逮捕や拘束から解放されることを指す『釈放(しゃくほう)』。この釈放と近い言葉に『保釈』もありますが、これらの違いって一体何なのでしょうか?もし収容施設などに身柄を拘束されてしまった場合、どのようにして解放されるのか知りたいですよね。
この記事では、
- 釈放と保釈の違い
- スムーズな釈放のための対策
について詳しく解説していきます。ご参考になれば幸いです。
刑事事件と民事事件との違いについて詳しくはこちらをご覧ください。
1、釈放と保釈、仮釈放の違いとは?
釈放とは、刑事事件における人身の拘束が解かれて自由の身になること一般を指します。
逮捕直後に解放されることから刑期を終えて解放されることまで、刑事手続における身柄の解放について使われます。
一方、これと似た言葉「保釈」「仮釈放」は釈放の一部です。
(1)保釈とは
保釈とは、被告人等または被告人の弁護士から請求される、「起訴後」の一時的な釈放です。
保釈は被告人本人またはその家族など、また実務では被告人の弁護士から被告人の権利として裁判所に対して請求するもので、費用として保釈金が必要となります。
保釈金の額は様々ですが、一般的な犯罪では150〜300万円を相場としています。
現金で一括払いしなければならないため、お金の準備が必要ですが、保釈金を立て替えてくれる事業体もあります。
また、保釈後に逃亡等しなければ、原則として最終的に全額返還されます。
(2)早期の釈放を目指すべき理由
長期間拘束されてしまえば、所属する職場やコミュニティへの影響が大きくなるでしょう。
仕事を失ったり、仲間の信頼を失ってしまうことにもなりかねません。
その後の生活への影響も踏まえ、信頼のおける弁護士のもと早期の釈放を目指すようにしましょう。
(3)仮釈放とは?
仮釈放とは、服役中の受刑者が、一定の条件を満たすことで刑期が満了になる前に身柄を解放されることです。
刑期を残して釈放されることになりますが、刑期が満了する間に再び逮捕されてしまうと、仮釈放前の期間を再度収容所で過ごすことになってしまいます。
つまり、仮釈放されたからといって自由の身になるのではなく、その後の過ごし方がとても重要になってくるということです。
それをチェックするために、仮釈放された場合には、保護司と呼ばれる人物と、定期的に面談する必要があります。
2、釈放のタイミング
早期の釈放を目指すべき理由をお伝えしましたが、実際に釈放されるケースにはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、釈放で大切な3つのタイミングについて解説していきます。
(1)送検前
警察官に逮捕されると、作成された書類や証拠を検察官に送る、いわゆる送検が行われます。
しかし、軽い犯罪であったり、または被疑者の疑いが晴れたといった理由で送検が行われずに釈放されることもあります。
この段階においては、弁護士は「警察」に対して釈放すべきことを訴えかけていきます。
(2)勾留前
たとえ送検されたとしても、その後に釈放を目指すことは可能です。弁護士が検察官に勾留請求をしないように説得したり、裁判官に勾留請求を却下するよう働きかけていきます。
- 家族や身元引受人がいる
- 住所が定まっている
このような場合は、裁判官は、この被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがなく勾留の必要がないと判断し、釈放される可能性が高まります。
送検から勾留請求は24時間です。この間に釈放を目指すには、弁護士によるスピーディな対応が不可欠です。
(3)勾留後
逮捕、勾留が決まった後も、公判前であれば釈放されることが可能です。
弁護士は、勾留決定は適切ではないと裁判所に対して「準抗告」をすることができるのです。
3、早期釈放を実現するためにすべきこと
ここでは早期釈放を実現するためにすべきことについて、ご紹介していきます。
(1)示談を成立させる
被疑者と被害者の間に示談が成立している場合、比較的軽い罪であれば勾留される可能性は低いでしょう。
示談が成立しているにもかかわらず、あえて証拠を隠滅したり、逃亡したりすることは考えにくいからです。
(2)弁護士に依頼する
釈放を実現するために最も有効なのは、やはり弁護士に依頼することです。
弁護士に依頼した場合、釈放のために行う主な活動としては以下の3つです。
① 警察官に対して釈放を訴えかける
警察では48時間以内に捜査を行い、必要があれば検察官に事件を送ります。
この48時間の間にも、身柄拘束の必要がないことを警察に対して訴えかけていきます。
もっとも、警察では釈放の判断がつかないとして、ひとまず送検、ということも多いため、送検されてしまっても焦る必要はありません。
② 検察官・裁判官に対して釈放を訴えかける
送検後、今度は24時間以内に、検察官が勾留請求をするか否かを判断します。
このタイミングで弁護人から、逃亡や証拠隠滅の危険がないことや、そもそも冤罪である・立件が難しいことなどを粘り強くアピールすることで、検察官が勾留請求を断念したり、裁判官が勾留の必要性を認めなかったりして、早期の釈放が実現することが多いです。
③ 裁判所に対して勾留決定に異議申し立てをする
弁護活動が実らず勾留請求が行われ、裁判官も勾留を認める決定を出した場合でも、まだ釈放のチャンスはあります。
勾留期間中、今度は、被疑者について勾留する必要がないことを裁判所に訴えかけていきます。
この請求を「準抗告」といいます。
(3)早期釈放のためのその他の必要条件
その他、早期釈放のために必要なことは、以下のことがあげられます。
①被疑者が誠実に反省をしている
釈放には、被疑者が誠実に反省をしていることが必要です。
被疑者の深い反省を当局に伝えていきます。
②必要な捜査が行われ証拠が揃っている
特に勾留は、起訴の判断をするための継続捜査のためになされます。
そのため、証拠はすでに揃ったことを当局に説明し、これ以上の捜査の必要性は低いことを伝えていきます。
4、弁護士に依頼した場合の費用相場と選び方
早期の釈放を目指すには、弁護士に依頼して手続きを進めていくことが必要不可欠です。
逮捕された後に一度だけ使える当番弁護士、また、国が弁護人を選任する国選弁護人への依頼に関しては、弁護士費用が発生しません。
国選弁護人に依頼する場合には、費用を支払うことができないという資力要件を満たすことが条件ですが、ほとんどの場合、国がその費用を負担してくれます。
しかしながら、万全を期すため、できれば被疑者・被告人と相性が良さそうで刑事弁護に強い弁護士に、私選弁護人としてついてもらいたいところです。
ここでは、私選弁護人の費用相場や、選び方について解説していきます。
(1)費用相場
私選弁護人の費用については、はっきりとした相場はありません。
ただ、着手金として、少なくとも30〜50万円は発生するケースが多いでしょう。
その他に成功報酬がありますが、これはその事件や目的によって変わってくるので、その額を一義的に示すことはできません。
- 軽微な犯罪なのか、重大な犯罪なのか
- 容疑を認めているのか、認めていないのか
- 容疑を認めておらず、無罪を争う裁判なのか
- 被害者との示談を目的とした依頼なのか
一般的には着手金と成功報酬は同額となることが多いと言われていますが、もちろん弁護士によって変動がありますので、どの程度の費用が発生するのか、依頼する段階で確認しておくようにしましょう。
(2)選び方
当番弁護士や国選弁護人は、こちら側が費用を負担する必要はありませんが、当番弁護士は一度のみの依頼、また、国選弁護人は自分で弁護人を選ぶことができません。
国がランダムで選任するため、性格や方向性などが一致しない可能性も大いにあり得るでしょう。
確実な解決のためには、私選で相性のいい弁護人を選ぶことが重要です。
自分に会う弁護人をどのように選んだら良いのかについては、こちらの記事に詳しく記載してありますので、ぜひ併せてご覧ください。
まとめ
今回は、保釈と釈放の違いについて、また、一刻も早く釈放されるための方法について解説してきました。
釈放の実現に向けては、必ず弁護人をつけて行うようにしてください。
早期の釈放を目指すために、ぜひこの記事を参考にしていただけたら幸いです。