浮気に関しての法律はあるのでしょうか?
パートナーや恋人が浮気しているかもしれない……。
心配になったとき、まずはどのようなことをすれば良いのでしょうか?
そもそも、浮気には法律違反となる基準があるのでしょうか?
浮気が法律違反である場合、どのようなペナルティを与えることができるのかが問題です。
また、浮気が法律違反なら、時効があるのかも気になりますよね。
今回は、浮気を取り締まる法律と慰謝料請求できる条件について、ベリーベスト法律事務所の離婚専門チームの弁護士が
- 浮気を取り締まる法律はあるのか?
- 浮気慰謝料請求するための条件
- 慰謝料請求の手順
など、重要な7つのことをご紹介します。
お読み頂ければ、浮気にまつわる法律問題をご理解頂けると思います。今回の内容が、浮気に関してお悩みの方のご参考になれば幸いです。
不倫をされた時の対処法については、こちらの記事もご覧ください。
目次
1、浮気を取り締まる法律はある?
そもそも、浮気を取り締まる法律というものはあるのでしょうか?
まず、浮気は法律上の離婚原因となります。
浮気は配偶者への裏切りであり、婚姻関係を破綻させる行為であると考えられるからです。
このことは、民法770条1項1号に規定されています。
そこで、浮気をすると、配偶者から離婚請求される可能性がありますし、離婚を拒絶していても、裁判されると強制的に離婚させられます。
さらに、浮気は不法行為を形成すると考えられています(民法709条)。
そこで、浮気をすると、配偶者から慰謝料請求されることになります。
浮気は浮気した既婚者と浮気相手の2人で行う不法行為ですから、浮気された配偶者は、裏切ったパートナーだけではなく浮気相手にも慰謝料請求することができます。
2、浮気を処罰する法律は日本には存在しない
それでは、浮気を処罰する法律はないのでしょうか?
日本では、浮気によっては刑事上の責任は発生しないものと考えられています。
誰と性関係を持つかということは、人間の自由な意思決定に任せるべきものであり、そのような私生活上の事柄に法律が立ち入るべきではないと考えられているからです。
日本でも、明治時代の旧刑法には、浮気を罰する「姦通罪」という法律がありましたが、現行刑法では廃止されています
なお、諸外国では、未だに浮気を処罰する国があります。
韓国でも、つい最近まで姦通罪がありましたし(現在は廃止されています)、台湾やフィリピンやインド、アメリカの一部の州、イスラム教国家などでは、浮気が刑事罰の対象となっている国があります。
3、浮気を処罰する法律がなくても…結婚していれば原則として慰謝料請求が可能になる
配偶者に浮気されたら慰謝料請求することができますが、具体的にはどういったケースで慰謝料が発生するのでしょうか?
法律上、不貞行為があると「不法行為」が成立します(民法709条)。
このことは、最高裁の昭和54年3月30日の判決において、判断されています。
不貞は当事者の故意にもとづく行為ですし、夫婦の婚姻関係を破綻させる点で違法と言えるからです。
不貞行為とは、法律用語で言うところの「不倫」「浮気」のことです。
法律上の「不貞」という場合、既婚者が配偶者以外の異性と「肉体関係と持つこと」が必要です。単につきあっているというだけでは「不貞」とはいえません。
以上のように、浮気によって慰謝料が発生するのは、基本的に夫婦が結婚しているケースに限られますが、内縁関係であっても法律婚に準じたものとして、不貞が成立します。
また、不貞が成立するためには肉体関係が必要なので、慰謝料を請求するためには、パートナーが浮気相手と性交渉をしている証拠を押さえる必要があります。
4、浮気の法律はないけれど…法律上の「不貞」の定義について
法律上、どこからが損害賠償請求の認められる「浮気」(不貞)となるのか、もう少し詳しく見てみましょう。
(1)肉体関係があったことが必要
先ほども説明しましたが、法律上責任が発生するためには、肉体関係があったことが必要です。
たとえば、以下のような事情しかないケースでは、基本的に慰謝料は発生しません。
- デートをした、高級レストランで食事をした
- 手をつないだ
- 見つめ合った
- キスをした
- 誕生日やクリスマス、2人の記念日にプレゼントを贈った
- バレンタインデーにプレゼントやチョコレートを贈った、受けとった
- 出会い系サイトに登録して出会いを求めたり、実際に相手と会った
- 婚活パーティーに出席して独身と言って出会いを求めた
- メールやLINEで「好き」「愛してる」などと言った
- SNSで親密なやり取りをしている
- 裸の写真を送った、もらった
- ビデオチャットのサイトで、お互いに裸の姿を見せた
(2)自由意思であることが必要
次に、不貞が成立するためには、自由意思に基づくことが必要です。
一方的に性行為を強要された場合には、不貞は成立しません。
たとえば、レイプの被害に遭ったからと言って不貞にならないことは、明らかです。
(3)婚姻関係が破綻していないことが必要
不貞で慰謝料が発生するのは、不貞によって、婚姻関係を破綻させてしまうからです。
そこで、不貞で慰謝料が発生するためには、まだ婚姻関係が破綻していないことが必要です。既に夫婦関係が壊れている場合に不倫をしても、慰謝料は発生しません。
たとえば、別居後に別の異性と性関係をもったからといっても、慰謝料は発生しないのです。
家庭内別居の場合には、夫婦関係の破綻の程度によって判断が異なってきます。
(4)相手に故意過失が必要
これは、不貞相手に慰謝料請求をする場合の要件ですが、不貞相手に故意過失が必要となります。
たとえば、パートナーが浮気相手に「独身」であると説明しており、浮気相手がその言葉を完全に信用して、実際にパートナーと浮気相手の結婚話が具体的に進んでいたようなケースでは、浮気相手に対する慰謝料請求が認められない可能性があります。
5、浮気の法律はないけれど…浮気したパートナーに対する慰謝料請求の手順と費用
配偶者が浮気したら、まずはパートナー自身に慰謝料請求することができます。
パートナーと浮気相手は、故意によって浮気という違法行為をしたことになるからです(民法709条)。
そこで、浮気したパートナー自身に対する慰謝料請求の手順をご説明します。
(1)まずは、浮気の証拠を集める
まずは、浮気の証拠を集めましょう。
証拠がないと、相手がしらを切ったときにそれ以上追及することができないからです。
証拠集めの具体的な方法については、次項で説明をします。
(2)パートナーに対し、慰謝料の支払いを求める
証拠を集めたら、相手に対して慰謝料を払うよう、請求します。
離婚をするなら、離婚条件として慰謝料支払いをするように求めましょう。
離婚せずに慰謝料のみを請求することも可能です。
ただ、離婚しない場合、慰謝料の金額は減りますし、夫婦である限り家計が同一であることが多いので、あまり意味が無いかもしれません。
相手と話し合いができたら、協議離婚合意書を作成しましょう。
慰謝料が分割払いになる場合には、離婚公正証書にしておくことをお勧めします。
(3)離婚調停を申し立てる
話合いによっては相手が慰謝料支払いに応じない場合には、離婚調停を起こすことができます。
離婚調停では、家庭裁判所の調停委員を介して、相手と離婚や慰謝料の問題について話し合うことができます。
(4)離婚訴訟を起こす
離婚調停でも相手が慰謝料支払いに合意しない場合には、離婚訴訟を起こすことにより、離婚と慰謝料支払いを求めることができます。
きちんと不貞の証拠を揃えていたら、裁判所は離婚を認めてくれますし、慰謝料の支払いも認めてくれるでしょう。
6、浮気の法律がなくてもパートナーが浮気していたら証拠を集めよう!
配偶者による裏切りに遭い、慰謝料請求をすることに決めたら、まずは証拠を集めなければなりません。そのときに必要な証拠をご紹介します。
(1)メール、LINE、SNSでの通信内容
たとえば、メールやLINE、各種のSNSでのやり取りで、2人が肉体関係をもったことが直接わかるものがあれば、不貞の証拠とすることができます。
一緒に旅行に行ったことや行こうとしていること、相手の家に宿泊したことやホテルに泊まったこと、利用したことがわかるものなどが有効です。
単にデートしただけや「好き」などと行っているだけでは、証拠としての価値は低くなります。
(2)写真
ホテルで2人で撮影した写真、裸の写真、性的な写真などは不貞の証拠としての価値が高いです。
これに対し、単にデートしているだけの写真では、不貞とまでは言いにくいです。
(3)領収書やクレジットカードの明細書
たとえば、2人で泊まったホテルの領収書があれば、肉体関係があると言いやすいです。
ただし、誰と泊まったかまではわからないので、確実な証拠とはなりません。
単に高級ディナーを食べたり、贈り物をしたりしただけでは不貞の証拠として弱いです。
(4)謝罪文、誓約書
たとえば、先に不貞相手に慰謝料請求をして不貞相手が不貞を認めた場合には、それを前提に配偶者に慰謝料請求することができます。その逆も可能です。
そのためには、先に請求した相手から、不貞を認める内容の謝罪文や誓約書を取っておきましょう。
詳しくは「浮気・不倫の証拠を集める前に知っておくべき6つのこと」の記事をご参照下さい。
7、浮気は法律で裁けないけれど…結婚していなくても浮気相手へ慰謝料請求できるケースもある!
先にも少しご紹介しましたが、パートナーの浮気によって慰謝料請求できるのは、「法律婚」のケースだけではありません。
法律婚とは、婚姻届を提出して戸籍上の夫婦になっている状態のことです。
これに対し、事実婚という状態があります。
実際には夫婦として一緒に生活しているけれども、婚姻届は提出していない状態です。
現在の日本では夫婦の姓を揃えないといけないので、夫婦別姓を希望するカップルなどが事実婚を選択していることが多いです。
事実婚の場合にも、実態としては夫婦と同じ状態ですから、内縁の妻や夫は、法律婚の妻や夫と同じように保護されます。
そこで、事実婚の配偶者が不貞行為をしたときには、不貞された方の配偶者は相手に慰謝料請求することができます。
慰謝料の金額についても、事実婚だから減る、ということにはなりません。
まとめ
今回は、不貞に対する法律上の取り扱いについて、解説しました。
配偶者が不貞したら不法行為が成立しますので、配偶者や不貞相手に慰謝料請求することができます。
そのためには証拠を集めることが必要ですし、交渉や裁判もしなければなりませんので、弁護士に依頼すると有利です。
配偶者の浮気でお悩みの場合、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。