成田離婚という言葉をご存知でしょうか。
テレビドラマの題名にもなった流行語で、スピード離婚の一種です。これから結婚しようかと考えている人にとっては、成田離婚は考えたくもないことですし、できれば避けたいでしょう。
ここでは、多数の離婚問題の相談に当たってきたベリーベスト法律事務所の弁護士が成田離婚せずに幸せな新婚旅行にするために知っておくべき6つのことをご紹介しますので、新婚旅行を控えていらっしゃる方は参考にされてみてください。
また、既に成田離婚の危機に瀕してしまっているご夫婦にとっても参考になるように、離婚に関する法的な観点から説明も行っています。こちらもご参考になれば幸いです。
1、成田離婚とは?成田離婚の意味
冒頭で簡単に説明しましたが、成田離婚とは結婚して間もないカップルが新婚旅行のタイミングで離婚してしまうことを意味します。1990年代後半にできた新しい言葉で、スピード離婚のひとつの形態に分類されます(スピード離婚について詳しくは「新婚でのスピード離婚を検討するにあたって知っておくべき9つのこと」をご参照ください。)。
新婚の夫婦が新婚旅行の最中に、取るに足らないことでトラブルを起こして関係を悪化させる、あるいは相手との相性に疑問を持つなどして、帰国してすぐに離婚するというのが特徴です。当時、日本の海外旅行の玄関口であった成田空港へ到着してから離婚をするので、この名称が付けられたと考えられます。
成田離婚は、女性の側から一方的に離婚を求められた場合に使われることが多いのですが、男性の側から新婚旅行後に離婚を求める場合もあります。
2、ドラマ「成田離婚」のあらすじ
ドラマ「成田離婚」は、1997年に放送された日本のテレビドラマです。主人公の夫「星野一朗」を草なぎ剛、妻「田中夕子」を瀬戸朝香が演じました。
クリスマスの夜に不倫相手から別れを切り出された田中夕子は、同じ会社に勤める星野一朗と運命の出会いを果たした。一朗は夕子にゾッコンで、猛烈なアタックを開始。
2人は恋に落ち、結婚することになった。式を挙げて新婚旅行へと出発しましたが、旅行中に夕子は一朗の振る舞いに不満を募らせていった。夕子は我慢が限界に達し、とうとう帰国後に成田空港で不満を爆発させて2人は口ゲンカをした。互いに譲ることはなく、2人は離婚を決意することに。
以上、簡単にあらすじを説明しました。
3、今でも成田離婚って本当にあるの?
成田離婚という言葉で誕生した1990年代後半、現在は、成田離婚という言葉があまり使われなくなったのには、羽田空港の国際線就航便数が飛躍的に増えたため、成田離婚という言葉を使う意味が薄れたということもあるでしょう。
また、後述の通り、当時、成田離婚の原因として多いと言われていた性の不一致について、現在では、婚前交渉を経験するカップルの割合が増えているため、新婚旅行中に初夜を経験するケースが減っていると考えらることも成田離婚を耳にしなくなった背景として挙げられます。
ただし海外旅行をする若い人は減少傾向にあるので、海外旅行に不慣れな人は以前より増えているため、不慣れな海外旅行で夫が頼りなく見えて帰国後に離婚してしまうというケースは増えているのかもしれません。
新婚旅行で羽田空港へ帰ってきて羽田空港で離婚することは「羽田離婚」ともいえるのではないでしょうか。
4、成田離婚の原因は?
一度は永遠の愛を誓った2人が、新婚旅行から帰国してスピード離婚するのは、どんな原因があったのでしょうか。ここでは成田離婚の原因をご紹介していきます。
(1)性の不一致
成田離婚する原因で一番多いのが、性の不一致と言われています。お見合い結婚をした人や結婚するまで性的交渉をしたことのないカップルは、新婚旅行で初めて性交渉をする場合がほとんどです。
初めての性的交渉で、パートナーから一方的に性的趣味を押し付けられると嫌になってしまいます。性的交渉は婚姻関係を継続していく上では大切なことであり、お互いの性的趣味が異なるのは大きな問題です。
理想を言えば、初めての性交渉はロマンチックに演出するのがいいでしょう。
(2)買い物に熱中し過ぎてしまった
男性より女性に多いのですが、海外旅行中に買い物に熱中し過ぎてしまうことがあります。海外では国内より安くブランド品が買えますし、実家や友人・知人へのお土産を買うために夢中になってしまうのです。男性は女性に対して「そんな人とは思わなかった」と幻滅して、成田離婚をしてしまうと言われています。
男性としては、自分のことをほったらかしで買い物に夢中になってしまう性格に付いていけないでしょう。また、大量に買い物をするのを見ると、経済観念がまともだろうかと不安を抱いてしまいます。
(3)新婚旅行の無計画さ
新婚旅行へ限られた日数の中で行くため、スケジュールをしっかりと立てておかないと旅行全体が台無しになってしまうことがあります。一生に一度のことだと思って旅行へ行くのですから、全然面白くなくて楽しめかったらショックなはずです。
例えば、移動がスムーズにできなかったり、見所の観光スポットを見ることができなかったりなど、無計画な新婚旅行だと雰囲気は台無しになってしまうでしょう。新婚旅行中は我慢していても、帰国してからすぐに離婚してしまうことが多いのです。
(4)男性よりも女性の方が海外旅行に慣れている
若い人の間では、海外旅行へ行った経験は男性よりも女性の方が多い傾向にあります。そのため女性の方が海外旅行慣れしていることが多く、新婚旅行へ行って男性が不慣れな面を見せると女性は幻滅してしまうのです。
その結果、些細なことで喧嘩して、帰国後に離婚することがあります。女性としては、海外旅行へ行っても男性には頼りになるところを見せてほしいと思っているのです。
(5)疲れから相手への思いやりに欠ける
海外旅行というのは移動の時間が長く、不慣れな海外ということもあり精神的・肉体的に疲れます。普段は温厚な人でも精神状態が不安定になり、何でもないことで怒ったりするのです。それまで見たことがなかったパートナーの一面を見て、ショックを受けて成田離婚するというケースがあります。
(6)英語ができない
以前と違って、ガイドブックには簡単な英会話集が掲載してありますし、スマホなどの翻訳機能を使うこともできます。これらをうまく使えば、海外旅行中もそれほど困ることはありません。
ところが、何かトラブルが発生した場合には、簡単な英語くらいはできた方が便利な場面もあります。例えば、海外旅行中のホテルの部屋で何かトラブルがあった場合、英語が話せるとスムーズに問題解決できます。ところが、英語が話せなければあたふたするばかりで、パートナーのそんな姿を見ると不安に感じてしまうのです。
女性が男性のことを頼りないと感じると、成田離婚へと発展するケースが多くなります。
5、成田離婚を防止する方法
成田離婚は努力次第で防止することは可能です。以下では、その方法を紹介します。
(1)しっかりと旅の準備をする
新婚旅行で初めて海外へ行くという人もいるかもしれませんが、しっかりと旅の準備をしておくことが大切です。準備しておく必要のある物が、旅先でいざという時にないと喧嘩の原因になります。夫婦で旅行前に持ち物の確認をするようにしましょう。
(2)余裕のあるスケジュールを組む
新婚旅行で海外へ行くとなると、いろいろ見たい、体験したい、食べたいという思いが強くなるものです。欲張り過ぎて、スケジュールが過密になってしまうことがあります。その結果、疲れが溜まって、旅行中や帰国後に喧嘩してしまうことがあるのです。余裕のあるスケジュールを組んで、無理をしないようにしましょう。
(3)相手のことを思いやる
不慣れな海外旅行では、いろいろなトラブルやハプニングが起きることがあります。そんな時に相手のことを思いやる気持ちがなければ、喧嘩をしてしまうでしょう。
特に男性が頼りにならない場面があると、女性が幻滅して関係が悪化するということがよくあります。そんな時でも、女性が男性への思いやりを持つことができれば、良好な関係を築くことができるはずです。新婚旅行中は、お互いに相手のことを思いやるようにしましょう。
(4)新婚旅行中はパートナーだけを見る
これは新婚旅行中に限った話ではないのですが、パートナーのことをしっかりと見ていることが大切です。スマホでSNSやゲームに夢中になったり、他の異性を見たりしないようにしましょう。喧嘩の原因になります。
(5)自分だけ楽しまない
海外旅行中に夢中になってしまうことのひとつにショッピングがあります。日本よりも安くブランド品が買えるのでショッピングに夢中になって、パートナーを放置してしまうというのは最悪なパターンです。海外旅行中はどんなことでも自分だけ楽しむようなことをせず、パートナーといっしょに楽しむようにしましょう。
6、成田離婚すると法的問題はどうなる?
成田離婚をすると法的問題は発生してきますが、通常の離婚をする場合と法的手続きに変わりはありません。
(1)離婚するための手続き
成田離婚する場合でも通常の離婚手続きと変わるところはありません。以下では、離婚の手続きを離婚の合意がある場合とない場合に分けて説明します。
①離婚の合意がある場合
相手との間に離婚の合意があれば、協議して離婚届を提出することで離婚できます(協議離婚)。本人同士だけでなく、弁護士等の代理人を立てて協議することも可能です。
詳しくは、「協議離婚(話し合いの離婚)で高額の慰謝料を勝ち取るための全手順」をご参照ください。
②合意がない場合
相手との間に離婚の合意がなければ、調停や裁判によって離婚するかどうかを争います。調停とは、夫婦間で離婚の合意ができない場合に、家庭裁判所の調停委員を介して行なう手続きのことです。
夫婦の話を別々に聴いて、離婚するかどうかだけでなく、離婚後の親権者、面会交流、財産分与、慰謝料等についても話し合います。詳しくは、「離婚調停の期間と調停を有利に進めるために知っておくべき9つのこと」をご参照ください。
調停で話がまとまらなければ、裁判で決着をつけることになります。詳しくは、「離婚裁判の流れや進め方について知っておくべきこと」及び「離婚裁判にかかる期間と早期に終了させる方法」をご参照ください。
(2)慰謝料はどうなる?
成田離婚した場合でも慰謝料を請求することはできますが、一定の条件があります。民法770条1項で定める法定離婚事由に該当し、その原因が相手方にある場合でなければなりません。
【法定離婚事由】
詳しくは、「法定離婚事由(原因)とは?相手が拒否しても離婚できる場合について」をご参照ください。
したがって、性格の不一致などの理由で離婚した場合は、慰謝料を請求することは難しいでしょう。
また、慰謝料の金額について、成田離婚のように短期間で離婚する場合は慰謝料の金額は相対的に安くなる傾向にあります。もっとも、夫婦間で合意があれば、慰謝料の金額は自由に決めることができます。
協議離婚では、調停や裁判になった場合の慰謝料を基準に決める場合がほとんどです。慰謝料の算出する要素にはさまざまなものがありますが、一般的には結婚していた期間が短期の場合より長期の場合の方が高額になります。
夫婦が長期間にわたって結婚生活を送っていたのにパートナーに裏切られた場合、裏切られた方には大きな精神的ダメージがあるというのが理由です。したがって、短期間で成田離婚した場合でも、慰謝料が高くなる場合もあります。
一般的な離婚の慰謝料は幅があり、50万円~500万円ほどが相場となっています。精神的苦痛を受けた側の苦痛の程度により金額は変わってくるのです。
より正確な金額を知りたい場合は、弁護士にご相談ください。また、「離婚慰謝料の相場と弁護士が教える高額獲得する方法」も併せてご参照ください。
(3)財産分与はどうなる?
成田離婚の場合は結婚している期間が短期のため、夫婦共有の財産がそれほどない場合がほとんどで、財産分与するとしても少額です。
ただし、慰謝料と同様に、夫婦間で合意があれば財産分与の金額は自由に決めることができます。
まとめ
成田離婚しないために知っておきたい7つのことをご紹介しましたが、いかがでしょうか。
成田離婚がどういうものか、その先にある法的な問題、さらには防止策等を知ることができたと思います。この記事が、これから結婚しようとお考えの方のお役に立てれば幸いです。