突然の飛び出し事故に巻き込まれた場合、的確な対応が重要です。
運転中に歩行者が予測不能な行動に出てしまい、交通事故が発生することは少なくありません。例えば、夜間の運転中には酔っ払った歩行者が突如現れ、衝突する可能性も考えられます。このような状況で被害者が死傷した場合、ドライバーにはどの程度の責任が問われるのでしょうか?
今回は、飛び出し事故に巻き込まれてしまった場合に知っておきたい6つのポイントをご紹介いたします。
交通事故の加害者について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
目次
1、飛び出し事故とは?
そもそも「飛び出し事故」とはどのような交通事故のことを言うのでしょうか?
飛び出し事故は、歩行者や自転車が、いきなり車の目の前に飛び出してきたことによって発生する交通事故です。
特に、幼い子供が左右を確認せずに飛び出してくる例が多いですが、高齢者、ときには大人が飛び出してくるケースもみられます。
予想外の場所で急に飛び出してくるので、車の運転手にとって事故を避けることが難しくなります。
自動車やバイクの立場からしてみると、運転方法に充分に注意を払っていても事故の加害者になってしまうおそれがある交通事故の類型と言えます。
2、子どもや老人が急に飛び出してきた場合も責任が発生するの?
もしも子どもや高齢者が突然車道に飛び出してきて事故が発生した場合、運転者にはどのような責任が発生するのでしょうか?
そもそも歩行者が飛び出してきた事案で、運転者に過失が認められるのか?と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
結論的には、歩行者が飛び出してきた交通事故でも車両の運転者に過失があるとされます。
歩行者が飛び出してくる可能性のある場所では、車両は徐行をして周囲の状況に注意を払い、歩行者が飛び出してきたらすぐに減速・停車などの措置をとるべきと考えられているからです。
たとえ歩行者による飛び出しが原因の事故であったとしても、そういった事態に備えて徐行していなかった車の方に問題があるとされてしまう可能性が高いです。
また、被害者が子どもや幼児、高齢者、身体障害者などであった場合には、通常よりも車に課される注意義務の度合いが高くなります。
このような歩行者は、自分で事故を避ける能力が低く、高い責任を問うことができませんし、こうした歩行者がいる場所では車の方により高い注意義務が課されるためです。
以上のように、飛び出し事故を起こしてしまった場合にも、基本的に加害者としての責任を免れることはできません。
ただし、被害者が自殺しようとして、あえて車の目の前に飛び出してきたような場合には、まれに加害者の責任が問われないケースもあります。
しかし、そういったケースは非常にレアであり、通常は加害者に8割、9割などの高い過失割合が認められる可能性もありますから、注意しましょう。
3、飛び出し事故に遭ってしまった場合の対応の流れ
もしも飛び出し事故に遭ってしまったら、どのように対応すれば良いのでしょうか?
流れを追って見ていきましょう。
(1)車を降りる
飛び出し事故で歩行者を轢いてしまったら、すぐに車を停止して降りましょう。
気が動転して走り去ってしまったら、ひき逃げとなって非常に重い罪になりますし、逮捕される危険も高まります。
(2)被害者を救護する
飛び出し事故を起こしたら、歩行者が怪我をすることが通常です。
そこで、まずは被害者を救護しましょう。
応急処置を行い、必要に応じて救急車を呼ぶべきです。
こういった救護義務を果たさない場合にも加害者には重い責任が課されるので、注意が必要です。
(3)危険を除去する
周囲に物が散らばるなどして危険が発生していたら、二次被害を避けるために片付けましょう。
車は路肩などに寄せて邪魔にならないようにすべきです。
三角表示板や発煙筒などにより、後続車に交通事故を知らせましょう。
(4)警察に通報する
救護と危険の除去を終えたら必ず警察に通報しなければなりません。
通報も加害者の義務となっているので、通報しないだけでも罰則が適用されますし、通報しないと加害者が悪質であるとみなされるので、責任も大きくなります。
(5)実況見分に立ち会う
警察が来たら、事故現場で実況見分が行われるので、立ち会って事故の状況を説明しましょう。
歩行者がどのような態様で飛び出してきたのかなど、きちんと説明をすることが重要です。
(6)目撃者を確保する
交通事故現場に目撃者がいたら、声をかけて確保しておくことをお勧めします。
子どもなどの被害者が突然飛び出してきたことを、後からでも証明しやすくするためです。
(7)保険会社に連絡する
実況見分が終了してその場から解放されたら、すぐに保険会社に連絡をして対応を依頼しましょう。
4、飛び出し事故に遭った際の過失割合の計算方法は?
被害者が飛び出してきて交通事故が発生した場合、被害者と加害者の過失割合はそれぞれどのくらいになるのでしょうか?
(1)信号機のある横断歩道上の事故・自動車は直進
歩行者の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) | |
歩行者が赤、自動車が赤 | 20 | 80 |
歩行者が赤、自動車が黄 | 50 | 50 |
歩行者が赤、自動車が青 | 70 | 30 |
歩行者が赤で横断開始して途中で青になる。自動車は赤 | 10 | 90 |
歩行者が黄で横断開始して途中で赤になる。自動車は青 | 30 | 70 |
(2)信号機のある横断歩道上の事故・自動車は右左折
歩行者の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) | |
歩行者が赤、自動車が青 | 50 | 50 |
歩行者が赤、自動車が黄 | 30 | 70 |
歩行者が赤、自動車が赤 | 20 | 80 |
歩行者が赤で横断開始して途中で青になる。自動車は赤 | 10 | 90 |
(3)歩行者が、信号機のある横断歩道の「付近」を横断したケース
自動車が横断歩道を通過した後の事故
歩行者の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) | |
車が赤、歩行者が赤で横断開始 | 25 | 75 |
車が青、歩行者が赤で横断開始 | 70 | 30 |
車が黄、歩行者が赤で横断開始 | 50 | 50 |
自動車が横断歩道を通過する直前の事故
歩行者の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) | |
車が赤、歩行者が赤で横断開 | 30 | 70 |
車が青、歩行者が赤で横断開始 | 70 | 30 |
車が黄、歩行者が赤で横断開始 | 50 | 50 |
(4)信号機のない横断歩道上の事故
歩行者の過失割合が0%、自動車の過失割合が100%
(5)横断歩道以外の場所における事故
歩行者の過失割合(%) | 自動車の過失割合(%) | |
歩行者が横断歩道の付近を横断 | 30 | 70 |
交差点以外の場所で、歩行者が通常の道路を横断 | 20 | 80 |
(6)信号機も横断歩道もない交差点上の事故
歩行者の過失割合 | 自動車の過失割合 | |
幹線道路など、広路を横断(自動車が優先) | 20 | 80 |
歩行者が狭路を横断(自動車が非優先) | 10 | 90 |
優先関係のない交差点 | 15 | 85 |
5、過失割合に納得いかない場合の対処法について
歩行者が突然飛び出してきて交通事故につながった場合、自動車の運転手としては自分に過失割合が割り当てられることに納得できないケースがあるでしょう。
そのようなときには、どうしたら適正な過失割合をあてはめることができるのでしょうか?
まずは、事故ごとの適正な過失割合を知ることが重要です。
交通事故には類型ごとの基本の過失割合が定まっており、裁判所が過失割合を認定するときや弁護士が示談交渉をするときなどには、そういった過失割合の基準を採用します。
被害者が保険会社と示談交渉をするときにもそうした過失割合の基準をあてはめるべきですから、まずは過失割合を調べましょう。
基本の過失割合を調べたいときには、「別冊判例タイムズ38」という本を入手すると良いです。
ここには多くの交通事故の類型ごとの過失割合が細かく掲載されているので、たいていの交通事故の基準の過失割合を調べることができます。
また、過失割合には修正要素があります。
修正要素とは、さまざまな事情によって基準の過失割合を増減させる要素です。
たとえば事故現場が幹線道路であれば歩行者の過失割合が上がる可能性がありますし、事故時が夜間のケースでも歩行者の過失割合が上がる可能性があります。
反対に、被害者が児童や幼児、高齢者や障害者などのケースでは自動車の過失割合が上がることも多いです。
過失割合を調べるときには、こうした修正要素についても確かめておきましょう。
適正な過失割合が判明したら、自分で相手に対してその内容を伝え、それをあてはめて計算するように求めましょう。
相手が応じない場合には、弁護士に示談交渉を依頼することをお勧めします。
弁護士であれば事故ごとの正確な過失割合を判断することができますし、相手と示談交渉をするときにも適切な過失割合をあてはめさせることができるからです。
自分で判例タイムズなどの本で過失割合を調べるのが難しいケースでも、弁護士に相談すると、弁護士が適正な過失割合を調べてアドバイスしますので、お気軽にご相談下さい。
6、飛び出し事故に巻き込まれてしまった場合に弁護士に依頼するメリット
飛び出し事故に巻き込まれてしまった場合には、弁護士に示談交渉を依頼するとさまざまなメリットがあります。
まず、適正な過失割合で解決できます。
当事者が自分で示談交渉をすると応じなかった相手であっても、法律の専門家である弁護士が対応すると、その主張内容を受け入れることが多いためです。
次に、適正な慰謝料やその他の賠償金額を算定できます。
自分で示談交渉をすると、治療費をどこまで負担すべきかや、慰謝料、休業損害などの賠償金について、どこまで支払うべきかがわからず、相手から過大な請求をされるかもしれません。
弁護士に依頼すると法的な基準をあてはめて計算できるので、そのような危険がなくなります。
3つ目に、自分で対応する負担がなくなるのも大きなメリットです。
飛び出し事故を起こしたとき、保険会社に加入していないケースでは、加害者が被害者と直接話をしなければなりません。
すると相手から強い口調で責められるなどして精神的に非常に参ってしまいます。
弁護士が対応すると、示談交渉はすべて弁護士が代理で行うので、依頼者は平静な気持ちで日常生活を送れます。
さらに、刑事事件においても弁護士がついている方が有利です。
事故当初から適切に対応することで、刑事処分を可能な限り軽くすることが可能となります。
まとめ
以上のように、飛び出し事故に巻き込まれてしまった場合には、過失割合を始めとしていろいろな問題に対応する必要があるものです。
自分一人で対応していると不利益を受ける可能性も大きくなりますので、事故に遭ったら、まずは一度弁護士に相談しましょう。