「自由になりたいから離婚したい」というように、不倫やハラスメントのようなわかりやすい離婚原因がなくても、離婚を希望する人は少なくありません。
結婚生活が続くと色々な形で環境が変化をするものなので、結婚生活の息苦しさに耐えられないようになると、「自由になりたい」「離婚して人生を謳歌したい」と感じるのも当然でしょう。
そこで今回は、
- 「自由になりたい」という理由だけで離婚できるか
- 「自由になりたい」という理由で離婚を成立させる方法
- 離婚するか否か迷ったときに検討するべき項目
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
「結婚生活が辛い」「早く離婚して自由な生活を手に入れたい」と気持ちが追い込まれている人の手助けとなれば幸いです。
目次
1、「自由になりたいから離婚したい」と思う心理とは
「自由になりたいから離婚したい」と感じるのは、結婚生活や今の環境に不自由さを覚えているからです。
それでは、どのような時に不自由な気持ちを抱くのでしょうか。夫婦共通の理由、男女それぞれの心理について解説します。
(1)男女に共通する心理
「自由になりたいから離婚したい」と考える男女共通の代表的な心理は以下の通りです。
- 配偶者に対する愛情がなくなった
- 不倫相手と一緒になりたい
- 独身時代に戻りたい
①結婚相手に対する愛情がなくなった
パートナーに対する愛情がなくなると、離婚して自由になりたくなります。
これは、愛情がなくなった相手と一緒に生活を続けることに意味を見出せなくなるからです。
②不倫相手と一緒になりたい
配偶者以外に好きな人ができると、結婚生活が邪魔に思えて離婚したくなります。
これは、「不倫相手と自由に会いたい」「不倫相手とのデートに自由にお金を使いたい」という目論見から自由になりたいと感じるからです。
③独身時代に戻りたい
独身時代には、結婚生活のような制限は一切ありません。お金・時間・交友関係など、自分の思うままの生活を送ることができます。
独身時代にはなかった我慢ばかりの結婚生活にストレスを感じると、離婚して自由になりたいと感じるようになるでしょう。
(2)自由になりたい夫の心理
「自由になりたいから離婚したい」と感じる男性によくある代表的な心理は以下の通りです。
- 父親としての責任をプレッシャーに感じる
- 趣味に没頭したい
- 家庭環境の居心地が悪い
①父親としての責任が重過ぎる
家庭をもつと父親としてのさまざまな責任が生まれます。たとえば、家族・子どものためにお金を稼ぐこと、父親として育児に参加することなどです。
このような父親としての責任や使命感がプレッシャーになると、すべてを投げ出して自由になりたいと感じます。
②自分の好きな趣味に没頭したい
趣味や娯楽に没頭する人ほど、結婚生活を邪魔な存在と捉えます。時間やお金には限りがあるので、生活費・教育費への支出をストレスに感じます。
すると、「好きなだけ趣味に時間とお金を使いたい」という心理が働いて、自由になりたいから離婚したいと思うようになるでしょう。
③自宅の居心地が悪い
家に帰っても居心地が良くないと自由になりたいと感じます。
たとえば、「子どもが反抗期で家の雰囲気が悪い」「仕事から疲れて帰っても妻から冷たく当たられる」「家事や育児に非協力的だと小言を言われる」など、自宅がくつろげない環境になると、結婚生活から逃げ出したくなるでしょう。
(3)自由になりたい妻の心理
「自由になりたいから離婚したい」と感じる女性によくある代表的な心理は以下の通りです。
- 家事や育児の負担が重過ぎる
- 自分の力で働いてお金を稼ぎたい
- 家計への不満
①家事や育児の負担が重過ぎる
家事や育児の負担を一方的に押し付けられると「自由になりたい」という気持ちが募ります。
たとえば、共働きなのに旦那さんが家事・育児に一切協力してくれなかったり、せっかくの休日も家の掃除に追われたりする生活が続くと、離婚を切り出したくなるのも当然でしょう。
②自分の力を最大限仕事に発揮したい
女性の社会進出が進むなか、「家庭に不満はないけれども自分の力を仕事で100%発揮したい」と感じると、家事・育児の負担がストレスになるでしょう。
たとえば、「子どもが小さいから専業主婦をせざるを得ない」「正社員だと時間の融通がきかないからパートしか無理」というように、自らキャリアを閉ざさざるを得ない女性は少なくありません。
③家計に不満がある
家計や夫の稼ぎに不満があると、結婚生活が重荷になります。
たとえば、結婚生活を送るなかでは、マイホーム購入資金・老後の生活資金の貯蓄だけではなく、子どもの教育費などのさまざまな出費に迫られます。
貯金や出費のためにやりくりをしていると、日々の生活費・食費さえも上手く回らないということも少なくないでしょう。
「夫の稼ぎが少ないから満足に貯金できない」「自分も働いて家計を助けたいが家事・育児に労力をとられて余裕がない」など、金銭的な不満感が募ると、離婚をして自由になりたいと感じるようになります。
2、「自由になりたい」という理由で離婚できる?
「自由になりたい」という理由だけで離婚できるのかを解説します。
(1)合意できれば離婚可能
「自由になりたい」という理由だけで離婚するなら協議離婚を目指すのがスムーズです。というのも、離婚は夫婦間の合意があれば成立するからです(民法第763条)。
極端な例を挙げれば、パートナーに離婚を申し出て、すぐに相手方が了承してくれさえすれば、その日のうちに離婚届を提出すれば離婚が成立します。
ただし、離婚をすると、結婚生活で築いた財産関係の清算方法や、住む場所のこと、子どもがいる場合は親権や養育費、転校のことなど、さまざまな変化に対応しなければいけません。
後腐れのない円満離婚を目指すなら、話し合いの過程を録音したり、離婚協議書を公正証書にしたりするなど、丁寧な手続き進行を心掛けましょう。
(2)合意できなければ基本的に離婚できない
「自由になりたいから離婚したい」という希望をパートナーが受け入れてくれないことも少なくないでしょう。このように、配偶者の合意が得られない状況では協議離婚は不可能です。
また、協議離婚が難しい場合にそれでも離婚を目指すなら、調停離婚・審判離婚・裁判離婚という手段が考えられますが、「自由になりたい」という理由だけでは離婚成立に至るのは難しいでしょう。
というのも、「当事者の一人は自由になりたがっているが、配偶者は夫婦生活の継続を望んでいる」という状況において簡単に裁判手続き等で離婚を認めてしまうと、婚姻制度の重さが失われることになるからです。
ただし、「自由になりたいから」という動機以外にも、以下の法定離婚事由が別に存在する場合には、それを理由として離婚を目指す余地が残されています(民法第770条)。
- 配偶者に不貞な行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかって回復が見込めない
- 婚姻生活を継続するのが難しい重大な理由がある
3、「自由になりたい」という理由で離婚を成立させる方法
法定離婚事由が存在しないケースでは、何とか配偶者からの合意を引き出して協議離婚を目指すのが円満な解決策です。
ただ、「自由になりたいから」という理由を伝えるだけでは、妻・夫からの納得を得るのは簡単ではないでしょう。
そこで、「自由になりたい」という理由だけで離婚を成立させるなら、以下の方法をご検討ください。
- 夫婦間での話し合いの時間をしっかりとる
- 慰謝料(解決金)の支払いで離婚を合意してもらう
- 別居して離婚の意思が強いことを示す
- 離婚調停の申し立てで離婚に向けた行動に移す
(1)夫婦でじっくり話し合う
円満な協議離婚を目指すなら、夫婦間でじっくり話し合う時間をもつのが最優先です。
一緒に長い時間結婚生活を共にしてきた二人だからこそ、時間をかけた丁寧な話し合いのなかでお互いの考えや気持ちを伝えれば、「自由になりたい」という気持ちを分かってくれる可能性が生まれますし、逆に、もう一度結婚生活をやり直す動機付けになることもあるでしょう。
(2)慰謝料(解決金)の支払いを申し出る
離婚に合意してもらうために、解決金として慰謝料の支払いを申し出るのも選択肢のひとつです。
「お金を払ってまで離婚したい」という意思表示をすれば、配偶者側も結婚生活の維持が無理だと理解して、協議離婚に向けた話し合いに応じてくれやすくなるでしょう。
(3)別居する
「離婚して自由になりたい」という意思を明確にするために、別居という選択肢をとるのも選択肢のひとつです。「離婚の話し合いに応じてくれる、離婚に合意してくれるまでは家を出る」という強硬手段によって、相手側の諦めを狙う手法です。
ただし、ある日いきなり一方的に家を出ると、同居義務違反(民法第752条)に問われて、離婚手続きが不利になる危険性があります。
不利を被っても離婚を目指すのも間違いではありませんが、同居を解消するのは仕方がない状況や既に婚姻関係が破綻している証拠を揃えておく方が安全でしょう。
(4)離婚調停をする
「自由になりたい」という理由だけでは配偶者が納得してくれないときは、離婚調停を申し立てて離婚の意思が固いことをアピールするのも有効な手段です。
離婚調停とは、夫婦関係調整調停と呼ばれるもので、調停委員を間に挟んで、離婚するか否か、離婚条件をどうするのかなどについて話し合う手続きのことです。
離婚の話し合いを当事者だけで行うと感情的になってまとまらないので、第三者の立ち合いによって冷静な解決を目指すうえで役立ちます。
仮に離婚調停が成立しなくても、「調停を申し立てるほど離婚したい」という姿勢が相手に伝われば、離婚に向けて前進するでしょう。
4、「自由になりたい」だけで離婚して後悔しないか、再確認しよう!
「自由になりたい」と切望している状況だと、「離婚を成立させること」だけに集中して他のことに気が回らなくなってしまいます。
衝動的な離婚で後悔しないためには、以下4つについて再確認するのがポイントです。
(1)配偶者に対する未練はないか
離婚に踏み切ると、配偶者との関係性は切れてしまうのが通常です。
「自由になりたい」という衝動で離婚に踏み切っても、落ち着いた頃に元配偶者に対する気持ちが募ってもやり直すのは不可能に近いでしょう。
したがって、離婚に向けた話し合いをスタートする前に、配偶者に対する未練が残っていないかを慎重に判断することをおすすめします。
少しでも配偶者に対する気持ちが残っているのなら、婚姻関係を継続するなかで「自由になりたい」という気持ちに折り合いをつける道を模索するべきでしょう。
(2)孤独に耐えられるか
「自由になりたい」という気持ちで離婚が無事に成立した後は、希望通りに独り身の生活が手に入ります。
ただ、今まで婚姻生活をしていた状況からいきなり独身に戻るわけですから、孤独感に苛まれる瞬間はかならず訪れます。
そして、「家族がいる大切さ、ありがたさ、温もり」は離婚後に取り戻すことはできません。
ですから、離婚をする前に、離婚後の孤独に耐えられるかを判断する必要があると考えられます。
(3)離婚後の生活費に困らないか
離婚後の生活について思いを巡らすのも大切なことです。
たとえば、今までの家を出る場合には、新居の家賃、離婚前に購入したマイホームのローン残債、生活費を自分で工面しなければいけません。
また、子どもの養育費の支払いが発生することもあるでしょう。
特に、専業主婦・専業主夫が離婚に踏み切る場合には、離婚後の生活方法について離婚前に準備する作業が不可欠です。
いきなり「家を出て行け」と言われると路頭に迷うことになるので、離婚後の生活環境を整えてから離婚に向けた話し合いをスタートするようにしてください。
(4)子どもに過度な負担をかけないか
お子さんがいらっしゃるなら、親の離婚で子どもに過度な負担をかけないかを熟考してください。
親権のこと、面会交流のこと、どこで生活するのか、学校はどこに通うのか、いつ転校するのかなど、考えるべきことは多岐にわたります。
親の離婚がきっかけになって親子間の関係が崩れるケースは少なくないので、自分のこと以上に子どもへの負担は慎重に判断するべきでしょう。
5、「自由になりたい」と思っても離婚できないときの対処法
「自由になりたいから」という理由を配偶者が受け入れてくれずに協議離婚が成立しない場合や、「自由になりたい」という理由だけで離婚して良いものか迷っている場合には、以下のステップを踏んで現状抱える不満感の解決を目指すのも有効な対処法です。
- 家庭内別居
- 仮面夫婦
- 卒婚を提案する
(1)家庭内別居をする
いきなり離婚に至るのが難しかったり、どちらかが家を出るのが経済的に難しかったりする場合には、家庭内別居という段階を踏むのがおすすめです。
家庭内別居とは、婚姻関係は破綻しているものの離婚届は提出せずに同居している状態のことで、法律用語ではありません。
たとえば、家事の分担がない、生活費も自分で工面する、性交渉もないという状態なのに、何かしらの事情で同居は続けているという状態が具体例として挙げられます。
家庭内別居は、実際に別居するよりも経済的負担を抑えられたり、世間体を気にしなくて良いなどのメリットが得られます。
また、お互いの関係性を割り切れるので、妙な諍いや喧嘩が減ることもあるでしょう。
ですから、「離婚に向けて少しずつ関係性を見つめ直したい」というときに家庭内別居は役立つと考えられます。
家庭内別居については「家庭内別居とは?ルールや子供への影響・関係修復方法を解説」でも詳しく解説しているので参考にしてください。
(2)仮面夫婦として過ごす
離婚に向けた前段階として仮面夫婦を利用するのも選択肢のひとつです。
仮面夫婦とは、表向きには夫婦として振舞っているが、実際の夫婦間には愛情がない状態のことで、法律上の概念ではありません。お互いに対する関心がなかったり、夫婦でいることの形式的なメリット(経済的な負担や配偶者控除など)だけを享受したいときに有効です。
たとえば、仮面夫婦として生活を続けるなかで、距離を取ることに慣れていけば円満な離婚を目指しやすくなるでしょう。
仮面夫婦については「仮面夫婦とは?仮面夫婦を続けたい人もやめたい人も知っておくべき13のこと」でも紹介しているのでご参照ください。
(3)卒婚を提案する
パートナーに卒婚を提案して事実上の自由を手にするのも選択肢のひとつです。
卒婚とは、戸籍上の婚姻関係は継続させた状態で夫婦それぞれが自由に生活するスタイルのことで、法律用語ではありません。
たとえば、「配偶者を気にせず自由に暮らしたいが、子どもや世間体もあって離婚は憚られる」というときに、夫婦間の前向きな話し合いによって「卒婚」という関係性が好まれます。
また、婚姻関係は継続したままなので、相続や税金関係の煩わしさも発生しない点もメリットです。
卒婚という関係性をしばらく維持したうえで、子どもが大人になったときに離婚を選択するのも良いですし、卒婚という関係性に自由さを感じるならそのまま戸籍だけを残し続けるのもありです。
卒婚は、離婚に向けたステップとしても機能しますし、実質的な離婚を達成する手段としても有効だと言えるでしょう。
卒婚については「離婚とは違う卒婚って何?卒婚を選ぶ理由や具体的な4つの準備」でも解説しています。あわせてご一読ください。
6、自由になりたい!離婚したい!と思ったら弁護士に相談を
「結婚生活が息苦しくて離婚したい」「自由になりたいという理由だけで離婚したい」とお考えなら、一般民事に力を入れている弁護士への相談をおすすめします。
なぜなら、離婚問題に強い弁護士に相談すれば以下5点のメリットを得られるからです。
- 婚姻生活で募った不満を受け止めてくれる
- 配偶者との円満な話し合いのポイントを教えてくれる
- 離婚時に決めるべきこと(親権等)について当事者の状況を踏まえて解説してくれる
- 当事者だけでの話し合いが難しいなら代理人として間に入ってくれる
- 協議離婚、調停離婚、裁判離婚だけではなく、卒婚などの事実上の選択肢も視野に入れて、当事者双方が幸せになれる解決策を検討してくれる
まとめ
「自由になりたいから離婚したい」という感情は誰しもが抱くものですが、まずはあなた自身が冷静になることが大切です。
離婚を切り出す側が冷静でなければ、離婚の話をもちかけられた相手方も穏やかに話し合いに応じるのは難しいでしょう。
そのうえで、明白な法定離婚事由がある事案に比べると、「自由になりたいから離婚したい」というケースはよりデリケートに交渉等を進める必要がある点をご理解ください。
「法的な解決だけで離婚が成立する」というわけではなく、自分の気持ち・相手の気持ちなどを総合的に考慮して円満な着地点を見つけなければいけないからです。
だからこそ、「自由になりたいから離婚したい」という事案では、離婚案件の実績豊富な弁護士への相談が解決への糸口になります。
数々の夫婦間トラブルを見てきた専門家だからこそアドバイスできることが多数あるので、まずは弁護士までお問い合わせください。