離婚時において夫婦の共有財産を清算する財産分与ですが、借金がある場合はどのように配分するのでしょうか。
しかも、プラスの資産よりも借金などの負債が多い状態である場合、借金も財産分与の対象となるのでしょうか?
この記事では、
・離婚時の財産分与において、借金は分与の対象か?
・借金の財産分与への影響と対策
・借金が多い場合の離婚後の生活計画
について、多くの離婚事件を解決してきたベリーベスト法律事務所の弁護士が監修し、詳しく解説します。離婚時に借金が絡む場合の知識を提供し、読者の皆様にお役立ていただければ幸いです。
1、離婚時の借金も財産分与の対象となる?
そもそも財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を結婚期間中の貢献度に応じて分配することをいいます。
以下のような財産が財産分与の対象になります。
- 給与
- 貯金
- 土地や建物などの不動産
- 家具、家電
- 退職金
→退職金について詳しくは「離婚時に財産分与として退職金を獲得するために知っておくべき5つのこと」をご参照下さい。
これらに加えて、マイナスの財産(借金)も、財産であることに変わりはありませんので、財産分与の対象となります。
2、離婚の財産分与の対象となる借金はどのようなものがある?
では、全ての借金が財産分与の対象となるのでしょうか?
そんなことはありません。
そもそも財産分与は婚姻期間中に変化した夫婦の共有財産を離婚時に清算するものです。そのため、夫婦の一方が結婚前にしていた借金は基本的に財産分与の対象とはなりません。
また、財産分与の対象となるのは、あくまで夫婦の共有財産と夫婦の共同生活のために負った借金に限られます。
ですから、夫婦の一方が自分のために借り入れた借金については財産分与の対象とはなりません。
具体例を挙げますと、以下の通りになります。
(1)財産分与の対象となる借金の例
- 不足した生活費を補うために借り入れた借金
ここでいう生活費には一般的に必要とされる衣食住の費用の他、医療費や子供の教育費などが含まれます。 - 家族で使うために買った車のローン
- 家族で居住するために購入した住宅の住宅ローン
(2)財産分与の対象とならない借金の例
- 収入や生活レベルと比較して明らかに高い個人的な買い物や浪費のためにした借金(クレジットカードの支払いやカードローンなど)
- ギャンブルのための借金
3、離婚の財産分与で借金がある場合の注意点など
プラスとマイナスの財産を合計して、プラスになれば、プラス部分をどのように分けるかという話をしていくことになります。
これに対して、プラスとマイナスの財産を合計してマイナスとなる場合は、分与すべき財産がないということになり、借金については、基本的には借り入れた配偶者が支払うことになります。
(1)借金があれば財産分与を放棄できる?
財産分与請求の権利は、夫婦双方に認められる権利です。
夫婦双方の本人の意志に基づいて、財産分与の権利を放棄することは可能です。
借金額が資産額よりも大きい場合、財産分与を請求したいとは思わないでしょう。このような場合には、特に「財産分与を放棄」する必要はありません。
「財産分与の放棄」は、財産分与を放棄することを条件に、他の離婚条件については譲歩してもらうための手段となされるケースが一般的です。
たとえば、自分に離婚原因がある場合に、相手に慰謝料請求権を放棄してもらう代わりに、自分の財産分与の放棄を提案できます。
(2)自営業の配偶者が負う借金は財産分与の対象となる?
自営業の配偶者が、事業のために受けた融資などの借金について、離婚後も配偶者は返済義務を負うのでしょうか。
例えば、自営業の夫が、事業の資金などのために妻個人名義で借金をした場合、法的には借金の名義人の妻に返済義務が生じます。
妻は、離婚後に元夫との事業から離れたとしても、借金返済義務を負うこととなるのです。
本来なら「事業のための借金」は財産分与の中では検討されません。
しかし、協議離婚や調停離婚において、上記のケースにおいて、「夫が借金を返済をする」旨の合意が夫婦間でされれば、清算できる可能性があります。
まとめ
今回は借金がある場合の財産分与について書いてきましたがいかがでしたでしょうか?
夫婦の共有財産がプラスの財産よりマイナスの財産が多い、という状態にある方の参考になれば幸いです。