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自白するとどうなる?強引な取調べに対する対処法【弁護士監修】

自白

「自白」という言葉はニュースなどで聞いたことがあるかと思います。
しかし、その意味を具体的にご存知の方は少ないのではないでしょうか?

また、「自白」という言葉を聞くとき、それに伴って違法・不当な取調べが問題視されていることは少なくありません。

そこで、今回の記事では

  • 自白とは何なのか(自白の定義)
  • 自白をしたらどうなるのか(自白の効果)

を解説した上で

  • 強引な取調べなど、違法・不当な取調べへの対処法
  • 調べの録音、録画の制度

について解説いたします。ご参考になれば幸いです。

取調べの違いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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1、自白とは何か

自白とは何か

(1)自白とは

「自白」とは、自己の犯罪事実の全部又は主要部分を直接認める、被告人自身の供述をいいます。

「被告人」とは起訴された後の嫌疑をかけられた人のことを指しますが、実務上は、起訴される前の「被疑者」の「自白」も同じ意味となります。

たとえば、AさんがVさんの左頬を右拳で殴った暴行事件を起こしたとします。
この場合、Aさんの「Vさんの左頬を殴った」という供述は、暴行罪の犯罪事実の全部又は主要部分を認める供述ですから当該供述は「自白」に当たります。

(2)不利益事実の承認と「自白」

不利益事実の承認とは、「自白」よりももっと広い概念で、被告人の供述のうち被告人にとって不利益な内容のものすべてをいいます。
したがって、「自白」には当たらないものの、不利益事実の承認には当たる場合があります。

たとえば、殺人事件で、Aさんの「殺害時に殺害現場にいたことは認めるが、殺してはいない」という供述は、「自白」ではありませんが不利益事実の承認に当たります。

その他、窃盗事件で、「盗品は持っているが、第三者からもらっただけで盗んだわけではない」という供述も不利益事実の承認に当たります。

2、自白の効果

自白の効果

民事事件と異なり、刑事事件では自白の効果について定めた規定はありません。

しかし、自白は証拠の一部ですから、自白には以下の効果があると考えられます。

(1)直接証拠

自白は犯罪の直接証拠です。
直接証拠とは、ある事実を直接証明するのに役立つ証拠のことをいいます。

たとえば、先ほど例として挙げた殺人事件で、Aさんの「殺害時に殺人現場にいた」という供述は、Aさんが「殺害時に殺人現場にいた」ことを直接証明する直接証拠となります。

ちなみに、直接証拠に対して間接証拠というものがあります。
間接証拠とは、ある事実の存否を間接的に推認させる事実を証明するのに役立つ証拠のことをいいます。
例えば、殺人現場にAさんの血痕が落ちていたという証拠(血痕,鑑定書等)は、Aさんが「殺害時に殺人現場にいた」ことを推認させるのに役立つ証拠となります。

(2)直接証拠は有力な証拠となる

自白は被告人本人が述べるものであるために、犯罪事実への推認力が非常に大きい(証拠としての価値が高い)とされています。
また、人は真実に反してまで自分に不利益なことは言わないという経験則から、その信用性も高いものとされています。

自白は、古くから「証拠の王様」と呼ばれていたほどです。
したがって、仮に裁判で証拠として採用されてしまうと、その証拠力が有力なため、「有罪」とされるおそれが極めて高くなります。

(3)ただし「補強法則」がある

ただし、憲法38条2項は「強制、拷問もしくは脅迫による自白又は不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意になされたものではない疑いのある自白」は証拠とすることができないと規定しています。

そして、刑事訴訟法319条1項も、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く続く抑留又は拘禁された後の自白その他任意になされたものでない疑いのある自白」は証拠とすることができないと規定しています。

これは、自白法則といい、証拠としての価値が高く信用性も高いとされる自白を重視し、それに偏重する捜査機関の傾向が自白を強要する危険を生み出しうることから、強要された疑いのある自白は証拠として使えないとすることで、当該危険性に対処したものです。

また、刑事訴訟法319条2項には、「自白が被告人にとって不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされず、有罪とするには自白とは別の証拠を必要とする」というルールが定められています。

これを補強法則といい、有罪とするためには、自白以外の有罪を支える証拠(補強証拠)が必要だという法則です。
なぜ被告人の自白だけで有罪とすることができないのか、なぜ自白に補強証拠が必要とされるのかは、自白を過度に頼ること(自白偏重)による誤判(裁判所が誤った判断をすること)を防止するためです。

自白は犯罪事実への推認力が高く、信用性も高いと考えられているため、自白があると、裁判所としても自白を過信しがちになります。
こうなると自白がもし虚偽の物であったとしても、それを看過し安易に有罪の認定に用いてしまう危険があります。
そのため、自白しか被告人にとっての不利益な証拠がない場合では、補強証拠をもって、慎重な判断が求められることになります。

(4)自白によって量刑は軽くなる?

先ほど申し上げたように、自白とは、犯罪事実の全部又は主要部分を肯定する供述のことで、あくまで事実認定の際の証拠となるものです。
ですから、どのくらいの刑の重さにするかといった「量刑」を決める場面とは直接関係はありません。

しかし、有罪であることが明らかな場合に、当初から自白している場合と当初否認していて最後の最後になって自白した場合とでは「反省の態度」という点でどちらの印象が良いでしょうか?

それは当然、前者の方です。

このように、被告人の「反省の態度」を計る材料として自白の内容、自白した経緯などは考慮され、それが調整要素として量刑に影響することはあります。

(5)民事事件と自白

民事事件における「自白」とは、相手の主張する事実を争わないという意味であり、刑事事件におけるそれとは定義や効果が異なります。

民事裁判において相手方が自白をした場合、当該事実の立証責任を負う当事者は立証責任を免れ、裁判所は自白した事実を判断の基礎としなければならず、証拠調べが不要となるという効果が発生します(民事訴訟法179条)。

3、強引な取調べに対する対処法

強引な取調べに対する対処法

近年は科学技術が発達し、自白に頼らない捜査手法も増えてきています。
そのため捜査機関は自白などの供述(主観証拠)よりも、鑑定に資する微物や防犯ビデオ映像などの客観証拠の収集に力を入れていることは事実です。

しかしながら、現在でも自白は証拠の王様であることは変わりありません。
残念ながら、現在でも、自白を得ようと取調官による強引な取調べが行われていることも事実のようです。

そこで、この項では、強引な取調べに対する対処法についてご紹介したいと思います。

(1)ご自身できる対処法

①予め取調べのルール(権利)を把握しておく

取調べを受けるにあたっては、予め取調べのルール(権利)を把握しておき、これをきちんと行使すること大切です。

取調べを受けるにあたっては,以下の権利が認められています。

  • 黙秘権

取調官は、取調べを始めるにあたって、被疑者に対し、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げる必要があります。
あなたは、取調中は終始沈黙(黙秘)することができます。
取調官は、あなたが黙秘したからといって不利に扱うことはできないことになっています。

  • 増減変更申立権

供述調書が作成されると、取調官から内容に間違いがないかどうか問われます。
ここで自分の意図したこと(話したこと)と異なる内容が書かれてあった場合は、どんな些細なことでも構いませんので、遠慮なく、内容の変更、あるいは内容の増減を申し立ててください。

  • 署名押印拒否権

供述調書の内容の確認が終わると、最後に、供述調書への署名・押印を求められます。
ここで署名・押印してしまうと、その供述調書に書かれた内容=あなたが話した内容として裁判で証拠として扱われることになります。
取調官は、あなたに署名・押印させようと説得を試みますが、署名・押印の拒否は、あくまであなたの判断で行うことができます。
署名押印拒否権があるので、署名・押印を拒否しても構わないのです。

  • 出頭拒否権、退去権

在宅事件の場合、被疑者は、捜査機関からの出頭要請を拒否することができます。
また、出頭した場合でも、出頭後はいつでも取調べ室から退去することができます。

②検察官に訴える

検察官は、警察官などの司法警察職員に対して指示・指揮する権限を有しています。
したがって、仮に、警察官の取調べに違法な点があれば、その違法な点の是正や、取調官自身の交代を指示することができます。

また、検察官は、あなたにとって不利な証拠、有利な証拠を問わず、すべての証拠を考慮して刑事処分を決めます。
ですから、検察官には、警察官以上にあなたからの言い分をきちんと聴く役割も求められています。

警察官には言いづらかった話は、遠慮なく検察官にしてください。
警察官にした話と同じ内容を検察官にもしなければならないという決まりはありません。

③ボイスレコーダーに録音する(在宅事件の場合)

これは、身柄を拘束されていない在宅事件の場合に限っての対処法です。
しかし、在宅事件だからといって、警察官の取調べの手が緩められるかというとそうではありません。

むしろ、在宅事件だからこそ、強引な取調べ、長時間にわたる取調べ、数日、数か月にわたる取調べが続く可能性もあります。
そうしたときに、取調べの適法性を検証できるよう、ボイスレコーダーを持参し、取調官とのやりとりを録音するのも一つの方法です。

なお、取り調べを録音していることが明らかになると、警察官は録音をやめるよう求めてくることが多いといえます。

④取調べ後にメモする

強引な取調べを受けたなと思ったら、取調べを受けた後に取調べのメモを作成すると、あとで取調べを検証する際に役に立ちます。

身柄を拘束されている方であれば、弁護士から「被疑者ノート」というものを差し出されることがあります。書き方にしたがって記載しましょう。

身柄を拘束されていない方は、「取調べ時期・場所」、「取調官の氏名」、「取調べ時間」、「聴取(聴かれた)内容とそれに対するあなたの答え」、「取調べにおいて不快に感じた、疑問に思ったこと」などを中心にメモしておくとよいでしょう。

在宅事件の場合には、当該メモについて確定日付を取得しておくのも選択肢です。

(2)弁護士にしてもらえること

以上、(1)ではご自身でできる対処法についてご紹介しましたが、やはりそれにも限界があると思います。

ご自身で限界を感じたら弁護士に対応を依頼しましょう。弁護士には以下のことをしてもらえます。

①取調べに対するアドバイスをもらえる

上記でご紹介した権利の内容、行使の仕方についてはもちろんのこと、取調べで聴かれる内容を予測してそれに対する回答の仕方などをアドバイスしてもらえます。

②捜査機関に同行してもらえる

一人で取調べを受けるのが不安だという方は、弁護士に捜査機関まで同行してもらえることもあります。

通常、弁護士が取調室の中まで入ることはできません(立会権は認められていません)が、取調室の前で待機するなどして、適宜アドバイスを受けることは可能でしょう。

③申し入れ・抗議をしてもらえる

違法・不当な取調べに対しては、取調べを是正するよう申し入れを行ったり、抗議することができます。

各都道府県本部には違法・不当な取調べが行われていないかなどをチェックする「監察室」という部署が設けられています。

警察の取調べについては監察室か検察官に対し申し入れをしてもらえます。

検察官の取調べに対しては、その上司(次席検事,副部長・部長クラス)か上級庁に申し入れをしてもらえます。

④供述の信用性,任意性を争ってもらえる

自白をしたといっても、その自白がどこまで信用できるのかはまた別の話です。
裁判では自白の矛盾点をついて、自白が信用できないことを主張してくれます。
また、取調べが長時間続いた、強引な取調べが行われたなどと言って、自白の任意性を争ってくれます。

4、取調べの可視化(取調べの録音・録画)

取調べの可視化(取調べの録音・録画)

取調べの可視化とは、弁護人の取調べへの立会権を認めることや、取調べ状況をすべて録音・録画することをいいます。

実務では、弁護人の取調べへの立会権は認められていません。
そのため、取調べでの自白が本当に被疑者が自発的になされたものなのか、調べようがありませんでした。
当局による証拠の改ざん、また強引な取調べがあったとしても、密室性ゆえ解明するのが困難だったのです。

そこで、2016年に刑事訴訟法が改正され、取調べの可視化について規定が盛り込まれました。
改正法では、裁判員裁判対象事件、検察官独自捜査事件について、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるとき、又は弁解録取を行うときは、原則として、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならないとして、録音・録画を明文で義務化しています(改正刑事訴訟法301条の2第4項)。

改正法は、2019年6月1日から施行されています。

(1)取調べの録音・録画のメリット

密室で行われていた取調べが第三者によって検証できるようにオープンになるのですから、取調官による違法・不当な取調べに対する抑止が期待できます。
これに伴い、上記でご紹介した各種権利(黙秘権、増減変更申立権、署名・押印拒否権)も適切に行使できることが期待できます。

また、被疑者・被告人が任意に供述(話)をしたかなどを事後的に検証しやすくなります。

(2)録音・録画の対象となる事件とは

今回の改正では全ての事件において可視化されることには至りませんでした。
一定の事件が録音・録画の対象となります。

以下、警察における取調べと検察における取調べに分けて、その対象となる事件を記載しました。

①警察における録音・録画対象事件(いずれも逮捕若しくは勾留されている被疑者を取調べるとき又は被疑者に対し弁解の機会を与えるとき)

  • 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
  • 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件

に加え、

  • 知的障害、発達障害、精神障害等の被疑者にかかる事件

も試行対象となっています。

②検察における録音・録画対象事件

  • 裁判員裁判対象事件
  • 独自捜査事件
  • 知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件
  • 精神の障害等により責任能力の減退・喪失が疑われる被疑者に係る事件

に加え、

  • 公判請求が見込まれる身柄事件であって、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの、証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取調べ増強をめぐって争いが生じる可能性があるものなど、被疑者の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
  • 公判請求が見込まれる身柄事件であって、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの、証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取調べ増強をめぐって争いが生じる可能性があるものなど、被疑者の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件

も試行対象となっています。

5、自白、その他刑事事件においてお困りの際は弁護士へ相談を

自白、その他刑事事件においてお困りの際は弁護士へ相談を

取調べの可視化も始まり、強引な取調べの数も減ってくることが期待されます。

しかし、刑事事件では取調べだけが大変なのではありません。
勾留中の精神的なケアも必要ですし、何より被疑者ご本人のご事情を当局に対抗するには、豊富な法的知識と一貫した論理性をもって行わなければなりません。
そのため、刑事事件で被疑者の人権を守るには、弁護士への依頼は必須です。

弁護士は、あなたの味方です。
不利、不当な権利侵害がないよう、あなたを弁護します。
刑事事件でお困りの際は、どうぞ弁護士にご相談ください。

まとめ

以上、自白について解説いたしました。
自白は、自白する本人の供述ですから、その内容が真実であるのか否かは本人でしかわかりません。
決して、他人から強要されたり、押し付けられたりして話すものでもありません。
自白をするかどうか、どこまで自白するか、どの時点で自白するのかなど、自白に関することは最終的にはご自身で決め、判断することになります。

その判断をするための助言は弁護士に求めてください。
これらの点を踏まえた上で、この記事が、自白に関してお悩みの方のための一助となれば幸いです。

 

刑事事件と民事事件の違いについて詳しくはこちらをご覧ください。

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