「借金を払えなければ、どのような取り立てを受けるのだろうか……」
「借金取りが自宅や職場に押しかけてきたら、どうすればいいのか……」
このような不安にさいなまれている方も多いのではないでしょうか。
借金の取り立てというと、映画やドラマのワンシーンのように強面の借金取りがやって来て恫喝され、場合によって暴力を振るわれるようなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんね。
正規の貸金業者はこのような暴力的・脅迫的な取り立てを行うことはありませんが、法律に則って確実に取り立てを行ってきますので、その意味では非常に厳しいともいえます。
しかし、適切に対処すれば借金の取り立てを止めて、借金取りから逃れることも可能です。
そこで今回は、
- 借金の取り立ての流れ
- 借金の取り立てのルール
- 借金の取り立てから逃れる方法
について解説していきます。
この記事が、借金の返済に苦しんで取り立てに不安をお持ちの方の手助けとなれば幸いです。
借金が返せない場合は、以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、借金取りは厳しい?貸金業者による取り立ての流れ
冒頭でもご説明したように、正規の貸金業者は暴力的・脅迫的な取り立てを行うことはありませんので、その点はご安心ください。
しかし、貸金業者は貸し金の返還請求権を持っている以上、法律のルールに従って、以下のような流れで取り立てを粛々と進めてきます。
合法的な請求なので債務者の「払えない」という言い訳は通用せず、その意味では厳しい取り立てが行われることになります。
(1)電話や手紙による督促
返済を遅延すると、まずは電話や手紙によって督促が行われます。
携帯電話に電話がかかってきたり、自宅宛に督促状や「一度連絡をしてほしい」という内容の郵便が届いたりします。
早ければ返済期日の翌日から、だいたい滞納後2か月頃まで、こういった督促が行われます。
電話での督促はかなり厳しい口調かもしれません。
病気で寝ていて返済が遅れたなどの場合でも、「明日には返金するように」とマニュアルどおりの厳しさを貫かれることもあります。
(2)内容証明郵便が届く
支払いを滞納してから2~3か月程度経過すると、自宅宛に「内容証明郵便」で一括請求書が届きます。
この段階までであれば、債権者に連絡を入れて「支払いをしたい」と申し出ると、提案内容次第では、取り立てを待ってくれる可能性があります。ある意味で、支払い猶予期間とも言えます。
(3)裁判をされる
内容証明郵便が届いても支払いをしないで無視していると、裁判所へ「貸金請求訴訟」や「支払督促申立」を起こされます。
放っておくと、それぞれ裁判所で「判決」や「仮執行宣言」が下されます。
(4)強制執行(差押え)をされる
判決や仮執行宣言が下されると、債権者は債務者の財産を差し押さえることができます。
放っておくと、本当に預貯金や生命保険、給料、車などを差し押さえられてしまう可能性があります。
以上のように、貸金業者による取り立てはドライであるものの、最終的には大切な財産を差し押さえてくるので、債務者は生活に困ってしまうおそれもあります。
2、借金の取り立ては家族や職場にも及ぶ?
借金の取り立てが暴力的・脅迫的なものではないとしても、家族のところや職場にまで借金取りが来るのではないかと恐れている方もいらっしゃることでしょう。
家族や職場にも借金の取り立ては及ぶのでしょうか。
(1)家族や職場の人が取り立てを受けることはない
貸金業者が債務者以外の人に対して、債務者の借金の返済を要求することは法律で禁止されています(貸金業法第21条1項7号)。
そもそも、訪問による取り立ては貸金業者にとって非効率であり、人件費等のコストも考えるとマイナスですらあります。
したがって、正規の貸金業者は債務者の家族のところや職場に押しかけることはありませんし、返済を要求することもありません。
(2)電話や手紙が来ることはある
ただし、前記「1」(1)でご説明した督促の電話や手紙が自宅に来ることはあります。
また、債務者が貸金業者からの連絡を無視しているような場合には、職場に本人宛の電話や手紙が来ることもあります。
これらの電話や手紙がきっかけで、家族や職場の人に借金がバレてしまう可能性はあるでしょう。
(3)保証人は直接取り立てを受ける
注意が必要なのは、保証人付きの借金の場合、本人が滞納を続けていると保証人が貸金業者からの取り立てを受けてしまうことです。しかも、その際には一括返済を求められるのが一般的です。
保証人は本人が返済しない場合に代わりに返済する義務を負っていますので、このような請求も合法的な取り立て行為なのです。
保証人付きの借金を抱えている場合は、早めに弁護士等の専門家に相談すれば保証人への迷惑を回避できる可能性もありますので、早期の対処が重要となります。
3、こんな借金取りは違法!取り立てのルールとは
ここまでは貸金業者による合法的な取り立て行為をご紹介してきました。
では、違法な取り立てとはどのような行為をいうのでしょうか。取り立てに関する法律上のルールをみていきましょう。
(1)貸金業法で禁止されている取り立て行為
貸金業者による取り立て行為は、貸金業法第21条1項で規制されています。
具体的な禁止行為は、主に以下のようなものです。
- 債務者を威迫するなど私生活や業務の平穏を害するような言動をすること
- 正当な理由なく午後9時から午前8時までの間に取り立てをすること
- 正当な理由なく勤務先など自宅以外の場所に連絡すること
- 貼り紙や立て看板などで債務者の借金などを公開すること
- 他社から借り入れて返済することを要求すること
- 家族など第三者へ返済を要求すること
- 弁護士等の介入後に本人に連絡すること
これらの規制に違反した貸金業者は、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の刑罰を科せられます。
その他にも、貸金業登録の取り消しや営業停止などの行政処分を課せられることもあります。
万が一、上記のような取り立て行為を受けた場合には、以下のような窓口に相談することをおすすめします。
- 警察:各地方自治体に窓口があります。
- 弁護士会:各都道府県に窓口があります。
- 国民生活センター:03-3446-1623
- 貸金業協会:03-5739-3861
- 金融庁:各地財務局に窓口があります。
連絡先の詳細は、「金融庁 相談窓口」のページからまとめて確認できます。
相談する際には、録音データ等の証拠があると警察が相手の逮捕に踏み切ってくれる場合もあるので、できる限り証拠を確保しておきましょう。
(2)刑法上の犯罪が成立しうる取り立て行為
大手の消費者金融やクレジットカード会社、銀行などは法律を守って営業していますので、違法な取り立てを行うことはまずありません。
しかし、闇金などの違法業者はそもそも法律を守る意思がありませんので、違法な取り立てを行ってくる可能性が高いです。
また、個人間の借金の場合も、法律を知らないために取り立て行為が違法に及ぶことがあります。
これらのケースでは、上記の貸金業法に違反する行為の他にも、以下のように刑法上の犯罪に該当する取り立て行為があり得ます。
- 殴る、蹴る、胸ぐらを掴むなどの暴力行為(暴行罪・傷害罪)
- 大声や乱暴な言葉で恫喝する(脅迫罪)
- 自宅や職場に勝手に押し入る(住居侵入罪・建造物侵入罪)
- 「帰ってください」と言っても居座る(不退去罪)
- 職場で返済を迫るなどして仕事の邪魔をする(威力業務妨害罪)
- 家族や他社から借りて返済するように迫る(強要罪)
- 貼り紙や落書きをしたり、物を壊す(器物損壊罪)
これらの行為によって身の危険を感じたときは、すぐに警察に通報しましょう。
4、借金の取り立てを受けたときの正しい対処法
借金取りから違法な取り立てを受けたときの緊急的な対処法は前項でもご紹介しました。
ここでは、合法的な取り立てを受けた場合も含めて、より根本的な対処法をご説明します。
(1)貸金業者の場合
正規な貸金業者の場合は、自宅にまで取り立てに来ることはほとんどありません。
仮に借金取りが来た場合でも、「今は払えないので帰ってください」と言えば脅迫されることもなく、帰ってもらえます。
ただ、そのまま放っておくと裁判をされて財産や給料を差し押さえられてしまいます。返済を少し待ってもらったり、毎月の返済額を少し減らしてもらえれば支払える場合は、そのことを担当者に相談しましょう。裁判を起こされた場合でも放置せずに対応すれば、多くのケースで分割払いの和解に応じてもらえます。
借金が膨らみすぎていて和解も難しい場合は、債務整理を検討する必要があります。
(2)闇金の場合
先ほどもご説明したように闇金は法律を守る意思がありませんので、「帰って下さい」と言っても帰りませんし、「弁護士に依頼した」と言っても効き目はありません。延々と脅迫や嫌がらせをされ続けますし、家族に危険が及ぶ可能性も高まります。
闇金被害に遭ったら、早急に実際に弁護士に対応を依頼すべきです。弁護士が介入すると、即日で闇金からの督促が止まるケースも多いです。
そして、警察に行って被害届を出しましょう。闇金は貸金業登録をしていないため存在自体が違法な組織ですし、違法な取り立てを行っていたら貸金業法違反や刑法違反となります。警察が捜査を進めて犯罪行為が明るみに出たら、逮捕してもらえます。
ただし、そのためには証拠が必要です。
闇金は、自分たちが違法組織であるとわかっているので、足がつかないように行動しており、いざ刑事告訴しようとしても「証拠がない」「連絡手段がない」となるケースが多いものです。証拠がなかったら警察は動けませんし、弁護士が相談を受けても、どこにどのような連絡を入れたら良いのかわかりづらいです。
そこで、違法な取り立てをされたときには、なるべく多くの証拠を残しましょう。
証拠を残す方法としては、
- 相手が怒鳴っているところをICレコーダーで録音
- 相手からかかってきた携帯電話番号を保存
- 携帯電話の通話明細書を取得
- 相手に配られた嫌がらせのビラや立看板などを保存
- その日に行われた取り立て行為や嫌がらせの内容を日記につける
などです。
5、借金の取り立てが厳しい…そんなときに頼れる相談先
違法な取り立てを受けたときの相談先は前記「3」でご紹介しましたが、合法的な取り立てであっても払えない人にとっては厳しいものです。
そんなときには、借金問題そのものについて、以下のような専門機関に相談する必要があります。
- 役所で行っている法律相談窓口
- 日本クレジットカウンセリング協会
- 金融庁の相談窓口
- 日本貸金業協会
- 消費生活センター
- 法テラス
- 各地の弁護士会・司法書士会
- 弁護士・司法書士の事務所
以上の相談窓口にはそれぞれ異なる特徴があります。
ひとくちに借金問題と言っても、取り立てが酷い場合、返済可能な収入がない場合、家族の借金問題を解決したい場合、奨学金の返済が難しい場合、貸金業者と交渉したもののうまくいかなかった場合など、さまざまなケースがあるでしょう。
相談したい目的に応じて、適切な窓口を選ぶことが大切です。
詳細はこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
6、借金の取り立てから逃れるには~弁護士への相談がベスト!
どこに相談すればよいのか分からない場合や、根本的に借金の取り立てから逃れたい場合は、弁護士へ相談するのがベストです。
弁護士は、公的な機関の相談員とは異なり、あなたの味方として悩みを聞いてくれます。そして、どのようなケースであっても豊富な専門知識に基づいて正確なアドバイスをしてくれます。
また、弁護士に債務整理を依頼すれば取り立てがすぐに一時的に止まるのも大きなメリットです。
依頼を受けた弁護士は、すぐに受任通知を借入先の貸金業者宛に送付します。
受任通知が到達した後は、貸金業者が債務者へ直接連絡することは法律で禁止されています(貸金業法第21条1項9号)。
早ければ依頼した翌日、遅くとも数日以内には貸金業者からの電話や手紙が来なくなります。
平穏な生活を取り戻した上で、どのような方法で債務整理を行うかを落ち着いて考えることが可能になります。その際は、弁護士があなたの状況や希望に応じて最適な解決方法を一緒に考えてくれます。
債務整理の方針が決まったら、実際の複雑な作業はすべて弁護士が代行してくれますので安心できます。
借金返済が苦しくて、借金取りの取り立てを恐れているならば、一刻も早く弁護士に相談してみて下さい。
まとめ
現代の借金取りによる取り立ては、世間でイメージされているような恐ろしいものではありません。
しかし、借金の返済ができなければ裁判をされて差押えを受けるおそれもあり、そのときに言い訳は聞いてもらえません。
早く対応すればするほど傷を浅くして解決できるので、電話や手紙などの督促が始まったら、すぐにでも弁護士にご相談下さい。