個人再生の効果:借金を減額する手続きのポイントとは?

個人再生の効果:借金を減額する手続きのポイントとは?

個人再生では、実際にいくらほど借金が減額されるのかは、個人再生手続きを始める時点での借金残高に依存しますが、借金元本を含めて相当な負担軽減が期待できます。

しかし、個人再生を選択することにはデメリットも存在しますので、手続きを検討する前に、その影響をよく理解しておくことが重要です。

今回は、

  • 個人再生と他の債務整理方法の違い
  • 個人再生を選択する際に留意すべき事項
  • 個人再生手続きを自力で行うべきか、それとも弁護士に依頼すべきか

について解説します。

個人再生に関してはこちらの記事をご覧ください。

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1、個人再生が借金に与える効果とは?

個人再生は、裁判所に申立てをして借金の減額を認めてもらう方法です。

債務整理といわれる方法の一つですが、他の債務整理(個人再生の他にも、主に任意整理や自己破産という方法があります)とどのような違いがあるのかについて理解しておきましょう。

(1)個人再生は借金の元本を減額する

個人再生では、借金の利息だけでなく、元本についても減額をしてもらうことが可能です。

具体的には、裁判所に申立てをした時点の借金残高に応じて、以下のように減額幅が決まります。

申立て時の借金残高の総額個人再生手続き完了後の残高
100万円未満減額はありません
100万円以上~500万円未満100万円だけを支払います
500万円以上~1500万円未満借金残高の5分の1だけを支払います
1500万円以上~3000万円未満300万円だけを支払います
3000万円以上~5000万円以下借金残高の10分の1だけを支払います

例えば、申立て時に400万円の借金があるという方は、300万円は免除してもらって100万円だけを支払えばよいという形にしてもらえます。
減額後の借金は原則として3年間で分割払いしていくことになります。

毎月ごとの分割払いであれば、100万円÷3年間(36か月間)=約28,000円となります。

なお、毎月の収入額に波があるようなときには、返済頻度を2ヶ月に1回(18回払い)、3ヶ月に1回(12回払い)にすることも可能です。

(2)任意整理は借金の利息のみを減額する

任意整理は、個人再生とは違って債権者と直接交渉を行って和解契約を結ぶ形の債務整理方法です。
そのため、基本的には債権者側とどのような交渉を行うかによって借金の減額幅が決まることになりますが、相手が金融機関である場合には、「利息の免除」だけが認められるケースが多いです。

この場合、借金の元本については減額がされませんので、借金の残高がかなり大きくなっているという方は個人再生を選択する方がメリットは大きいでしょう。

(3)自己破産は借金をゼロにする

個人再生と同じく、裁判所に申立てをする債務整理方法として、自己破産があります。
自己破産では、原則としてすべての借金を免除してもらうことが可能です(ただし、税金や社会保険料の滞納分は免除されません)。

個人再生よりも借金の減額効果は大きいといえますが、借金を作ってしまった理由によっては免責が認められないというケースもあるので注意が必要です。

2、個人再生を選ぶべきケースの4つの特徴とは?

個人再生は、財産を失わずに多額の借金でも解決できる手続きということができます。

どのようなケースで個人再生を選択するべきか?について、さらに詳しく見ていきましょう。

(1)借金の残高がかなり大きい

上述の通り、個人再生では借金残高に応じて、借金元本の減額を認めてもらうことができます。
借金の金額が比較的小さく、「利息の免除さえ認めてもらえたら自力で借金完済が可能」という方であれば、手続きがスピーディに完了できる任意整理を選択することにメリットがあるでしょう。

一方で、借金の残高がかなり大きくなってしまっているという方は、個人再生によって借金元本の減額も認めてもらう必要があります。

(2)自宅を手放したくない

個人再生の特徴として、住宅ローン特則という特別なルールがある点があげられます。
住宅ローン特則とは、簡単に言うと「住宅ローンの支払を継続することを条件に、マイホームを手放すことなく、住宅ローン以外の借金の減額を認めてもらえる」というものです。

例えば、「銀行から借りている住宅ローンが2000万円、消費者金融から借りている無担保のローンが500万円ある」という方であれば、住宅ローンの支払いは継続して、無担保のローンを100万円まで減額してもらうことが可能となります(マイホームには住み続けることができます)。

上と同じケースで個人再生ではなく自己破産を選択した場合には、住宅ローンに設定されている抵当権が実行されてマイホームは失う結果となります。

(3)職業の資格制限があると困る

自己破産の場合職業制限がありますので、一定の種類の仕事をしている人は休職や転職を余儀なくされるケースも考えられます。
(一定の種類の仕事とは、弁護士や税理士といった士業、保険会社や証券会社の営業マンなどが該当します。なお、取得した資格が失効するわけではなく、一定期間後は復職が可能です)

個人再生を選択した場合には、こうした職業制限は何もありません。

(4)借金の原因が浪費

自己破産を選択した場合、一定の理由によって借金を作ってしまった事情がある場合には、最終的に借金の免責が認められない可能性があります。

一定の理由とは、以下のような場合をいいます。

  • ギャンブルや投資の失敗で借金をした場合
  • 浪費や無計画なショッピングで借金をした場合
  • 財産隠しなどが発覚した場合

※なお、上のケースに該当しても、裁判官の裁量によって免責が認められることがあります。

個人再生の場合、どのような理由で借金を負うに至ったかは問われませんので、上のような事情がある方は個人再生によって借金の一部免除を受けることを検討すると良いでしょう。

3、個人再生で知っておくべきこと4つ

ここまで、個人再生を選択するメリットについて解説してきましたが、デメリットについても理解しておきましょう。

個人再生を他の債務整理と比較した場合、次のようなことがデメリットとなる可能性があります。

  • 裁判手続きであるため手続きに手間と時間がかかる
  • すべての借金(債務)を対象に手続きをしなければならない
  • 全額免除はされない
  • ある程度の収入がないと利用できない

それぞれのデメリットについて、順番に解説いたします。

(1)裁判手続きであるため手続きに手間と時間がかかる

個人再生は、裁判所に申立てをして行う手続きであるという点で任意整理と異なります。
裁判所に個人再生の手続きを認めてもらうためには、必要書類をそろえて申し立て書類を作成しなくてはなりません(弁護士に依頼した場合にはこうした書類作成は代行してもらえます)
あなたの生活費や収入の状況などについても、裁判所に対して詳細に報告する必要がありますし、申立てが受理された後も、裁判官との面談や選任される個人再生委員とのやりとりなどのために裁判所に出向かないといけない場合があります。
必然的に、任意整理などと比較すると手続きに手間と時間がかかることに注意しておきましょう。

個人再生を裁判所に申し立てた場合、最終的に再生計画案が認可されるまでは6か月程度の時間が必要になります。

(2)すべての借金(債務)を対象に手続きをしなければならない

個人再生は、すべての借金(債務)を対象に行わなければならない手続きです。
そのため、「金融機関から借りているお金については借金整理したいけれど、友人知人から借りているお金はこれまで通り返す」といった形をとることができません。
ここが、任意整理より不自由な点と言えるでしょう。
もっとも、精算手続きをしたくない友人からの借金でも、手続き後に任意に全額支払うことは可能です。

(3)全額免除されない

個人再生では、借金残高・保有財産の状況に応じて、その一部について返済を免除してもらえます。
しかし、自己破産の場合のように、全額免除を受けられるわけではありません。

(4)価値のある資産を持っている場合は注意が必要

資産価値の高い財産を持っているときには、借金減額幅が小さくなることがあります。
個人再生では、「仮に自己破産した場合に配当可能な金額」よりも多い金額を債権者に返済しなければならないとされているからです。
これを清算価値保障の原則とよびます。

たとえば、住宅ローンを完済している(ローン残額が評価額よりも少ない)不動産を持っているようなケースでは、清算価値が大きくなり過ぎて個人再生では借金が全く減額されないこともあります。

(5)ある程度の収入がないと利用できない

個人再生手続きでは、最終的に「再生計画」という減額後の借金を返済していく計画書を裁判所に認可してもらわなくてはなりません。
再生計画の認可を受けるためには、あなた自身にある程度安定した収入があることが条件となります。

ただし、自分名義での収入がなくても、専業主婦なので配偶者に十分な収入があるケース、アルバイトやパートの人、年金生活者でも、再生計画の遂行が可能な程度の継続的な収入があれば、個人再生を利用できます。

4、個人再生は自分でできる?自分で手続きする場合の注意点とは

この記事を読んでいらっしゃる方の中には、「個人再生手続きを自力でやろうと考えている」という方も多いかもしれません。 

弁護士などの専門家に個人再生の手続きを依頼すると費用が発生しますから、少しでも負担を小さくするために自力で手続きを行うことは一見合理的であるように思えます。
しかし、結論から言うと、個人再生手続きを法律実務の経験がない方が自力でやるのは難しいのが実情です。

その理由としては、次のようなことがあげられます。

  • 必要書類や申立て書類の準備にはかなりの労力が必要
  • 弁護士に依頼しない場合も、個人再生委員の費用が必要になる
  • 適正な再生計画案を期限までに作成・提出する必要がある

以下、順番に説明いたします。

(1)必要書類や申立て書類の準備にはかなりの労力が必要

個人再生の申立てを裁判所に対して行うためには、以下のような必要書類をそろえて提出しなくてはなりません。

  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者の一覧表
  • 家計の収支報告書
  • 所有財産の目録
  • 最低弁済額を算出する計算書

これらの書類は経験のない方が作成する際には非常に労力がかかります。

不備があると申立てが受理してもらえないことも考えられますので、弁護士に依頼して準備してもらった方がよいでしょう。

(2)弁護士に依頼しない場合も、個人再生委員の費用が必要になる

個人再生手続きを弁護士に依頼せずに行う場合、裁判所は多くのケースで「個人再生委員」を選任します(ただし、弁護士に依頼した場合にも選任されることがあります:東京地方裁判所ではすべての事案について再生委員が選任される扱いとなっています)。

個人再生委員は、あなたが裁判所内での手続きをしていく上で様々な支援をする役割を持った人で、通常は資格を持った弁護士が選任されます。

この個人再生委員が選任される場合には、当然ながら再生委員に対して支払う報酬が発生することに注意が必要です。
弁護士に依頼した場合には再生委員報酬は15万円、弁護士に依頼しない場合には25万円が相場となります。

(3)適正な再生計画案を期限までに作成・提出する必要がある

個人再生の手続きでは、手続き開始後、債権認否表や再生計画案などをそれぞれの決められた提出期限までに作成して提出しなければならず、この期限内に提出できないと手続が廃止されてしまいます。

そして、特に肝心の再生計画案では、債務が減額された後の支払額について、どの債権者にいくら分配するのか、毎月の支払額はいくらになるのか、毎月支払うか3ヶ月に1回の支払いにするかなど、再生計画案が認可された後の支払いについて、法律の要件を満たすように計画案を作成しなければならず、経験のない方がこれらの書類を作成することは難しいといえます。

弁護士に依頼すれば、裁判所での手続きが開始された後についても、しっかり手続をしてくれますから安心です。

5、個人再生を弁護士に依頼する3つのメリット

個人再生を弁護士に依頼した場合には、次のようなメリットがあります。

  • あなた自身は手続き上の労力をほとんど負う必要がない
  • 自力で手続きするよりも早く借金問題を解決できる
  • 弁護士費用は分割や後払いも可能

こちらも順番に解説します。

(1)あなた自身は手続き上の労力をほとんど負う必要がない

個人再生を弁護士に依頼した場合には、申立て書類の作成や、裁判所内で必要となる手続きについて、基本的にはすべて弁護士に代行してもらうことができます。

あなた自身は、基本的に弁護士からの報告を待つだけで手続きが自動的に進んでいきますから、手続き的な労力は最低限で済みます。

(2)自力で手続きするよりも早く借金問題を解決できる

弁護士に依頼した場合、債務整理手続きを専門とする弁護士が書類作成や裁判所手続きを代行しますから、あなた自身が手続きをするよりもスピーディに再生計画の認可まで進むことが可能になります。

(3)弁護士費用は分割や後払いも可能

弁護士費用は、分割での支払いを認めている法律事務所がほとんどですから、「今は手元にお金が無くて困っている…」という方でも弁護士に依頼することは可能です。
弁護士費用については初回の相談時に見積もりを出してもらうなど、トータルで発生する金額を把握しておくようにしましょう。

まとめ

この記事では、個人再生の手続きを選択した場合に、借金にどのような効果があるのかについて解説いたしました。
本文でも見たように、個人再生を選択することにはメリットとデメリットの両方があります。

「自分にはどの債務整理方法がベストなのかいまいちよくわからない」「個人再生すべきか、自己破産すべきかで迷っている」という方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。
弁護士はあなたの状況に合わせて、最適な解決方法をアドバイスしてくれます。

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