嫁姑問題の現状を変えることのできる解決方法が見つからず、離婚したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
原因は姑のはずなのに、なぜ夫との「離婚」になるのか。
それは、夫が姑を擁護するような姿勢を見せることで、妻自身の存在を否定されるような気持ちになるからと言えるでしょう。
そこで今回は、
- 嫁姑問題で離婚できるケース
- 嫁姑問題で離婚したときの姑への慰謝料請求
- 嫁姑問題で離婚したいときに取るべき行動
等について、ベリーベスト法律事務所の弁護士監修のもとご説明したいと思います。
1、離婚にまで発展しうる深刻な嫁姑問題の実態
昔からテレビドラマなどの中でもよく登場する嫁姑の争いですが、実際にはどれくらいの家庭が、どのような嫁姑問題に頭を悩ませているのでしょうか。
まずはその実態から探っていきましょう。
(1)嫁姑問題に悩む家庭は多い
20~79歳の既婚女性を対象に行われたある調査によると、現在の結婚生活に嫁姑問題が「ある」と答えた人は全体の約13%。
これを姑と同居している人に限るとその数字は25.4%にまで跳ね上がり、およそ4人に1人は何かしらの嫁姑問題を抱えていることが分かります。
しかも、同じ調査で嫁姑問題に対する夫の立ち回り方について尋ねた項目では、「問題に気付いてはいるが、対処してくれなかった」というケースが全体の7割近くにのぼり、当事者である嫁姑の不満が溜まりやすい状況にあることも分かりました。
(2)どんなことで悩んでいるのか 〜アンケート調査から
続いて気になるのが「みんなは一体どんな嫁姑問題に悩んでいるの?」という疑問ですが、先ほどの調査で寄せられた実際の声をいくつかピックアップしてみました。
①姑の過干渉
- 「私のやることなすこと何でも文句をつける」(66歳)
- 「毎日の食事やたばこなどについて、口出ししてくる」(29歳)
- 「子どもの教育方針に頓珍漢な口出しをされる」(32歳)
嫁姑問題の原因として、最も多く挙げられたのがズバリ「姑の過干渉」。
嫁ももう大人。自分の考えに従って物事を決めています。
目から鱗のアドバイスでもないわりに、圧をかけるような口出し。
まるで「自分の考えの方が正しい」と言わんばかりの姑の干渉には、本来ならば姑を立てたいと思えば思うほど嫁の気持ちをかき乱していきます。
②性格・価値観の不一致
- 「味の好みや生活スタイル、衛生観念などが合わない」(39歳)
- 「いつも否定される」(35歳)
嫁と姑で生活習慣に違いがあり、お互いにストレスを感じてしまうことから摩擦が生まれることもよくあるパターンです。
夫の実家で同居している場合は特に姑側のやり方に合わせざるを得ず、自分の思い通りにできないイライラが募るケースも少なくないでしょう。
③その他
- 「私に対するイヤミを、わざと私に聞こえるように、まだ言葉の分からない息子に言われた」(27歳)
- 「食事に言いがかりをつけられた」(35歳)
- 「仕送りを強要された」(58歳)
嫁姑の関係が悪化していく中で、その鬱憤を晴らすための行動が相手への嫌がらせにまで発展してしまうこともあります。
また、仕送りなど金銭のやり取りで何らかのトラブルになる例もゼロではありません。
(3)距離を置くのが良い対処法
このような嫁姑問題に直面したとき、世間の妻たちはどのような対策を取っているのでしょうか。
同じ調査で比較的多く聞かれたのが、
- 「別居した」(31歳)
- 「最低限の付き合いをしている」(38歳)
- 「実家に行かない」(41歳)
という回答で、同居の場合もそうでない場合も、なるべく姑と顔を合わせなくて良いように距離を置くことで対処しているケースが多いようです。
50代以上になると、
- 「姑が亡くなった」(51歳)
- 「姑が老人ホームに入居した」(61歳)
という声も多くなり、年月が経ていくにつれて、自然と嫁姑問題が収束しています。
2、嫁姑問題で離婚できるのか
いよいよ今回の本題である、「嫁姑問題で離婚することは可能なのか」について、掘り下げて見ていきましょう。
(1)3,355人の女性が親族問題を理由に、裁判所へ離婚を申し立てている
「嫁姑問題に悩んでいても、実際にそれで離婚を切り出す人は少ないのかもしれない…」と迷われている方も多いかと思いますが、平成28年の司法統計によると、裁判所へ離婚を申し立てた女性のうち、全体の6.9%にあたる3,355人はその理由に「親族関係」を挙げています。
そこから本当に離婚が成立したかどうかはまた別の話になるものの、夫婦間の話し合いだけでなく裁判で嫁姑問題を争うケースも現実にこれだけあるのです。
(2)嫁姑問題で離婚ができる場合
そもそも離婚には協議離婚・調停離婚・裁判離婚という3つのステップがあり、離婚を考えたときにまず取り組むのが協議離婚=夫婦の話し合いによる離婚です。
協議離婚の場合、夫婦で合意さえできれば理由に関わらず離婚することができるため、嫁姑問題を理由にした離婚も当然可能になります。
ただし、みなさんが離婚を切り出しても夫が同意してくれない、話をまともに聞いてくれないなどのケースでは、協議離婚は一旦諦め調停・裁判といった次のステップへ進んでいくことになるでしょう。
調停も裁判所での話し合いの手続きなので、当事者が離婚に同意できればその理由は問いませんが、裁判の場合、では民法で定められている次の離婚事由に該当しなければ離婚を認めてもらうことができません。
- 不貞(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)
- 配偶者が3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
原則として嫁姑問題はこれらの離婚事由には該当しないため、「姑と仲が悪い」という理由だけでは離婚を成立させることは難しいのです。
一方、たとえば「夫が嫁姑の不仲を知りながら仲裁する努力すらしなかった」「嫁姑問題がきっかけで夫婦が別居に至ってしまった」など、状況次第では離婚が認められる可能性もあります。
嫁姑問題で裁判離婚に臨む場合は、その嫁姑問題が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを証明できるかどうかがひとつのポイントになることを覚えておきましょう。
(3)嫁姑問題による離婚の必要性を訴える方法
嫁姑問題を「その他婚姻を継続し難い重大な事由」であると主張するためには、次のような証拠が必要です。
- 姑に悪口を言われた際の録音データや詳細なメモ
- 嫁姑問題に関する夫の対応の記録
- 姑から暴力を振るわれた・うつなど精神面に不調が出た場合、医師の診断書
これらに加えて、現在夫婦が別居状態にある場合、別居期間が長ければ長いほど婚姻を継続することが難しいと判断される=離婚が成立する可能性も高まります。
(4)姑の介護に嫌気がさした場合には
嫁姑問題のよくある例として、姑の介護生活に嫌気がさしてしまうというケースもあります。
介護で自分を犠牲にすることの多い日々の中で、姑本人からも夫からも「嫁なのだから介護をして当たり前」というような態度を取られ続ければ、「やってられない」「こんな生活はもうたくさんだ」という気持ちになるのも当然です。
しかし、いざ裁判所に訴える段階に入ると、やはりこれだけでは法律で認められた離婚事由には該当しません。
姑の介護をすることによって何か他に婚姻を継続し難い事由が発生した、という事実を証明する必要がありますので、先ほどご紹介したような証拠を揃えた上で裁判に臨みましょう。
(5)期間が短い場合も離婚が認められない可能性も
夫が仲裁の努力を一切しなかったなど、婚姻を継続し難い事由に該当する可能性のあるケースでも、嫁姑問題が発生してからまだ1年など期間が短い場合は、「まだ関係修復の余地がある」と判断され、離婚が認められないことがあります。
辛い生活を送る当事者としては1年間でも十分すぎるほど長い時間ですが、裁判所が離婚を認める条件としては不十分とみなされる可能性も高いため、気を付けましょう。
3、慰謝料は請求できるのか?
長年姑から嫌がらせを受けてきた場合、離婚の際にその精神的苦痛の代償として慰謝料を請求したいとお考えの方も多いかもしれません。
ここからは、姑への慰謝料請求がそもそも可能なのかどうかも含めて、押さえておきたいポイントをご紹介していきます。
まず、夫との離婚訴訟とは別になるものの、姑に対して個別に慰謝料請求訴訟を起こすこと自体は可能です。
姑はいわゆるモラハラ、パワハラの状態にあり、法律的には民法上の「不法行為」に該当する可能性があるからです。
しかし、離婚はあくまでも夫婦間の問題であり、みなさんの中では「姑のせいで離婚することになってしまった」という思いがあっても、現実的に裁判所がそれを認めてくれることは難しいと考えたほうが良いでしょう。
それでも、たとえば夫婦2人は結婚生活を維持するためにお互い努力していたにも関わらず、姑が度を超えた嫌がらせや暴力によってその関係を破綻させたと証明できるような場合には、慰謝料が認められる可能性もあります。
実際、長年に渡って嫁をいじめ、最終的に家から追い出した姑と夫に対して慰謝料200万円が認められた判例も過去にはあり、嫌がらせの期間や内容、それによって受けた嫁側の精神的苦痛の度合いによって、慰謝料を勝ち取ることができるケースもゼロではありません。
4、嫁姑問題で離婚したいと思ったとき
嫁姑問題で離婚を考えたときに、取るべき行動をまとめてご紹介していきます。
夫に離婚を切り出す前に、一旦気持ちを落ち着かせてこちらをチェックしてみてください。
(1)どんなトラブルがあったか書き留めておく
夫と話し合うにしても、ゆくゆくは調停や裁判に進むにしても、姑との間にどんなトラブルがあり、それによってみなさんがどんな苦痛を受けたのかを記録しておくことは重要なポイントです。
これが離婚の正当性を訴えるためには欠かせない材料になりますので、なるべく詳細に事実を書き留めておきましょう。
姑から怒鳴られたり嫌味を言われたりするのが日常茶飯事という場合には、その音声を録音して残しておくのも効果的です。
(2)夫と話し合い、その結果をまとめる
上で集めたトラブルの証拠は、まずは夫に確認してもらいましょう。
それでも姑との関係を断てない、さらに自分も何ら行動することもできない、というのであれば、夫婦でいる意味を考え直したいと思うのは無理ありません。
このように、夫に相談した際の夫の対応も記録に残しましょう。
「俺は直接的には関係ないんだから、本人同士でうまくやってよ」というように、いくら話しても聞く耳を持ってくれない・嫁姑の仲裁に入る気がまったくないケースでは、それを証拠として離婚を有利に進めていくこともできます。
(3)弁護士に相談する
「こんな場合も婚姻を継続し難い事由に認めてもらえるのか」「慰謝料を取れるとしたらいくらくらい?」など、個別の状況に沿った可能性を知りたいときには、弁護士に相談するのが1番です。
そもそも離婚事由に相当する状況でなければ、裁判に進んだとしてもなかなか厳しい戦いを強いられることになってしまいます。
そうならないためにも、あらかじめ弁護士に相談を行い、きちんと戦略を練って対応することで、みなさんにとって最も納得のいく結果を目指していきましょう。
まとめ
嫁姑問題は、原則としてそれだけでは裁判所が離婚を認めてくれる理由にはなりません。
しかし、夫が問題解消のための努力を怠っている、嫁姑問題をきっかけに夫婦が別居に至っているなど、状況次第では離婚を成立させることも可能です。
また、夫婦間の話し合いによる協議離婚なら、どんな理由でも離婚できるチャンスはあります。
話し合いの前に弁護士に相談することでスムーズな離婚を目指すためのコツを押さえることもできますので、嫁姑問題で離婚をお考えの際にはぜひ1度ご相談ください。