離婚は子連れでなくても、多くの人にとって複雑なプロセスとなります。
そこで今回は、
- 子連れの離婚前に実施すべきことリスト
- 子連れの離婚後に注意すべきことリスト
- 離婚に関する問題に対する相談先
についてご紹介します。
目次
1、離婚でやることリスト~子連れの場合【チェックリストで確認】
まずは、子連れ離婚でやることのリストを、離婚の前後に分けてまとめてご紹介します。
チェックリストとしてご活用ください。
(1)離婚前にやることチェックリスト
□ | 離婚原因(不倫・DVなど)に関する証拠を集める |
□ | 共有財産をリストアップする |
□ | 年金分割について調べる |
□ | 婚姻費用を計算する |
□ | 慰謝料の相場を調べる |
□ | 親権について検討する |
□ | 養育費の金額を計算する |
□ | 面会交流の方法を考える |
□ | 仕事を探す |
□ | 離婚後に利用できる制度を調べる |
□ | 住居を決める |
□ | 子供の転園・転校先を調べる |
□ | 離婚後の戸籍・姓を考える |
□ | 離婚協議をする |
□ | 離婚協議書・公正証書を作成する |
□ | 離婚届を作成・提出する |
(2)離婚後にやることチェックリスト
□ | 住民票を異動させる |
□ | 健康保険に加入する |
□ | 年金に加入する・年金分割の手続をする |
□ | 財産分与で得た財産の名義を変更する |
□ | 印鑑登録を変更する |
□ | 住所・氏名の変更手続をする |
□ | 子供の戸籍・姓を変更する |
□ | 転園・転校手続をする |
□ | 児童手当の受取人を変更する |
□ | 支援制度の申請をする |
□ | 不払いがあれば相手に請求する |
後段にて詳細な内容を確認していきましょう。
2、子連れの離婚前にやることリスト
離婚前にやることは以下のとおりです。
状況によっては必要のない項目もあるので、ご自身の現状と照らし合わせながらご確認ください。
(1)離婚原因(不倫・DVなど)に関する証拠を集める
離婚の原因が相手にある場合には、証拠を集めておかなければなりません。なぜなら有責配偶者には慰謝料を請求できる可能性があるからです。
証拠があれば、相手が離婚原因が自分にあるという事実を認めない場合でも、
- 夫婦間の話し合い
- 裁判所での調停(家庭裁判所にて調停委員が夫婦の間に介入し離婚についての話し合いをまとめる手続き)
を有利に進められます。
たとえば、
- 不倫相手とのメッセージのやりとり
- DVを受けた部分の写真
などが考えられます。
離婚を切り出す前に必要な証拠を集め、確実に離婚できるようにしましょう。
この際必要な証拠や収集方法について更に詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
(2)共有財産をリストアップする
夫婦の共有財産を確認しておく必要があります。共有財産とは、婚姻後に夫婦で築いた財産のことです。
- 相手名義の預貯金
- 相手名義の不動産
であっても、婚姻後に形成された財産であれば共有財産となります。
離婚する際には財産分与がなされ、原則として共有財産を半分ずつに分けます。
離婚を切り出す前に共有財産を調べておかないと、財産を渡したくないと考えて相手が財産隠しをするかもしれません。確実に財産分与を受けるには、事前の備えが重要となります。
財産分与の詳細については以下の記事をご確認ください。
(3)年金分割について調べる
年金分割についても知っておく必要があります。
年金分割とは、婚姻期間中に納付された厚生年金の記録を離婚後に分割する制度です。
会社員や公務員などが加入できる厚生年金だけが対象となります。自営業などで夫婦共に国民年金にしか加入していなければ年金分割の対象外です。
年金分割には合意が必要な「合意分割」と合意不要の「3号分割」があります。
実際はもう少し複雑ですが、簡単にいうと
- 共働きの場合には合意分割
- 専業主婦の場合には3号分割
となります。
3号分割については離婚後にひとりで請求できるため、離婚前の準備は特に必要ありません。
合意分割の場合には、離婚前に年金事務所に「情報通知請求書」を提出し、あらかじめ「情報通知書」を入手しておく方がよいでしょう。相手に知られたくない場合には、書類の送付先に注意してください。
年金分割はルールが複雑です。自分がどのような分割方法になるか正確に知りたい場合には以下の記事を参照してください。
(4)婚姻費用を計算する
婚姻費用とは、夫婦生活に必要な費用をいいます。
別居していても離婚までは婚姻費用が発生し、相手の方が高収入であれば請求が可能です。なぜなら夫婦には扶助義務があるからです。
離婚前に別居するのであれば、婚姻費用のおおまかな金額も把握しておくとよいです。
- 互いの収入
- 子供の人数
- 子供の年齢
によって具体的な金額は異なります。
以下の記事でご自身の場合の婚姻費用の額を確認してみるとよいでしょう。
(5)慰謝料の相場を調べる
不倫やDVなどが離婚の原因であれば、受けた精神的苦痛に応じて相手に慰謝料を請求できます(ただし法的な意味での不倫は配偶者以外の異性と肉体関係があることが条件です)。
金額はケースにより様々ですが、一般的には数十万円から数百万円です。
離婚後の経済的自立のために、慰謝料の相場を調査しておきましょう。
(6)親権について検討する
離婚すると両親の一方だけしか親権を持てません。そのため
- 子供の親権を自分が持ちたいのか
- 相手が争ってきたときにどうするか
も考えておく必要があります。
裁判所が親権を判断する際には様々な要素が考慮されます。
たとえば経済力もひとつの要素ですが、専業主婦が親権をとれないというわけではありません。
親権をどうしてもとりたい方は以下の記事をお読みください。
(7)養育費の金額を計算する
離婚後に子供の親権を持つ場合には、相手に養育費を請求できます。
子供との生活の安定に養育費はかかせません。
養育費の金額は
- 両親の年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
に応じて変わります。離婚後の見通しを立てるために相場を調べておくとよいでしょう。
(8)面会交流の方法を考える
別居・離婚しても、子供にとっては父母がともに親である事実は変わりません。
子供の成長のためには、離れて暮らす親とも定期的に会って交流をするべきであり、これを面会交流と呼びます。
離婚した相手に子供を会わせなくないという気持ちがあるかもしれません。
しかし、相手が暴力をふるうおそれがある場合など危険なときを除き、子供の健全な成長のため、面会交流が必要です。
どのような方法がふさわしいかを考えておくとよいでしょう。
(9)仕事を探す
専業主婦で
- 収入がゼロの場合
- パートのみで収入が少ない場合
には仕事を探しておいた方がよいです。
離婚後に探してもすぐに仕事につけず、経済的に苦しい状況に置かれてしまう可能性があります。
早めに仕事が見つかれば離婚に踏み出しやすくなり、スムーズに再スタートできます。
(10)離婚後に利用できる制度を調べる
仕事を探すとともに、離婚後に利用できる制度について知っておくと安心です。
ひとり親を支援するために、児童扶養手当など様々な支援制度が存在しています。
以下の記事を参考にして、自分が利用可能な制度をあらかじめ把握しておくとよいでしょう。
(11)住居を決める
離婚後に住む住居を考えておく必要があります。
- 必要な広さ
- 出せる家賃
などを考えて早めに決めておくとよいでしょう。可能であれば実家に戻るのもひとつの手です。
また、離婚前に別居すると離婚が認められやすくなるメリットがあります。
以下の記事を参考に別居するかどうかを検討してみてください。
(12)子供の転園・転校先を調べる
住居とあわせて考えておきたいのが、子供の
- 転園先
- 転校先
をどうするかです。
住所が離れていると、今の幼稚園・保育園や学校には通えない可能性が高まります。
子供への影響を考えて、転居先の教育環境を調べておきましょう。
(13)離婚後の戸籍・姓を考える
離婚後に
- 戸籍
- 姓
をどうするかを考えておく必要もあります。
戸籍は結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかです。元の戸籍に戻る場合には姓は旧姓になります。
新しい戸籍を作る場合にも原則として旧姓ですが、各種名義変更の手続を避けたい場合などに婚姻時の姓を続けることも可能です。
また、子供の戸籍・姓についてもあわせて決める必要があります。子供の学校での影響なども考えて結論を出すようにしてください。
(14)離婚協議をする
準備がととのったら、いよいよ離婚を切り出すことになります。
相手が離婚に応じるようだったら、
- 財産分与
- 年金分割
- 親権
- 養育費
- 面会交流
などをどうするか話し合ってください。
離婚に応じてくれず、夫婦間での話し合いが難しいようであれば、離婚調停を検討しましょう。
離婚調停については以下を参考にしてください。
(15)離婚協議書及び公正証書を作成する
離婚の話し合いがまとまったら、決まった内容について離婚協議書を作成しておいた方がよいです。
離婚協議書とは離婚の際に夫婦間で決めたことを記す契約書になります。
口約束だと相手が守らない可能性があるため、書面にしておきましょう。
相手が取り決めた約束を守らない場合にすぐに強制執行などの手段を取れるように離婚協議書を公正証書にしておく方法もあります。
詳しくは以下の記事を参照してください。
(16)離婚届を作成・提出する
離婚協議書が完成したら、離婚届を入手して作成・提出します。証人の署名も必要なため、準備しておきましょう。
提出先は「届出人の本籍地」または「住民票の住所地」の役所です。郵送での提出も可能です。
3、子連れの離婚後にやることリスト
続いて離婚後にやることをご紹介します。
(1)住民票を異動させる
離婚を機に転居したら、住民票を異動させてください。
別の市区町村への転居であれば、
- 元の住所では「転出届」
- 引越し先では「転入届」
を提出します。
同じ市区町村内で引っ越すのであれば「転居届」になります。
(2)健康保険に加入する
相手の勤務先の健康保険に被扶養者として加入していた場合には、離婚後は新たに健康保険に加入しなければなりません。
加入していないと無保険となり、医療費が全額自己負担になります。
新たな仕事をすぐに始め、きちんと社会保険が完備された場所で加入できる程度の労働時間を確保できるのであれば問題ありません。
すぐに仕事をしない場合には国民健康保険に加入することになります。
役所に行って自分で手続をする必要があります。
(3)年金に加入する・年金分割の手続をする
年金への加入も必要です。
健康保険と同様に、社会保険が完備された環境で加入できる程度の時間働くのであれば勤務先にお願いして、しないのであれば自分で手続をしてください。
年金分割をするのであれば、必要書類を用意して年金事務所で手続が必要です。
自動的に分割されるわけではないので注意してください。
これは離婚後2年以内に手続をすませなければなりません。
(4)財産分与で得た財産の名義を変更する
財産分与で
- 相手名義の不動産
- 相手名義の自動車
を取得した場合には、自分の名義に変更しましょう。
相手の協力が必要になるケースも多いので、離婚協議時に調整しておくとよりスムーズです。
名義変更についてわからないことがある場合には弁護士などの専門家に相談してみてください。
(5)印鑑登録を変更する
旧姓に戻ると印鑑登録も変更しておく必要があります。
あらかじめ新しい印鑑を用意しておくとよいです。
姓が変わらなくても住所の変更にともなって印鑑登録の手続が必要になります。
(6)住所・氏名の変更手続をする
住所・氏名の変更手続は多岐にわたります。
- 運転免許証
- パスポート
- 預金通帳
- クレジットカード
- 生命保険
など、必要になるものをリストアップしてからとりかかりましょう。
特に身分証は様々な手続に必要になるので早めに変更しておいた方がよいです。
(7)子供の戸籍・姓を変更する
子供の戸籍・姓を変更する場合にも手続が必要です。
子供の姓の変更は家庭裁判所に許可を得なければなりません。
戸籍の手続は市区町村役場で行います。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
(8)転園・転校手続をする
子供が転園・転校する場合には手続をします。
特に保育園は必要書類が多いケースもあるため、早めに進めておきましょう。
小中学校の手続はそれほど手間ではないでしょう。
(9)児童手当の受取人を変更する
自分が世帯主でなかった場合には、児童手当の受取人が相手のままになってしまいます。
すぐに役所で手続をして自分に支払われるようにしてください。
(10)支援制度の申請をする
離婚前に調べていたひとり親支援制度の申請をしましょう。わからないことがあれば市区町村に相談すれば案内してもらえます。
経済的自立のために、ひとりで悩まずにできる限り支援制度を活用してください。
(11)不払いがあれば相手に請求する
約束した支払いを相手がしてくれない場合には連絡して請求しましょう。
特に多いのが養育費の不払いです。公正証書などがあればすぐに強制執行の手続に移れます。
もし公的文書がなければ、調停などを起こす必要が生じ、時間がかかってしまいますので、離婚時の条件について話し合う段階で取り決めたことを公正証書にまとめることが非常に重要です。
4、貯金のない主婦が子連れで離婚する場合に特に注意すべき点とは
専業主婦だったため、貯金が少ないという方も少なくないでしょう。
子連れ離婚の金銭面での不安は非常に大きいかと思います。これまでに挙げていない中で、特に注意すべきポイントをまとめました。
(1)クレジットカードを作成しておく
自分の収入が少ない場合は、離婚前にクレジットカードを作っておくのがオススメです。
離婚後は家族カードが使えず、収入が少ないと新規発行も難しいためです。
キャッシュレス化が進み、ネット通販が広がっている現代においてはクレジットカードの重要性は増しています。
夫の信用力を利用できるうちにカードを作成してしまいましょう。
(2)金銭面の計画は十分に立てておく
子連れ離婚では自分が使えるお金を把握しておくのが非常に重要になります。
「離婚したい」という思いが先走ってしまい、離婚後に金銭面で困るのはできる限り避けたいものです。
結婚前にしていた貯金は自分の財産になるため、金額を確認しておくとよいでしょう。
両親の支援が期待できるのであれば、早めに話し合っておく必要があります。
自分のためにも子供のためにも、無計画に離婚することのないようにしてください。
5、子連れ離婚の一番よいタイミングについて
子供のことを考えると、離婚のタイミングにも注意が必要です。子供への影響が少ないタイミングとしては以下が考えられます。可能な範囲で時期を調整できないか検討してみるとよいでしょう。
(1)子供の記憶に残らないうちにすませる
子供が幼い頃に離婚するのはひとつの手です。
子供の記憶に相手のことが残りづらいため、心の傷を最小限に抑えることができます。
名字が変わっても本人や周囲の違和感が少ないこともメリットです。
もっとも、仕事をしながら幼い子供の面倒をひとりでみるのは簡単ではありません。
実家に住むなど、周囲の助けが得られないか考える必要があります。
(2)進学によって所属が変わるタイミング
子供が小学校・中学校などに進学するタイミングでの離婚も比較的影響を抑えやすいといえます。
人間関係がリセットされるタイミングだと、名字が変わることに気づかれにくいでしょう。
もっとも、受験を控えた時期に、離婚の話を子供に知られる場所でするのは適切とはいえません。
子供が勉強に集中できる環境を作れるように注意してください。
(3)子供が手を離れてから
子供が手を離れるのを待って離婚するのもよいでしょう。
- 就職
- 大学進学によって一人暮らしを始めた
など、ある程度自立していれば子供への影響は少ないといえます。
親権や養育費といった問題も生じません。
ただし、子供の結婚直前は適切とはいえないため、少し待った方がよいでしょう。
6、離婚で困ったときの相談先
離婚を考えているときには精神状態も落ち着かないでしょう。
それにもかかわらず決めなければならないことが多く、非常につらい思いをされているのではないでしょうか。
離婚を相談できる場所は数多くあります。
ひとりで悩まず、以下の窓口に相談してみてください。
(1)探偵・調査会社
探偵・調査会社は、主に相手が不倫をしている疑いがある場合に考えられる相談先です。
「何か様子がおかしいものの決定的な証拠はない」というケースで有効になります。
確たる証拠があれば慰謝料の交渉を有利に進められます。
費用はある程度かかってしまいますが、相手が不倫を認めそうにない場合には利用を検討してみてください。
(2)離婚カウンセラー
離婚カウンセラーとは、夫婦関係についての専門家で、中立的な立場からカウンセリングを行います。
離婚カウンセラーから他の専門家の紹介を受けることも可能です。
離婚を前提としていなくても相談でき、アドバイスを受けて夫婦関係が改善するケースもあります。
関係をやり直したい方にも適切な相談相手といえます。
(3)役所の窓口
役所の窓口は、離婚することを決めている場合に頼りになります。
離婚にともなう各種手続について聞けるのはもちろん、ひとり親支援制度についても案内を受けられます。
経済的な不安を抱えている方は相談してみましょう。
(4)家庭裁判所
家庭裁判所には、裁判所での手続について知りたいときに相談するとよいでしょう。
たとえば調停を起こしたいときに、
- 申立ての方法
- 必要書類
- 申立て費用
など必要な準備を聞くことができます。
ただし、「自分は勝てそうか」など争いの内容について聞いても答えてくれません。
法律相談はできず、あくまでも手続について聞く場所とお考えください。
(5)弁護士
争いになっている、あるいは争いになりそうな場合には弁護士への相談がオススメです。
弁護士は紛争解決のプロなので、事情を聞いた上で法律上の見解を教えてもらえます。
相談したからといって必ず依頼しなければならないわけではありません。無料相談を利用すれば相談費用もかかりません。法的なアドバイスを受けたいとお考えの方はお気軽にご相談ください。
子連れの離婚やることリストに関するQ&A
Q1.子連れの離婚前にやることチェックリストとは?
- 離婚原因(不倫・DVなど)に関する証拠を集める
- 共有財産をリストアップする
- 年金分割について調べる
- 婚姻費用を計算する
- 慰謝料の相場を調べる
- 親権について検討する
- 養育費の金額を計算する
- 面会交流の方法を考える
- 仕事を探す
- 離婚後に利用できる制度を調べる
- 住居を決める
- 子供の転園・転校先を調べる
- 離婚後の戸籍・姓を考える
- 離婚協議をする
- 離婚協議書・公正証書を作成する
- 離婚届を作成・提出する
Q2.貯金のない主婦が子連れで離婚する場合に特に注意すべき点とは?
- クレジットカードを作成しておく
- 金銭面の計画は十分に立てておく
Q3.子連れ離婚の一番よいタイミングとは?
- 子供の記憶に残らないうちにすませる
- 進学によって所属が変わるタイミング
- 子供が手を離れてから
まとめ
ここまで、子連れ離婚でやることを紹介してきました。ご自身の状況に応じてするべきことがおわかりいただけましたでしょうか。
離婚した後に後悔することのないよう、チェックリストをご活用ください。もし疑問や不安があればぜひ弁護士にご相談ください。