ある日突然、少年(20歳未満の者(未成年者))である息子さんが逮捕されたとの連絡を受けたとしたら、ご家族として何ができるでしょうか?逮捕は突然やってくるものですから、逮捕の連絡を受けた途端、本人も親もパニックになり、冷静な行動を取れないものです。
そこで今回は、「息子が逮捕された」との連絡を受けたご家族向けに、
- 息子の逮捕の連絡を受けた際の対処法
についてご紹介いたします。この記事が皆さまのお役に立つことができれば幸いです。
警察に逮捕 について知りたい方は、以下の関連記事もご確認ください。
目次
1、逮捕された息子は今どういう状態?少年事件手続きの流れ
(1)警察署のまずは留置場へ
逮捕とは、犯罪の嫌疑がある者について、強制的に身体を拘束して留置場に連れて行き、留置場にとどめ置くことをいいます。
逮捕がなされると、通常、警察署の留置施設(留置場)に収容されます(少年法49条3項では、未成年者を成人と分離して収容しなければならないとしています)。
(2)釈放されなければ勾留(そのまま留置場、または少年鑑別所へ)
そして、そのまま身柄拘束が続く場合、未成年者の場合は少年鑑別所に収容されるか、あるいは、そのまま元の留置場に収容されます。
前者の場合、拘束期間は10日間で、期間の延長は認められていません。
後者の場合、はじめの拘束期間は10日間ですが、「やむを得ない事由」がある場合は最大で10日間期間を延長されることがあります。
なおこの期間中、基本的に収容場所が変わることはありません。
(3)家裁へ送致
そして、上記の期間が満了すると、事件が家庭裁判所(以下、「家裁」といいます。)に送致されます。
少年については、犯罪の嫌疑がある場合、及び、家裁の審判に付すべき理由がある場合には、捜査機関は、すべての事件を家裁に送致することになっているからです(全件送致主義)。
原則としては、警察から検察官に事件を送致し、その後家裁に送致されますが、警察が直接家裁に送致することもあります(直送)。
(4)家裁で観護措置を決定
逮捕、勾留を経て家裁へ送致がなされると、家庭裁判所では、観護措置を決定し、少年が少年鑑別所に収容されることが多いといえます。
(5)家裁での審判
その後、家庭裁判所において「少年審判」がなされ、少年に対する処分が決められます。
2、逮捕の連絡を受けたときにまずすべきこと
お子様が逮捕された場合、通常、父母等、お子様が希望された方へ逮捕の連絡が来ます。
その場合は、次のことを行いましょう。
(1)まずは事実確認を
警察から連絡が来た場合は、まず落ち着いて、警察官に「逮捕事実」を尋ねましょう。
「逮捕事実」とは、お子様が「いつ、どこで、誰に対し(被害者は誰か)、何をしたのか」ということです。
全てが難しければ罪名や犯行態様(万引き、置き引き、盗撮、痴漢など)だけでも聴き取りましょう。
(2)すぐに弁護士に依頼
しかし、全ての警察官が逮捕事実を教えてくれるわけではありません。
警察官によっては、捜査上の秘密を理由に逮捕されたこととお子様の収容先(留置先)しか教えてくれない場合もあります。
そんなときは、弁護士に接見を依頼しましょう。
弁護士であればお子様と接見することができ、まずはお子様が何をしたのか、何で疑われているのか聴取することができます。
さらに、弁護士に、身体拘束を解くための活動をしてもらえます。
勾留請求前には、勾留をする必要がないとの意見書を検察官に提出したり、もし検察官が勾留請求し、それが認められてしまった場合には、勾留決定を覆すための準抗告の申し立てをするなどです。
3、逮捕直後に弁護士に弁護活動を依頼する理由
では、逮捕直後に弁護士に弁護活動を依頼する理由、メリットとは何なのでしょうか?
(1)接見してもらえる
接見は、お子様に防御(逮捕事実に対する主張、反論)の準備・機会を与えるための重要な弁護活動の一つです。
未成年者は成人以上に取調官の圧迫、誘導などにより誤った話をしてしまう危険がありますので、逮捕直後に弁護士に接見を依頼すれば、こうした危険を防止することができます。
また、社会と分断されたお子様に安心感を与えることは間違いありません。
逮捕直後は、法的には弁護士しか接見することができません。
なお、勾留後は、弁護士以外の方でも接見することが認められていますが(接見方法については制限があります)、お子様に接見禁止決定が出ている場合は接見することができません。
(2)警察、学校関係者に働きかけてもらえる
逮捕されたお子様やそのご家族にとって気がかりなのが、「学校に逮捕の通知が行くのではないか」「逮捕により退学処分になるのではないか」ということではないでしょうか?
確かに、自治体によっては、生徒、児童が逮捕された場合に警察から学校へ通知する旨の協定を結んでいるところがあります。
そうした場合、依頼したタイミングにもよりますが、弁護士から警察へ通知しないよう働きかけてもらえます。
また、仮に通知されてしまった場合は、不当な処分をしないよう学校に働きかけてもらえます。
なお、学校の処分については、学校の判断に委ねられます。
(3)示談交渉を始められる
被害者がいる場合は、早期に示談交渉を進めてもらえます。
現実問題、被害者と交渉できるのは弁護士しかいません。
早期に示談交渉を進めれば、身柄解放にも繋がりやすくなります。
示談意思があるということは、論理的に、罪証隠滅のおそれがない、逃亡のおそれがないという主張に繋がりやすいからです。
(4)早期釈放を目指せる
逮捕されたといっても、そのまま身柄拘束が継続することが決まったわけではありません。
法的には、警察段階、検察段階、裁判所段階の3段階で拘束を継続するか否か判断されます。
そこで、前述のとおり、逮捕直後に弁護士に依頼すれば、警察、検察、裁判所(裁判官)に釈放するよう、拘束を継続しないよう働きかけてもらえます。
具体的には、意見書を提出してもらったり、検察官、裁判官と面談してもらうことができます。
この段階で釈放されれば、早期に学校等へ復帰することができ、処分を受けなくて済む場合もあります。
(5)最終的な処分を見据えた対応を取ることができる
少年事件については、原則として、全件が家庭裁判所に送致されます。
したがって、最終的には少年審判を受けることになります。
少年審判では、少年に対する処分を決めることになりますが、例えば、少年院に送致する処分がなされたとすればお子様の生活が大きく変わってしまいます。
それが適切かどうか、それを望まないのであればどういう対応を取るべきかについても弁護士から助言を得ることができます。
4、弁護士に依頼するほかに親としてできること
ご家族には弁護士に弁護活動を依頼していただく他に、以下のことを行っていただくとよいと思います。
(1)着替えやお金などを差し入れしてあげることも重要
留置場では必要なもの全てがそろっているとはいえず、慣れないものであるため、そのことによりストレスを溜め込んでしまうこともあります。
そこで、衣類などの生活必需品や現金(食料品などを購入することができます)などを差し入れしていただけるとお子様も喜びストレス軽減にもつながるかと思います。
ただし、自殺防止の観点などから、差し入れできる物、現金の金額には制限がありますので、差し入れる前に警察などに確認することが必要です。
(2)面会したり手紙を送る
お子様は社会と隔離された慣れない環境での生活を余儀なくされていますから、ご家族との接見やご家族からの手紙が何よりの励みとなり精神的な支えとなるでしょう。
ただし、これも差し入れと同様制限があります。
面会については、通常、1日1回、15分から20分の面会しか認められていません。
1回の面会に入れる人数にも制限があります。また、立会人が付きます。
手紙については、内容を検閲され、不適切なものはご本人の手に渡らないこともあります。
(3)お子様を信頼して支えになってやる姿勢が大事
逮捕されたお子様は社会と分断され、友人、知人とも連絡を取ることができない状態です。
そんなとき、心の支えになってあげられる一番身近な存在はご家族しかいません。
親御様からすれば、「なんでこんなことをしたんだ」というお子様に対する腹立たしい気持ちと、「子育てが間違っていたのか」という自責の念との間で葛藤されているかもしれません。
また、事件を通してお子様と衝突されることもあるかもしれませんが、お子様はご家族を一番頼りにしていますし、ご家族に頼るしかありません。
そのことを忘れず、お子様を信じて支えていくことが、きっと将来いい方向、いい結果に繋がっていくものと思います。
5、不安な気持ちは弁護士に!まずは電話相談を
お子様が逮捕された場合、学校のこと、将来のことなどで不安になられることと思います。
しかし、弁護士であれば、お子様からお聴きした話の内容などに基づいて、将来の事件の見通しなどをある程度お伝えすることができます。
もちろん、事件の進捗具合によって、当初の見通しを変更されることがありますが、その際は、それに応じて適切に対応させていただきます。
ですから、お子様が逮捕され不安だという方は悩みを抱え込まず、法律の専門家である弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか?
ベリーベスト法律事務所では、誰でも、いつでも、気軽にご相談いただけるよう、電話での相談も受け付けております。
まとめ
子育ては本当に難しいものです。
子ども1人1人について異なりますし、事前に正解がわかるものではないからです。
冤罪である場合は除きますが、子どもが逮捕に至るまでに、おそらく予兆はあったでしょう。
しかし、子どもの非行のエスカレートは徐々であるがゆえ、大人も子どもの非行にマヒする部分もあり、最終的なこの逮捕は、まさかの思いである方も多いでしょう。
逮捕に至る子どもたちには、十代の後半の子もいます。
成人までが大人の責任に基づく子育てだとすれば、もうそのゴールは見えています。
子どもが幸せに独り立ちできるために、親はあと一踏ん張りです。
これからは、子どもたちの予兆を見逃すことなく、見守ってくださることを期待しています。