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ひったくりは重罪!犯してしまったときの対処法を解説

ひったくりは重罪!犯してしまったときの対処法を解説

ひったくりとは、歩行者などに近づき、その人が持っている荷物を奪い取って逃げ去る、というような行為のことをいいます。

自転車に乗っている人にバイクで近づき、カゴに入っている荷物を奪って逃げ去るというような例もあります。

ひったくりは、基本的には窃盗罪に該当すると考えられる行為ですが、行為の態様によっては強盗罪や強盗致傷罪が成立する可能性もあります。窃盗罪も軽い犯罪ではありませんが、強盗致死傷罪になると法定刑に死刑も含まれる重罪です。ひったくりは一般的に考えられているよりも重い罪であることは、ぜひ覚えておいてください。

この記事をお読みの方の中には、身内の方がひったくりで逮捕されてしまった方や、あるいはご自身がひったくりに手を染めてしまって後悔されているというような方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、

  • ひったくりがどのような犯罪となるのか
  • ひったくりで逮捕されるとどうなるのか
  • ひったくりによる逮捕を避けるためにはどうすればいいのか
  • 逮捕された場合にはどうすればいいのか

などについて解説していきます。

この記事が皆様のご参考になれば幸いです。

窃盗罪の基本については、以下の関連記事をご覧ください。

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1、ひったくりとは?

まずは、ひったくりとはどのよう犯罪なのかについてみておきましょう。

(1)ひったくりの行為態様

冒頭でもご紹介したとおり、ひったくりとは、道行く人などからその荷物を奪い取って逃げ去るという行為のことをいいます。

被害者として狙われるのは、抵抗力の弱い女性や高齢者が特に多くなっています。また、女性は財布などの貴重品をバッグにまとめて入れていることが多いことから、狙われやすい傾向にあると考えられます。

加害者は逃走しやすいように、原付バイクなどに乗って犯行に及ぶケースもあります。

また、ひったくりが発生する時間帯としては、人目につきにくい夕方から夜間にかけてが多くなっています。ただ、昼間に警戒心が薄れているところを狙ってか、白昼堂々の犯行も少なくはありません。

(2)ひったくりと置き引きとの違い

ひったくりと似た犯行に置き引きというものもあります。

両者の違いは、被害者が持ち物を携帯しているときに奪い取るのか、それとも被害者が持ち物を置いてその場から離れている状態のときに持ち去るのかという点です。

ひったくりの場合は、被害者が携帯している持ち物を奪います。被害者が手に持っているハンドバッグや、被害者が乗っている自転車のカゴに入っている荷物を奪い去るのが典型的な例です。

手に持っているハンドバッグや、乗っている自転車のカゴに入っている荷物は、被害者が現に所持(占有)しているといえますので、これを奪い去った場合には、窃盗罪が成立しうることになります。

これに対して置き引きは、飲食店などでトイレに行った人が席に置いたままにしている荷物や、置き忘れられた荷物を奪うような場合が典型例です。

この置き引きの場合、そのときの具体的な状況によって、荷物が所有者の所持(占有)を離れたと評価される場合もあれば、所持(占有)が継続していると考えられる場合もあります。所持(占有)が継続しているといえる場合は、所有者がその場を離れた隙に持ち去ったときでも、他人が占有する財物を奪ったものとして窃盗罪が成立します。

一方、しばらく公園のベンチに置き忘れられているものを持ち去ったときのように、それが所有者の所持(占有)を離れていたといえる場合は、占有離脱物横領罪という、窃盗罪よりも軽い罪が成立します。

このように、より軽い罪が成立する場合もあるという意味では、置き引きのほうがひったくりよりも軽い犯罪ということができます。

置き引きについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。

2、ひったくりの罪と刑罰

次に、ひったくりによって何罪が成立し、どのくらいの刑罰を受けるのかについてご説明します。

(1)窃盗罪

前述のとおり、ひったくりは窃盗罪に該当する場合が多いです。

罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

(窃盗)

第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法

もっとも、初犯であればひったくりで逮捕されても不起訴処分となり、刑罰を受けないこともあります。

また、刑罰を受けるとしても、書類だけの裁判(略式命令)により罰金刑が科される場合も多いです。

ただし、初めて逮捕された場合でも、犯行が悪質な場合や、1件や2件のひったくりではなく件数を重ねている場合などには、正式裁判にかけられ、懲役刑が言い渡されることもあります。

その場合でも、反省や示談の状況によっては執行猶予が付く可能性があります。執行猶予が付くと、ただちに刑務所に収容されることはなく、一定期間を無事に過ごせば刑の言い渡しが効力を失います。

なお、繰り返し刑を受けると、累犯として刑が加重されることがあります。その場合、刑罰は最大で「その罪について定めた懲役の長期の2倍」となります。

(再犯)

第56条 1項 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。

引用元:刑法

 

(再犯加重)

第57条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。

引用元:刑法

つまり、過去に懲役刑に処せられて服役していたことがあり、出所して5年経っていないような場合などには、今回のひったくりで刑を言い渡されるときは、窃盗罪に問われる場合でも法律上最大で20年の懲役に処せられる可能性があるということになります。

窃盗罪についてさらに詳しくは、以下の記事をご参照ください。

(2)常習累犯窃盗

過去10年の間に3回以上、窃盗罪で懲役刑を受けている場合で、さらにひったくりを犯した場合は「常習累犯窃盗罪」が成立します。この場合の罰則は、3年以上の有期懲役です。

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

引用元:盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律

(3)強盗罪

ひったくりを実行する際に、被害者を突き飛ばすなどの暴行や脅迫を加えると強盗罪が成立する可能性があります。

当初は暴行を加えるつもりがなかったとしても、荷物を奪われまいとして抵抗する被害者を引きずってしまったような場合には、暴行を加えたとして強盗罪が成立しうるので、注意が必要です。

強盗罪の罰則は5年以上の有期懲役(最大で20年)であり、非常に重い罪となっています。

(強盗)

第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

引用元:刑法

さらに、荷物を奪い去ったときに暴行や脅迫をしていなくても、追いかけてきた被害者などに対して暴行や脅迫を加えたというような場合には、事後強盗罪が成立する可能性があります。事後強盗罪の罰則は、刑法236条の強盗罪の罰則と同じです。

(事後強盗)

第238条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

引用元:刑法

(4)強盗致死傷罪

強盗罪(事後強盗罪を含む)に当たる行為をして、そのときに被害者が怪我をした場合は、強盗致傷罪が成立します。罰則は、無期または6年以上の懲役です。

また、被害者が亡くなってしまった場合は強盗致死罪が成立し、罰則は死刑または無期懲役となります。

(強盗致死傷)

第240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

引用元:刑法

ひったくりを実行する際に被害者を引きずって、被害者に擦り傷などを負わせるというケースがよくあります。この場合も、強盗致傷罪となる可能性が高いです。

このように、ひったくりは一般の方がイメージしているよりも相当に重い罪となる可能性が高いのです。

3、ひったくりで逮捕された場合の流れ

ひったくりで逮捕された場合は、基本的には以下の流れで刑罰を受けるかどうかが決まります。

(1)警察官による取り調べ

まずは、警察官による取り調べを受けます。事案が軽微な場合は、微罪処分として処理されてこの段階で釈放されることもあります。

引き続き捜査が必要な場合は、48時間以内に検察官に送致されます。

(2)検察官による取り調べ

検察官に送致されると、さらに検察官による取り調べを受けます。その後も身柄を拘束して捜査を続ける必要があると判断される場合は、24時間以内に検察官が裁判官へ勾留請求をします。

(3)勾留決定

勾留請求を受けた裁判官が、被疑者の身柄を拘束する必要性があると認めた場合は、勾留を許可する決定が下されます。

(4)勾留期間

勾留期間は原則として10日間ですが、やむを得ないと認められるときは最大でさらに10日間延長されることがあります。

勾留されている間、被疑者は取り調べや実況見分などの捜査を受けます。勾留されなかった場合は、釈放されて在宅となりますが、適宜警察などから呼び出されて同様の捜査を受けることになります。

(5)起訴または不起訴の処分

勾留期間の満期までに、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。逮捕されてから勾留期間が満期となるまでの時間は、最大で23日間です。処分保留により釈放されることもありますが、多くの場合は、それまでに起訴・不起訴が決まります。

起訴されると刑事裁判にかけられ、ほとんどの場合は有罪判決の言い渡しを受けてしまいます。有罪判決を受けることは、すなわち、前科がつくことですから、前科がつくことを避けるためには早期に適切な対処をとる必要があります。

逮捕後の流れについてさらに詳しくは、以下の記事をご参照ください。

4、ひったくりで逮捕されたときの対処法

ひったくりで逮捕されても、まだ前科がつくと決まったわけではありません。前科がつくのを避けるためには、以下の対処法が考えられます。

これらの対処法をとっておくと、仮に前科がつくことを避けられなかった場合でも、刑が軽減される可能性が高くなります。

(1)被害者と示談をする

最も重要なことは、被害者と示談することです。示談が成立し、被害が回復されていれば処罰の必要性が乏しいと判断され、不起訴となる可能性が高まります。

ただ、逮捕・勾留されている場合、自分で示談交渉を行うことは困難です。身柄を拘束されていないときでも、被害者が加害者本人と直接示談交渉することを拒むケースは非常に多いです。そのため、早期に弁護士に示談交渉を依頼することが重要となります。

(2)反省の態度を示す

次に、しっかりと反省することも大切です。どのように反省しているのかを具体的な言葉で取調官に伝えましょう。

反省していることによって再犯のおそれが大きくないと判断されれば、不起訴処分につながることもあります。このときにも、どのような点を意識すればよいか弁護士にアドバイスを受けることで、真摯に反省していることが捜査機関に伝わりやすくなるでしょう。

(3)取り調べには慎重に対応する

取り調べでは、慎重に対応する必要があります。

たしかに、実際にやってしまった場合には、素直に罪を認めて反省することは大切です。しかし、取調官の誘導に乗ってしまって実際よりも悪質な犯行を行ったような供述調書が作成され、これが不利に働いてしまう可能性があります。

そのため、真実を正確に述べることが重要です。逮捕されたら早いうちに弁護士を呼んで、取り調べへの対応についてアドバイスを受けるべきです。

5、ひったくりによる逮捕を避けるためにすべきこと

ひったくりを犯してしまったものの、まだ逮捕されていない場合、逮捕を避けるためにできることとしては以下のようなことが考えられます。

(1)示談をする

被害者と早急に示談をすれば逮捕される可能性を大幅に下げることができます。ただし、ひったくりの場合は被害者の氏名や連絡先が分からず、示談交渉もできないのが通常でしょう。

その場合は、次に説明するように自首したうえで、弁護士に示談交渉を依頼するというのもひとつです。

(2)自首を検討する

自首したからといって逮捕されないとは限りませんが、逮捕される可能性を下げることはできます。自分で警察に出頭して罪を告白することによって、逃亡や罪証隠滅のおそれが低いこと示すことになるからです。

身元引受人や弁護士に同行してもらって自首するのも有効です。

なお、自首すれば刑が軽くなる可能性が高くなります。そのため、罪を犯したのが事実であれば、自首するのが得策といえます。

(自首等)

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

引用元:刑法

(3)生活状況を変える

決して急にできることではありませんが、生活状況を変えることも、逮捕される可能性を下げることにつながります。

住所不定や無職という状況よりも、家族と同居していたり継続して職に就いていたりするほうが、逃亡のおそれが少ないと判断されやすいため、逮捕される可能性が低くなってくるのです。

6、ひったくりで逮捕されないか不安なときは弁護士に相談を

現在、ひったくりで逮捕されないか不安に思っている方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

示談の準備の進め方や、自首したほうがよいのかどうか、取り調べではどのように対応すればよいのかなどについて、あらかじめアドバイスを受けることができます。示談交渉も弁護士が代行してくれます。被害者の氏名や連絡先が弁護士以外には教えてもらえないという場合も多いです。

もし逮捕されてしまった場合でも、弁護士のサポートによって早期に解放される可能性、不起訴処分を獲得できる可能性や、刑が減軽される可能性が高まります。

一人で悩まず、刑事事件に詳しい弁護士に相談することで、ご自分が今やるべきことも見えてくるでしょう。

まとめ

ひったくりは比較的軽い罪だと考えている方も多いかもしれませんが、本記事でお伝えしてきたように、決してそうではありません。

初犯でも悪質な場合は実刑判決を受ける可能性が十分にありますし、強盗罪や強盗致死傷罪が成立する場合には、長年にわたって刑務所に収容されることになってしまいます。

もしひったくりをしてしまったという場合、犯してしまった罪は消えませんが、本記事をご参考に、今後は犯罪に関わらない人生を送るきっかけとしていただければと思います。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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