離婚を考えていて「慰謝料を不倫相手に請求したい!」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
ここで、大切なのは、不倫での離婚では慰謝料は「2つ」考えられるということ。
「慰謝料」とは「悲しい」「辛い」という気持ちへの「ごめんね」という労い料のようなものですが、まず不倫での離婚で悲しくて辛い1つ目は、「不貞行為をされた」こと。
「不貞行為」をされた被害者に対して慰謝料が発生します。
そして不倫での離婚で悲しくて辛い2つ目は「離婚せざるを得なくなった」こと。
離婚は、それ自体で相当な精神力と体力を使います。
さて、「不貞行為」は不倫相手も関与しています。
なので、不貞行為に対する慰謝料は不倫相手に請求することも可能です。
では「離婚せざるを得なくなったこと」の慰謝料(離婚慰謝料)も、不倫相手に請求することができるのでしょうか。
そこで今回は、
- 押さえておくべき離婚慰謝料の基本
- 不倫相手にも請求できる?最高裁が出した見解
- 請求するなら要チェック!請求権の時効
- 確実に離婚慰謝料をもらうためのポイント
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がそれぞれ詳しくご紹介していきます。ご参考になれば幸いです。
不倫相手に慰謝料請求するときの旦那の反応について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
目次
1、離婚の慰謝料を不倫相手に請求する前に|離婚慰謝料の4つのキホン
それでは早速、離婚慰謝料についてあらかじめ押さえておきたい4つの基本からチェックしていきましょう。
(1)慰謝料とは、精神的苦痛を与えた人への損害賠償
そもそも慰謝料とは、精神的な苦痛に対する損害賠償のことを指します。
精神的苦痛は目に見えないものなので、具体的にどのようなケースであれば請求が可能なのか悩まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、一般的に慰謝料が認められやすいケースには、今回取り上げている不倫・浮気をはじめ、モラハラなどの言葉の暴力や職場でのセクハラ・パワハラなどを挙げることができます。
(2)離婚に関する慰謝料とは、基本的に(元)配偶者への請求である
離婚の慰謝料は、基本的に有責配偶者がその請求相手となります。
例えば配偶者がDVを繰り返していたことを原因として離婚する場合、DVをしていた配偶者へ慰謝料を請求することができます。
次の(3)で離婚時に配偶者の離婚慰謝料を請求できるケーススタディを書いてあります。ご確認ください。
(3)(元)配偶者へ請求する慰謝料のケーススタディ
配偶者に対して慰謝料を請求するケースのうち、よくある例をまとめてみました。
①DV
DVとは、夫婦のうち片方がもう一方に対して継続的に暴力を振るうことを指し、家庭内暴力と呼ばれることもあります。
年に数回、平手で叩かれる程度ではDVと判断されないケースもありますが、たとえば週に2~3回、1回につき殴る蹴るといった暴力が続く時間も長い場合には、精神的苦痛が大きいということで慰謝料も認められやすいでしょう。
②セックスレス
セックスレスは夫婦にとって重大な問題であり、法律で認められている離婚理由のひとつ「婚姻を継続しがたい重大な事由」にも該当します。
日本性科学会によると、セックスレスの定義は「特殊な事情がないにも関わらず1ヶ月以上性行為がない状態」となっていますが、離婚時の慰謝料を認めてもらうためには、その状態が少なくとも半年~1年間は継続している必要があるでしょう。
③アルコール依存症
配偶者がアルコール依存症で日常生活をまともに送ることができないような場合にも、慰謝料が認められるケースがあります。
依存症をきっかけに夫婦仲が冷え切ってしまった、仕事をクビになったなどの状況があれば、さらに有利でしょう。
④理由なく無職
夫婦にはお互いに協力して結婚生活を送る義務があり、これは民法752条でも次のように定められています。
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
そのため、病気やケガなど特別な理由もなく無職で働かないというケースでも、離婚慰謝料を請求することができるのです。
(4)もちろん不倫(不貞行為)も(元)配偶者への慰謝料請求の対象
上記のケーススタディのほか、慰謝料を請求するシーンとして最も多いと言っても過言ではないのが配偶者の不倫・浮気です。
不倫・浮気を原因として離婚することになれば、配偶者に離婚慰謝料を請求することができます。
ここで、不倫は一人でするものではなく相手がいます。
冒頭で示した通り、「不倫」に対する慰謝料は、不倫相手にも請求することができます(=配偶者と不倫相手は連帯債務関係にある)。
では、配偶者の不倫が原因で離婚することになった場合、「離婚」の慰謝料も不倫相手にも請求できるのでしょうか?
2、「離婚の慰謝料は不倫相手に請求できない」最高裁判決を詳しく解説!
ここからは、実際に最高裁判所が出した判決をもとに、離婚慰謝料のポイントをさらに掘り下げて見ていきましょう。
(1)2019年2月19日最高裁判決の事例
今回取り上げる2019年2月19日の最高裁判決は、元妻の過去の不倫相手に対して元夫が離婚慰謝料を請求するという事例で、結果から言うと裁判所はこの請求を棄却しました。
元妻は過去に職場の同僚と不倫関係にあり、関係が始まってから約1年後に元夫もその事実を認識しましたが、ちょうどその頃元妻が不倫相手との関係を解消したこともあって、夫婦は同居を継続。
元夫はこの頃、元妻が夫婦関係を見直してくれると信じ、夫婦生活を継続したとされています。
それからさらに4年後、元妻は長女の大学進学を機に元夫と別居を開始し、半年後に元夫が申し立てた調停により離婚が成立しました(調停開始からは約3ヶ月後・不倫関係の発覚からは約4年9ヶ月後)。
そこで元夫は、不倫相手に対して慰謝料を請求したいと考えました。
しかし、「不貞行為」に対する慰謝料は、不貞行為の存在を知ってから3年以内に請求しなければ慰謝料請求権は時効消滅してしまいます。
そのため、「離婚」に対する慰謝料を不倫相手に請求した、という事案でした。
(2)「離婚」に対する慰謝料は不倫相手に請求できるか?が論点になった
この事例では、「離婚」の慰謝料を不倫相手に請求できるのかどうかが主な論点となっており、これに対して裁判官は判決で次のような見解を示しています。
夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対し、当該第三者が、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。
つまり、不倫相手が配偶者とただ不貞行為に及んだだけの状況では「離婚」自体の慰謝料を請求することはできず、たとえば夫婦が暮らす家まで押しかけて嫌がらせを行うなど、もっと直接的な夫婦関係への干渉がなければ、離婚慰謝料を認めることはできないという判断がなされました。
3、離婚の慰謝料は不倫相手には請求できない?元配偶者にはできるのに……
上記に記載しましたが、離婚慰謝料は元配偶者には請求できるのです。
であれば、この判例においても、もし元夫が元妻に対しても離婚慰謝料を請求していれば、そちらについては認められた可能性がとても高いでしょう。
しかし実際には元夫は元妻には慰謝料を請求しておらず、そのようなケースは意外と珍しくありません。
というのも、「慰謝料を請求しても支払能力がないことは分かっている」と、いってみれば「情けをかける」ような感覚になる男性、また自分のほうが妻よりも稼いでいるというプライドから、「お金がほしいわけじゃない」とあえて元妻からは慰謝料を受け取ろうとしない男性もいます。
心のどこかではやはりまだ妻のことを愛しており、憎み切れないこともあるでしょう。
一方で、「悪いのは何もかも不倫相手」と考える男性は多く、憎しみの対象が不倫相手に集中していることで、不倫相手のみに慰謝料を請求したいケースもあるでしょう。
妻のことを手放しで信じてきた男性ほど、不倫が発覚しても「きっと相手の男にたぶらかされたに違いない」と考える傾向があり、悪いのはすべて不倫相手であるという極論に至りがちなのです。
4、離婚において慰謝料を不倫相手からもらうための3つのポイント
不倫での離婚に関しては、不倫相手に「離婚」の慰謝料は認められないとわかりました。
であれば、不倫での離婚をする際、確実に慰謝料をもらうためのポイントは次の3つです。
(1)不貞行為発覚後、速やかに慰謝料請求を検討する
上の事案では、不貞行為を把握した後、夫婦関係を立て直すことに集中し、不倫相手への慰謝料請求を実行しませんでした。そのため権利が時効消滅してしまい、あとの祭りとなってしまった。
ですから、不貞行為が発覚した際は、実際に請求するかしないかはおいておいても、速やかに弁護士に相談をしてみるべきです。
いつまでに時効消滅してしまうのかを確認し、慰謝料請求をする場合のアドバイスももらっておきましょう。
(2)証拠をつかむ
何はともあれ、慰謝料の請求には具体的かつ決定的な証拠が必要不可欠です。
不倫であれば配偶者と相手がラブホテルに出入りする瞬間の写真、DVであれば医師の診断書や暴力を受けた日時を記録したメモなど、誰が見ても「そういう事実があったに違いない」と判断できる内容の証拠を揃えましょう。
(3)離婚後3年以内に請求
離婚慰謝料にも「離婚した日から3年」という時効があります。
この期限内に必ず手続きを行うようにしましょう。
5、離婚して慰謝料を不倫相手からもらうべき?異変に気づいたらすぐに弁護士に相談を
配偶者の不倫は、何かしらのきっかけでその事実に気付いたとしても、なかなか身近な人には相談できず一人で悩みを抱え込みがちです。
しかし、だからこそ問題解決のプロである弁護士に相談を行うことで、具体的に「今自分がやるべきことは何なのか」をハッキリさせることができるのはもちろん、気持ちの上でも心強さを得ることができます。
また以下の理由からも、配偶者の不倫が発覚したときには、なるべく早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
(1)時効消滅を防ぐ
今回取り上げた判例のように、不倫の発覚から3年が経過してしまうと、その時点で不倫慰謝料のほうの請求権は時効を迎えてしまうため、不倫に対する損害賠償を請求することができなくなります。
不倫は信じていた配偶者の裏切りによって精神的に大きなダメージを受け、不倫された側にとっては心になかなか癒えることのない傷を負わされてしまうこともある行為です。
しかし刑法で定められた犯罪行為にはあたらないため、不倫相手に制裁を加えるには慰謝料という形で損害賠償を請求する以外に方法がありません。
その唯一の希望を絶たないためにも、配偶者の不倫を知ってしまった際にはできる限り速やかに弁護士へ相談を行いましょう。
(2)離婚の決意が固まってない・・相談したら離婚することになってしまうのでは?
「本当に離婚するかどうかは実のところ迷っている…」という場合、不倫が発覚してもいざ弁護士のところへ足を運ぼうと思うと躊躇してしまうケースも多いかもしれません。
中には案件が長期化するのを避けるために、少し強引な形で離婚を推し進める弁護士がいることも事実です。
しかし、ベリーベスト法律事務所では決してそのような弁護士本位の進め方は行わず、みなさんからの話をじっくりお聞きした上で、どのような解決策がベストなのか考えるためのお手伝いをさせていただきます。ぜひ安心してご相談ください。
(3)気持ちを整理し、次へのステップを後押しする
配偶者の不倫が発覚した直後は、誰でも多かれ少なかれ気持ちが動転してしまうものです。
そんな気持ちに整理をつけるためにも、弁護士からのアドバイスはとても役に立ちます。
自分を裏切った配偶者に固執するのではなく、離婚をする・しないに関わらず自分がより幸せになるための次なるステップを確実に踏み出していきましょう。
まとめ
今回は主に離婚慰謝料と不倫慰謝料、2つの慰謝料の違いについてご紹介してきましたが、いずれも起算点が異なるものの時効にかかるまでは3年間であり、請求できる金額の相場にも50~300万円ほどとかなり幅があります。
これは慰謝料を成立させるために最も重要なポイントとなる「精神的苦痛」が、状況によってケースバイケースなところに大きな要因があり、不倫やDV・モラハラをはじめどの理由で慰謝料を請求するにしても、提出できる証拠の質などで認められる慰謝料の金額は大きく左右されるのです。
少しでもみなさんにとって有利に話を進め、なるべく高額な慰謝料を獲得するためにも、離婚をお考えの際にはぜひ早めに弁護士への相談を行ってください。