借金まとめる方法としての「借金一本化」のメリット・デメリットを解説

「借金の一本化をして、返済の負担を減らしたい…。」借金を一本化することによって、返済計画が立てやすくなるなど、いろいろなメリットがあります。

しかし、借金をまとめることにはデメリットもありますし、すべての方が借金を一本化できるわけではありません。

今回は、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、借金をひとつにまとめる「借金一本化」のデメリットや、債務整理について詳しく解説します。

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1、借金をひとつにまとめる「借金一本化」とは

借金一本化とは、複数の金融機関から借り入れがある場合に、借入先を一社にすることで、借金をひとつにまとめてしまうことを言います。

例えば、A社、B社、C社、D社、E社の5社からそれぞれ借り入れをし、その借入残高の合計が180万円あるとします。
このような状況においては、A~E社に毎月それぞれ返済をしなければなりませんし、返済日も返済手段も業者毎に異なります。

このような場合に、借入先を1社にまとめて、そこから180万円を借り入れることで、借入先を1社にして、毎月1回の返済を行っていくことを借金一本化といいます。

借金一本化には、メリットもあればデメリットもあります。
それぞれ確認していきましょう。

(1)借金一本化のメリット

借金を一本化することで得られるメリットは、主に以下の4つです。

①借入状況を把握して返済計画を立てやすい

借金を一本化すると、自分の借入状況を簡単に把握できるようになります。
借金が一本しかないので、その一本の負債額が総借金額ですし、その借金を返済すれば完済となります。
返済先は一社のみ、返済日も毎月1回のみとなりますので、返済計画を立てやすいというメリットがあります。

②金利が下がることがある

これまで高利率の消費者金融やクレジットカードのキャッシングなどを利用していた場合、おまとめローンの利用によって金利が下がる場合が多いです。

また、金利はひと口の借入額が大きいほど低くなる傾向にあります。
したがって、複数社から少額ずつ借りている状態よりも、一社から高額を借りている状態の方が金利が下がりやすくなります。

③月々の返済額が下がることが多い

金利が下がったり返済期間を延ばしたりすることによって月々の返済額が減り、苦しかった借金を返済しやすくなる方が多数います。

④信用情報に影響が出ない

債務整理をすると、信用情報機関にその旨が登録されて、新たな借入やローン、クレジットカードの利用ができなくなってしまいます。

しかし、借金一本化をした場合は、滞納を続けない限り信用情報機関に事故情報として登録されることはありませんので、カードなども今までどおりに利用できます。

(2)借金をひとつにまとめる「借金一本化」のデメリット

一方で、借金一本化には以下のデメリットもあるので、注意が必要です。

①返済総額が増えてしまうことがある

借金を一本化しても、借金額が減るわけではありません。
むしろ、返済期間が延びるとその分利息の支払い額が増えて、返済総額は上がってしまう可能性もあります。

②審査が厳しい

借金一本化をするときは一社から高額融資を受けることになるので、審査が厳しく誰でも利用できるわけではありません。

③金利が思ったほど下がらないことがある

借金を一本化しても、金利が下がらないケースもあります。
もともと金利の低い借入先があった場合、むしろ金利が上がってしまうこともあるので注意が必要です。

④借り増ししてしまうおそれがある

借金一本化によって以前の借入先に完済すると、そちらの枠が空くので、いつでも借金できる状態になってしまいます。ふとしたきっかけで借り増しを続けていると、いつのまにか借金が倍増してしまうケースも多々あります。

なお、他社借入NGを条件としたおまとめローンを利用した場合は、借り増しできません。
それを窮屈に思うかもしれませんが、借金一本化をするなら、これ以上の借入はしない覚悟が必要です。

⑤担保を取られることがある

借金一本化の契約をする際の条件として、不動産や保証人などの担保の差し出しを求められることもあります。

こうした担保を取られて返済できなくなったら、不動産を競売にかけられたり保証人に迷惑をかけたりして、大きなリスクが発生します。

2、借金をまとめる「借金一本化」の手段は主に4つ

借金を一本化するための具体的な方法としては、主に以下の4種類があります。

(1)銀行またはノンバンク(貸金業者)のおまとめローン

最も典型的な方法は、銀行等が行っている「おまとめローン」サービスを利用することです。

おまとめローンを利用すると、銀行等からまとまった借入をして、そのお金で今までの借金を完済し、その後は銀行等だけに返済を続けていくことになります。
この方法で借金を一本化できます。

(2)高額なカードローン

限度額が高額なカードローンを利用することにより、自分で借金を一本化することも可能です。

銀行等で300万円やそれ以上のカードローンを借り、そのお金で今までの借金を完済するのです。あとはカードローン一本が残ります。

(3)不動産担保ローン、保証人つきローン

銀行等で、不動産を担保にとって高額な貸付をする不動産担保ローンを利用することも可能です。
保証人つきローンもあります。

これらの有担保ローンは利率が低めに設定されていることが多いですが、滞納すると不動産を失ったり保証人に迷惑をかけたりするので要注意です。

(4)ビジネスローン

事業者が利用できるビジネスローンを利用して借金を完済する方法もあります。
ただ、事業目的であることが前提なので、事業者以外は利用できませんし、利率も高くなることが多々あります。

3、審査が甘い借金おまとめローンってあるの?

おまとめローンを利用して借金を一本化したいと思っても、審査に通るかどうか不安な人も多いことでしょう。

では、審査が甘いおまとめローンは存在するのでしょうか。
ここでは、おまとめローンを利用するときの金融機関の選び方と注意点を解説します。

(1)審査基準は金融機関により異なる

借金の審査基準は一律に決まっているものではなく、金融機関ごとに異なります。これは、おまとめローンについても同様です。

したがって、審査の厳しいおまとめローンから審査の甘いおまとめローンまで、さまざまなものがあります。

(2)金融機関の選び方

そこで金融機関の選び方が重要となります。
おまとめローンを取り扱っている金融機関には、大きく分けて次の3種類があります。

  • 政府系の金融機関(日本政策金融公庫、ろうきんなど)
  • 銀行系の金融機関
  • 消費者金融系の金融機関

審査基準は上から順番に厳しく、消費者金融系の金融機関が最も甘くなります。
消費者金融系の金融機関の中でも、銀行と提携している業者よりは提携していない業者の方が審査が甘いことが多いです。

審査が厳しい金融機関ほど、おまとめローンの金利は低く、融資限度額も大きい傾向にあります。
逆に、審査が甘い金融機関のおまとめローンは金利が高く、融資限度額も小さくなりがちです。

そこで、審査で高評価が得られやすい人(収入が多い、勤続年数が長い、安定した職業に就いている、持ち家がある、延滞歴がない、など)は、政府系の金融機関や銀行系の金融機関におまとめローンを申し込んでみるとよいでしょう。

これらの条件が悪い人は、消費者金融系の金融機関を選ばざるを得ないかもしれません。
ただ、おまとめローンには数多くの商品がありますので、まずは情報を数多く集めて、比較検討してみましょう。

(3)審査が甘い金融機関で借金を一本化する場合の注意点

借金の一本化をするためには審査に通らなければ始まりませんから、審査が通りにくい可能性のある人は、審査の甘い消費者金融系のおまとめローンを利用するのも一つの方法です。

ただし、その場合は一般的に金利は高めになりますので、返済総額が増えてしまう可能性が高いことに注意が必要です。
また、他社借入を禁止する消費者金融業者は少ないので、借り増しによって借金が倍増しかねないおそれもあります。

審査が甘い金融機関で借金を一本化するなら、「もう借りない」「家計を見直す」「繰り上げ返済をして少しでも早く完済する」といった覚悟が必要になります。

あるいは、金利が高くてもまず一本化して借入先を減らし、残高が減ってきたところで、金利の交渉をしたり、再度金利の低いところへの借り換えを検討することも考えられます。

いずれにしても、先を見据えて完済までの計画を練ることが大事です。

4、借金一本化の具体的な手続きの流れ

それでは、実際に借金をひとつにまとめる「借金一本化」をするには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。
流れに沿ってみていきましょう。

(1)申込み

まずはおまとめローンの借入先に、ローン借入の申込みをします。
Web上や店舗などで申込みをすることができます。

消費者金融系や銀行系のおまとめローンはWeb完結できるものが多いので、パソコンやスマホをお持ちの方は利用するとよいでしょう。

(2)審査

申込みをすると、金融機関側で審査が行われます。

返済能力がありそうだと判断されたら審査に通りますし、そうでなければ審査に落とされます。
いずれにしても、回答を待つことになります。

(3)借入実行

審査に通ったら、融資が実行されます。本人名義の口座宛に融資金が振り込まれることが多いです。

(4)前の借金を完済

融資が実行されたら、そのお金で以前の借入先の借金をすべて完済します。
これにより、借金が新たなおまとめローンの借金に一本化されます。

政府系の金融機関の場合は、以前の借金を完済したことの証明を求められるので、おまとめローンで借りたお金を他の用途に流用することはできません。

銀行系や消費者金融系の金融機関を利用した場合も、以前の借金は必ず完済しておきましょう。

(5)新しい借金の返済開始と完済

借金が一本化されたら、返済を開始します。
約定通りに支払を終えれば、借金を完済することができます。
返済方法は口座引き落とし、ATMからの振り込み、Web返済など、通常の借金の場合と同じです。

5、借金一本化ができない!そんな時は債務整理を検討しよう

借入先や借金額が多い人ほど借金一本化の必要性が高いですが、多すぎると審査に落ちる可能性が高くなります。

そういった事情で借金一本化ができないときは、債務整理も検討してみましょう。

(1)債務整理とは〜借金一本化より借金完済への近道!

債務整理とは、そのままでは返済しきれなくなった借金を減額または免除してもらうことによって解決を図る手続きです。
返済総額が減りますので、借金一本化よりも借金完済への近道であるといえます。
債務整理の具体的な手続きには、以下の4種類があります。

①任意整理

裁判所の手続きを利用せず、債権者と直接交渉して今後の返済額や返済方法を新たに取り決める手続きです。

基本的に元金の減額は難しいですが、将来利息をカットできるので返済総額が減ります。
交渉によって返済期間の延長が可能な場合が多いので、返済月額を減らしたい場合に有効な方法といえます。

②特定調停

簡易裁判所の民事調停の手続きを利用して、債権者と交渉して今後の返済額や返済方法を新たに取り決める手続きです。

申し立ての手続きはそれほど複雑なものではありません。
交渉する際は、専門的な知識を持った調停委員が間に入りますので、弁護士に依頼せず自分でも行いやすいといえます。

したがって、弁護士費用をかけずに借金問題を解決したい人に向いている方法です。

③個人再生

裁判所の手続きを利用して、借金を大幅に減額してもらえる手続きです。

借金総額は原則的に5分の1にまで、最大で10分の1にまで減らすことが可能です。

住宅ローンを払いながら他の借金のみを減額できる「住宅ローン特則」もあるので、マイホームを残して借金を整理したい人には非常にメリットが大きい方法といえます。

④自己破産

裁判所の手続きを利用して、すべての借金の返済義務を免除してもらう手続きです。

債務整理の中では最もデメリットも多いですが、免責が許可されるとただちに借金から解放されるという大きなメリットがあります。

返済不能なほど多額の借金を抱えた人の最終的な救済策といえます。

(2)借金一本化と任意整理の比較

以上の債務整理のうち、「任意整理」は借金を継続的に返済していくという点で、借金一本化に似ているともいえます。

そこで、借金一本化と任意整理ではどちらが借金完済に有利なのかを比較してみましょう。

①金利

借金一本化では、金利を下げることはできますがゼロにすることはできません。

一方、任意整理では原則として今後の金利(将来利息)をゼロにできます。
利息をカットできれば今後の返済額が大幅に減るケースが多いので、この点では任意整理の方が有利といえます。

②返済期間

借金一本化では、一般的に返済期間は長期化します。
商品や審査にもよりますが、5年~7年程度となることが多いです。それ以上の期間にわたることもあるかもしれません。

一方、任意整理では3年~5年で完済するのが一般的です。返済総額が減る分、返済期間も短くできますので、この点でも任意整理の方が有利といえます。

③返済総額

借金一本化では借金そのものは減らない上に、金利や返済長期化の影響で返済総額が増えるケースが少なくありません。

一方、任意整理では元金をカットできなくても、将来利息をカットすることで返済総額を減らすことができます。
この点でも、任意整理の方が有利といえます。

④信用情報機関への登録

前記「1」(1)④でご説明しましたが、借金一本化では信用情報機関に事故情報として登録されませんが、任意整理をすると登録されてしまいます。
この点に限っては、借金一本化の方が有利といえます。

ただ、借金一本化をして順調に返済していければ問題ありませんが、後に延滞してしまうと結局、延滞ということで登録されてしまいます。

そのため、上記①~③のポイントを十分に検討して、借金一本化で完済が可能かどうかを判断することが大切です。

(3)債務整理のデメリット

以上のように、借金を完済するためには一般的に借金一本化よりも債務整理の方が有利です。
ただ、債務整理には信用情報機関への登録以外にもデメリットがありますので、利用する際は注意が必要です。

債務整理による主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 専門的な知識が必要となる
  • 複雑な手続きを要する
  • 費用がかかる
  • 官報に氏名や住所が登録される(個人再生・自己破産の場合)
  • 手続き中は一部の資格や職業が制限される(自己破産の場合)
  • 借金の使い途によっては免除されないこともある(自己破産)

借金問題を解決するためには、自分の状況に合った方法を選択することが重要ですので、以上のデメリットを踏まえた上で、状況に応じて債務整理も検討してみてはいかがでしょうか。

6、自分に合う解決方法がわからないときは弁護士に相談しよう

どの解決方法が自分の状況に合っているのかを判断するには専門的な知識も必要となりますので、なかなかわからないことも多いと思います。
そんなときは、弁護士に相談することをおすすめします。

借金問題の経験が豊富な弁護士に相談すれば、状況に応じてベストな解決方法を提案してもらうことができます。
債務整理を依頼すれば、複雑な手続きはすべて弁護士が代行しますので、自分で苦労する必要はありません。

もちろん、借金をひとつにまとめる「借金一本化」も解決方法のひとつですが、無理を下結果、かえって借金が膨らんでしまうと解決が難しくなるおそれもあります。
借金の返済が苦しくなったら、早めに弁護士に相談してみましょう。

まとめ

複数の借金をひとつにまとめる「借金一本化」は、多重債務を抱える方にとって有効な解決方法のひとつです。

ただ、借金一本化はあくまで完済を目指すための方法として選択するべきものですから、しっかりと計画をたてて利用することが大切です。

借金一本化でも完済への道が遠いと感じるときは、債務整理を選択した方がよい可能性が高いといえます。

まずは、弁護士の無料相談を利用して、状況を整理してみてはいかがでしょうか。
その上で、最適な解決方法を選択することが、完済への近道となります。

借金が返せない場合に関する詳細は、以下の関連記事をご参照ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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