接近禁止令は、DV防止法に基づく裁判所からの命令で、DV被害者を保護するために発令されます。
裁判所は特定の条件を満たす場合、DV被害者の安全を確保するために、加害者に対し被害者への接近を禁止する命令を出すことができます。接近禁止命令が発令されると、加害者は被害者に近づくことが法的に禁止され、被害者の安全が確保されます。
夫からの暴力被害を受けている場合、身の危険が迫っている場合には、「接近禁止命令」の申し立てを検討し、自身と子供を守る一助とすることが重要です。
この記事では、以下のポイントについて詳しく説明します。
・接近禁止命令の定義と効果
・接近禁止命令の申し立て方法と手続き
・自分と子供を守るための9つの重要なアドバイス
これらの情報が、DV被害者を守るための道標となり、参考になれば幸いです。
目次
1、接近禁止命令とは
そもそも接近禁止命令とは何なのでしょうか?
これは、DV防止法(配偶者暴力防止法)にもとづく措置(保護命令)の一つで、配偶者から暴力を振るわれて生命や身体への危険がある場合に、暴力を振るっている配偶者に対し、妻(夫)への接近を禁止する裁判所の命令です。
接近禁止命令は、主にDVを振るわれている妻(夫)の保護を目的にしている制度です。
接近禁止命令が発令されると、命令を受けた配偶者は自分の妻(夫)の身辺につきまとったり住居の周辺を徘徊したりすることを禁じられます。
禁止命令に違反して加害者が被害者に近づくと、加害者が逮捕される可能性もあります。
これにより、被害者はそれ以上配偶者から暴力を振るわれることがなくなり、身を守れるという仕組みです。
また接近禁止命令の効果が継続する期間は、基本的に6か月間です。
2、接近禁止命令を利用すべき状況
以下のような状況であれば、すぐにでも接近禁止命令を申し立てるべきと言えます。
- 日常的に暴力を振るわれている
- 暴力がおそろしいので家を出たい
- 家を出たら、相手が追いかけてきた
- 相手が勤務先まで押しかけてくる
- 家を出たいが、相手が周辺をうろつくのではないかと不安
- 家を出て姿をくらませたいが、相手が探して突き止めるのではないかと不安
接近禁止命令が出るのは、現在や近い時期に実際に暴力を振るわれた事実があり、保護すべき緊急の危険性があるケースです。
上記のような状況であれば、早急に申立を検討された方が良いでしょう。
なお、妻が暴力に耐えかねて家を出ると、逆上して引っ越し先や勤務先まで追いかけてきて暴力を振るうDV夫も多いところです。
耐えられず、これから家を出ようとされているならば、接近禁止命令を出してもらい、同時に家を出ると相手が追いかけてこられないので安心です。
3、接近禁止命令で禁止される行為と防止できないこと
接近禁止令が発令されるとどのようなことが禁止されるのか、みてみましょう。
(1)禁止される行為
接近禁止令によって禁止されるのは、以下の2種類の行為です。
- 申立人の身辺をうろつくこと
- 住居や勤務先の付近を徘徊すること
つまり、接近禁止命令が発令されると、被害者の周辺をうろつかれて相手と鉢合わせするような状況を避けられます。直接的な身体への暴力に悩まされているケースではとても効果的です。
(2)防止できないこと
反面、接近禁止命令では以下のような行動を防止できません。
- メールや電話
- FAX送信
- 嫌がらせの手紙
- 子どもへの接近
- 実家などの親族への接近
このように「本人への物理的な接近」以外については接近禁止令では対応できません。
メールや電話などによる嫌がらせや脅迫は接近禁止令では止められませんし、子どもへの接近や暴力、連れ去り、親族への嫌がらせなどにも対応できません。
接近禁止命令は保護命令の一つであるとご説明しましたが、接近禁止の他、保護命令には以下の命令があります。
- 退去命令
- 電話等禁止命令
- 子への接近禁止命令
- 親族等への接近禁止命令
あなた自身への接近以外も心配であれば、上記の他の保護命令の申立が必要となります。
4、接近禁止命令を利用するための要件
接近禁止命令はDV夫に対し「配偶者に近づいてはいけない」「違反したら逮捕する可能性がある」という非常に強い効果をもたらす命令です。
やみくもに発令されると夫側が大きな不利益を受けるので、利用できるケースは限定されています。
接近禁止命令が発令されるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
(1)申立人と相手方が婚姻関係、内縁関係または同棲関係
法律婚や内縁関係、同棲していることが必要なので、同棲していない恋人同士の場合にはDV防止法の適用はありません。
(2)相手による暴力や脅迫行為が、婚姻や同棲の最中に行われた
相手との婚姻中、同棲中に暴力を振るわれたり生命身体に対する脅迫が行われたことが必要です。
同棲解消後に暴力を振るわれた場合には、接近禁止令は適用されません。
(3)この先、再度身体的な暴力を振るわれて、被害者の生命や身体に重大な危害が及ぶ可能性が高い
接近禁止命令が発令されるのは、今後も継続して暴力を振るわれる可能性が高いケースです。
相手が病気入院中などで、暴力を振るう可能性がなくなっているならば、接近禁止命令は発令されません。
5、 接近禁止命令の申立方法
接近禁止令の申立をしたい場合、どのように進めたら良いのかご説明します。
(1)専門機関に相談したという事実をつくる
DVD防止法にもとづく接近禁止令を申し立てるには、申立前に「警察」か「DVセンター(配偶者暴力支援センター)」に夫の暴力について相談しておくことが必要です。
申立をしたときに裁判所から「いつどこに相談をしたのか」を確認されるので、お近くの警察でかまわないので必ず相談に行っておきましょう。
警察に相談するときには、「#9110」の番号にかけるとお近くの警察につながります。
DVセンターに相談したいときには、こちらのページからお近くのDVセンターを探して相談すると良いでしょう。
相談する方法以外には、公証役場で「宣誓供述書」という書類を作成する方法もあります。
一般的には、お近くの警察署に行って生活安全課などで相談するのがもっとも簡単で費用もかからず、お勧めです。
(2)接近禁止命令の申立て
相談をしたら、相談日時と相談場所を控えて、地方裁判所で「接近禁止命令の申立て」を行います。
裁判所の管轄は、相手方の住所地の地方裁判所か、暴行脅迫が行われた地域の地方裁判所です。
申立の際には、これまでどのような暴力を受けてきたのか詳しく記載した陳述書を作成して提出する必要があります。
それをもとに接近禁止令の発令を認めるかどうか検討されるので、よく思い出して正確に記載しましょう。
添付書類として戸籍謄本や住民票も必要です。
また離婚事件の管轄は「家庭裁判所」ですが、接近禁止命令は「地方裁判所」で申し立てるので、間違えないようにしましょう。
(3)口頭弁論または審問
接近禁止令を申し立てると、地方裁判所で申立人と裁判官が面談します。
このときの受け答え内容によっても接近禁止命令を発令してもらえるかどうかが変わってくるので、相手がどれほど危険なのかなど、わかりやすく伝えましょう。
その後、裁判官が相手を呼んで相手からも話を聞きます。この手続きを口頭弁論や審問と言います。
(4)接近禁止命令の発令
申立書や陳述書の内容、口頭弁論や審問の結果からして本人を保護する必要性が高く、接近禁止令の要件を満たしていると認められたら、裁判官は接近禁止命令を出してくれます。
接近禁止命令が出たら、相手に命令書が届き、相手はあなたに近づけなくなりますし、違反して近づいたら逮捕される状態になります。
6、相手が命令に従わない場合のペナルティ
もしも接近禁止命令を受けた相手が命令に従わず、あなたに近づいてきたら、相手にはどのくらいのペナルティがあるのでしょうか?
接近禁止命令は、単に注意的に「近づいてはいけません」とする命令ではありません。
違反すると刑事罰が用意されています。
具体的には1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が適用されます。
実際に接近禁止命令に違反して本人に近づき逮捕されている人もたくさんいるので、相手が違反するようであれば、遠慮せずに警察に通報しましょう。
7、接近禁止命令の延長方法
接近禁止命令は、基本的に「6か月」の期限がついています。
何もしなければ発令後6か月が経過した時点で命令は失効してしまい、相手はあなたに近づいてもかまわない状態となります。
もしもその時点でまだ相手による暴力の危険性が去っていないのであれば、接近禁止命令を延長してもらうことが可能です。
延長とは言っても前の命令の期間をそのまま延ばしてもらうのではなく、新たな申立の形をとるので、再度警察やDVセンターに相談をして、必要書類をそろえて申立をしましょう。
再度の申立の場合には、1度目の申立書の写しや1度目の保護命令謄本が必要となるので用意しましょう。謄本を失っている場合には、裁判所から再度発行してもらうことが可能です。
8、接近禁止命令発令中の注意点
(1)相手が知らない住居を用意する
接近禁止命令が出ると相手が逆上し、申立人を発見するとひどい暴力を振るう可能性が高くなります。
そこで申立をする段階で、相手の知らない場所に住居を確保しておく必要があります。
遠方の実家などでも相手が押しかけてくる可能性があるので、安心できません。
相手の全く知らない賃貸住宅を借りるか、DVシェルターを利用するなどの対応も検討すべきです。
(2)警察や役所の手続き
また、接近禁止命令が出たらすぐに警察に連絡を入れて、何かあったら対応してくれるようにお願いしておきましょう。
接近禁止命令に違反して押しかけてきたときに逮捕してもらうためです。(なお、申立人が連絡しなくても裁判所が警察に連絡を入れてくれますが、念のために注意喚起しておいた方が良いでしょう)
引越と共に住民票を異動する場合には、市町村役場に行って接近禁止令が出ていることを告げ、新住所を相手に開示しないように適切な措置を依頼しましょう。
9、他の保護命令の追加方法
接近禁止命令が発令されても、子どもへの接近は避けられません。
子どもをさらわれて「返してほしければ帰ってこい」などと言われたら、泣く泣く帰らざるを得ない可能性もあります。
またメールや嫌がらせの手紙、電話や実家への嫌がらせなどをやめてほしいケースもあるでしょう。
こういったケースでは、DV防止法にもとづく別の保護命令(子への接近禁止命令)の申立が必要です。
別の保護命令を申し立てる際には、やはり再度DVセンターか警察に相談に行く必要があります。
その上で、あらためて申立の書類を作成し、地方裁判所に命令の申立をします。
裁判所における審問を経て保護の必要性が高いと判断してもらえたら、保護命令を出してもらうことが可能となります。
つまり、追加とは言っても申立ての手続きをすべてやり直すということです。
接近禁止命令に関するQ&A
Q1.接近禁止命令とは?
DV防止法(配偶者暴力防止法)にもとづく措置(保護命令)の一つで、配偶者から暴力を振るわれて生命や身体への危険がある場合に、暴力を振るっている配偶者に対し、妻(夫)への接近を禁止する裁判所の命令です。
Q2.接近禁止命令を利用すべき状況とは?
- 日常的に暴力を振るわれている
- 暴力がおそろしいので家を出たい
- 家を出たら、相手が追いかけてきた
- 相手が勤務先まで押しかけてくる
- 家を出たいが、相手が周辺をうろつくのではないかと不安
- 家を出て姿をくらませたいが、相手が探して突き止めるのではないかと不安
Q3.接近禁止命令の申立方法とは?
- 専門機関に相談したという事実をつくる
- 接近禁止命令の申立て
- 口頭弁論または審問
- 接近禁止命令の発令
まとめ
夫からの暴力に悩まされているのであれば、我慢する必要はありません。
DV防止法によって守ってもらうことができるので、勇気を出して警察に相談し、保護命令を申し立てましょう。
自分一人で不安な場合には弁護士が助けてくれるので、一人で悩まずに相談してみて下さい。