞かない夫との離婚を検討する前に、まずはあなたが置かれている状況を冷静に分析することから始めましょう。
というのも、「妻の話を聞かない」以外にも夫の行動に問題があり、妻側がモラハラ被害を受けている可能性が否定できないからです。
(1)モラハラとは
モラハラ(モラルハラスメント)とは、暴力以外の道徳に反するような行為によってハラスメントを行うDVの一種です。
たとえば、殴る、物を投げつけるなどの暴力行為は、怪我などの証拠を集めやすく「DV事案」の認定がしやすいという特徴があります。
これに対して、モラハラは、長年の付き合いのなかで被害が深刻化したり、夫婦間の性格・関係性次第でモラハラ認定されたりされなかったりするので、離婚を争う場面での主張・立証が難しいのが特徴です。
(2)話を聞かない夫がモラハラに該当するケース
「妻の話を聞かない」というように、配偶者とのコミュニケーション能力に問題がある夫の場合、他にも何かしらの問題行動をとっている可能性があります。
一般的なモラハラ夫の特徴として以下の要素が挙げられます。
当てはまる項目が多いほどモラハラ傾向が強いと言えますし、項目数が少なくても程度が酷いとそれだけでモラハラ認定できるケースもあるでしょう。
- 妻や子どもの話など、自分の興味・関心が薄いことは無視する
- 妻のことを人前で馬鹿にする
- 妻に対して日常的に平気で嘘をつく
- 少しでも気に食わないことがあると妻の話を無視したり八つ当たりする
- 自分が悪くても絶対に謝らない、妻に責任転嫁する
- 妻に対して大声で叱責したり、物に当たって威嚇する
- 嫉妬や束縛が強く、仕事や交友関係、実家との関わりを制限しようとする
- 妻が楽しそうにしていると不機嫌になる
たとえば、妻の話を聞かないどころか、挨拶をしても当たり前のように無視する夫の場合、それだけでモラハラ認定される可能性が高いでしょう。
これに対して、挨拶や真面目な相談には丁寧に向き合ってくれるものの、他愛もない妻の話には一切反応してくれない夫の場合には、他の要素が合わさった方がモラハラを主張しやすくなります。
2、夫が妻の話を聞かない理由
夫に話を聞いてもらえないとイライラしたり悲しくなったりするでしょう。
なかには、モラハラのように妻に対する嫌がらせのために夫が妻に対して無視するケースもあります。
ただ、夫が妻の話を聞かないケースでは、以下のような別の理由があることも少なくありません。
- 仕事で疲れている
- 男性脳
- 何か別のことで妻に対して不満を抱いている
(1)仕事で疲れているから
夫が妻の話を聞かない代表的な理由として「仕事で疲れている」ことが挙げられます。
仕事中はプライベート一切なし、自由にスマホを触ることもできなければ、上司に面倒な仕事を押し付けられることもあるはずです。
疲れて帰宅して、やっと自分ひとりでゆっくりできるタイミングになったとき、妻の話をゆっくり聞く余力は残されていません。
もちろん、「仕事で疲れているから妻の話を聞かなくて良い」というわけではありません。
ただ、夫が仕事で疲れている様子なら、「多少話を聞いてもらえなくても仕方ない」と割り切るのも賢い受け流し方でしょう。
(2)男性脳と女性脳の違いがあるから
男性脳と女性脳の違いが原因で、「話を聞いてもらえない」という事態が生まれている可能性もあります。
たとえば、男性脳の代表的な特徴として、「1つのことに集中しやすい」「頭のなかで黙々と考え事をしがち」という点が挙げられます。
テレビやスマホを見ているときはそれに釘付け、考え事をしているときは上の空、周りのことは気にならなくなってしまいます。
そのようなときに妻からいきなり話しかけられても、思考や集中の切り替えがなかなかできません。
妻には「夫に話を聞いてもらえない」「話しかけているのにまた無視された」と映りますが、意図的に無視しているのとは違います。
(3)妻に対して不満があるから
夫が妻に対して不満を抱いていると、はっきりと文句を言うのではなく、話を聞いていない振りをすることもあります。
不満の内容はさまざまです。たとえば、興味のない話ばかり聞かされて面倒に感じていることもあれば、構ってもらえなくて拗ねているだけのこともあるでしょう。
また、セックスレスや実家との連絡頻度など、「それとこれとは別問題じゃないの?」と思うようなことでも、無視というやり方を選択してしまいます。
女性が想像している以上に男性は子どもっぽい性格の人が多いので、女性側が少し大人な対応をするだけで問題が解決することもあるでしょう。
3、夫に話を聞いてもらうためのコツ5つ
妻の話を聞かない夫には腹が立つものです。
ただ、夫が話を聞かないのにも何かしらの理由があるわけですから、妻側で上手に工夫すれば案外スムーズに話を聞いてもらえる可能性もあります。
たとえば、以下のようなコツが役立つので、旦那さんに話しかけるときの参考にしてください。
- 夫に話しかけるタイミングに注意する
- 結論から先に伝えて男性にとってわかりやすい会話の流れを意識する
- ネガティブな話ばかりにならないように注意する
- 夫の話にも耳を傾ける
- 夫が話しやすい状況・雰囲気を作る
(1)タイミングに注意する
夫に話を聞いてもらうなら、話しかけるタイミングに注意するのがポイントです。
たとえば、仕事帰りで疲れているときや、イライラしているときは、話しかけてもまともに向き合ってもらえないリスクが大きいでしょう。
ですから、夫が帰宅してひと息ついた頃合いや、スマホを触り終わった後、やることがなくて暇そうにしているタイミングなどを狙って話しかけてみるのがおすすめです。
(2)まずは結論を伝える
「話は聞いてくれるが会話が長続きしない」「妻が話している途中で旦那の興味が薄くなる」とお悩みの場合には、先に結論から伝える話し方をするのがおすすめです。
というのも、男性脳は「結論や解決策を知りたい」という傾向が強いので、結論後回しの話し方はダラダラしたものに感じてしまうからです。妻は順序立てて話しているつもりでも、夫は「だから何?」「結局何が言いたいの?」と苛立ってしまいます。
もちろん、女性側がすべて譲歩するのもおかしな話なのですが、「夫に話を聞いてもらう」というファーストステップをクリアするためには、妻側が話し方に少し工夫を凝らして、男性が会話への興味を持続できるようにしてみましょう。
(3)ネガティブな話ばかりをしない
男女問わず、ネガティブな話は聞いていて気持ちが落ち込むものです。暗い内容の話ばかりだと、会話すること自体へのモチベーションも失われてしまいます。
ですから、夫との会話を弾ませたいなら、楽しい話を織り交ぜたり、明るい楽し気な口調を意識したりするのがおすすめです。
(4)夫の話も聞いてあげる
夫に話を聞いてもらいたいなら、夫の話を聞いてあげる姿勢も大切です。
「構ってもらえている」「相手にしてもらっている」と夫が感じれば、妻の話にも興味を示しやすくなるでしょう。
(5)話しやすい状況を作る
夫が会話に前向きになりやすい状況を作るのも有効な対処法です。夫が楽しいシチュエーションや機嫌が良くなる環境なら、妻の話も聞いてもらいやすくなります。
たとえば、自宅の中では子どもに気兼ねして会話が弾まなくても、散歩やドライブの機会なら楽しく会話しやすいということもあるはずです。
夫婦での会話の機会が増えれば、自然と自宅でも話を聞いてもらえるようになるでしょう。
4、妻の話を聞かない夫と離婚できる?
妻の話を聞かない夫と離婚できるかについて解説します。
そもそも、離婚成立を目指すには「協議離婚→調停離婚→裁判離婚」の流れを経るのが一般的ですが、会話を聞かない程度がモラハラにあたるか否かで若干離婚に向けた方向性が変わってくる点に注意が必要です。
(1)モラハラにあたる場合
日常的に妻の話を意図的に無視したり、他のモラハラ行為が併発しているケースなら、最終的に裁判で離婚が成立する見込みがあります。
たとえば、法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由がある」を主張立証する材料が手元にあれば、夫の合意がなくても婚姻関係を解消できるでしょう(民法第770条1項5号)。
また、「最終的には裁判離婚で決着をつけることもできるし、数々のモラハラについて慰謝料を請求する」という武器を使って、協議離婚・調停離婚の段階で夫側から離婚について合意を引き出すという戦法も効果的です。
(2)モラハラにあたらない場合
「ただ単に妻の話を夫が聞かない」というだけでは裁判上の離婚が成立する見込みは薄いのが実情です。
なぜなら、裁判所の介入によって離婚が成立するのは、以下5つの法定離婚事由がある場合に限られるからです。
- 配偶者の不貞行為
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかではない
- 配偶者が強度の精神病にかかって回復の見込みがない
- 婚姻を継続し難い重大な事由がある
したがって、妻の話を聞かないだけの夫と離婚するなら、協議離婚・調停離婚を目指すことになります。
そのためには、離婚について夫側の合意が必要なので、当事者間での丁寧な話し合いや、調停委員を挟んだ冷静な交渉が不可欠でしょう。
5、妻の話を聞かない夫との離婚の進め方
妻の話を聞かない夫と離婚する流れは以下の通りです。
- 離婚を根拠付ける証拠の確保
- 慰謝料などの離婚条件を検討
- 別居が離婚を有利にする可能性もある
- 基本的には話し合いで協議離婚成立を目指す
- 夫の合意が得にくいなら離婚調停・離婚裁判に進む
(1)証拠を確保する
離婚に向けて動き出すなら、「離婚したい理由」を根拠付ける証拠確保が第一段階です。
特に、「話を聞いてもらえない」「性格の不一致がある」という状況次第で深刻さが変わる原因で離婚を目指すなら、”言った言わないの水掛け論”になると、離婚の合意形成が難しくなってしまいます。
ですから、家庭内での会話の様子を録音・撮影する、毎日日記をつけて夫の様子を記録するなどの証拠を集めて夫に突きつけるのが重要だと考えられます。
(2)慰謝料などの離婚条件を検討する
妻の話を聞かないだけではなく、他にもモラハラ行為が頻発しているケースでは、離婚のタイミングで慰謝料を請求することも視野に入れましょう。
また、夫側からの金銭賠償が期待できない状況なら、妻側に有利な条件で財産分与するというのも落としどころです。
事案によって慰謝料の相場は異なりますが、一般的には50万円~300万円の範囲とされています。
ただし、モラハラを根拠付ける証拠がなければ慰謝料請求自体が認められないので、事前準備は怠らないようにしてください。
(3)別居した方がよいことも
話を聞いてもらえないストレスが募って心身の不調を来たしそうな場合や、モラハラ行為が加速して危害を加えられるおそれがある場合には、別居を選択するのも選択肢のひとつです。
別居によって妻側の安全が守られるというメリットもありますが、別居期間が長くなるほど離婚の裁判において「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と認められやすくなるのも魅力のひとつでしょう。
モラハラを理由とする離婚は、相手側からの合意が得られなければ離婚手続きが長期化する可能性があります。
少しでも有利な状況を作り出すために、長期戦を覚悟して別居というステップを踏むのも有効な戦略になるでしょう。
(4)話し合いでの決着を目指す
「妻の話を聞いてもらえない」「性格の不一致」という理由だけでは裁判離婚が認められる可能性は極めて低いです。
そのため、夫に話を聞いてもらえないストレスが募って離婚したいなら、協議離婚の成立を目指すのが最善の手段と考えられます。
ただし、普段から話を聞く姿勢をもたない夫から合意を引き出すのは簡単ではありません。
そのため、「事前に証拠を揃える」「家を出て別居する」などによって、妻側の覚悟を毅然とした態度で示すのが重要だと言えるでしょう。
(5)合意できない場合は離婚調停・離婚裁判
妻の話を聞かない夫が離婚に合意してくれない状況で、それでも離婚成立を目指すなら、離婚調停・離婚裁判という手続きを申し立てることになります。
ただし、先ほど紹介した法定離婚事由が存在しないケースでは、「話を聞いてもらえない」「性格の不一致」だけでは離婚が認められないのがほとんどです。
そのため、モラハラ疑惑の夫からの合意が得られないケースで離婚を目指すなら、以下のような戦術を練ることになります。
- 「話を聞いてもらえない」以外に婚姻を継続し難い理由を主張立証する
- 数年にわたる別居期間や、家庭内別居の事実を証明する
- 調停や裁判を申し立てる妻側の本気度を見せて、結婚にしがみつく夫を諦めさせて離婚に向けた合意を引き出す
6、妻の話を聞かない夫との離婚をお考えなら弁護士に相談を
妻の話を聞かない夫との離婚を検討しているなら、一般民事の実績豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、離婚案件に力を入れている弁護士に相談すれば以下5点のメリットを得られるからです。
- 妻が抱える夫に対する不満が離婚に相応しいものかを検討してくれる
- 裁判離婚の成立可能性を事前にチェックしてくれる
- 離婚成立に向けて有利な証拠集めのアドバイスをくれる
- 協議離婚を目指す過程で夫側との話し合いに参加してくれる
- 慰謝料請求や財産分与の条件設定を駆使して夫側からの合意を引き出してくれる
妻の話を聞かない夫と離婚できる?に関するQ&A
Q1.モラハラとは
モラハラ(モラルハラスメント)とは、暴力以外の道徳に反するような行為によってハラスメントを行うDVの一種です。
たとえば、殴る、物を投げつけるなどの暴力行為は、怪我などの証拠を集めやすく「DV事案」の認定がしやすいという特徴があります。
これに対して、モラハラは、長年の付き合いのなかで被害が深刻化したり、夫婦間の性格・関係性次第でモラハラ認定されたりされなかったりするので、離婚を争う場面での主張・立証が難しいのが特徴です。
Q2.話を聞かない夫がモラハラに該当するケース
「妻の話を聞かない」というように、配偶者とのコミュニケーション能力に問題がある夫の場合、他にも何かしらの問題行動をとっている可能性があります。
一般的なモラハラ夫の特徴として以下の要素が挙げられます。
当てはまる項目が多いほどモラハラ傾向が強いと言えますし、項目数が少なくても程度が酷いとそれだけでモラハラ認定できるケースもあるでしょう。
- 妻や子どもの話など、自分の興味・関心が薄いことは無視する
- 妻のことを人前で馬鹿にする
- 妻に対して日常的に平気で嘘をつく
- 少しでも気に食わないことがあると妻の話を無視したり八つ当たりする
- 自分が悪くても絶対に謝らない、妻に責任転嫁する
- 妻に対して大声で叱責したり、物に当たって威嚇する
- 嫉妬や束縛が強く、仕事や交友関係、実家との関わりを制限しようとする
- 妻が楽しそうにしていると不機嫌になる
たとえば、妻の話を聞かないどころか、挨拶をしても当たり前のように無視する夫の場合、それだけでモラハラ認定される可能性が高いでしょう。
これに対して、挨拶や真面目な相談には丁寧に向き合ってくれるものの、他愛もない妻の話には一切反応してくれない夫の場合には、他の要素が合わさった方がモラハラを主張しやすくなります。
Q3.夫が妻の話を聞かない理由
夫に話を聞いてもらえないとイライラしたり悲しくなったりするでしょう。
なかには、モラハラのように妻に対する嫌がらせのために夫が妻に対して無視するケースもあります。
ただ、夫が妻の話を聞かないケースでは、以下のような別の理由があることも少なくありません。
- 仕事で疲れている
- 男性脳
- 何か別のことで妻に対して不満を抱いている
まとめ
妻の話を聞かない夫との離婚を本気で考えているなら、証拠集めと離婚手続きの方向性を決定するのが最優先課題です。
事前準備を丁寧に進めるほど離婚成立までの過程は楽になるので、今は冷静になって粛々とやるべきことを実践していきましょう。
ただ、離婚を考える前に、妻側が少し工夫をして夫に話を聞いてもらえるように仕向けるのも大切なことです。
離婚は気力・体力を奪うものですし、話を聞いてもらえるだけで現在の不満感が解消されるなら問題ないはずです。
離婚案件に力を入れている弁護士は数々の夫婦関係を直に目にした経験があるので、あなたが抱えている不満・ストレスに対しても寄り添ったアドバイスを期待できます。
ひとりで悩みを抱えたままだと気持ちが落ち込むばかりなので、まずは弁護士にお問い合わせのうえ、今何をするべきかについて助言してもらいましょう。