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連れ子の相続で知っておくべき5つのことを弁護士が解説

連れ子 相続

連れ子の相続について、知っておくべきことはどのようなことなのだろう。
たとえ連れ子であっても、再婚相手とは実の親子のようであって欲しい。そして再婚相手が亡くなったときも、実の子供と同じようにその遺産を相続させてあげたい…。

子供を連れて再婚した方に共通する気持ちだと思います。ところが現行の法制度のもとでは、再婚しただけでは、連れ子は再婚相手が亡くなった時に相続人にはなれません。いくら再婚相手とあなたの子供(連れ子)との関係が良好だったとしても、事前に手続きを踏まなければ連れ子は相続できません。

連れ子に相続させたいと思われる場合は、生前に適切な手続きを取っておく必要があります。

今回は、

  • 連れ子の相続について知っておくべき知識と取り得る各種の対策

についてご紹介します。あなたのお子さんが不利な立場にたたなくてすむよう対策しましょう。

法定相続人に関してもっと知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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1、連れ子には相続権がない?再婚しても?

連れ子には相続権がない?再婚しても?

民法では、被相続人(亡くなった人のこと)の相続人となる「法定相続人」を定めています。

この法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者(内縁関係を除く)・子(子がなくなっている場合は孫)・親・兄弟姉妹です。
配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の法定相続人は①子、②親、③兄弟姉妹と順位付けがされており、先の順位に該当する者がいない場合にのみ次の順位の者が相続人となります。

また、法定相続人の遺産の取り分については「法定相続割合」が定められています。たとえば配偶者と子が相続人の場合は、配偶者と子の相続分はそれぞれ2分の1ずつです。

では、子どもが被相続人と血縁関係の無い連れ子である場合は、どうなるのでしょうか。
残念ながら、現在の法制下では、再婚しただけで養子縁組をしていない連れ子は法定相続人ではありません。
あなたの子供が再婚相手と実の親子と同じように良好な関係を築いていたとしても、これはかわりません。

2、法的に相続が認められるのは「血族」のみ

法的に相続が認められるのは「血族」のみ

配偶者の場合は、被相続人の死亡時(相続開始時)において民法上の婚姻関係にあれば、原則として法定相続人です。それ以外の法定相続人については、民法の規定において法定相続人と認められるのは、血の繋がりがある直系の家族、すなわち「血族」のみです。

義理の親や義理の兄弟姉妹などとよばれる「姻族」は法定相続人ではありません。

連れ子は、親の結婚のみによっては、再婚相手の血族にはなりませんので、法定相続人ではありません。

3、連れ子にも相続させる方法はある

連れ子にも相続させる方法はある

連れ子は法定相続人ではないので、そのままでは再婚相手を被相続人とする相続で何も財産を得ることはできません。

連れ子に相続させたり、相続でないとしても財産をのこしたりするためには、以下のような方法で対策をしておく必要があります。

(1)養子縁組

親子関係のない者の間に、親子関係を生じさせることを養子縁組といいます。養子縁組をすれば、連れ子も被相続人の子として法定相続人となります。

養子縁組には、大別して普通養子縁組と特別養子縁組があります。

なお、相続税法では基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)における法定相続人について、養親となる人に実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は養子は2人までと定められています。
しかし、これはあくまで相続税法上の話で、民法上は養子の数に関する制限規定は設けられていません。

①普通養子縁組

再婚時の養子縁組としては、通常この普通養子縁組が用いられます。
相続発生時の節税のためにこれを活用される方もいます。

原則として、養子となる者が15歳未満の未成年の場合にはその未成年者の法定代理人の承諾と家庭裁判所の許可が、15歳以上の未成年の場合には家庭裁判所の許可が必要です。

例外として、自らや配偶者の子どもや孫などの直系卑属を養子とする場合には、家庭裁判所の許可は不要となります。

あなたのお子様が15歳未満であって親権者があなたであれば、家庭裁判所の許可を得る必要はなく、再婚相手とあなたの合意のみで養子縁組が可能です。
15歳を超えている場合には、お子様と再婚相手との合意によって養子縁組をすることができます。

なお、普通養子縁組の場合、縁組後も子供とあなたの元配偶者(子どもから見て実の父又は母)との親子関係は継続します。

たとえあなたが離婚して子どもが再婚相手と普通養子縁組をしたとしても、子どもと実の親との間の法的な親子関係は続きます。

したがって、相続に関していえば、子どもは普通養子縁組後も実の親の法定相続人です。   

②特別養子縁組  

縁組後も実親と親子関係にある普通養子縁組に対して、実親との親子関係が完全になくなるのが特別養子縁組です。

これにより、あなたのお子様は実の親に対する法定相続権を失います。

本来、特別養子縁組の制度は子供に対して暴力を振るう・適切な養育をしないなど、子供の監護者としてあまりに不適当と認められる親から子供を救うために設けられているものです。

このような背景から、特別養子縁組が認められるためには子供が6歳未満であることや家庭裁判所の審判を必要とするなど、普通養子縁組よりも厳しい要件が定められています。

(2)遺言

連れ子と養子縁組しない場合に、養子に財産を相続させる方法として、遺言があります。

再婚相手が生前に、再婚相手が亡くなった時には連れ子に財産を承継させる(これを「遺贈」といいます)旨の遺言を作成しておくことによって、連れ子は再婚相手の財産を得ることができます。

養子縁組をすることが難しいけれど連れ子に財産を遺したいと考えている場合は、遺言を作成しておくことが重要です。
被相続人となる再婚相手が連れ子に渡したい財産を選択することもできますので、意思を実現しやすい方法であるとも言えます。

遺言には、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言があります。

このうち、自筆証書遺言を作成して法務局で保管してもらう自筆証書遺言保管制度を利用する)か、公正証書遺言を作成する方法を採ることをおすすめします。

ご自身で遺言書を作成する場合には、遺言書を法務局で保管してもらう自筆証書遺言書保管制度を活用すると、紛失や改ざんを防ぐことができます。
また、亡くなった際には、相続人が法務局で遺言書の存在や内容を確認できますので、亡くなった後に見つからないという事態も防げます。

公正証書遺言は公証役場で2人以上の証人が立ち会い、公証人が遺言者の遺言を筆記し、最後に遺言者・立会いの証人・公証人が署名押印することで作成するものです。

作成された遺言書は公証役場で保管され、遺言者が亡くなった時には全国の公証役場で作成された遺言書を一括で検索できます。
公正証書遺言はその作成に費用がかかりますが、遺言の改ざんや紛失、盗難を防ぐことができるうえ、作成に公証人がかかわるため、遺言書の不備によって無効となることも防げます。

なお、もし再婚相手に実子がいる場合は、実子も法定相続人となります。

遺言を作成するうえではその法定相続人の「遺留分」を侵害しない財産の配分割合にすることが重要です。

遺留分とは、民法が被相続人の兄弟姉妹を除く法定相続人それぞれに保障している最低限相続できる遺産の割合のことです。これは遺言でも奪うことができません。

この規定により、たとえ再婚相手が遺した「連れ子に全財産を遺贈する」という内容の遺言に基づいて連れ子が全財産を相続したとしても、実子などの法定相続人は連れ子に対して自らの遺留分相当の金額を請求する「遺留分侵害額請求」を行う権利があります。

これにより、連れ子と実子の間でトラブルに発展してしまうことは多いのです。

このようなトラブルを防ぐために、再婚相手の財産構成や家族関係が複雑な場合は、弁護士に相談しながら財産の分与割合を決め、遺言を作成すると良いでしょう。

(3)その他

その他、生前贈与や生命保険といった方法が考えられます。詳細はこちらの記事をご覧ください。

 

4、連れ子の相続に関して気になる4つのこと  

連れ子の相続に関して気になる4つのこと  

相続のパターンは、実に多種多様です。

ここに連れ子が関係すると、被相続人の養子であるか否かなどの要素が加わりってさらに複雑化しますので、慎重に確認する必要があります。

ここでは、連れ子が関係した相続の発生時に予想される主な疑問点について、簡単にまとめました。

(1)連れ子が相続できる遺産の割合〜基本編

ここまで確認してきたとおり、連れ子は親の再婚だけでは法定相続人とはならず、何も相続する権利が認められていません。

再婚相手と養子縁組をして養子となって初めて法定相続人となり、相続権を有します。このとき、養子と実子の相続割合は同じです。

(2)再婚同士でそれぞれに連れ子がいる場合

では、再婚同士の夫・妻それぞれに連れが一人ずつおり、夫には他に法定相続人にあたる人がいないケースを想定してみましょう。

夫が亡くなると、夫を被相続人とする相続が開始されます。妻は夫の配偶者として法定相続人となります。

次に子どもですが、夫の実子は当然に法定相続人です。

一方で、妻の連れ子は、夫と養子縁組をしていなければ、夫の法定相続人ではありません。

養子縁組をしている場合は、子どもとして法定相続人であり、夫の実子と等しい法定相続分を有します。

したがって、養子縁組をしている場合は、妻の法定相続割合は2分の1、夫の実子と妻の連れ子の法定相続割合はそれぞれ4分の1(2分の1×2分の1)となります。

養子縁組をしていない場合は、妻の法定相続割合は2分の1、夫の連れ子の法定相続割合も2分の1となり、妻の連れ子の相続割合は0です。

(3)親より先に連れ子が亡くなった場合、孫は相続できるの?

相続人である子どもが親より先に亡くなった場合、親の相続発生時にその子どもの子ども、つまり親の孫やひ孫などが代わりに相続人となります。

これを「代襲相続」といいます。

それでは、親の子どもが養子縁組をした連れ子の場合、その代襲相続はどのような扱いになるのでしょうか。

この場合は、連れ子の子どもがどのタイミングで生まれたかにより、代襲相続の可否が決まります。

具体的には、連れ子が親と養子縁組する以前に生まれている子は代襲相続の権利が認められません。

一方で、養子縁組後に生まれた子であれば代襲相続します。  

(4)再婚相手の養子になった場合、実の親の相続権は無くなるのか

再婚相手と子どもの関係が普通養子縁組によるものであれば、子どもは実の親の相続権は失いません。

なぜなら、養子縁組をしたとしても実の親と子どもの親子関係は継続するからです。

一方で、特別養子縁組によるものであれば話は別です。

特別養子縁組は普通養子縁組と異なり、法的に子供と実の親との関係を完全に絶つ効果を有します。

これにより、子供は同時に実の親に対する相続権も喪失することになるのです。

なお、子どもの実の父親とあなたが婚姻関係になかった場合(未婚で産んだ場合)、子どもはそのままでは実の父親の相続権はありません。

実の父親の相続権を得るためには、父親に「認知」をしてもらう必要があります。  

5、養子縁組や遺言の手続きとは別にトラブル回避のために準備すべきこと

養子縁組や遺言の手続きとは別にトラブル回避のために準備すべきこと

(1)連れ子相続にトラブルが多い理由

民法第906条の、遺産の分割に関する基準を見てみましょう。

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

つまり、遺産の分割は民法上「当事者間で決めなさい」と規定されているのです。

法定相続割合などある程度の基準はあるものの、さらに具体的な基準は何も無いことから、相続発生時の遺産分割は様々なトラブルが絶えないのです。

特に養子や連れ子が関係する場合は、トラブルが生じる可能性がより高くなります。

したがって、連れ子であるあなたの子どもの相続権を確固なものとし、相続発生後のトラブルに巻き込まれないようするためには、事前に養子縁組を行っておくことや遺言を作成してもらっておくことが必要です。

(2)再婚相手の相続人を調査しよう

その他、再婚相手の相続人は誰がいるのか、どこに住んでいるのか、全部で何名なのかを事前に把握しておくこともトラブル回避のためには有効です。

相続が開始すると、遺産分割のために相続人を具体的に確定させる必要があります。
これは被相続人の生まれたときから亡くなるまでの戸籍謄本を集めて調べます。
この段階で誰も知らなかった相続人が現れることもあります。遺産分割協議後に協議に参加していない相続人がいることがわかると、遺産分割協議をやり直さなければならなくなります。

生前に遺言を作成する際にも遺留分に配慮する必要があるため、前もって相続人となる人を把握しておくことは重要です。

(3)弁護士に相談・依頼しよう

このような一連の対策は、弁護士と相談しながら進めることを強くお勧めします。

相続に強い弁護士であれば、遺言や節税対策などの経験に裏付けられたアドバイスに加え、推定相続人の調査など各種トラブルの防止策、さらには相続発生時における納税や遺産分割手続きなど各種サポートも行なっています。

もちろん、トラブル発生時の対処法も熟知していますので、各種手続きや対処法に悩まれたときは弁護士に相談してください。
なお、費用は相談料・着手金・成功報酬に分かれていることが一般的です。初回の法律相談については、弁護士・法律事務所によっては無料としているところもあります。
着手金とは案件の成否に関わらず最初に支払う費用、成功報酬とは事件終了時に支払う費用のことです。
また、この他に日当や事務手数料などがかかる場合があります。
費用は弁護士、法律事務所によって異なりますので、法律相談の際などに確認しましょう。

まとめ

再婚相手の相続において連れ子である子どもの相続権を確保するためには、実の親であるあなたが極めて重要な役割を果たすということは、ご理解頂けたと思います。

そして、これにかかる一連の手続きは非常に複雑かつ難解です。ですから決して一人で悩まず、必要に応じて弁護士などの専門家によるアドバイスなどを得ながら、子どものために最善を尽くして頂きたいと思います。 

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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