妊娠中に、夫からの離婚申し出に直面した場合、衝撃と悲しみが頭をもたげることでしょう。未来への不安、離婚手続きや条件、そして慰謝料や養育費など、さまざまな問題が立ちはだかります。
もし妊娠中に夫から離婚を切り出されたり、すでに離婚が進行中である場合、事前に知っておくべき情報を収集しましょう。
この記事では、以下の点に焦点を当てています。
・妊娠中に夫から離婚を申し出される原因
・妊娠中に夫から離婚を切り出された場合の適切な対処法
・妊娠中に夫から離婚を切り出された際の慰謝料請求について
・妊娠中に夫から離婚を切り出された場合の子供の養育費について
・妊娠中に夫からの離婚に対応するためのステップ
妊娠期間は体力的にも大変な時期かもしれませんが、これからの子供のためにも、適切な対処法を理解し、準備しておくことが大切です。
離婚したくない方はこちらの記事もご参考にしてください。
目次
1、妊娠中に夫が離婚を切り出す原因とは
妊娠をすることは、夫婦にとって喜びや幸せの訪れになるものです。
しかし、一部の夫にとってはそうではない場合があります。妊娠中という、本来であれば幸せなタイミングで、なぜ離婚を切り出す夫もいます。
本章では、妊娠中に夫が離婚を切り出す原因として、考えられるものを見ていきましょう。
(1)妻の変化への混乱や不満
妊娠をすれば、女性は身体も心も変化します。お腹が大きくなるだけではなく、つわりなどの体調不良も起こります。夫に向けられていた時間や愛情が、お腹の子供に向けられることになってしまいます。
以上のような妻の変化に、夫が不満を抱えたり混乱したりすることで、離婚を考えるようになってしまうケースがあります。妊娠によって、夫婦の夜の営みが激減することに不満を持つ場合や、妻を女性として見られなくなってしまうことで、離婚を切り出すケースもあるでしょう。
(2)父親になることへの重圧
子供が生まれるということは、家族への責任感がより一層重くなります。これから父親になることへの準備が整っていない場合、父親になる重圧に耐えきれなくなり、逃げ出したいと考える男性もいます。「本当に自分は父親になれるのだろうか」という不安と重圧から、離婚を切り出すケースも考えられるでしょう。
(3)浮気
妻の妊娠への不安や混乱などが理由で、離婚を切り出す夫もいますが、本当の理由は浮気だというケースも少なくありません。妻が妊娠している間に、他の女性と浮気をしてしまい、「浮気相手と関係を続けたい」「まだ遊びたい」といった理由から、離婚を切り出すケースもあります。
本当に妻への不満や父親になる準備ができていないことが理由で離婚を切り出している可能性もあります。しかし、浮気が原因かもしれないという疑いを一度は持ってみてもいいかもしれません。
2、妊娠中に離婚を夫から切り出されてしまった場合どのように対処すべきか?
妊娠中に離婚を切り出されたら、パニックでどのように対処すべきか分からなくなってしまうものです。
しかし、生まれてくる子供と自分の将来のためにも、冷静に考えて対処するようにしましょう。
妊娠中に離婚を夫から切り出された場合に、行うべき対処法をご紹介します。
(1)離婚理由が真実であるのか探る
離婚を切り出すからには、夫は何らかの離婚理由を話すはずです。
しかし、その離婚理由を鵜呑みにするのではなく、真実であるのかを探りましょう。性格の不一致や妻への不満などを理由に話している場合でも、本当の離婚理由は浮気の場合もあります。
離婚理由が真実なのか探る場合には、夫にバレないように探るようにしてください。もし浮気が本当の理由なのであれば、妻が探っていることに気付いてしまうと、浮気の証拠を隠されてしまうかもしれません。
(2)夫婦関係の再構築は可能か話し合う
子供が生まれるというタイミングで離婚をすることは、夫婦だけではなく、今後の子供にも影響を及ぼすことになります。そのまま離婚を受け入れるのではなく、夫婦関係の再構築が可能かどうか話し合ってみましょう。
夫婦だけで話し合うことが上手くいかない場合には、夫婦カウンセラーなど専門家の助けを借りることも検討してみてください。
(3)一時的に別居する
夫が離婚の話を切り出してきたとしても、まだ心のどこかでは迷いがあるかもしれません。
そこで、里帰り出産などで一時的に別居をすることを提案してみてはいかがでしょうか?物理的に離れることで、夫も冷静に考え直すことができ、妻の大切さに気付く可能性もあります。
(4)離婚について検討する
夫婦関係を再構築するための話し合いや、別居をしても、夫の離婚する意思が変わらない場合には、離婚について検討することになるでしょう。
離婚するのであれば、次のような今後の生活など決めるべきことがたくさんあります。
可能な限り自分に有利な条件で離婚できるように、専門家である弁護士に相談しながら、離婚に向けた準備をすることをおすすめします。
3、妊娠中に離婚を夫から切り出された場合、慰謝料は請求できるのか?
妊娠中に離婚を切り出すような夫には、慰謝料請求したいと考える方も多いでしょう。これから生まれてくる子供のためにも、お金は必要です。妊娠中に離婚を切り出された場合に、慰謝料請求をすることはできるのでしょうか?
(1)妊娠中に離婚を夫から切り出されたという理由では慰謝料を請求できない
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金のことを指します。
妊娠中という大事な時期に離婚を夫から切り出されたことは、確かに精神的苦痛になります。
しかし、妊娠中に離婚を夫から切り出されたという理由だけで、慰謝料を請求しても認められません。
離婚の慰謝料は、「離婚に至った原因」が相手方に法律上の離婚原因である場合にこれについての精神的苦痛に対して認められる慰謝料です。妊娠中に離婚を夫から切り出されたという理由だけではとは言えず、慰謝料が請求できるケースには当てはまりません。
(2)離婚で慰謝料を請求できるケースとは
妊娠中に離婚を夫から切り出されたという理由では、慰謝料請求することはできません。
しかし、「離婚に至った原因」が他にあれば慰謝料請求できる可能性があります。
離婚慰謝料として請求できる離婚原因は、次のものが挙げられます。
以上のような理由があれば、慰謝料請求は認められます。不貞行為の場合は、配偶者だけではなく、不倫相手に慰謝料請求することも可能です。
4、妊娠中に離婚を夫から切り出された場合、子供の養育費はどうなるのか?
妊娠中に離婚を切り出されたら、これから子供を育てるために必要となる養育費のことが不安になるでしょう。
子供が生活するための費用や学費など、子供を育てるにはお金がかかるため、夫にも請求したいと考えるものです。妊娠中に離婚をしたとしても、夫に養育費を支払ってもらうことは可能なのでしょうか。
(1)夫には養育費を支払う義務がある
子供が未成年の場合には、離婚をしても、夫に「扶養義務」があります。子供を育てていくために必要な費用を、「養育費」として請求できるのです。
妊娠中の場合は、まだ生まれてきていない子供になりますが、父親である夫には離婚をしても養育費を支払う義務があるので、養育費を請求するようにしましょう。
(2)養育費の相場とは
養育費の支払い義務は、法律で定められているものの、具体的な金額が定められているわけではありません。養育費の金額は、双方の収入に応じて定められるものであり、家庭ごとに異なります。
養育費の金額の決定は、「養育費算定表」と呼ばれる、養育費を算出する表を参考に行われます。
具体的に以下の項目が考慮され、金額が決まります。
- 夫の年収
- 妻の年収
- 子供の年齢 など
(3)養育費は公正証書で契約すべき
養育費の取り決めを決めたとしても、途中で支払いを怠る夫も少なくありません。夫が養育費を支払うことを怠るような事態や、支払いを拒否されることを防ぐためにも、養育費に関する取り決めは「公正証書」に残すべきです。
公正証書には、裁判所の判決と同等の効力があります。夫が取り決め通り養育費を支払わない場合には、裁判を行わずに、強制執行で財産を差し押さえることができます。夫も強制執行は避けたいはずなので、取り決め通りに養育費を支払うことが期待できるでしょう。
5、妊娠中に夫から切り出された離婚に応じる場合にすべきこと
妊娠中に切り出された離婚に応じることになった場合、離婚や今後の生活のために決めるべきことは複数あります。少しでも有利な離婚条件にするためには、事前にしっかり離婚準備を行うことが大切です。
離婚に合意する前に、次のことを確認しておきましょう。
- 財産の確認
- 相手の不法行為の確認と証拠集め
- 養育費の算出
- 今後の生活の拠点や仕事について検討する
- 自治体から受けられる補助について調べておく
(1)財産の確認
離婚する場合、結婚してから夫婦で築いてきた財産は、「財産分与」によって夫婦で公平に分割します。
財産分与によって、ある程度まとまった金額を受け取ることができるため、離婚後の当面の生活費や新生活の準備に充てようと考える方もいるかもしれません。公平に財産分与を行うためにも、離婚に合意する前に、夫婦の財産について確認しておくことが大切です。事前に確認しておくことは、夫が財産を隠してしまうことの予防や、今後の生活のための準備のために必要といえます。
ただし、婚姻期間が短い場合には、夫婦で築いた財産は少ないことが予想されるため、財産分与で分割される財産は少ないでしょう。
(2)相手の不法行為の確認と証拠集め
妊娠中に離婚を切り出されたという理由で、慰謝料を請求することはできません。
しかし、婚姻生活中に不法行為があった場合には、慰謝料請求を行うことができます。
不倫やDV、モラハラといった不法行為があった場合、離婚請求と同時に慰謝料請求することも検討してください。
不倫の場合は、まず不倫が行われていたのか、事実関係を確認する必要があります。不法行為の証拠を集め、慰謝料請求の準備を行いましょう。
不倫の証拠探しが難しい場合には、探偵や興信所など専門家に依頼するという選択肢もあります。
(3)養育費の算出
妊娠中に離婚したとしても、夫はお腹の子の父親であるため、養育費を支払う義務があります。子供を育てていくためにも、離婚する際にしっかりと養育費請求ができるように、事前に養育費を算出しておくことも大切です。
養育費は、夫婦それぞれの年収など総合的な状況を踏まえて算出されます。ご自身で算出することが難しい場合には、弁護士に相談してみてください。
(4)今後の生活の拠点や仕事について検討する
離婚をして、自分が家を出る場合には、新しい住居について考えなければなりません。これから子供が生まれてくることも踏まえ、実家を頼れるなら、実家の近くなど両親や家族のサポートの受けやすい場所を選ぶことなども検討してみてください。
引っ越すのであれば、引っ越し代や新しい居住地の家賃・敷金なども発生するため、費用をあらかじめ確保する必要があります。離婚をすれば、今後は自分の力で生活をしていかなければならないため、離婚後の仕事についても考えておきましょう。
(5)自治体から受けられる補助について調べておく
離婚をしてシングルマザーになることは、生活面で厳しいと感じることもあるかもしれません。
しかし、自治体にはシングルマザーをサポートするような手当や補助が設けられています。自治体ごとに内容は異なりますが、母子手当や児童手当など、毎月数万円の支給を受けられるでしょう。
他にも、シングルマザーが受けられる補助は以下のように充実しています。
- 住宅手当
- 育成手当
- 医療費の助成
- 保育料の減額
- 公共料金の割引 など
離婚をして新生活を始める前に、ご自身の住む自治体では、どのようなサポートを受けることができるのか調べておきましょう。
6、妊娠中に離婚を夫から切り出された場合には弁護士に相談しましょう
妊娠中に離婚を夫から切り出されれば、肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けるでしょう。子供のためにも、ストレスなく体を大事にしたいと考えても、離婚のことで頭がいっぱいになってしまいます。
1人で今後のことを考えることが困難だという場合には、弁護士に頼りましょう。今後の選択肢について相談することができるだけではなく、離婚や慰謝料請求をする場合には、有利な条件になるようにサポートしてもらえます。相手との話し合いや手続きなども任せることができるため、精神的負担を軽減させ、これからの出産に集中しやすくなるはずです。
まとめ
妊娠中に離婚を夫から切り出された場合には、まずは落ち着いて離婚原因について探ってみましょう。本当の離婚原因に不倫が関係しているという場合には、慰謝料を請求できます。
これから生まれてくる子供とご自身の将来のためにも、弁護士に相談して後悔のない慰謝料や離婚請求を行いましょう。