離婚が子供に与える影響は多岐にわたります。夫との価値観の不一致や不満が限界に達したとしても、離婚に踏み切る際には子供への影響を心配するのは当然のことでしょう。
離婚が子供に及ぼす影響については、学者や研究者たちによる論文でも幾度となく取り上げられています。
そこで今回は、離婚を決断する前に知っておきたい事柄に焦点を当ててみましょう。
・離婚が子供に与える悪い影響
・離婚が子供に与える良い影響
・子供がいる場合に最適な離婚のタイミング
・離婚が子供に与える悪影響を最小限に抑える方法
離婚を検討する際、子供の年齢にかかわらず、子供へのケアを怠ってはなりません。
ベリーベスト法律事務所の離婚専門チームの弁護士が、これまでの相談経験を踏まえて、上記のテーマについてお伝えします。
子供たちの未来の幸福をサポートするために、離婚がもたらす影響を理解し、より良い選択をする一助となれば幸いです。
目次
1、離婚が子供に与える悪影響は?
まずは、離婚するにあたって1番気になる子供達への悪影響からチェックしていきましょう。
夫婦にとってベストな選択と、子供にとってベストな選択は必ずしも一致しません。
だからこそ、これからご紹介する悪影響もしっかり押さえた上で、本当に今離婚するべきなのかを今一度考えてみてください。
(1)「捨てられる恐怖」を感じてしまう
離婚にどんな事情があったとしても、子供の心の中には「離れて暮らすことになった親から自分は捨てられたのではないか」という思いがどうしても残ってしまいます。
そして、1度そんなふうに感じてしまった子供は、今一緒に暮らしている親からもいつかは捨てられるかもしれない…という恐怖を無意識のうちに抱いてしまい、精神的に不安定になる可能性があります。
(2)成績が悪くなる可能性がある
「親から捨てられる不安」を感じている子供は、学校の勉強にもなかなか集中することができません。
そのため成績が落ちる可能性が高く、進学先や卒業後の進路にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
良い学校を出ることがすべてではありませんが、成績が悪い=就職後の社会的地位も低くなる傾向があることは無視できないポイントです。
(3)愛情に疑問を持ちやすくなる
子供にとって1番身近な家族でありカップルである両親が離婚するのを目の当たりにすると、子供は人間関係の基本となる愛情に疑問を抱いてしまうことがあります。
「どんなに愛情を注いでもいつかは別れてしまう」という思いから、友達や持ち物への愛着も薄くなる傾向があり、将来的に恋人ができたときにも葛藤を抱きやすくなる可能性があります。
(4)結婚後の離婚率が増える
両親が離婚している子供は、そうでない子供に比べて結婚後の離婚率が増加すると言われています(※)。
子供の性格によっては、離婚した両親を反面教師にして自分の結婚生活に生かすことができるパターンも、もちろんありますが、実際はそうでないケースのほうが多いのかもしれません。
出典:文献「離婚の子どもに与える影響 事例分析を通して(棚瀬一代)」
(5)生活スタイルが変わる
これは必ずしも悪影響というわけではありませんが、両親が離婚することによって、子供の生活リズムや環境には少なからず変化が生まれます。
家を引っ越せば学校を転校する必要が出てくるかもしれませんし、そうなると遊び慣れた友達とも離れ離れになってしまいます。
それまで専業主婦だった母親が働きに出ることになれば、母親と過ごす時間が減る・食事を1人で済ませるようになるなどの変化が訪れることもあるでしょう。
そんな生活スタイルの変化に、戸惑いを覚えてしまう子供も少なくありません。
2、離婚が子供に与える良い影響は?
子供に悪影響がある…と思うとついつい慎重になってしまいますが、一方では離婚することでむしろ子供に良い影響を与えられることもあります。
ここからは、離婚が子供にもたらすメリットについて詳しくチェックしていきましょう。
(1)家庭の雰囲気が明るくなる
子供にとって何よりもツラいのは、両親の不仲な様子やギスギスとした雰囲気を目の当たりにすることです。
子供の前では直接言い争いをしないように気を付けていたとしても、両親が苦しんだり悩んだりしていることを肌で感じる子供は多く、それに対して何もできない自分に無力感を覚えます。
離婚して一緒に暮らしている親に笑顔が戻ると、それだけで子供は日々安心して生活できるようになるものです。
たとえ片方の親とは離れて暮らすことになっても、家庭の雰囲気が明るく穏やかになるのであれば、そのほうが子供にとっては幸せなこともあるのです。
また、新たなパートナーと出会い再婚することで、新しい父親(もしくは母親)を迎えて温かい家庭を作れる可能性も高くなるでしょう。
(2)両親との絆が深まる
離婚して家族が減ってしまうことは心細い反面、残った家族の絆を強く感じられるという効果もあります。
親の立場からすると自分のせいで子供に寂しい思いはさせたくない…と、これまで以上に子供に気を配るようになりますし、子供の中にも「なるべくお母さん(お父さん)を助けたい」という意識が芽生え、親に対する思いやりが深くなります。
離れて暮らすことになった親とも、面会日などを設けて定期的に会うことにしている場合は、離れる前よりむしろお互いのことを話す時間がしっかり作れるようになった!というケースもあるでしょう。
結果的に、子供から見るとどちらの親ともよりコミュニケーションを取れるようになり、それが日々の安心感につながることも多いのです。
(3)打たれ強くなる
両親の離婚は子供の心に様々な葛藤やインパクトを与えますが、その経験は決して無駄にはなりません。
精神的な成長には、困難に立ち向かうことや挫折がある意味必要不可欠です。
両親の離婚を乗り越えた子供は、その分メンタルが強くなり、他の同年代の子供に比べて精神的な自立も早くなるでしょう。
3、離婚が子供に悪影響を与えないために|適切な離婚のタイミングは?
悪い影響と良い影響をどちらも見比べた上で、やっぱり離婚に踏み切る場合はそのタイミングも重要なポイントです。タイミング次第では悪影響を最低限におさえられることもありますし、その逆ももちろんあります。
「じゃあ一体どのタイミングが離婚にベストなの?」
というと、理想は子供が成人してからです。
成人すれば法律的には立派な大人であり、精神的にも「親には親の人生がある」ことを理解できるようになります。
何より子供自身の人間関係も、小さい頃に比べれば友達や恋人など両親以外の存在の比重が増えているため、両親の離婚のインパクトをそこまで大きく感じないケースが多いです。
とはいえ、「子供が成人するまでにはまだ何年もあるし、それまで待つなんて到底無理…」ということもありますよね。
そんなときには、次のタイミングを選ぶのもおすすめです。
(1)子供が学校を卒業・入学するタイミング
子供の環境がそもそも変わるタイミングでは、離婚による環境の変化も比較的受け入れやすいでしょう。
たとえば学年の途中で母親の旧姓を名乗ることになると、周りの目が気になる子供も多いと思いますが、新しい学校に入学するタイミングであれば、そこまで気にならないこともあります。
生活リズムに関しても、小学生から中学生、中学生から高校生になるタイミングならある程度は変わるだろうな、という心の準備がすでにできているため、離婚による生活の変化も負担になりにくいのです。
(2)子供が小さくて記憶に残らないタイミング
まだ子供が1歳や2歳・3歳・4歳・5歳などと小学校入学前くらい小さいなら、子供の物心がつかないうちに離婚してしまうのもひとつの手です。
「子供に父親の記憶がないのはどうなんだろう…」と悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、愛着を抱いてから引き離されるよりは、元から何も記憶にないほうが子供にとってはよっぽど楽です。
子供がきちんと理解できるようになってから離婚の説明ができるというメリットもありますし、子供の成長に合わせて話すタイミングを見計らうことができるので、子供の中でも事実を冷静に受け入れやすいでしょう。
4、離婚が子供に悪影響を与えないために|すぐにでも離婚したほうがいいケース
先ほど離婚に適切なタイミングをいくつかご紹介しましたが、状況によっては「今すぐにでも離婚したほうが良い!」という緊急度の高いケースもあります。
みなさんの状況にも当てはまるものがないかどうか、1度照らし合わせてみてください。
(1)DVがある場合
自分や子供が夫から暴力を受けている場合、離婚に最適なタイミングは間違いなく「今」です。
この場合、離婚後の悪影響を考える前に、現在の状況がすでに子供にとって最も悪影響であることを自覚しましょう。
身体的な暴力がなくても、経済的・精神的に追い詰められている母親の姿を見るのはとてもツライものです。
自分から上手く離婚を切り出せる自信がない…というときには、行政の窓口などに相談してみるのも方法のひとつですよ。
(2)激しい口論が絶えない場合
両親が毎晩のように激しい言い争いをしている姿を見るのも、子供の心にとってはかなり大きなストレスになります。
できればすぐにでも離婚したほうが良いですが、そこまで思い切れない…という場合は、一旦別居して様子を見るだけでもだいぶ状況を改善することができるでしょう。
5、離婚を待つ場合|子供に悪影響を与える「仮面夫婦」
「DVがあるわけじゃないし、激しい口論も今のところはない」
という場合、良いタイミングまで離婚を待つのも選択肢のひとつですが、仮面夫婦の両親のもとで育った子供には次のような悪影響が出ることもあります。
(1)両親の不仲は自分のせいだと思い込む
両親がほとんど会話をしなかったり、一緒に出かけることがなかったり、なんとなく家庭の空気がピリピリしていたりすると、子供はそれらをすべて「自分が悪い子だからかもしれない」と思ってしまいがちです。
そのため不必要に自分を責め、周りの子供に比べて自己肯定感が低くなる可能性があります。
(2)相手の顔色を伺うのがクセになる
「良い子にしていないと両親の仲がもっと悪くなってしまうかも…」という思いから、相手の顔色を伺って行動するのがクセになるケースも多いです。
自分がどうしたいかよりも、相手を怒らせないことを第一に考えるようになる恐れがあります。
(3)自分の感情を表に出さなくなる
相手の顔色を伺うことが第一になると、自分の感情は無意識のうちに押し殺されます。
その結果、感情を外に出すことが苦手になってしまったり、自分の本音を相手に告げるのが怖くなってしまったりすることもあるでしょう。
6、離婚を子供に伝える際の注意点|悪影響を与えないために
色々考えた結果「やっぱり離婚しよう!」と思ったとき、それを子供にどう伝えるかに頭を悩ませてしまう方も多いのではないでしょうか。
ここでは、離婚することを子供に伝えるときに気を付けたいポイントをまとめてみました。
子供を傷付けないためにも、伝え方には細心の注意を払いましょう。
(1)子供は何も悪くないことを伝える
離婚の話をするときに1番大切なのは、「子供のせいで別れるわけではない」ことをハッキリ伝えてあげることです。
「子供のために別れることにした」という言い方も「自分のせいなんだ」という誤解を招きやすいため、あくまでも「親の問題」であることを強調しましょう。
(2)嘘はつかない
「お父さんは元からいない」「病気で死んでしまった」というような嘘は、バレたときに子供を深く傷付けます。
1番信用していた親から嘘をつかれていたというショックで、他人のことを信じられなくなってしまう恐れもあるため、話すときには事実のみを伝えるようにしましょう。
(3)相手のことを悪く言わない
自分にとってどれだけひどい夫であったとしても、子供にとってはたった1人の大切なお父さんです。
その父親を否定されると、子供の心の中ではまるで自分自信を否定されているような気分に陥ることもあります。
どんな、恨み辛みがあっても、子供の前では口にしないように気を付けましょう。
(4)離れて暮らしても愛情は変わらないことを伝える
離婚しても自分たちは変わらず子供の両親であり、その愛情がずっと変わらないことを伝えるのはとても大切なポイントです。
子供に「捨てられる不安」を抱かせないためにも、引き続き一緒に暮らす親はもちろん、離れて暮らすことになる親との関係も根本は変わらないことを丁寧に伝えましょう。
まとめ
離婚が原因で子どもに与える悪い影響と良い影響をそれぞれにご紹介してきましたが、いかがでしたか?
実際に離婚する際には、一般的には次の3つの手段があることも押さえておきたいポイントです。
- 協議離婚:夫婦間の話し合いでお互いが離婚に同意 → 離婚届を提出する
- 調停離婚:一方が離婚に同意しなかった場合に、調停委員に離婚を仲介してもらう
- 裁判離婚:調停で話がまとまらなかった場合に、裁判で決着をつける
今回ご紹介した内容を参考に、ぜひみなさんも自分と子供にとってベストな選択肢を選んでみてください。