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孫の親権を祖父母が持つ条件と知っておきたい4つのポイント

孫の親権を祖父母が持つ条件と知っておきたい4つのポイント

祖父母も子供の親権者になること可は能なのでしょうか。

この記事では、祖父母が孫の親権者となることができる条件や方法について詳しく説明します。

親権全般については以下の関連記事をご覧ください。

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1、親権者は祖父母でもなることができる?

本章では、

  • そもそも親権とは何か
  • 祖父母は孫の親権者になれるのか

について、説明します。

(1)そもそも親権とは

婚姻関係にある親であれば、当たり前のように有している親権ですが、そもそも親権とはどのような権利なのでしょうか。

親権とは大きく分けて、以下の2つに分かれます。

  • 身上監護権(子とともに暮らし教育させる権利と義務)
  • 財産管理権(子のお金の管理と法律行為の代理や同意をする権利と義務)

①身上監護権

身上監護権は、以下の3つの権利を意味します。

  • 居住指定権(民法821条)
  • 懲戒権(民法822条1項)
  • 職業許可権(民法823条1項)

居住指定権については、民法821条で定められているとおり、子供の居所は親権を持つ親に決定権があります。

(民法821条)

子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

懲戒権については、親であってもあまり馴染みがない言葉でしょう。

民法822条1項では、以下のように定められています。

(民法822条1項)

親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。

「懲戒場」という施設はなく、親が合理的範囲内で子供を教育しつけをすることができるという意味です。

職業許可権については、民法823条1項において下記のように定めており、子が職業に就くかどうかは、親権者の許可を必要とします。

(民法823条1項)

子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。

知識や経験がない未成年者が、危険な職業に巻き込まれないよう、親がしっかりと管理をする必要があります。

身上監護権は、通常親権を有する親に与えられるのが一般的です。何らかの事情により、親権と身上監護権を分離すべき場合は、親権者とは別に監護権者が決められるケースもあります。

②財産管理権

民法824条では、以下のように定め、親権者に子の財産管理権を認めています。

(民法824条)

親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

子供は、未熟さゆえ財産を管理する能力がないと考えられています。子供が有している現金や相続等により得た財産(不動産等)は、親権者が管理することとされています。

(2)親権者になれる人は父母のみ

では、祖父母は孫の親権者になれるのでしょうか。結論から申し上げますと、祖父母は孫の親権者にはなれません

①父母の婚姻時は共同親権

父母の婚姻時は、父母双方が親権を持つ共同親権の状態です。父母が親権を有するのですから、祖父母には当然親権はありません。

②離婚後は父母の一方のみが親権者になる

父母が離婚した場合は、父母の一方のみが親権者となります。

日本の法制度では、離婚した夫婦が共同親権を持つことはできません。離婚する際に、必ず父母のどちらを親権者とするのか決めなければいけないことになっています。

父母が離婚しても、親権者は父母のどちらかになりますので、祖父母は親権者となることはできません。

2、祖父母が親権者になる方法

祖父母が、親権者となる方法はないのでしょうか。

親権者は、子が健やかに安全に育つために定められるものです。父母のどちらか一方が子をしっかり育てない場合、祖父母が孫のことを心配するのも無理はないでしょう。

本章では、祖父母の親権や権利行使について解説します。

(1)養子縁組

祖父母が親権を有する最初の方法は、「養子縁組」です。

祖父母が子供と養子縁組をすると、養子である子(祖父母から見たら孫)に対して、祖父母が親権を有することになります。

(2)祖父母双方との養子縁組が必要

祖父母が未成年者である孫と養子縁組する場合は、注意点があります。

民法795条では、以下のように定められています。

(民法795条)

配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

孫が未成年者の場合、祖父母のどちらか一方と養子縁組するのではなく、祖父母の双方と養子縁組をすることが必要です。祖父母の一方のみが孫の養子縁組を望んでいても、祖父母のもう一方が養子縁組に反対している場合は、孫と養子縁組をすることができません。孫との養子縁組を考える場合は、以上の点に注意しましょう。

(3)15歳未満の場合は現親権者の承諾が必要

祖父母が孫と養子縁組をする場合、孫が15歳未満であれば、現親権者の承諾が必要とされています。

祖父母と15歳未満の孫の双方が、祖父母との養子縁組を望んでいても、現に親権を有している親の承諾がなければ、養子縁組をすることができません。親権者と離れたほうが良い事情があるケースもありますが、制度上はこのような扱いになっています。

3、親権者同様の権利行使を可能にする方法

前章までに説明したように、祖父母が親権者となるには、養子縁組をすることが必要となります。

養子縁組をするには、祖父母双方の同意が必要となる点や、現親権者の承諾が必要となる点で、なかなか現実的ではないという場合もあるでしょう。親権を有することはできなくても、親権者と同様の権利行使を可能にする方法があります。

(1)監護権の取得に関する最高裁の判断(最高裁令和3年3月29日決定)

祖父母の監護権の取得に関し、最高裁が下した判断が注目を浴びています(最高裁令和3年3月29日決定)。

本事案では、子ども(祖母から見たら孫・未成年)の母親が離婚し別の男性と再婚したものの、子どもと男性・母親との関係はうまくいきませんでした。

上記の状況を見かねた祖母は、未成年者の監護権を主張し申立てをしました。

家庭裁判所は、祖母を監護権者に指定するとの判断し、高等裁判所も家庭裁判所の判断を支持しました。

対して、最高裁は、以下の判断をし、祖母の申立てを却下しました。

民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、上記の申立てについて、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお、子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照)、このことは、上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

以上によれば、民法766条の適用又は類推適用により、上記第三者が上記の申立てをすることができると解することはできず、他にそのように解すべき法令上の根拠も存しない。

以上の最高裁の判断は、第三者が監護権の申立てをすることができるとした条文がないことから、事案を判断するまでもなく却下するというものです。

条文がないから祖父母の監護権の申立てが却下されるというのは、子どもにとっても望まない結論になる場合があるでしょう。今後の民法改正に期待したいところです。

(2)未成年後見人になる

子どもの両親がともに死亡した場合、親権者が誰もいない状態になります。

祖父母が家庭裁判所から未成年後見人に指定されれば、親権者ではないものの、親権とほぼ同様の権利行使をすることが可能です。

一方、親が親権者として存在している場合に、祖父母が未成年後見人になるには、親の親権を喪失させる必要があります。

民法834条は、以下のように定めており、祖父母でも親権喪失の申立てをすることができます。

父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。

親権喪失の審判が下され、親の親権が喪失し、祖父母が未成年後見人になることができれば、親権とほぼ同様の権利行使をすることができます。親権喪失は、親にとっても子供にとっても重要なことですから、親権喪失の申立てをしても、必ず親の親権が喪失するわけではありません。親権喪失については、裁判所も慎重に判断しますので、親権喪失という判断がなされることの方が少ないというのが現在の運用です。

(3)親権代行

親権代行」という言葉は、聞き慣れないかもしれません。

あまり多いケースではありませんが、未婚の未成年者が子供を出産するケースがあります。

この場合、未成年者が生んだ子供(祖父母にとっては孫)の母親も未成年者ですから、未成年者(祖父母から見たら自分の子供)に代わって祖父母が親権を代行することがあります。

(4)最終的には子供の福祉・幸せをしっかり考える

親権者は、子供に関して権利行使をすることができますが、大切なのは子供の福祉幸せをしっかり考えることです。

子供が親から虐待されていたり、充分な食事を与えられていなかったりするのであれば、祖父母を含め親以外の人が子供を守っていく必要があるでしょう。

4、孫の養子縁組や権利行使を考えている方は弁護士に相談を

祖父母の立場からすると、大切な孫が親からの虐待や育児放棄により悲しい思いをしているのを黙って見ていることはできないでしょう。現行の制度では、孫の親権者になるには養子縁組をするしかありませんが、養子縁組も簡単にできるものではありません。

孫の養子縁組や、孫に対して何らかの権利行使をして孫を守っていくことを考えている祖父母の方は、一度弁護士にご相談ください。弁護士が、あなたと一緒に解決策を考えていきます。

まとめ 

今回は、祖父母の親権や親権と同等の権利行使について解説しました。

「孫は自分の子供よりも可愛い!」と感じる人も多いでしょう。孫が親と一緒にいることで、悲しい思いや辛い思いをしているのであれば、祖父母としてはできる限り孫のことを守っていきたいですよね。

養子縁組やその他の権利行使については、専門的な知識や戦略が必要となる場合もあります。少しでもわからないことがある場合は、気軽に弁護士にご相談ください。

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