法的には不倫は刑事犯罪ではありません。
それでも不倫の被害者として、不貞行為を働いた夫や不倫相手に何らかの制裁を加えたいと思うことは理解できます。
この記事では、不倫が犯罪ではない理由や、不倫に対する制裁方法などについて詳しく説明します。
1、不倫は犯罪ではない
不倫は残念ながら犯罪ではありません。
ワイドショーなどでも大きく取り上げられる芸能人の不倫。しかし、逮捕されることはないのです。
こんなに人の気持ちを辛くさせる不倫。犯罪でないなんて・・・。
「いじめ」や「ハラスメント」にも同様のものがあると思いませんか?
いじめやハラスメントも、人も気持ちをえぐる、最低な行為です。
人間は信頼を元に関係を築く生き物ですので、他人からの裏切りや冷たさを感じると自殺さえ考える人も少なくありません。
しかし現在の法律では、このように「気持ち」をえぐる行為は犯罪行為とされておらず、その制裁は、社会的制裁(ワイドショーなどで問題に取り上げ、最悪な人などという印象を与えること)と、そして経済的制裁(損害賠償。ただし後述しますが損害賠償の法的性質は制裁ではありません)の2つでしか与えることはできません。
なお、「姦通罪」とは、旧刑法(明治40年法律第45号)に規定されていた実際にあった犯罪です。
ただ、この姦通罪は、主に「妻の不倫」においての罪であり、夫の不倫においては「夫のある妻」と性交渉をした場合、つまりダブル不倫の場合のみ成立する犯罪でした。要するに、独身の女性と不倫をする夫には当てはまらない、ということです。
いずれにしても、1947年の刑法改正で廃止された犯罪で、現代では不倫は犯罪ではありません。
2、不倫をなんで犯罪にしたいんだろう?
もし、なぜ不倫が犯罪として規定されていないのかいまいち納得できない場合、そもそもなんで「犯罪」にしたいんだろう?ということを考えてみましょう。
犯罪に該当し逮捕され、そして有罪が確定されれば、刑罰が待っています。
刑罰は最たるものは死刑ですが、殺人をしても死刑が相当か議論になりますので、不倫で死刑は望めそうにありませんね。
その次に辛い刑罰は「懲役」で、懲役とは一定期間社会生活から隔離されることです。その隔離生活で更生を図るのです。
懲役刑に処して!と思うかもしれませんが、それはなぜでしょう?目の前からいなくなってほしいからでしょうか?
もしそうであれば、あなたは自由です。
法によらずとも、自分から距離を取ることにより、不倫旦那を目の前から消すことができます。
懲役は、辛い肉体労働をさせられたり、ムチで虐待を受けたり、そのような辛い制裁ではありません。
一定期間社会生活から離れたり、前科がついたりすることで、懲役が明けたときに社会生活に不便さを感じることはあるかもしれませんが、それは随分先のこと。
逮捕をしてもらっても、今、辛い制裁を与えるということにはなりません。
それでも新しい犯罪として追加した方が良いでしょうか?
3、不倫は犯罪じゃないのになぜ損害賠償請求ができるの?
犯罪ではないにもかかわらず、どうして損害賠償請求の対象なのでしょうか。
理由を見ていきましょう。
(1)不倫は民法上の損害賠償義務発生の原因となる「不法行為」に当たるから
不倫は刑法上の犯罪ではありませんが、民法上の不法行為に当たります。
不法行為とは、他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為を指しています。
不倫の場合には、夫婦生活の平穏という利益を著しく侵害する行為です。そのため、不法行為に当たります。
民法第709条には、不法行為による損害賠償を請求できるとしています。そのため、不倫は犯罪ではありませんが、損害賠償請求の対象になるわけです。
判例では、不倫によって侵害される権利や義務とは、「他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害」「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害」としています。
難しい言葉ですが、平和な家庭を維持する権利を侵害していると考えるといいでしょう。
(2)「不倫」といっても何をしたら損害賠償義務が発生するの?
不倫の事実とは、肉体関係の有無で決まります。
配偶者が異性とデートしただけでは不倫にはなりませんから注意が必要です。
肉体関係がない限りは不貞行為での損害賠償の対象にはなりません。
また、注意が必要なことは不倫の慰謝料請求には時効があるということ。
不倫の事実を知ってから3年間で時効の成立です。
例え、不倫の事実を知らなかったとしても20年経過すれば時効が成立してしまいます。
不倫の事実を知って離婚を躊躇っているうちに時効が成立するケースもありますからご注意ください。
①1回きりの身体の関係の場合は?
例え、肉体関係が1回だけだったとしても精神的な苦痛が伴えば慰謝料請求の対象です。
ただし、1回きりで配偶者が反省している場合には、慰謝料の高額な請求はできない可能性が高いでしょう。
また、裁判に発展した場合には、配偶者が真摯に反省をし、不倫が1回きりに止まっている場合には、夫婦関係の回復が可能だと判断される可能性もあります。その場合には、損害賠償は請求できないかもしれません。
②風俗に行った場合は?
風俗に行ったとして肉体関係を伴わない場合は不貞行為には当たりません。
キャバクラでは不貞行為には当たらないということです。
もちろんキャバ嬢とお店以外の場所で会って肉体関係をもったのであれば不貞行為であり、それは損害賠償の対象です。
③浮気相手が同性だった場合は?
ドラマ「おっさんずラブ」でもあったように、浮気相手が男、という場合もあるでしょう。
しかし、肉体関係とは基本的に男女のみを指すため、不貞行為にはあたりません。とはいえ、不貞類似行為(不貞ではないがそれに類するもの)として慰謝料請求は可能な場合もあるでしょう。
ただ、その賠償金額の算定などにおいて、実務的には厳しいものがあるかもしれません。
ケースバイケースですので弁護士に相談しましょう。
④すでに結婚生活が破綻している場合は?
慰謝料は、不倫を原因とする精神的な苦痛に対してです。
すでに結婚生活が破綻している場合に、相手の不倫で精神的に苦痛を感じるか、が争点となるでしょう。
結婚生活の破綻がそもそも相手の不倫を原因としていた、というような場合もあり得ます。
不倫があなたの精神にもたらした損害は賠償請求できますので、やはりケースバイケースのため弁護士に相談し手立てを検討してみるとよいでしょう。
4、不倫は犯罪ではないけれど相手を制裁したい!方法は2つ
不倫をした相手を許すことができずに何とか制裁を加えたいと考えている場合には、どのような手立てがあるのでしょうか。
人によっては婚姻生活を続けた上で無視するなどの制裁を考える人もいることでしょう。しかし、それではあなたの幸せを犠牲にすることになってしまいます。
ここでは、法的にどのようなことができるのか、みていきましょう。
(1)経済的制裁
民法709条と710条によって権利や利益、名誉を侵害した場合には、損害を賠償する責任があると定められています。
つまりは不倫によって権利や利益、名誉を侵害されたなら慰謝料を請求することができるのです。
婚姻生活を続けるにしても、離婚を選択したとしても、損害賠償を請求することはできます。
ただし婚姻生活を継続するなら、このように金銭の請求をしても夫婦の財布は同一の可能性もあります。そのため、あなたの利益にならない恐れがあるでしょう。
熟慮した上で損害賠償請求は検討する必要があります。
もっとも、そもそも日本の法律上は、損害賠償の趣旨は「制裁」ではありません。
損害を公平に分担し、損害を補填するという趣旨です。
そのため、たとえば金額的なことを考えても法外な額になるということはありません。
本来的な意味での「制裁」ではありませんのでご注意ください。
(2)離婚
男性にとって痛手になるのは離婚という制裁です。
社会的な立場を損なう恐れがあり、仕事上の立場も悪くなる可能性があります。
例えそうなっても離婚してしまえば、あなたには関係のないこと。
あなたが味わった苦痛を考えた場合には、同情する余地もありません。
目の前から消えてほしいのならば、自ら動いてみましょう。
人間は自由なのです。
コミュニティに縛られ、さほど自由の実感はないかもしれませんが、転職、引越し、海外移住。そして離婚。
あなたの意思次第です。
あなたを傷つけるような人間は無視して次の人間関係に移っていくことも、今の苦しみに打ち勝つ1つの方法ではないでしょうか。
ただし、一度愛して結婚した男性ですから、もしも躊躇いがあるならよく考えてみてください。
Q&A
Q1.不倫は犯罪は?
不倫は残念ながら犯罪ではありません。
ワイドショーなどでも大きく取り上げられる芸能人の不倫。しかし、逮捕されることはないのです。
Q2.不倫は犯罪じゃないのになぜ損害賠償請求ができるの?
不倫は刑法上の犯罪ではありませんが、民法上の不法行為に当たります。
不法行為とは、他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為を指しています。
不倫の場合には、夫婦生活の平穏という利益を著しく侵害する行為です。そのため、不法行為に当たります。
民法第709条には、不法行為による損害賠償を請求できるとしています。そのため、不倫は犯罪ではありませんが、損害賠償請求の対象になるわけです。
Q3.不倫は犯罪ではないけれど相手を制裁できる?
民法709条と710条によって権利や利益、名誉を侵害した場合には、損害を賠償する責任があると定められています。
つまりは不倫によって権利や利益、名誉を侵害されたなら慰謝料を請求することができるのです。
婚姻生活を続けるにしても、離婚を選択したとしても、損害賠償を請求することはできます。
ただし婚姻生活を継続するなら、このように金銭の請求をしても夫婦の財布は同一の可能性もあります。そのため、あなたの利益にならない恐れがあるでしょう。
熟慮した上で損害賠償請求は検討する必要があります。
まとめ
不倫は犯罪ではありませんが、不法行為です。不法行為では損害賠償を請求できます。
不倫はバッシングされやすく、不倫が原因で離婚してしまえば、配偶者には大きな痛手を与えることができるかもしれません。
しかし、大切なことはあなたの幸せです。
相手に制裁を加えることよりもあなたの今後の幸せに目を向けてみませんか?
不倫が許せないなら信頼できる弁護士に相談をして、あなたの心が晴れるような手段で離婚をしましょう。
もしも離婚を望まないなら、夫婦関係の修復を弁護士に依頼することも可能です。勇気を出して幸せに向けて一歩を踏み出してみましょう。