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看護師が残業代をしっかり請求するために知りたい5つのポイント

看護師 残業代

看護師は、「残業代」の観念が他の業種よりも特殊になりがちです。
看護師の業務上、緊急対応が必要なこともあるためです。役職が上がれば上がるほど、所定時間外での仕事も増えてきます。

しかし、

「残業代は固定給に入っている」
「一定の役職者には残業代は出ない」
「労働契約的に残業代は出ないことが決定している」

などという給与形態になっているのでは……と不安になっている看護師の方も少なくないでしょう。

今回は、

  • 看護師の残業の実態
  • 看護師の「サービス残業」の実態
  • 看護師の残業の実態

について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

あわせて、

  • 看護師の残業代に関する法的規制
  • 看護師が残業代を請求する方法

などについても、紹介します。

2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、看護師は”医療従事者”の一種として、コロナウイルス感染者の対応の最前線で働いてくださっています。
本当はもらえるはずの残業代についても、未払いであるという事案も考えられます。

看護師さんの残業代について知りたい、実際に自分が看護師で「残業代を請求したい」という方々の参考になれば幸いです。

また、残業代がもらえないかも…?とお悩みの方は以下の関連記事もご覧ください。

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1、看護師の残業代について知る前に~①看護師の残業の実態

看護師の残業代について知る前に①~看護師の残業の実態

看護師の残業の実態を見ていきましょう。
看護師でサービス残業をしている人の割合は、2017年の日本医療労働組合の調査結果によると68.6%です。

(1)看護師の残業時間

①10時間以下の残業が最も多いが60時間以上残業しているという看護師さんも

2008年に日本看護師協会が実施した調査によると、上記図のとおり、一番多いのは看護師の1ヶ月の残業時間は10時間以内の「34.1%」です。
続いて多いのが、10時間から20時間の「25%」です。

残業時間20時間より多くなるほど割合は低くなりますが、なかには60時間以上も残業をしている方が「4.3%」もいる結果になっています。

(2)看護師が残業する理由

看護師が残業する主な理由には、以下のことが考えられます。

  • 患者の状態に左右される
  • 看護記録や引き継ぎに時間がかかる
  • 業務時間外に勉強会が行われる

①患者の状態に左右される

患者の状態によっては、時間に退勤できないケースも少なくないでしょう。

看護師さんが担当する患者は1人ではありません。

ナースコールで呼ばれたり、患者の容体が急変したりするなどの事情があれば、対応に追われて退勤時間が遅れてしまいます。
緊急事態以外であっても、患者さんから何か頼まれて対応していた場合には、予定していた退勤時間が遅れることもあるでしょう。

②看護記録や引き継ぎに時間がかかる

患者さんの状態について、1人の看護師が24時間看ていられる訳ではないので、勤務交代時の引き継ぎが必要です。

また、症状の回復や悪化の状態を明確にするためにも、看護記録は必須となります。

実際に患者のケアだけでなく、看護記録などの事務作業も大切な仕事です。以上の事務仕事を時間内にこなすことは、簡単ではないことが多いようです。

③業務時間外に勉強会が行われる

医療は日々進化するものです。
最新の情報を取り入れるためには、勉強も大切です。医療に関する勉強会も行われます。

しかし、看護師としての日々の業務を空けるわけにはいかないため、勉強会は時間外に実施されることがあります。

仮に自由参加の勉強会であっても、医療の実務上必要な知識に関する勉強会であれば、可能な限り参加する必要があるでしょう。
勉強会の名目であっても、実際は看護実務に関連していて、事実上出席が強制されている場合であれば、賃金が発生すると考えられます。

2、看護師の残業代について知る前に~②看護師の「サービス残業」の実態

看護師の残業代について知る前に②~看護師の「サービス残業」の実態

前章では、「看護師の残業」全般について解説しました。

本章では、「看護師のサービス残業」の実態について解説します。

(1)看護師がサービス残業をしている割合は高いの?

先述した2017年の日本医療労働組合の調査結果によると、看護師でサービス残業を10時間以上行っていると回答した人は「16.4%」という結果です。
30時間以上サービス残業を行っていると回答した人は「2.6%」もいます。
なかには、50時間以上サービス残業をしていると答えた看護師さんの割合は、「0.5%程度」です。

以上のことから、看護師の全体的な残業時間はそれほど多いものではなくても、サービス残業を行っている割合は高いことがわかります。

(2)看護師がサービス残業をする理由

前項では、看護師の「サービス残業」の割合が高いことについて解説しました。

なぜ、看護師は「サービス残業」が多いのでしょうか。
日本看護協会の「はたらくナースの相談窓口」に寄せられた相談によると、以下の理由が考えられます。

  • 自主的な残業
  • 残業代が出ると思っていないこと

①自主的な残業

看護師は、「残業してください」と上司から明確な指示を受けることは少ない傾向にあります。

自主的にカルテの整理をしたり、患者の世話をしたりすることも多いのが現状です。
現場での明確な指示がないので、「勝手に残業したのだから、残業代は貰えない」と考える方も多く、結果としてサービス残業となっている看護師さんが多いようです。

②残業代が出ると思っていないこと

年俸制や固定残業代制、みなし残業代制や師長(管理職)等の理由で、残業代が出ないと思っている看護師さんは多いのではないでしょうか。

以上のような勤務雇用形態でも、事案によっては残業代を請求できる可能性があります。

万が一、これまでの残業代を請求したいと考えている場合には、まずはお近くの弁護士に相談してみてください。
具体的な請求方法や弁護士へ相談するメリットなどについては、後述します。

3、看護師の残業代に関する労働基準法 法則規定

看護師の残業代に関する法的規制

看護師も、一般的な労働基準法の残業規制の適用があります。
そもそも労働基準法36条1項に基づく協定(いわゆる「36協定」)の締結・届出をしなければ、残業をさせてはいけません。

しかしながら、看護師の特殊性から、未だに36協定の締結・届出すらしていない病院も残っています。

36協定の締結・届出を未だしていないのに、残業をされている場合には、労働基準監督署や弁護士などへ早めに相談することをおすすめします。

4、看護師が病院へ残業代を請求する方法

看護師が残業代を請求する方法

看護師の残業代の請求方法としては、以下のような流れで行いましょう。

  • (1)残業時間の証拠の準備
  • (2)弁護士へ相談する
  • (3)実際に会社へ残業代を請求する

(1)残業時間の証拠の準備

残業代を請求するためには、時間外労働をしていたこと示す証拠が必要です。
タイムカードや、それに代わる出退勤のチェックシステムがあれば十分です。
タイムカードや病院の退館記録が記録化されたものをコピーしたり、写真に撮ったりしておきましょう。
時間外労働が分かるものであれば、メールの送信やパソコン起動の履歴であっても保存しておきましょう。

(2)弁護士へ相談する

残業代に関する証拠を集めた場合でも良いですし、集める前でも大丈夫ですので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、資料や口頭での説明をもとに残業代が発生しているのかどうか、その金額はいくらなのか見通しを立てることができます。
弁護士に相談すれば、今後の病院との交渉の方針も立てることが可能となるでしょう。

(3)実際に会社へ残業代を請求する

残業代に関する証拠を集め、弁護士へ相談したら、実際に会社へ残業代を請求しましょう。

まずは、弁護士から会社へ「内容証明郵便」として残業代を請求する文書を送付することが一般的です。
請求に応じてくれない場合には、さらなる話し合いや、労働審判や訴訟へ移行して残業代を請求することになります。

5、看護師の残業代請求の相談は弁護士にしましょう

看護師の残業代請求の相談は弁護士にしましょう

残業代の請求権は時効により2年で消滅するので(労働基準法115条。2020年4月から民法改正に伴い3年に延長されます)、迅速に対応する必要があります。
消滅時効の進行を一度止めるためには、残業代の請求をする必要があります(民法147条1号)。

残業代を請求したという証拠を残すためには、書面による内容証明郵便を利用する方法が一般的です。
実際に内容証明郵便を作成したことがある方も少ないですし、この請求の場面から不安がある方が多いかと思います。

弁護士名でする請求の効果は大きいでしょう。
迅速かつ確実に対応したい場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士はあなたの味方です。
弁護士に依頼することで、病院が残業代の支払に対応してくれなかった場合でも、弁護士があなたの代理人として労働審判や訴訟に対応してくれます。

まとめ

看護師が残業をしているにもかかわらず、残業代を適切に請求できていないケースは少なくありません。
看護師は、もともと業務量も多く勤務時間も不規則な職業です。
残業代が曖昧になってしまっても不思議はありません。

しかしながら、看護師さんが患者のために働いた対価は正当に受け取る権利があります。諦めずに残業代を請求しましょう。

ご自身だけでは請求できなかったり、計算できなかったりする場合は、迷わず弁護士に相談してください。

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