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相続後の名義変更について相続人が確認しておくべき4つのこと

相続 名義変更

相続の名義変更は、必ずやらないといけないのでしょうか。

  • 名義変更をせずに放置していたらどういうデメリットがある?
  • 名義変更にはどのぐらいの費用が必要?
  • 不動産の名義変更手続きは自力でできる?

遺産の名義変更手続きは、相続によって財産を得た人が必ずやっておくべき手続きです。
(相続を原因とする名義変更手続きのことを「相続登記」と呼ぶこともあります)

特に、土地や建物といった不動産は「登記簿上の名義人が誰になっているか」によって、法律上の権利が誰のものとなるかの判断がされることがありますから注意が必要です。

思わぬ法律トラブルに巻き込まれてしまわないようにするためにも、相続によって得た財産はすみやかに名義変更の手続きを完了しておくようにしましょう。

相続の手続きの流れについて詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。

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1、相続したら名義変更を行おう

相続したら名義変更を行おう

冒頭でも見たように、相続によって得た財産については、名義変更手続きを行っておくことが重要です。

もっとも、名義変更には費用がかかりますから、名義変更によってどのようなメリットがあるのかを具体的に理解しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

以下では、遺産の名義を変更しておくことによるメリット(=名義変更をしないことによるデメリット)について解説いたします。

(1)名義変更にはどういう法律効果がある?

名義変更を行うことは、遺産に対するあなたの法律上の権利を確定する効果があります。 

ここでいう「権利を確定する」とは、具体的に言えば「相続とは関わりのない第三者との取引についても、あなたは正式な所有権者として扱ってもらうことができる」という意味です。

例えば、相続発生後に遺産を不動産業者に対して売却するような場合、その不動産業者は第三者という扱いになります。

この第三者と正式に売買契約を結ぶことができるのは、本来は所有権者であるあなただけのはずです。

しかし、共同で相続人となった人がいるような場合に、その共同相続人が、名義変更が行われていないことを良いことに、自分が所有者であるように偽って売買契約を結んだ場合には、あなたが第三者に対して売買の無効を主張できなくなってしまうのです。

このように、第三者に対して「この財産は自分が相続によって所有権を得た財産である」という主張を行うためには、法律上名義変更の手続きを行っておく必要があるのです。

(2)どんな財産を得た時に名義変更が必要?

相続後に名義変更手続きを行うべき財産の種類としては、以下のようなものがあります。

  • 不動産(土地や建物、借地権や借家権など)
  • 自動車
  • 銀行預金口座
  • 株式や投資信託などを預けている口座
  • その他知的財産権など

これらの財産の名義変更を行うためには、通常はあなたが正当な相続人であることを証明する書類(遺言書や遺産分割協議書など)が必要となります。

そのため、遺産分割に関する手続きが完了するまでは、財産の名義変更手続きを行うことはできません。

(3)名義変更にはどのぐらいの費用がかかる?

銀行預金や有価証券といった財産については、通常名義変更に費用は必要ありません。

一方で、不動産や自動車といった財産については、法務局や運輸支局といった役所に対して費用を支払わなくてはなりません。

不動産の名義変更を行う場合、法務局に対して登録免許税という税金を納めます。
相続による名義変更では、不動産の固定資産税評価額に、税率1000分の4を掛け算して登録免許税の金額を計算することになります。

  • 登録免許税の金額=名義変更したい不動産の固定資産税評価額×税率1000分の4
    (※固定資産税の評価額は、毎年所有者となっている人に送られてくる固定資産税の納付書に記載されています)

例えば、固定資産税評価額5000万円の土地の名義変更を行う場合には、以下の金額を登録免許税として納めなくてはなりません。

  • 5000万円×1000分の4=20万円

自動車の名義変更では、移転登録の手数料や車庫証明の取得などを行う必要がありますので、トータルで3000円程度の費用がかかります。

また、これらの手続きを司法書士などの専門家に代行してもらう場合には、専門家に対して支払う費用が別途必要になることにも注意しておきましょう(専門家の費用相場については後でくわしく説明します)。

(4)名義変更せずに放置していたらどうなる?

法律上、財産の名義変更を行うことは義務ではありません。
そのため、相続が発生した後に名義変更を行わず放置しておいたとしても、罰金などが課せられてしまうようなことはありません。

ただし、上でも見たように、名義が亡くなった人のままになっている財産を放置しておくことには大きなリスクがあります。

相続が発生していることを知らずに取引関係に入った第三者に対して、あなたの権利を主張できなくなってしまう可能性があるからです。

こうしたリスクを避けるためにも、通常は遺産相続後すみやかに名義変更手続きを行なっておくのが望ましいと言えます。

2、相続の名義変更をせず放置した場合によくあるトラブル

相続の名義変更をせず放置した場合によくあるトラブル

上では「相続後に名義変更を行うことは法律上の義務ではないものの、名義変更を行わずに放置しておくと、法律上のトラブルに巻き込まれてしまう可能性がある」というお話をしました。

以下では、どのような状況でこの法律上のトラブルが生じてしまうのかについて、具体的に見ておきましょう。

(1)相続人が名義変更する前に、その人自身の相続が発生してしまうケース

相続によって財産を得た人が、名義変更手続きを行う前に亡くなってしまったような場合には、相続に関する法律関係が複雑になってしまう可能性があります。

相続人の数が増えるほど相続トラブルが生じる可能性が高くなる上、相続登記のために必要な書類の取得が困難になるようなケースも考えられます。

相続発生後の扱いは家族の話し合いだけで済ませるのではなく、すみやかに名義変更等の手続きまで完了しておくことが、後日のトラブルを避けることにつながります。

(2)名義人でないのに固定資産税を請求されるケース

土地や建物などの不動産を所有している人には、毎年固定資産税という税金が課税されます。
固定資産税の納税義務者となるのは、毎年1月1日現在で所有権者となっている人で、登記簿上の名義によって判断されます。

もちろん、前の所有者の死亡後に名義変更を行なっていない場合には、登記簿上の名義人は前の所有者(すでに亡くなっている)になっています。

そのため、この場合の固定資産税は、役所で把握している相続人に対して通知が来ますので、必ずしも本来の所有者でない人が固定資産税を請求されるようなケースも少なくありません。

名義変更を正しく行なっておけば、翌年以降は本来の所有者に対して固定資産税の納付書が届くようになりますので、無用なトラブルを避けるためにもすみやかに名義変更手続きを行っておくのが適切と言えるでしょう。

(3)別の相続人が勝手に自分の財産を売却してしまうケース

相続発生後に名義変更をせずに放置していると、相続によって所有権者が変わっていることを知らずに取引関係に入った第三者に対しては、その取引の無効を主張できなくなってしまう可能性があります。

例えば、親が亡くなって土地を相続したけれど、名義変更は行わずに放置していたとしましょう。
このとき、あなたの兄弟が、本来は土地の所有権を持っていないにも関わらず「この土地は自分が親から相続したものである」と偽って、第三者に対してあなたの土地を売却してしまったとします。
もし、この第三者が、本当の所有者があなたであることについて知らなかったような場合には、この土地の売買契約の無効を主張することはできなくなってしまう可能性があります。

もっとも、このケースで兄弟が不当にも第三者から受け取った売却代金については、あなたに対して引き渡すように主張できるのは当然です。

しかし、兄弟がこのお金を使い込んでしまっているような場合には実質的にお金を回収することができませんから、結果として相続した財産を失ってしまう可能性があるのです。

(4)相続人の債権者に勝手に代位登記されてしまうケース

相続人となる人が、他の人に対して借金を追っているよう場合に、相続によって得た不動産の名義変更を行っていないと、債権者(お金を貸している人)が相続人に代わって名義変更をしてしまう可能性があります。

当然ながら、名義変更によって不動産の名義人となるのは相続人なのですが、債権者は相続人が債務を支払わない場合には、名義変更を行なった不動産に対して強制執行をかけることが可能となります。

このようなケースを、債権者の代位による相続登記と呼びます。

代位による相続登記は強制執行の前段階として行われるほか、正式な遺産分割を行わない状態で登記をされるなどの不利益が生じる可能性もあります。(遺産分割協議が完了する前に代位による相続登記がされる場合、法定相続分での分割があったものとして名義変更がされてしまいます)

(5)本来払う必要のない相続税の負担が生じてしまうケース

名義変更手続きと直接的に関係のある話ではありませんが、名義変更の前提となる遺産分割協議が、できるだけ早いタイミングで完了していることは重要です。
というのも、遺産分割協議が完了しているかどうかによって、相続税の負担額が大きく変わってしまう可能性があるからです。

遺産分割協議が完了していれば、相続税の計算にあたって各種の税軽減措置を利用することができます(小規模宅地等の特例や配偶者控除など)。

相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月以内です。名義変更の前提となる遺産分割協議は、できるだけ早いタイミングで完了しておくのが望ましいと言えます。

3、名義変更の必要書類と手続きについて

名義変更の必要書類と手続きについて

名義変更を行うためには、土地や建物については、その不動産所在地を管轄している役所(法務局)で手続きを行う必要があります。

また、銀行預金や有価証券のように、金融機関に対して財産を預けている場合には、その金融機関に出向いて手続きを行う必要があります。

以下では、主に不動産に関する名義変更手続きに必要な書類や、手続きの進め方について解説いたしますので、参考にしてみてください。
(金融機関での名義変更手続きについては、どのような手続きが必要であるかは金融機関によって異なりますから、財産を預けている金融機関に連絡を取って必要書類等を問い合わせるようにしてください)

(1)名義変更に期限はある?

法律上、不動産の名義変更に期限はありません。

(2)名義変更手続きのおおまかな流れ

相続発生後、名義変更手続きが完了するまでは、おおむね以下のような流れで手続きが進んでいきます。

  • 相続の発生(前所有権者の死亡)
  • 相続人の確定(遺言がある場合は遺言によって、遺言がない場合は法律上権利を持つ親族が相続人となります)
  • 調査によって相続の対象となる財産の範囲を確定します
  • 相続人となる人が集まって遺産分割協議を行います
  • 遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します
  • 法務局で相続した財産の名義変更手続き(相続登記)を行います

なお、相続税の負担が生じる場合には、遺産分割協議が完了した後に相続税の申告と納税を行います(税務署に対して手続きします)

相続税の申告は相続発生後10ヶ月以内に行う義務がありますから、相続発生後はこれに合わせて遺産分割協議を行うのが一般的です。(相続税の申告は、遺産分割協議の完了が前提となります)

(3)名義変更の手続きはいつのタイミングで始める?

上でもみたように、不動産の名義変更手続きに期限などはありません。

一方で、名義変更を行わず放置していると、不動産の所有権を巡って法律上のトラブルが生じてしまう可能性があります。

遺産分割協議などによって相続人としての権利が確定したら、すみやかに名義変更の手続きも完了しておくのが望ましいでしょう。

(4)相続の名義変更手続きは自分でできる?

相続によって得た不動産の名義変更手続きは、所有者ご自身が自力で行うことも決して不可能ではありません。

ただし、名義変更手続きにミスがあると、最悪の場合には不動産の所有権を失ってしまうなど、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

過去に法律実務の経験があるなど、法律知識に自信があるという人を除いて、通常は司法書士などの専門家に名義変更手続きを依頼するのがおすすめです。

4、相続と名義変更について相談できる専門家は?

相続と名義変更について相談できる専門家は?

遺産相続や名義変更に関しては、法律知識のない人が自力で手続きを行うと思わぬトラブルに見舞われてしまう可能性があります。

遺産相続による財産の名義変更については、司法書士などの法律家にアドバイスを受けるようにしましょう。

(1)専門家費用の相場は?

司法書士に相続登記の手続きを依頼した場合の費用相場は、登記申請のみの場合で5万円〜8万円が相場です。

また、遺産分割協議書の作成など、相続発生後に必要な手続きもまとめてやってもらうような場合には、10万円〜20万円程度の費用が必要になるでしょう。司法書士の費用はそれぞれの司法書士事務所が自由に決めていますので、複数の事務所に相談して見積もりを取り、費用の比較をしてから依頼するのが良いかもしれません。

ただし、司法書士の評価は費用の安さだけで行うことはできません。

実際に相談をしてみて、遺産相続に関する経験が豊富で、信頼できる司法書士に手続きを依頼することが大切です。

(2)相談時に用意しておくべきものは?

司法書士に名義変更手続きの相談にいくときには、以下のようなものを持参すると良いでしょう。

  • 相続人となる人の戸籍謄本や住民票
  • 亡くなった人の戸籍謄本(死亡の記載がある最新のもの)や住民票の除票
  • 名義変更したい不動産の固定資産税評価額がわかる書類(固定資産税の納税通知書など)

ただし、相続が発生した直後で、何をどうしたらいいのかさっぱりわからない…という状況の方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、まずは司法書士の事務所に電話をしてみて、持参すべき書類などについて指示してもらう方がスムーズかもしれません。

(3)相続トータルの相談は法律事務所へ

名義変更単体でのご相談は司法書士が専門です。

しかし、もし相続において別のさまざまなトラブルを抱えているという場合は、弁護士が専門となります。

相続人に行方不明者がいる、遺産分割協議がうまくいかない、遺言書があるが偽造された可能性があるなど、相続においてはさまざまなことが起こり得ます。

また、相続税については税理士が専門です。

このように、相続では専門家が異なってきますので、ベストなのは、司法書士や税理士が揃う法律事務所へ相談するのが良いでしょう。さまざまなご要望にワンストップで対応してくれるはずです。

まとめ

今回は、相続後に行う名義変更の手続きについて知っておくべき注意点を解説いたしました。

本文でも見たように、名義変更手続きは法律上の義務ではないものの、名義変更を行わずに放置した場合には、予想外の法律トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

相続によって得た権利を完全なものにするために、名義変更手続きは必ず行なっておくべき手続きと言えます。

遺産分割協議などによって誰がどの財産を取得するのかが確定したら、できるだけ早いタイミングで名義変更の手続きを行うようにしましょう。

不動産の名義変更に関する手続き、その他相続について困ったことがありましたら、ぜひ相続に詳しい法律事務所を探して相談してみてください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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