ご自分で離婚調停の申立てをしたいとお考えの方に
今回は、
- 自分でできる離婚調停の申し立て方法
- 離婚調停の申し立てに関する必要書類の書き方
- 離婚調停を有利に進めるために申立て時に準備しておくべきこと
などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
目次
1、離婚調停を自分で申し立てる方法
離婚調停を申し立てる方法は、以下の通りです。
- 必要書類・証拠・費用を準備
- それらを管轄の家庭裁判所へ提出
それぞれのステップごとに注意すべきポイントがあります。
(1)証拠を集める
まずは、ご自身の言い分を証明できる証拠を集めることが必要です。
証拠がなければ相手方が言い逃れをする可能性がありますし、調停委員も証拠がない事項については話し合いの前提とすることが難しいからです。
調停を有利に進めるためには、相手方が言い逃れできないような、決定的な証拠を確保しておくのが理想的です。
たとえば、相手が浮気をしているのであれば浮気の証拠を、DVやモラハラがあるのならその証拠です。
どんなものが証拠になるかわからない場合は、弁護士の無料相談で確認してみるとよいでしょう。
(2)必要書類を揃える
離婚調停を申し立てる際には、さまざまな書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。
以下の解説を参考にして、漏れのないように準備していきましょう。
なお、各書類の書き方は後ほど「2、離婚調停の申立書類の書き方」で解説します。
①夫婦関係調整調停申立書
離婚調停の申し立てで最も基本となる書類です。
様式に特段の決まりはありませんが、家庭裁判所が用意している定型の申立書を使用するのが便利です。
最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用できます。
②進行に関する照会回答書
裁判所が調停をスムーズに進めていくための参考とするために提出が求められる書面で、離婚の話し合いに関する相手方の動向や、調停期日の希望曜日、裁判所に配慮を求めたいことなどを記載します。
書式は最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。
③事情説明書
調停の開始前に裁判所ができる限り詳しい事情を把握するために提出を求められる書面です。
当事者の現在の住居や収入・財産の状況、夫婦関係が不和となったいきさつなどを記載します。
書式は、最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。
④夫婦の戸籍謄本
戸籍謄本はあなたの本籍地のある役所で取得することができます。手数料として1通450円が必要です。
⑤連絡先等の届出書
裁判所からの書類の送付や連絡がスムーズにできるようにするために提出が求められている正面です。
書類を受け取る事が可能な住所、平日の昼間に連絡の取れる連絡先を記入します。
電話番号については、固定電話の番号でも携帯電話の番号でもかまいません。
書式は、最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。
⑥(年金分割を請求する時)年金分割のための情報通知書
年金分割の請求手続きは年金事務所で行うものですが、分割割合についてパートナーとの話し合いがまとまらないときは離婚調停で決めることもできます。
その場合には、「年金分割のための情報通知書」を家庭裁判所に提出しておく必要があります。
この通知書は、共済組合(夫が公務員の場合)や日本年金機構(夫が会社員の場合)に「年金分割のための情報提供請求書」を提出することで取得できます。
(3)費用を準備する
離婚調停の申し立てをする際には、以下の費用が必要となります。
①収入印紙代1,200 円
家庭裁判所に納める費用として、1,200円分の収入印紙が必要です。
収入印紙は、郵便局やコンビニで買うことができます。
②切手代800円前後 (家庭裁判所により異なる)
家庭裁判所から相手側に書類を送付する必要が生じるため、切手を購入して家庭裁判所へ提出します。
申し立て先の家庭裁判所によって多少前後しますが、金額はおおよそ800円です。
③その他
その他、調停に必要な提出書類(戸籍謄本など)を用意したり、弁護士に相談したりする際には費用がかかります。
詳しくは、以下の関連記事をご参照下さい。
(4)管轄の家庭裁判所へ書類と費用を提出する
証拠・必要書類・費用が準備できたら、それらを管轄の家庭裁判所へ提出することで離婚調停の申し立てが完了します。
申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
例外的に、夫婦間で事前に申し立てを行う家庭裁判所について話し合って合意していた場合には、その家庭裁判所に申し立てをすることもできます。
合意していない場合で、夫婦が別居して遠方に住んでいる場合には、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てなければなりませんので、ご注意ください。
具体的な管轄裁判所は、裁判所のホームページで確認できます。
参照:裁判所|裁判所の管轄区域
なお、調停の申立ては、申立書などを郵送で家庭裁判所へ送ることでも可能です。
2、離婚調停の申立書類の書き方
離婚調停を申し立てる際に多くの方が悩まれるのが、各書類の書き方についてです。
記載が必要な書類について1つずつ、具体的な書き方を解説していきます。順に確認しながら、正確に記載していきましょう。
(1)申立書の雛形・記載例の無料ダウンロード
ここからは、申立書の雛形と記載例を見ながらお読みいただくとわかりやすくなりますので、先にダウンロードしておくことをおすすめします。
雛型と書式例は、下記テキストをクリックしていただくことでダウンロードできます。
(2)各項目の具体的な書き方
では、申立書の項目ごとに具体的な書き方を説明していきます。
①夫婦関係申立書の事件名の欄
離婚調停なので、「離婚」と記載します。
②家庭裁判所名・日付・申立人の記名・押印の欄
「家庭裁判所の名称」は、申立先の家庭裁判所の名称を記入します。
日付は、申立書を作成する日を記入します。
申立人の記名・押印は、ご自身の氏名を記入し、印鑑(認印可)を押印します。
弁護士がついている場合には、弁護士名も記入します。
③添付書類欄
チェックをする項目は以下の通りです。該当する場合にはチェックを入れましょう。
- 戸籍謄本の欄
- 年金分割の申し立ても行う場合は、年金分割のための情報通知書の欄
その他にも添付書類がある場合は、3つめのチェックボックスにチェックを入れて、書類の名称を記載しましょう。
例えば、後ほど「4」(3)でご紹介する陳述書を提出する場合は、この欄に「陳述書」と記載します。
④申立人・相手方の欄
申立人と相手方、それぞれの本籍・現住所・名前・生年月日を記入します。
本籍は戸籍謄本に記載のある本籍を記入します。
住所は、裁判所が連絡を取るために使用するので、原則としてそれぞれの現住所を記入します。
⑤対象となる子の欄
未成年の子の親権や養育費の額で争っている場合は、子どもがどちらの親と住んでいるのか・氏名・生年月日を記載します。
⑥申立ての趣旨
円満調整と、関係解消(離婚あるいは内縁関係の解消)の欄がありますが、 離婚調停の申し立ての場合は、関係解消の欄に記載します。
- 「1 申立人と相手方は離婚する」、「2 申立人と相手方は内縁関係を解消する」のどちらかに◯を付ける
こちらは1に○を付けます。
- 付随申立ての(1)
未成年の子どもがいる場合には、父と母のどちらが親権者になる方を記入します。
子どもの名前、続柄(長男、長女、二男、二女等)を、全ての子どもについてそれぞれ記入します。
- 付随申立ての(2)
監護権がない方、親権者ではない方が、子どもとの面会交流を希望する時期や方法について話し合う場合にチェックを入れます。
- 付随申立ての(3)
離婚時の養育費についてです。これは、親権者が親権を持たない側に支払ってもらう金額の希望額を記載します。
具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますが、現段階での希望額を記載しましょう。
- 付随申立ての(4)
離婚時の財産分与についてです。
これは、夫婦の共有財産を分割し、持ち分について取得を希望する場合に記載します。
具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますのが、現段階での希望額を記載しましょう。
- 付随申立ての(5)
離婚時の慰謝料についてです。
一方が不貞行為などの不法行為をしており、損害賠償義務を負う場合に、不法行為をした者が相手方に支払う金額です。
具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますのが、現段階での希望額を記載しましょう。
- 付随申し立ての(6)
こちらには年金分割を請求する場合の分割割合についての希望を記入します。
年金分割の割合は0.5が上限ですので、通常は「0.5」の所にチェックを入れます。
⑦申立ての理由
「同居・別居の時期」の欄には、結婚して同居を開始した時期と別居を開始した時期を記載します。
「申立ての動機」の欄には、離婚の原因となる一般的な事例が記載されていますので、該当すると思われるものに○を記入して下さい。最も重要なものには◎を付けます。
この欄には〇を付けるだけなので、いっけん簡単な項目のようにも思えますが、実は離婚調停において非常に重要な意味を持っています。
そこで、申立ての理由(動機)については、この後「3」でさらに掘り下げて解説します。
⑧申立書に関する注意点
申立書を家庭裁判所に提出すると、家事事件手続法という法律により、原則として相手方にもコピーが送付されることになっています。
しかし、申立書の内容によってはお互いの感情に亀裂が入ってしまい、調停での話し合い難航する可能性があります。
そのような心配がある場合は、例外的に申し立てがあった事実の通知のみで、その内容については伏せておくことが許される場合があります。
3、離婚調停の申立てで重要な「申立ての理由」
申立ての理由とは、文字どおり、あなたが離婚調停を申し立てる理由のことです。
先ほど、申立書の「申立ての趣旨」の欄に「離婚する」ことと希望する離婚条件を記載したはずですが、申立ての趣旨と申立ての理由はセットで重要となります。
以下で、具体的にご説明します。
(1)申立ての理由が重要な理由
あなたは、パートナーとの離婚、そしてさまざまな離婚条件の取り決めを求めて離婚調停を申し立てるはずですが、それなりの理由がなければ離婚も慰謝料や養育費などの支払も認められません。
そこで、あなたがどのような理由に基づいて離婚や離婚条件を求めるのかを記載するのが「申立ての理由」の欄になります。
裁判(訴訟)では、「法定離婚事由」に該当する理由がなければ離婚は認められませんし、その理由がパートナーの不法行為に該当するものでなければ慰謝料も認められないことになります。
調停は話し合いの手続きですので、どのような理由でも申立ては可能ですが、法律的に離婚や慰謝料の支払いの請求が可能となる理由があるかどうかを意識することは大切です。
(2)申立ての動機は13個!あなたの動機は?
申立書の雛形には以下の13個の動機が列挙されていて、その中からご自身の動機を選ぶようになっています。
ご自身がどのような動機で離婚を決意したのかをよく振り返り、その動機が法律的にどのような意味を持つのかを確認しておきましょう。
①性格があわない
いわゆる「性格の不一致」のケースです。性格の不一致のみでは、法定離婚事由には該当しません。
ただし、性格の不一致が原因で夫婦関係が修復不可能なほどに破たんしている場合には、法定離婚事由に該当する可能性もあります。
②異性関係
パートナーが浮気や不倫をしているケースです。
「不貞行為」がある場合は法定離婚事由となりますが、不貞行為に至らない高裁の場合は法定離婚事由に該当しない可能性が高いです。
③暴力を振るう
パートナーからDVを受けているケースです。
身体的暴力は不法行為ですので、基本的には法定離婚事由に該当しますが、程度が軽い場合には法定離婚事由に該当しない可能性もあります。
④酒を飲み過ぎる
パートナーが酒を飲み過ぎるというだけでは、基本的に法定離婚事由には該当しません。
この動機で離婚を求める場合には、他の動機も合わせて選択する必要があるといえます。
⑤性的不調和
セックスレスのケース、あるいは逆に過剰な性行為を求められるケースです。
これらのケースでも、程度によっては法定離婚事由に該当することがあります。
⑥浪費をする
パートナーが浪費をする場合も、法定離婚事由に該当するかどうかはケースバイケースです。
家計をかえりみずに浪費を重ねて、多額の借金を抱えているような場合は法定離婚事由に該当する可能性があります。
⑦病気
パートナーが病気という場合、それだけで法定離婚事由に該当することはほとんどありません。
この動機で離婚を求める場合も、他の動機も合わせて選択する必要があるでしょう。
⑧精神的に虐待する
パートナーからモラハラを受けているケースです。
精神的暴力も不法行為に当たりますので、程度にもよりますが、法定離婚事由に該当する可能性が高いといえます。
⑨家族をすててかえりみない
パートナーが仕事や趣味・遊びに夢中になり、家族との交流がほとんどないようなケースです。
浮気や不倫、生活費を渡さない、浪費をするなど他の動機もある場合は法定離婚事由に該当する可能性もありますが、単に毎日帰りが遅い、交流がない、というだけでは離婚は難しいでしょう。
⑩家族と折り合いが悪い
嫁と姑の対立が典型的ですが、パートナーの実家との折り合いが悪いために夫婦関係が不和となるケースも少なくありません。
しかし、家族と折り合いが悪いだけでは法定離婚事由に該当する可能性は低いです。
他の動機も合わせて選択する必要があるでしょう。
⑪同居に応じない
夫婦には同居義務があります。
パートナーが正当な理由なく同居に応じない場合、その状態が長期間継続していれば夫婦関係が破たんしているといえますので、法定離婚事由に該当する可能性が高いです。
⑫生活費を渡さない
パートナーに収入があるにもかかわらず生活費を渡さない場合は、夫婦の協力扶助義務に違反していますので、「悪意の遺棄」として法定離婚事由に該当する可能性が高いといえます。
ただし、一定の金額は渡されているものの足りないと主張する場合は、その金額が家族の生活費として適正かどうかを考慮する必要があります。
4、離婚調停の申立書以外に提出すべき書類の書き方
離婚調停を申し立てる際には、申立書以外にも以下の書類を記載して提出することになります。
それぞれの書類について、書き方をご説明します。
(1)離婚調停の進行に関する照会回答書
進行に関する照会回答書の雛形は、下記のテキストをリンクすることでダウンロードできますのでご利用ください。
雛形をご覧いただければ分かりますが、以下の質問事項が記載されていますので、各質問に対してそれぞれ回答を記入します。
家庭裁判所に実情を把握してもらうことが大切ですので、ありのままの事実を正直に記載しましょう。
- この申立てをする前に相手方と話し合ったことがありますか。
- 相手方は裁判所の呼出しに応じると思いますか。
- 調停での話合いは円滑に進められると思いますか。
- この申立てをすることを相手方に伝えていますか。
- 相手方の暴力等がある場合には、記入してください(暴力の内容、頻度、治療を受けたことがあるか、調停時に暴力の可能性があるか等)。
- 調停期日の差し支え曜日等があれば書いてください。
- 裁判所に配慮を求めることがあれば、その内容をお書きください。
相手方が暴力を振るう傾向がある場合や、裁判所で待ち伏せ等をされるおそれがある場合、現住所や連絡先を知られたくない場合は、必ず該当欄に記載しておきましょう。
(2)事情説明書
事情説明書の雛形は、下記のテキストをリンクすることでダウンロードできますのでご利用ください。
事情説明書も雛形に以下の質問事項が記載されていますので、各質問に対してそれぞれ回答を記入します。
やはり、家庭裁判所に実情を把握してもらえるように、ありのままの事実を正直に記載しましょう。
- この問題でこれまでに家庭裁判所で調停や審判を受けたことがありますか。
- 調停で対立すると思われることはどんなことですか。
- それぞれの同居している家族について記入してください。
- それぞれの収入はどのくらいですか(月収や賞与の金額等)。
- 住居の状況について記入してください(自宅か、賃貸か等)。
- 財産の状況について記入してください(土地や建物や預貯金等の内容と負債について)。
- 夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由などを記入して下さい。
相手方の収入や財産などで不明な点があれば、空白のまま提出しても差し支えありません。
最後の「夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由」の欄には、ぜひ具体的な事情を詳細に書くようにしてください。
ただ、雛形では記入欄のスペースが狭いので、次にご紹介する「陳述書」を活用することをおすすめします。
その場合、上記「7」の欄には「別途提出する陳述書に記載のとおり」と記載すれば足ります。
(3)陳述書
陳述書とは、ご自身の主張する事実や裁判所に伝えたいことを物語形式で記載した書面のことです。
充実した陳述書を提出しておけば、裁判所にこちらの言い分を十分に理解してもらった状態で調停をスタートできますので、有利に調停を進めることが期待できるようになります。
離婚調停における陳述書の書き方は、夫婦が結婚したときからその後の夫婦生活の状況、それから夫婦関係が破たんするまでに起こったことを時系列で具体的に記述していくのが一般的です。
事実を列挙するだけではなく、それぞれの事実に対してご自身がどのような気持ちになったのかを記述することによって、精神的損害の程度を説明することも大切です。
文章を書き慣れていない方には難しいかもしれませんが、弁護士に依頼すれば、弁護士があなたのお話を聞いた上で説得的な陳述書を作成してくれます。
5、離婚調停を申し立てた後の流れ〜かかる期間や期日の回数は?
離婚調停を申し立てると、まず、1か月~1か月半くらい先の日時に第1回調停期日が指定されます。
1回の調停期日にかかる時間は、2~3時間です。
時間内に話し合いがまとまらない場合は、次回までに準備すべきことを確認したうえで、次回の調停期日が指定されます。
離婚調停は1回の期日で成立することもありますが、2~4回程度の期日を重ねるのが平均的となっています。
それまでに調停が成立しない場合は、離婚訴訟の提起を検討することになりますが、5回以上の期日を重ねて調停が成立するケースも珍しくはありません。
期間でいうと、3か月~6か月で調停が終了するのが平均的ですが、じっくり話し合いたい場合は1年程度を見込んでおいた方がよいでしょう。
6、離婚調停は自分で申し立てても本当に大丈夫?
ここまでは、自分で離婚調停を申し立てる方法やその後の流れを解説してきましたが、最近では離婚調停を弁護士に依頼する人が増えています。
そんな中で、本当に自分で離婚調停を申し立てても大丈夫なのでしょうか。
ここでは、自分で申し立てる場合のメリット・デメリットをみていきましょう。
(1)自分で申し立てるメリット
メリットとしては、弁護士費用が不要ということが挙げられます。
離婚調停を弁護士に依頼するためにかかる費用は、総額で80万円~100万円ほどが相場です。
ただし、弁護士費用は工夫次第で低く抑えることも可能です。その方法については、こちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
(2)自分で申し立てるデメリット
デメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
①手間と時間がかかる
離婚調停の申立書やその他の必要書類を作成・収入するには、多大な手間と時間がかかってしまいます。
弁護士に依頼すれば、複雑な作業や手続きはすべて代行してもらえます。
②落としどころがわからない
調停は話し合いの手続きですが、調停委員は法律や裁判例などから導き出される「相場」を踏まえて、当事者を妥当な結論に導こうとします。
そのため、離婚調停にもおのずから「落としどころ」というものがあります。
自分で申し立てる場合は、落としどころがわからないために相場から外れた主張に固執してしまい、調停がまとまらない可能性があります。
③交渉で不利になる
離婚調停で満足できる結果を得るためには、調停委員を通じた「交渉」を有利に進める必要があります。
そのためには、的確な主張と証拠を提出し、調停委員の理解が得られるように事情を説明することが大切です。
しかし、自分で申し立てる場合は、どのように主張を組み立てて、どのような証拠を提出すれば有効となるのかがわかりにくいため、交渉を有利に進めるのが難しくなります。
その結果、満足できる結果が得られないおそれもあります。
7、離婚調停を自分で申し立てても良い3つのケース
とはいえ、離婚調停では調停委員が中立公平な立場で話し合いをリードしてくれますので、自分でも調停を進めることは可能です。
結局のところ、自分で申し立てても結果に大きな差し支えがないと考えられるのは、以下の3つのケースといえます。
(1)強力な証拠がある場合
パートナーの浮気を主張するケースで、浮気相手との性交渉中の画像や動画といった強力な証拠を掴んでいる場合は、それだけで交渉を有利に進めやすいといえます。
このような場合は、まず自分で申し立ててみるのもよいでしょう。
ただし、慰謝料や養育費の請求額が妥当かどうかは弁護士に相談して確認しておくことをおすすめします。
(2)相手と大筋では合意できている場合
離婚することと離婚条件について、大筋ではパートナーと合意できているものの、細かい部分で意見が噛み合わないというケースもあります。
例えば、浮気の慰謝料として300万円を請求しているのに、パートナーは200万円しか払わないというような場合です。
このような場合には、調停委員の仲介によって、間を取って250万円で合意ができる可能性がありますので、自分で申し立ててみるのもよいでしょう。
(3)大幅に譲歩しても構わない場合
離婚条件について大幅に譲歩しても構わないという場合も、自分で申し立ててもよいかもしれません。
例えば、離婚さえしてくれれば他には何もいらないという場合で、パートナーが話し合いに応じてくれないというようなケースが考えられます。
8、離婚調停を有利に進めるための方法
離婚調停を有利に進めるには弁護士に依頼することが有効ですが、ここでは自分で申し立てる場合にできる限り有利に進める方法をご説明します。
(1)強力な証拠を提出する
離婚調停は話し合いの手続きですので、証拠がなければ申し立てができないというわけではありません。
しかし、証拠がないと相手方が言い逃れをする可能性が高いです。調停委員としても、どちらの言い分が正しいのかを見極めることはできません。
その場合、相手方の方が外面がよかったり、交渉術に長けていたりすれば、調停委員も相手方の言い分に引っ張られてしまうおそれがあります。
その結果、調停が不利に進んでいってしまいかねません、
調停を有利に進めるためには、相手方が言い逃れできないような証拠を提出し、調停委員にもあなたの言い分を信用してもらうことが大切です。決定的な証拠がつかめない場合は、間接的な証拠をできる限り数多く集めて相手方の言い逃れを封じることを目指しましょう。
(2)事情を説得的に説明する
証拠があったとしても、その証拠がすべての事実を物語ってくれるとは限りません。
調停委員に実情を把握してもらうためには、証拠を示しつつ、あなたが事情を説得的に説明する必要があります。
口頭で上手に説明する自信がない場合は特に、前記「4」(3)でご説明した陳述書を活用するのがおすすめです。
(3)調停委員を味方につける
調停委員は中立・公平な立場で話し合いを進めますが、実際には双方の言い分を聞いた上で「落としどころ」を想定した上で、必要に応じてアドバイスや説得を行うものです。
調停委員にあなたの言い分を理解してもらえれば、その方向に従って相手方に対してアドバイスや説得を行ってくれることもあります。
ときには、調停委員になかなか言い分を理解してもらえなくて腹が立つこともあるかと思います。
しかし、調停委員に対してけんか腰になるのは逆効果です。
証拠や陳述書を活用して、実情をしっかりと伝えることが大切です。
9、その他、離婚調停を自分で申し立てる場合の注意点3つ
その他にも、離婚調停を自分で申し立てるなら知っておいていただきたい注意点が3つあります。
(1)相手方に知られたくないことがある場合の対処法
離婚調停の申し立てに際して提出する書類の中には、あなたの住所や連絡先も記載しなければなりません。
そして、相手方は原則として、家庭裁判所に提出された書類については閲覧やコピーをすることが可能です。
しかし、相手方に住所や連絡先を知られてしまうと、暴力やストーカー行為を受けてしまうおそれがある場合もあるでしょう。
その他の情報の中にも、さまざまな事情で相手方には知られたくないものがあるかと思います。
そんなとき、申立書には現住所や連絡先ではなく、知られてもよい住所や連絡先を記載して提出することもできます。
また、相手方に渡ってしまう書類としてコピーを準備し、知られたくない部分にマスキング(黒塗り)をするということも可能です。
さらに、「非開示の希望に関する申出書」を提出すれば、裁判所が必要と判断した場合には、相手方に見られたくない書類を非開示としてもらえる場合もあります。
非開示の希望に関する申出書の雛形は、下記テキストをクリックするとダウンロードできます。
(2)婚姻費用を請求するには別途申立が必要
あなたの収入が相手方の収入よりも低い場合は、「婚姻費用」といって、生活費の一部を請求することができます。
この請求のことを「婚姻費用分担請求」といいます。
通常、夫婦が別居している場合には裁判所の婚姻費用算定表を目安とした金額の請求が認められます。
ただ、婚姻費用分担請求は婚姻中の夫婦間の問題ですので、離婚するために行う「離婚調停」とは別に手続きが必要とされています。
ですので、別居しているあなたが相手方から生活費をもらっていない場合は、離婚調停と同時に「婚姻費用分担請求調停」も申し立てましょう。
婚姻費用分担請求調停について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
(3)調停の途中でも弁護士に依頼することは可能
自分で離婚調停を申し立てることによって満足できる結果が得られればよいですが、不利な条件での離婚を押しつけられる可能性もあります。
そうなると、一生後悔することにもなりかねません。
離婚調停の途中からでも弁護士に依頼することは可能ですので、「これ以上、自分で進めるのは難しい」と感じたらすぐに弁護士への相談をおすすめします。
10、離婚調停の申し立てが不安なときは弁護士の無料相談を利用しよう
弁護士に相談しても、必ずしも依頼しなければならないわけではありません。
わからないことだけを法律相談で教えてもらいながら、自分で調停を進めることも可能です。
例えば、調停申立書やその他の必要書類を作成した段階で弁護士に相談し、チェックを受けるのもよいでしょう。
弁護士に相談しておくことで、調停中に旗色が悪くなったらすぐに依頼して対応してもらうことも可能となります。
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まとめ
離婚調停は、自分で申し立てることも可能です。
ただ、離婚調停で納得できる結果を獲得するためには、専門的な知識やノウハウが必要になることも少なくありません。
お困りの場合は、離婚問題に強い弁護士に相談してみましょう。