配偶者の不倫写真を見つけてしまったら、精神的に大きな衝撃を受けてしまうものです。
すぐに離婚を決意する人もいれば、離婚問題は保留してでも不倫相手に慰謝料を請求したいと考える人もいるでしょう。
ただ、配偶者と不倫相手が一緒に写った写真であっても、内容によっては不倫・浮気の動かぬ証拠とまではいえない可能性もあります。
この記事では、
- 配偶者の不倫写真を見つけたときに取り得る選択肢
- 不倫写真で離婚する方法
- 不倫写真で慰謝料請求する方法
などについて分かりやすく解説していきます。
目次
1、不倫の写真を見つけたら
配偶者の不倫写真を見つけたときは気が動転すると思いますが、今後の対応について落ち着いて考える必要があります。
不倫を確信した場合、あなたが取り得る選択肢は以下の4つです。
できる限り感情を抑えて、ご自身にとってどうするのが最も得策であるのかを検討しましょう。
(1)離婚する
配偶者が不倫・浮気をした場合、それが「不貞行為」に当たるのであれば離婚を請求することができます。
不貞行為(配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと、貞操義務違反にあたる)は法定離婚事由のひとつなので、相手が離婚を拒否しても、裁判をすれば強制的に離婚することが可能です(民法第770条1項1号)。
(2)慰謝料を請求する
配偶者に不倫をされて精神的苦痛を受けた以上、あなたは慰謝料を請求することができます。離婚する場合はもちろんのこと、離婚しない場合でも慰謝料請求は可能です。また、配偶者に対してだけでなく、不倫手に対しても慰謝料を請求できます。
受け取れる慰謝料額は数十万円~300万円程度が相場と言われています。
幅が大きいですが、裁判では個別の事案ごとに、
- 不倫期間
- 不貞行為の回数
- 婚姻期間
- 子どもの有無
- 夫婦関係の状況
などさまざまな事情を総合的に考慮して具体的な金額が決められます。
当事者間の話し合いで合意できる場合は、いくらでも自由に決めることが可能です。
(3)気にしない
配偶者が不倫した場合でも、必ずしも離婚や慰謝料請求をしなければならないわけではありません。
今後の生活や子どものことを考えて「気にしない」という選択肢もあります。
離婚問題はいったん保留して、仮面夫婦や家庭内別居の状態で生活していくことも考えられます。
実際に浮気癖のある配偶者のことは諦めて
- 「生活費さえ稼いでくれればいい」
- 「家事や子育てさえしてくれればいい」
と考えて、夫婦生活を継続している人もいます。
(4)夫婦関係を修復する
不倫をされても配偶者のことが好きだ、夫婦関係を元の状態に修復したいと考える人もいるでしょう。
あなたがそう思うのなら、修復を目指しましょう。
不倫をしている人の中には、離婚を望んでいるわけではない方もいます。
ケースにもよりますが、あなたの努力次第では夫婦関係を修復できる可能性は十分にあるでしょう。
2、不倫写真で離婚や慰謝料請求に向けてやるべきこと
不倫写真を見つけて離婚や慰謝料請求をしたいと思っても、いきなり配偶者や不倫相手を問い詰めたのでは目的を達成できないおそれがあります。
離婚や慰謝料請求をするためには、証拠を確保しておくことが重要です。
「配偶者の不倫写真を見た」と言うだけでは証拠になりませんので、以下のポイントに注意して証拠を確保していきましょう。
(1)写真を証拠化して保管する
まずは、見つけた不倫写真を証拠化しましょう。
プリントアウトされた写真の場合は、その写真を携帯・スマホのカメラやデジカメなどで撮影します。
配偶者の
- デジカメ
- 携帯・スマホ
- PC
などにデータとして保存されていた場合も、画像を表示して同じように撮影しておきましょう。
なお、不倫の事実を証明する際には、その写真がいつ撮影されたものかが問題となることもあります。
撮影された時期を証明するのは意外に難しいことが多いですが、最低限、発見した日を記録するようにしましょう。
その写真を撮影する際に、新聞の日付などを一緒に写すとよいでしょう。
写真に日付が入っている場合でも、その日付が正しいとは限りませんので、発見日を記録しておくことをおすすめします。
(2)その写真だけで不貞行為の証拠となるか確認する
不倫写真を証拠化して確保しても、それだけで不貞行為を十分に立証できるかどうかは確認しておく必要があります。
不貞行為を立証するには、配偶者と不倫相手が肉体関係を持ったことを証明しなければなりません。
見つけた写真が性交渉中の模様を撮影したものであれば強力な証拠となりますが、配偶者と不倫相手が一緒に写ったスナップ写真などは、それだけでは不貞行為の証拠となりません。
不貞行為は配偶者ではない異性と性的関係を持つ貞操義務違反を指すからです。
たとえ不倫旅行中に撮影されたスナップ写真だとしても、それだけでは肉体関係を証明することができません。
1枚~数枚の写真では、不倫旅行の証拠にもならないことが多いです。
(3)必要に応じてさらに証拠を集める
見つけた写真だけで不貞行為を証明できない場合は、他にも証拠を集める必要があります。
不貞行為の証拠としては、一般的に以下のようなものが有効となります。
- 2人でラブホテルに出入りしている写真
- 性交渉中の模様を撮影した動画像
- メールやSNSのやりとりで、肉体関係があることが分かるもの
- 配偶者や不倫相手が不貞行為を認めた場合、その発言の録音データや一筆を記載した書面
また、
- 領収書やクレジットカードの利用明細で不倫相手にプレゼントを購入したこと
- ラブホテルを利用したこと
- 不倫旅行に行ったこと
などを証明できる場合もあります。
その他にも、
- 相手が書いたメモ
- 携帯・スマホの通話履歴
- GPSの記録
などが不貞行為の証明に役立つ可能性もあります。
可能な範囲で、証拠を集めるようにしましょう。
(4)不倫相手が誰かを調べる
不倫相手に慰謝料を請求するには、不倫相手の氏名と連絡先を突き止める必要があります。
ただ、写真しか手がかりがない場合には、不倫相手の氏名や連絡先を調べるのは難しいものです。
そんなときは、探偵に調査を依頼することも考えられます。不貞行為の調査と併せて、不倫相手の調査を探偵に依頼するのもよいでしょう。
不貞行為の証拠集めも難しいことが多く、配偶者といえども携帯・スマホを勝手に見るとプライバシー侵害で慰謝料を請求されるリスクがあります。
自力での調査が難しい場合は、プロの探偵への依頼も検討してみることをおすすめします。
3、不倫の写真で離婚する方法
不倫の写真、およびその他にも必要な証拠がそろったことを前提として、離婚する方法を解説します。
離婚するためには、まずは協議離婚を目指し、話し合いがまとまらなければ離婚調停をし、それでも合意できなければ離婚裁判をするのが一般的です。
(1)まずは離婚協議
離婚する際には、
- 慰謝料
- 財産分与
- 親権
- 養育費
など、さまざまなことを取り決める必要があります。
離婚を切り出す前に、ご自身が希望する離婚条件を検討して決めておきましょう。
全面的に希望が通るケースは多くありませんので、どこまでなら譲歩してもよいのかも検討しておくことをおすすめします。
それから、夫婦間で離婚について話し合いをします。
適切な結論に行き着くためには、冷静に話し合いを重ねることが重要となります。
できる限り、お互いの精神状態が落ち着いているタイミングを見計らって離婚を切り出し、話し合いを進めましょう。
相手に言い分がある場合も冷静に話を聞き、譲歩できることは譲歩して折り合えば、スムーズに離婚できる可能性があります。
話し合いがまとまった場合は、約束を守ってもらうために離婚協議書を作成し、合意内容を証拠化しておきましょう。
公正証書にしておけば、万が一、相手が約束どおりに慰謝料や養育費などの金銭を支払わない場合にはすぐに差押え手続きが可能となります。
できる限り、公正証書で離婚協議書を作成することをおすすめします。
(2)話し合いがまとまらなければ離婚調停
夫婦間で話し合いがまとまらない場合や、そもそも話し合いができない場合には、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てます。
離婚事件では裁判をする前に調停をしなければならないことになっているので、合意できる見込みがないような場合でも、先に離婚調停を申し立てる必要があります。
調停では、家庭裁判所で選任された男女各1名の調停委員を介して相手と話し合いをします。
調停委員が専門家的な立場で助言や説得を交えて話し合いを進めるので、夫婦だけで話し合うよりも合意できる可能性が高まります。
ただし、調停委員を味方につけなければ、不利な調停案を提示される可能性もあります。
調停委員を味方につけるには、
- 不倫の事実
- それによってご自身がどのような精神的苦痛を受けたのか
等を具体的に伝え、証拠も示して実情を把握してもらうことがポイントとなります。
調停で夫婦が合意すれば、調停離婚が成立します。
(3)それでも合意できなければ離婚裁判
離婚調停でも合意できなかった場合は、離婚裁判に進みます。
裁判では、双方が主張と証拠を提出し合います。自分の主張を裏付ける事実を証拠で的確に立証できた方が勝訴します。
したがって、不倫の離婚裁判で勝訴するためには、離婚条件も含めて適切な主張をし、相手の不倫を証明できる十分な証拠を提出することがポイントとなります。
裁判でも和解が成立するケースは多いですが、有利な和解案を引き出すためにも有力な証拠を提出しておくことが重要です。
離婚裁判で勝訴した場合は裁判離婚、離婚することで和解できた場合は和解離婚が成立します。
4、不倫の写真で慰謝料請求する方法
次に、不倫の写真等を証拠として慰謝料を請求する方法をみていきましょう。
不倫の慰謝料は離婚する・しないにかかわらず請求できます。
ここでは、配偶者に請求する場合と不倫相手に請求する場合に分けてご説明します。
(1)配偶者への慰謝料請求
配偶者と離婚する場合は、離婚請求と併せて慰謝料請求も行い、上記「3」で解説した手順に従って話し合い
- 調停
- 裁判
を進めていきます。
離婚しない場合は、話し合いで決着をつけるのが一般的です。
離婚せずに慰謝料請求の裁判のみをすることも可能ではありますが、そのようなケースは稀です。
ただ、離婚時に慰謝料を取り決めず、後で慰謝料のみを裁判で請求するケースは少なくありません。
その場合は、慰謝料請求権の消滅時効に注意が必要です。
時効期間は、損害および加害者を知ったときから3年です(民法第724条1項)。
したがって、不倫の事実を知ってから3年以上が経過すると、(元)配偶者に対して慰謝料を請求しても、相手が時効完成を主張すれば慰謝料はもらえなくなります。
ただし、不倫が原因で離婚したことによる「離婚慰謝料」は離婚してから3年が経過するまで請求可能です。
(2)不倫相手への慰謝料請求
不倫相手に謝料を請求する際は、まず内容証明郵便で請求書を送付するのが一般的です。
内容証明郵便という形を取ることによって相手に心理的な圧力をかけることができるので、話し合いを有利に進めやすくなることが期待できます。
時効期間内に慰謝料を求めたという証拠にもなります。
内容証明郵便を受け取った相手が連絡をしてきたら、話し合いをします。
その際は、冷静に話し合うことを心がけましょう。感情がエスカレートしてしまうと、
- 脅迫
- 恐喝
- 暴行・傷害
などのトラブルに発展するおそれもあるので注意が必要です。
相手の反応がない場合や、話し合ってもまとまらないときは、慰謝料請求の裁判を検討することになります。
なお、あなたが離婚せず不倫相手に慰謝料を請求するときには、「求償権」にご注意ください。
不倫相手とあなたの配偶者は「共同不法行為者」として、あなたに対して連帯して慰謝料の支払い義務を負います(民法第719条1項)。
しかし、どちらか一方が自己の負担部分を超えて慰謝料を支払った場合は、超えた部分について、もう一方に対して支払いを求めることができます(同法第442条1項)。
つまり、あなたが不倫相手から慰謝料全額を受け取った場合、不倫相手はあなたの配偶者に対して、その半分の支払いを求めることができるのです。
あなたが離婚しない場合、そのお金は家計から支払わなければならないことが多いでしょう。
その場合、実質的に手元に残る慰謝料は半額となってしまいます。
5、不倫の写真を見つけても夫婦関係を修復する方法
次に、配偶者の不倫を確信しても離婚せず、夫婦関係を修復する方法をご紹介します。
(1)不倫に気づいていることを伝えるべきか?
あなたが、配偶者の対応がどのようなものであろうとも夫婦関係を修復するという決意を固めているのであれば、不倫に気づいていることを伝えないまま修復を図るのもよいでしょう。
しかし、基本的には夫婦で話し合う前提として不倫のことを指摘した方がよいと考えられます。
不倫を指摘しないままでは不倫をやめてもらうことは難しいですし、相手は秘密を抱えたまま話し合うことになりますので、本音の話し合いも難しくなるからです。
ケースバイケースではありますが、不倫に気づいていることをはっきりと伝えて、相手としてはどうしたいのかを尋ねた方がよいでしょう。
その答えが夫婦の「現状」であり、今後の夫婦関係をどうしていくのかを話し合う出発点となります。
(2)不倫を指摘して修復するには
不倫を指摘した上で配偶者と話し合うときには、決して感情的にならないことが重要です。
悪いのは不倫をした配偶者の方ですが、一方的に責め立てても修復にはつながらないものです。
まずは、なぜ不倫したのかを尋ね、相手の言い分を聞いてみましょう。
それから、不倫をされてどのようにつらかったのか、これから夫婦関係をどのようにしていきたいのかといったことを伝えることです。
また、自分にも至らないところがあれば改善する努力も大切です。
- 今まで相手の話を十分に聞いていなかった
- 感謝していても言葉で伝えていなかった
- 家事に手抜かりがあった
- 家の中でだらしない格好をしていた
等々、何かしら改善すべきことがあると思います。
そして、焦らずに夫婦のコミュニケーションを徐々に増やしていき、良好な関係を復活させていきましょう。
(3)不倫を指摘しないで修復するには
不倫を指摘しない場合も夫婦で話し合いをすることは大切ですが、指摘する場合よりも話し合いの内容が間接的なものにとどまらざるを得ません。
そのため、配偶者に不倫をやめさせるというよりも、不倫相手の方に傾いた配偶者の気持ちをこちらに引き戻すための努力が必要となってきます。
その方法は、上記と同様に自分の至らなかった点を改善するとともに、愛情表現を増やしていくことなどが考えられます。
ただし、不倫を見て見ぬふりをしながら配偶者のご機嫌を取ったために、相手が不倫にますますのめり込むおそれもあるので、さじ加減は難しいところです。
しかし、あなたの深い愛情が配偶者に通じたときには、夫婦の絆が非常に深まることも期待できます。
気の長い努力が必要となるかもしれませんが、諦めずに努力を続けることがポイントとなるでしょう。
6、配偶者の不倫写真を見つけたら弁護士に相談を
配偶者の不倫写真を見つけても、気が動転して、
- 離婚すべきかどうか
- 慰謝料請求した方がよいのかどうか
も考えられないという人もいるのではないでしょうか。
困ったきは、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に詳しい事情とご自身の気持ちを伝えれば、状況に応じて最善の解決策を一緒に考えてくれるはずです。
離婚や慰謝料を請求するなら、弁護士にすべての手続きを任せることも可能です。
夫婦関係の修復を望む場合もさまざまなアドバイスが受けられますし、夫婦カウンセラーを紹介してもらえたり、円満調停の申し立てなど具体的な解決策を提案してもらうこともできます。
一人で抱え込まず、弁護士の力を借りて最善の道を探るようにしましょう。
まとめ
配偶者の不倫写真を見つけてしまった方は、大きなショックを受けていることでしょう。
どのような方向で夫婦の問題を解決するかは人それぞれですが、困ったときは弁護士が味方になってくれることを思い出してください。
相談するだけでも気持ちが楽になることもあるでしょうから、まずは弁護士の無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。