養育費の相場が気になる方は多いと思いますが、子ども2人の場合の相場はいくらでしょうか?
子どもが2人いると生活費や教育費が2人分かかるので、母親一人で育てていくのは経済的に相当大変です。父親である元配偶者から適切な養育費を受け取ることがとても大切です。
とはいえ、子どもが2人いれば子ども1人の場合の倍の金額がもらえるとは限りません。
今回は、
- 子ども2人の養育費の相場
- 適正な養育費の計算方法
- 相場を超える養育費をもらう方法
などについて、弁護士が分かりやすく解説していきます。
すぐに養育費の相場を確認したい方は、こちらの養育費計算ツールをお試しください。
養育費計算ツールはこちら
目次
1、子ども2人の養育費の相場は約5万円?
子どもがいる夫婦が離婚した場合、養育費を必ず受け取れると思っている人がいますが、実情は必ずしもそうではありません。
いったん養育費を取り決めても、元夫の経済状況が悪化したことにより払いたくても養育費を払えなくなったり、元夫と音信不通になってそもそも養育費を受け取れる状況ではなくなったりすることもあります。そもそも、養育費の取り決めをしていないケースも少なくありません。
「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、離婚した夫から養育費を受け取っている母子世帯の割合は24.3%に過ぎません(56ページ)。そして、56.0%の母親は、そもそも「養育費を受けたことがない」というのが実情です。
また、同調査によると、子ども2人の母子世帯が受け取っている養育費の平均は48,090円となっていることから(61ページ)、子ども2人の養育費の相場は一応、約5万円といえるかもしれません。
しかしながら、子どもが2人いる世帯で日常の生活費だけでなく教育費もかかることを考えると、養育費5万円では足りないというのが現実でしょう。
以下では、養育費の適正な金額を計算する方法をご紹介します。
2、養育費を適正に計算する方法
養育費はどのように計算するのでしょうか。ここでは、そもそも養育費とは何なのかということを押さえた上で、養育費を適正に計算する方法について確認していきましょう。
(1)養育費とは
そもそも養育費とは、子どもが成人し社会人として自立した生活を行えるようになるまでの間に子育てにかかる費用のことを言います。子どもは一人では生きていくことができませんから、たとえ離婚したとしても親が子の生活にかかる費用を養育費という形で負担するのは自然なことです。
民法上、父母が離婚するときには、子の利益を最も優先的に考慮して養育費の分担について取り決めることとされています(同法第766条1項、2項)。
養育費の内訳としては、子供の生活費、教育費、医療費、小遣い、交通費等があります。
(2)養育費を計算する際に考慮すべきこと
養育費は子どもの人数だけで機械的に決まるわけではなく、様々な事情を考慮して計算すべきものです。
もっとも、子どもの人数・年齢、両親の年収によっておおよその金額が決まってくるため、通常はこれらの要素が重視されます。
(3)一般的には養育費算定表を使う
一般的に養育費を計算する際には、裁判所の養育費算定表を用います。
養育費算定表は子どもの人数・年齢に応じた早見表となっており、該当する表を使い、支払義務者と親権者の年収をもとに金額を計算します。
ただし、養育費算定表の金額はあくまでも裁判所が標準的な目安として打ち出したものですので、絶対にその金額にしなければならないというわけではありません。その他の事情を考慮し算定表の金額が増減する可能性があることは念頭に置いておきましょう。
3、【年収別】子供2人の養育費の相場
それでは、養育費算定表をもとに子ども2人のケースで養育費の金額を両親の年収別に確認していきましょう。
以下では、養育費支払義務者(夫)、受け取る側の親権者(妻)共に給与所得であることを前提に養育費の金額をまとめています。
(1)支払義務者の年収が300万円の場合
受け取る側の年収 | 子供2人とも 14歳以下 | 第1子が15歳以上、第2子が14歳以下 | 子供2人とも 15歳以上 |
0円 | 4〜6万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
100万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
200万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
300万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
400万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
500万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
600万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
(2)支払義務者の年収が400万円の場合
受け取る側の年収 | 子供2人とも 14歳以下 | 第1子が15歳以上、第2子が14歳以下 | 子供2人とも 15歳以上 |
0円 | 6〜8万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
100万円 | 4〜6万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
200万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
300万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
400万円 | 2〜4万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
500万円 | 2〜4万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
600万円 | 2〜4万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
(3)支払義務者の年収が500万円の場合
受け取る側の年収 | 子供2人とも 14歳以下 | 第1子が15歳以上、第2子が14歳以下 | 子供2人とも 15歳以上 |
0円 | 8〜10万円 | 10〜12万円 | 10〜12万円 |
100万円 | 6〜8万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
200万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
300万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
400万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 6〜8万円 |
500万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
600万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 |
(4)支払義務者の年収が600万円の場合
受け取る側の年収 | 子供2人とも 14歳以下 | 第1子が15歳以上、第2子が14歳以下 | 子供2人とも 15歳以上 |
0円 | 10〜12万円 | 12〜14万円 | 12〜14万円 |
100万円 | 8〜10万円 | 10〜12万円 | 10〜12万円 |
200万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
300万円 | 6〜8万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
400万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
500万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
600万円 | 4〜6万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
(5)支払義務者の年収が700万円の場合
受け取る側の年収 | 子供2人とも 14歳以下 | 第1子が15歳以上、第2子が14歳以下 | 子供2人とも 15歳以上 |
0円 | 12〜14万円 | 14〜16万円 | 14〜16万円 |
100万円 | 10〜12万円 | 12〜14万円 | 12〜14万円 |
200万円 | 10〜12万円 | 10〜12万円 | 10〜12万円 |
300万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 | 10〜12万円 |
400万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
500万円 | 6〜8万円 | 8〜10万円 | 8〜10万円 |
600万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 |
以上の金額をご覧になって、どのように感じられたでしょうか。
受け取る側から見れば「少ない」と感じる方も多いかもしれませんが、家庭裁判所の調停や審判で養育費を決める場合には、事案の内容にもよりますが、基本的には以上の相場の範囲内で決められます。
4、養育費の適正な金額は家庭によって様々!相場を超える養育費をもらう方法
上記のように、裁判所の養育費算定表を用いると年収別に養育費の金額を確認することができます。もっとも、養育費算定表の金額はあくまでも目安であり、算定表を超える金額を請求できないわけではありません。算定表を超える高額の養育費が必要な場合は、以下の対処法を検討していきましょう。
(1)必要な金額を具体的に試算する
裁判所の養育費算定表は、裁判をする・しないにかかわらず養育費を取り決める際の一つの目安になります。そのため、算定表を超える金額を請求するのであれば、その金額が必要な根拠を示す必要があるでしょう。
養育費として必要な金額については項目別に具体的に試算できると良いです。子どもに何歳からどのような習い事をさせたいのか、何歳から学習塾に通わせるのか、どのような学校に進学させたいのか(国公立なのか私立なのか)など、養育プランをなるべく具体的に描き、そのために必要となる金額を導き出してみましょう。
(2)話し合いで理解を求める
家庭裁判所に調停や審判を申し立てれば、元配偶者に養育費の支払いが命じられやすいというメリットがあります。その反面で、金額についてはほとんどのケースで養育費算定表を機械的に適用されるため、相場を超える金額を獲得することは難しいというデメリットもあります。
相場を超える金額を獲得するためには、元配偶者との話し合いで理解を求め、合意を得ることが得策です。
上記の試算を示し、「子どものためにどうしても必要」ということを強調すれば、元配偶者の理解が得られやすくなります。
自分が楽をしたいから高額の養育費が欲しいといっても、理解は得られないでしょう。
(3)合意ができたら公正証書を作成する
養育費の金額について合意ができたら執行認諾文言付公正証書を作成しましょう。執行認諾文言付公正証書を作成しておけば、元配偶者が養育費の支払いを止めた場合には家庭裁判所の調停や審判を経ず、すぐに相手の財産を差し押さえて養育費を回収することが可能となります。
養育費算定表を超える金額を養育費として受け取ることになった場合は特に、口約束だけだと後にトラブルになる可能性が高いといわざるを得ません。トラブルになって養育費を受け取れない事態になれば、最も困るのは子どもです。トラブル回避のためにもなるべく公正証書を作成しておきましょう。
(4)合意できなければ調停・審判を申し立てる
当事者との間で養育費の合意ができなければ、家庭裁判所に調停または審判を申立てることになります。
もっとも、審判で相場を超える金額の養育費を獲得することは難しいのが実情なので、調停での合意を目指す方が得策です。
具体的な試算を調停委員に示し、どうしてもその金額が必要な理由もしっかりと説明しましょう。
調停委員の理解を得て実質的に味方になってもらえれば、相手を説得してくれることもあるので、良い結果が期待できます。
5、子ども2人の養育費に関するQ&A
最後に、子ども2人の養育費に関するよくある疑問にお答えします。
(1)親権者が別々になった場合の計算方法は?
子どもが2人いる場合、上の子の親権は父親に、下の子の親権は母親に、というように兄弟の親権がわかれることがあります。
養育費は実際に子どもを育てていくときにかかる費用なので、親権を誰が持っているかではなく、子どもを誰が育てているかという実態を基準に考えます。
そのため、親権が父親と母親でわかれていても、実際には母親が2人の子どもを育てているような場合は養育費算定表を基準に養育費を考えます。
他方、実際に父親と母親がそれぞれ別々に子どもを育てている場合は養育費算定表どおりに計算することができません。この場合は、養育費算定表の考え方の基礎となっている「生活費指数」を用いて養育費を計算します。生活費指数は、成人:100、15~19歳の子供:85、0〜14歳の子供:62となっています。
計算方法については様々な考え方がありますが、たとえば養育費算定表によれば養育費の金額が10〜12万円となっている場合(今回は10万円として計算します)で、父親が17歳の子供(生活費指数:85)、母親が12歳の子供(生活費指数:62)を育てているとします。この場合、10万円÷(85+62)×62=42,176円を父親が母親に養育費として支払うこととなります。
(2)養育費はいつまでもらえる?
養育費は子どもが自立するまでに必要なお金ですので、一般的には、子どもが20歳になるまで支払うべきであると考えることが多いです。
民法改正により成人年齢は18歳になりましたが、裁判所は養育費については基本的に20歳まで支払義務があると考えています。
もっとも、養育費をいつまで支払うかについては決まりがあるわけではないので、たとえば大学卒業まで養育費を支払ってもらいたい等の事情がある場合は、事前に取り決めて公正証書を作成しておきましょう。
(3)学費は養育費とは別に請求できる?
一般的に、学費は養育費に含まれると考えられています。そのため、子どもが公立の学校に通う場合に養育費とは別に学費を請求することはできないのが原則です。
もっとも、養育費算定表の金額は子どもが公立の学校に通う場合を想定しています。そのため、子どもが私立の中学や高校に通う場合で公立に比べ学費が多くかかることが想定される場合、事前に公正証書等の協議内容にその旨含めておく必要があるでしょう。
(4)養育費の金額は変更できる?
養育費は一般には20歳まで支払うものとされていますが、子どもが20歳になるまでの間に両親ともに生活状況が変わることは十分考えられます。また、当初想定していなかった費用が子どもに必要となる場合もあるでしょう。
このような場合、相手方の合意が得られれば養育費の金額増減が可能です。相手方の合意が得られない場合は、家庭裁判所に養育費の金額に関する変更申立てをする必要があります。
(5)養育費の支払いが止まったらどうすればいい?
養育費の支払いが止まった場合、まずは任意での話し合いをして相手と交渉することが第一です。相手方が交渉に応じない場合、公正証書がある場合や調停または審判で養育費を取り決めた場合には、強制執行の手続きをとることも可能です。
養育費の支払いに関する強制執行を個人でやることは難易度が高いので、強制執行に進む場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
なお、養育費を当事者間の話し合いで取り決めた場合で、公正証書がない場合には、家庭裁判所に養育費請求の調停または審判を申し立てる必要があります。
6、養育についてお困りのときは弁護士に相談を
養育費は子どもの人生を左右する大切なお金です。母親のみで子ども2人を育てていくのは経済的に相当困難ですので、養育費についてお困りのときはまずは一度弁護士にご相談ください。
養育費の相場2人の場合に関するQ&A
Q1.子ども2人の養育費の相場は約5万円?
「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると子ども2人の母子世帯が受け取っている養育費の平均は48,090円となっていることから、子ども2人の養育費の相場は一応、約5万円といえるかもしれません。
Q2.養育費を計算する際に考慮すべきこととは?
養育費は子どもの人数だけで機械的に決まるわけではなく、様々な事情を考慮して計算すべきものです。
もっとも、子どもの人数・年齢、両親の年収によっておおよその金額が決まってくるため、通常はこれらの要素が重視されます。
Q3.相場を超える養育費をもらう方法とは?
- 必要な金額を具体的に試算する
- 話し合いで理解を求める
- 合意ができたら公正証書を作成する
- 合意できなければ調停・審判を申し立てる
まとめ
子どもが2人いる場合の養育費の相場については、「だいたい予想通り」と感じる人もいれば「少なすぎる!」と感じる人もいるでしょう。裁判で争う場合は、基本的には相場の範囲内におさまることが多いです。そのため、裁判をすべきかどうかも含めて養育費の請求金額や請求の方法をしっかりと吟味していきましょう。養育費を一度決めてしまうと後から変更する際はさらに手間がかかりますので、養育費を決める前に一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。