「不倫慰謝料を請求する際の内容証明郵便の書き方と注意点・効果的な送り方を知りたい。」
夫(または妻)の不倫相手に対して、交際をやめることや慰謝料の支払いを求めるなら、内容証明郵便を送ることが有効です。
内容証明郵便という通知書を送付することであなたの主張を明確に伝えることができますし、その後の話し合いを有利に進めることも期待できます。
しかし、内容証明郵便についてよく知らない方や、どのような状況で、どのように書けばよいのかがわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、
- 不倫慰謝料請求の内容証明郵便とは
- 内容証明郵便の書き方
- 不倫の慰謝料請求に効果的な内容証明郵便の送り方
などについて解説していきます。
今回の内容が不倫されてお悩みの方のご参考になれば幸いです。
また、不倫された際に知っておくべき内容全般については以下の記事をご参照ください。
また、不倫慰謝料請求に関する記事はこちらです。
さらに慰謝料の金額についてはYouTubeでも解説しています。
目次
1、不倫慰謝料を請求するための内容証明郵便とは
まずは、そもそも内容証明郵便とはどのようなものなのか、不倫相手に内容証明郵便を送ることがなぜ有効なのかについてご説明します。
(1)そもそも内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、「こういう内容の書面をこの日に送りました」ということを日本郵政が証明してくれる文書です。
そのため、内容証明郵便は、相手に対して、法律上、重要な意思表示や通知を行う場合に、これを行ったこと及びそれをいつ行ったかということを後に証明するために使用することが多いと言えます。
不倫相手に送る内容証明郵便について言えば、あなたが不倫相手に対して、いつ、どのような主張や請求を行ったのかが証拠として残るということになります。
(2)内容証明郵便に送付にかかる費用
内容証明郵便を送付するには、郵便局で以下の料金がかかります。
【必ずかかる料金】
- 基本の郵便料金:84円
- 内容証明の加算料金:440円
- 一般書留の加算料金:435円
なお、内容証明郵便として送る手紙の枚数が2枚以上になるときは、1枚につき260円ずつ料金が加算されます。
【オプション料金】
- 配達証明料金:320円
- 速達料金:290円
配達証明は、郵便が相手方に到達したことを証明するときに必要となるものなので、必ず付けておきましょう。
速達も付けるのが一般的です。
以上を合計すると、2枚にわたる手紙を内容証明郵便として送付する場合、1,829円が必要となります。
(3)なぜ不倫相手に内容証明郵便を送るの?
不倫相手に内容証明郵便を送る意味としては、まず、「慰謝料を払わなかったら、法的手続きを取ります」と記載することで、あなたの本気度を示し、相手に心理的なプレッシャーをかけることができるという点が挙げられます。
それによって、裁判をせずに不倫をやめてもらったり、慰謝料を請求できたりする可能性が高まるというメリットもあります。
また、慰謝料請求について時効が迫っているときには、内容証明郵便を送ることによって一時的に時効をストップさせることが可能です。
その後6ヶ月以内に裁判を起こさなければ時効が完成してしまいますが、提訴の準備をする時間は確保できます。
場合によってはその間に話し合いで解決できることもあるでしょう。
さらに、不倫相手に内容証明郵便を送っておけば、あなたが不倫問題を話し合いによって解決しようと努力したことを証拠として残すことができます。
不倫相手との裁判や、配偶者との離婚訴訟において、この証拠があなたの有利に働くこともあります。
2、不倫相手に送る内容証明郵便の雛形ダウンロード
内容証明郵便の雛形は、本屋さんにもたくさんありますし、インターネット上にもあります。
ここではその一例を示します。
ただ、一般的な例文にすぎないことは理解しておいてください。
3、不倫慰謝料請求の内容証明郵便の書き方は?(内容編)
次は具体的に内容証明郵便の書き方を説明していきます。
(1)不貞の事実を端的に指摘する
不貞相手に対しては、相当な怒りがあるとは思いますが、内容証明郵便に、感情的に恨み言を書き連ねても効果はありません。
内容証明郵便には、不貞の「事実」を記載して突きつけます。この場合に、「あなたは、私の夫と不倫していますね」というだけでは抽象的です。
例えば、メールや探偵事務所による調査などで発覚している事実の一端として、「〇月〇日に、〇〇というラブホテルに行っていましたね」という記載をすることによって、相手は、すでに証拠を握られているということが分かります。
そうすると、放っておくと訴訟提起されて、不利になるから、何とか話し合いで済ませたいと考えるので、連絡してくる確率が高くなります。
手持ちの証拠をすべて開示する必要はありませんが、証拠をすでに持っているということを示さなければ、相手への心理的プレッシャーは弱くなります。
(2)別居や離婚の事実があれば記載する
配偶者の不倫が原因で別居したとか、離婚の話し合いが始まっているというような場合には、その旨も記載しましょう。
なぜなら、不倫が原因で別居や離婚に至った場合には、そうでない場合に比べて高額の慰謝料の請求が可能になるからです。
これを記載することによって、不倫相手に対して、より強い心理的プレッシャーを与える効果も期待できるでしょう。
なお、この前提として、配偶者が不倫相手と別れてくれたらやり直すつもりなのか、「別れる」と言われてもやり直すつもりはないのかという自分の気持ちや方向性はある程度整理しておく必要があります。
(3)相手を不当に貶めるような記載はしないこと
相手に対する怒りがあっても、相手を不当に貶めるような表現をしてはいけません。
場合によっては、名誉棄損等に該当する可能性もあります。
社会人として最低限の礼儀は守った文書を作成しなければならないのは当然のことです。
(4)相手を不当に脅すような記載はしないこと
不倫相手に対して慰謝料を請求し、払わなければ法的手続きを取ると予告することは、正当な権利の行使ですので、一般的には問題ありません(ただし、本当は、何の証拠もないので、実際には訴訟提起が難しいというような場合は、脅迫罪、恐喝罪等が成立する余地もあると考えられます)。
一方、「払わなければ、あなたの職場に押しかけます」「職場や近所に言いふらします」などといった記載はしてはいけません。
このように、法的手続き以外で相手に不利益を与えることを予告するような内容の記載や、相手やその家族に危害を加えることを匂わせるような記載をすると、場合によっては恐喝罪や脅迫罪等になる可能性があります。
「文書」は、あなたにとっても証拠になるものですが、相手にとっても証拠になるものであるということを意識して記載する必要があります。
(5)常識的な金額を請求すること
芸能人、政治家などの有名人や資産家ならばともかく、一般の人の慰謝料の金額にはある程度の相場があります。
例えば、1億とか何千万円というような請求をすると、かえって相手に「この人は法的に無知なのだな」と思わせ、心理的プレッシャーが弱まってしまいます。
また、恐喝罪や脅迫罪等になる可能性もあります。
なお、離婚慰謝料の相場について詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
(6)法的手続を行う意思があることを示すこと
内容証明郵便が効果を発揮するのは、無視したら訴訟を提起されるかもしれないと相手に思わせるからです。
そのため、「本書到達から10日以内にお支払いがなく、また、なんらのご連絡もいただけないときは、遺憾ではありますが、法的手続きを取らせていただきます」という文言を入れる必要があります。
なお、日数については、相手もすぐには対応できないので、1週間から2週間くらいの日数を設定したほうがよいでしょう。
4、不倫相手に送る内容証明郵便の書き方は?(形式編)
次は内容証明郵便の形式について説明していきます。
(1)横書きの場合
「1行を13文字以内、1枚に40行以内」
「1行26文字以内、1枚20行以内」
「1行20字以内、1枚26以内」
のいずれかで作成する必要があります。
文書の枚数が2枚以上になる場合には、その綴目に契印(割印)をします。
郵便局には、同じ文書を3通(相手用、郵便局用、自分用)準備して持っていきます。
また、相手に送るための封筒を1通準備します。
(2)縦書きの場合
「1行20文字以内、1枚26行以内」で作成し、文書の枚数が2枚以上になる場合には、その綴目に契印(割印)をします。
郵便局には、同じ文書を3通(相手用、郵便局用、自分用)準備して持っていきます。
また、相手に送るための封筒を1通準備します。
5、不倫相手に送る内容証明郵便の効果を高める方法
裁判をすれば不倫相手から強制的に慰謝料を回収することも可能ですが、手間や時間、費用がかかってしまいます。
できれば内容証明郵便を送るだけで、あるいはその後の話し合いで解決したいところでしょう。
不倫相手に送る内容証明郵便の効果を高めるために、以下のような工夫をしてみましょう。
(1)インパクトの強い表現で書く
内容証明郵便を送るのであれば、不倫相手に「この人は本気だ」「慰謝料を支払わなければ大変なことになる」と本心から思わせなければなりません。
そのためには、文面をインパクトの強い表現で書くことです。
前記「2」でご紹介した雛形の表現を基本としつつ、あなたがどのような損害を受けたのかを具体的に書くのがお勧めです。
例えば、「平穏な夫婦生活を送る夢が絶たれてしまった」「心身の健康を害して心療内科への通院を余儀なくされている」「子どもの養育にも支障が出ている」などといったことです。
インパクトは大切ですが、前記「3(3)」や「3(4)」でご説明したように、相手を不当に貶めるような表現や脅迫的な表現は避けてください。
過大な金額の請求も逆効果ですが、実際に請求したい金額よりも少し高い金額を書くことは効果的です。
実際には200万円を請求したい場合に、最初に300万円を請求する旨の内容証明郵便を送ることは、交渉術としても有効です。
(2)話し合いの余地があることを示す
インパクトを強くする一方で、話し合えば解決できる可能性を残しておくことも重要です。
そのためには、慰謝料を請求する文言の後に、「話し合いの機会を持ちたいと思います」「貴殿の見解をご連絡ください」というように記載することです。
その後に、「万が一、期限までにお支払がなく、ご連絡もいただけない場合は法的措置をとらざるを得ません」と書いて結ぶのがよいでしょう。
(3)弁護士名義で送付する
最も効果的なのは、弁護士名義で内容証明郵便を送付することです。
不倫相手に対して弁護士名義の内容証明郵便を送付することには、以下のようなメリットがあります。
①心理的プレッシャーが増す
まず、相手が受ける心理的プレッシャーが大きいということが挙げられます。
なぜなら、弁護士名で送られてきた方が、「無視すれば訴訟提起される」ということに現実味があるからです。
②弁護士に的確な内容証明郵便を送ってもらえる
インパクトの強い表現でありながら不適切な表現ではなく、それでいて相手の行動を促すような文言を記載するのは、慣れていない方にとっては難しいことでしょう。
慰謝料の交渉に慣れた弁護士に依頼することで、的確な内容証明郵便を送ってもらうことができます。
③引き続き示談交渉をしてもらえる
弁護士名で内容証明郵便を送るということは、受けとった相手は、弁護士に連絡してくるということです。そこで、弁護士と相手が交渉をします。
また、内容証明郵便が届くと、相手は法律相談に行き、示談交渉を弁護士に依頼することもあります。
自分で内容証明郵便を送っていると、相手が依頼した弁護士から連絡が来て、自分が弁護士相手に交渉をしなければならなくなることもあります。
本気で慰謝料を払わせたいと考えているのであれば、示談交渉まで見据えて、最初から弁護士に依頼するべきでしょう。
ただ、弁護士に示談交渉を依頼するには費用がかかります。
場合によっては、その後の訴訟を依頼する費用も必要になるでしょう。
相手から慰謝料を回収できれば、弁護士費用を支払っても充分手元にお金が残りますが、回収できなかった場合には、弁護士費用が手出しになってしまいます。
依頼する前に、回収できる可能性について、弁護士によく確認しておきましょう。
6、不倫相手に内容証明郵便を送るときに注意すべきこと
ここでは、以上でご説明してきたことの他にも不倫相手に内容証明郵便を送るときに注意しておきたいことについてご説明します。
(1)相手の住所がわからない場合は?
相手の住所がわからない場合は、住民票を調査するという方法があります。
正当な理由があれば、他人の住民票を取得することも不可能ではありません。
しかし、一般の方が申請しても役所はなかなか他人の住民票の交付には応じてくれません。
この点、弁護士であれば「弁護士会照会」や「職務上請求」といった制度を利用して、相手の住所を調べることができます。
したがって、相手の住所を調べる必要があるときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
(2)相手の職場に送付してもよい?
不倫相手の住所はわからないけれど、職場は判明しているという場合に、職場宛に内容証明郵便を送りたいという場合もあるでしょう。
しかし、相手の職場に送付することはおすすめできません。
なぜなら、不倫の事実を記載した書面を不特定多数の人に見られてしまうことによって、名誉毀損で逆に訴えられるおそれがあるからです。
可能な限り相手の自宅へ送付すべきですが、職場へ送付するしかないと思われるときは弁護士に相談することをおすすめします。
(3)謝罪を求めることはできる?
要求することは可能ですが、相手が拒否した場合に強制できることではないということは理解しておく必要があります。
ただし、示談交渉の中で、相手が謝罪することを条件として慰謝料の減額に応じるという形で交渉の材料として利用することは考えられます。
(4)夫(または妻)ともう会わないように求めることはできる?
これも要求することはできますが、相手が拒否した場合に強制できることではないことを理解しておく必要があります。
ただし、示談交渉の中で、「別れる」「もう会わない」ということを条件として、慰謝料の減額に応じることは考えられます。
7、不倫相手に内容証明郵便を送った後にやるべきこと
内容証明郵便を送った後、不倫相手からあなたの請求を認める旨の連絡があったり、話し合で合意に至った場合は、それで不倫問題は解決となります。
その場合も口約束だけでは後で「言った・言わない」のトラブルが発生する可能性があるので、必ず示談書を作成しておきましょう。
しかし、このようにスムーズに解決できるケースばかりではありません。
ここでは、内容証明郵便を送った後の不倫相手の対応のパターン別に、あなたのやるべきことをご説明します。
(1)慰謝料減額などを求められた場合
不倫相手が慰謝料の支払い義務は認めるものの、減額や分割払いを求めてくることもあります。
減額を求められた場合は、いくらなら支払えるのかを聞いて話し合いを進め、納得できる金額で合意できるのであれば和解するとよいでしょう。
不倫の慰謝料の相場は数十万円~300万円程度ですが、事案の内容によって幅があります。
ご自身のケースでどのくらいの金額が妥当なのかは、弁護士に相談して確認することをお勧めします。
分割払いを求められた場合も、ある程度は話し合いの上で応じるとよいでしょう。
無理に一括払いを要求しても、支払ってもらえなければ意味がないからです。
ただ、分割が長期に及ぶと途中で支払いが滞る可能性が高まるので、支払い期間はできれば1年、長くても3年以内とした方がよいでしょう。
(2)請求を拒絶する反論が送られてきた場合
不倫相手から、「慰謝料は支払いません」あるいは「支払えません」という回答が送られてくることもあります。
その場合は、まず回答内容をしっかりと確認しましょう。
不倫の事実は認めるものの支払う余裕がないということであれば、減額や分割払いについて話し合えば和解できる可能性もあります。
一方、不倫の事実を認めないか、認めるものの支払いたくないということであれば、話し合って和解できる可能性は低くなりますので、調停や訴訟といった法的措置も検討しましょう。
(3)内容証明郵便を無視された場合
無視された場合は、しばらく様子を見て、それでも連絡がなければあなたの方から連絡をとったり、もう一度内容証明郵便を送ってみるのもよいでしょう。
しかし、無視が続く場合は法的措置を検討するしかありません。
不倫相手に対する慰謝料請求の場合は、調停をせずにいきなり訴訟を起こすことができます。
相手が訴訟も無視した場合は、あなたの請求した内容どおりの勝訴判決が言い渡され、相手の財産を差し押さえるなどして強制的に慰謝料を回収することができるようになります。
不倫慰謝料の内容証明郵便まとめ
内容証明郵便を送るだけで不倫問題を解決できることは少ないですが、不倫相手にあなたの本気度を伝え、心理的なプレッシャーを与えるためには有効な手段です。
効果的な内容証明郵便を送れば、その後の示談交渉や訴訟を有利に進めることにも役立ちます。
その結果、早期に納得のいく結果を得る可能性が高まることでしょう。
わからないことがあれば、気軽に弁護士に相談してみましょう。