離婚をすることによってシングルマザーになるのは避けたいと思って、離婚を迷われている方も少なくないでしょう。
シングルマザーとしての未来を幸せに歩むためには、シングルマザーに関連する様々な問題や、シングルマザーになることの良い面について知り、シングルマザーになるための準備をする必要があります。
そこで、以下のテーマについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士監修のもと、多くの離婚事件を解決してきた経験から、シングルマザーになる前に知っておくべき事柄をご紹介します。
- シングルマザーとなる離婚の原因
- シングルマザーの世帯数の現状
- シングルマザーになると受けられる自治体の補助金やサービスなどの援助
これらの情報を通じて、離婚前にシングルマザーとしての生活や子育てに対する不安を解消し、困難を乗り越えるための準備を整えましょう。
ご参考になれば幸いです。
目次
1、シングルマザーとなった方の離婚原因
シングルマザーとなった方々が離婚した理由を探ると、最も一般的な原因は性格や価値観の不一致です。特に、子育てが始まると、夫婦の性格や価値観の不一致が子育て方針の不一致につながり、埋めがたい溝が生じることが多いようです。このような不一致が深刻化すると、離婚を選択せざるを得なくなるケースが多いです。
また、夫の浮気やDVなど、将来の共同生活が困難な明白な原因が続きます。こうした問題は、夫婦関係を損なうだけでなく、子供たちにとっても深刻な影響を与える可能性があるため、離婚が避けられない場合があります。
さらに、夫の親族との折り合いが悪い、セックスレスなどの理由も離婚の原因として挙げられます。夫婦関係に悪影響を及ぼす要因は多岐にわたり、その解決方法も複雑です。それでも、夫婦関係の修復が不可能な場合には、離婚を選択することも一つの選択肢となるでしょう。
2、離婚してシングルマザーとなる世帯数
離婚はしたいけれどもシングルマザーになると世間体が心配だという方もいらっしゃるでしょう。しかし、シングルマザーの数はあなたが思っている以上に多く、厚生労働省の「令和3年国民生活基礎調査の概況」によりますと、令和3年における全国の世帯総数は5191万4000世帯で、そのうち「ひとり親世帯」は68万9000世帯となっています。この数字の全てが離婚によってシングルマザーになった家庭というわけではなく、シングルファーザー世帯、離婚ではなく死別等他の原因を含みますが、離婚によってシングルマザーになった方々も相当多いと思われます。
シングルマザーだからといって引け目を感じる必要は全くないのです。
3、離婚してシングルマザーとなるリスクは?
シングルマザーになると、金銭的な問題が深刻化する可能性があります。特に、専業主婦だった場合、夫の浮気やDVによって突然離婚を余儀なくされた場合は、問題が大きくなります。
今後は、自身が一家の大黒柱として子供を含めた生活を支えていかなければなりませんが、仕事を見つけること自体が容易ではないため、困難を伴います。
また、シングルマザーだと、仕事よりも子どもを優先するという偏見を持たれることもあります。仕事が見つかったとしても、夫の収入と同等程度の収入を得ることは難しいでしょう。
さらに、離婚前から仕事をしていた場合でも、夫の収入がなくなるため、使えるお金が減ることがあります。
もうひとつのリスクは、子育てに関するものです。これまで夫婦で子育てをしてきた場合、ひとりで子育てをすることになります。
また、多くの場合、仕事をしながら子育てをすることになるため、時間的、体力的な負担が大きくなります。子どもの成長をサポートするためには、日々の生活において多くの時間とエネルギーを費やす必要があります。
そのため、仕事と子育てを両立することは、困難を伴うことが多いでしょう。
また、万が一、子どもが病気にかかった場合や、急なイベントが発生した場合は、急な欠勤や休業を余儀なくされることがあるため、仕事に支障をきたすこともあります。
さらに、シングルマザーは、社会的に孤立するリスクもあります。パートナーがいれば、相談できる相手がいたり、助け合いができたりする場合がありますが、シングルマザーの場合は、一人で多くのことを抱え込むことが多いため、精神的な負担が大きくなることがあります。
また、周囲からの偏見や差別もあり、自分自身や子どもたちが受ける影響が大きくなることもあります。
以上より、シングルマザーになると様々なリスクを抱えることがあるため、事前に理解しておくことが重要です。
また、支援団体や地域のネットワークを活用することで、孤立感を解消し、社会的なサポートを受けることができるため、積極的に活用することをおすすめします。
4、体験談!シングルマザーになってよかったことは
このようなリスクがあるとはいえ、シングルマザーになった方々の中には、よかったという方が多いという事実があります。私たちが離婚をお手伝いしたシングルマザーの方たちも、結局はシングルマザーになってよかったと感じ、もっと早く決断すべきだったとおっしゃる方が多数いらっしゃいます。
金銭的な問題はリスクとして挙げられますが、ご自身で家計を管理することができるようになるため、収入が減っても計画を立てやすく、むしろ貯金をすることもできたという声も聞かれます。
また、ほとんどすべての方が挙げられるのが、自由になったという点です。これまで夫との生活でストレスを抱えていたところ、離婚によってストレスから解放されるだけでなく、夫に気兼ねなく子どもと外出ができたり、ママ友と会うことができたりと、これまでの様々な縛りから解放されるという点が最大のメリットとされています。
また、自由という点については、DVを受けていた方々にとっては、夫の暴力におびえる必要がなくなるという点も、シングルマザーになってよかったことの一例でしょう。
意外に多いのが、家事の負担が減ったという声です。ひとり分とはいえ、洗濯すべきものが減ったり、掃除をすべきスペースが減ったりすることで、格段に負担が減ったと実感される方が多いようです。
5、シングルマザーが離婚前に準備しておくべきことは?
このような声があるのは確かですが、離婚前に今後シングルマザーとなることを見越して様々な準備をしておくことが大前提になります。では、具体的にはどのような準備をしておく必要があるのでしょうか。大まかにいって①お金のこと、②住む場所のこと、③仕事のことの3つです。
(1)お金の準備
離婚に向けてまず大事なのは、今後の生活の目途を立てることです。そして、生活の目途を立てる上で一番重要なのが今後の金銭面のやりくりです。離婚をして新しい住まいを見つけ引っ越すだけでまとまった金銭が必要になりますし、その後の生活や子育ての事を考えたら、離婚に向けてお金の準備や調達の手段を検討しておく必要性をご理解いただけるかと思います。
しかし、離婚までに何百万も自己資金を用意しておく必要があるということではありません。離婚となれば夫から財産分与や場合によっては慰謝料をうけとることができますし、お子さんの生活費や教育資金として毎月養育費を受け取ることができます。さらに、子供手当や母子手当など公的な補助金も受け取ることができますから、新生活にかかる費用とともに、これらがどれくらいになりそうかという点をしっかりと計算しておきましょう。
(2)住む場所の準備
離婚となると、これまでの家から出てあたらしい住まいを見つける必要が出てくる場合もあるでしょう。その場合、スムーズに新生活を始められるよう、新しい住まいについては離婚の話を具体的に進める前から十分に考えておく必要があるでしょう。
母子家庭であれば公営住宅に優先的に入居できる自治体もありますし、各種の補助金を用意している自治体もあるようです。住宅費にあてられる予算に応じてこうした制度を利用することも視野に入れて、離婚後にどこに住むか、その原資をどう確保するかについて検討しておきましょう。
(3)仕事の準備
離婚前から仕事を持ち働かれていればいいですが、主婦をされていたというかたであれば、離婚とともに今後の生活の維持のため、仕事を始める必要があるでしょう。しかし、これまで仕事の現場から離れていた方が突然仕事を見つけようと思ってもそう簡単には職を得ることができません。離婚に向けて計画的に就職活動を行うようにしましょう。
6、シングルマザーが離婚に際してもらえる可能性があるお金は?
シングルマザーになる準備にあたってはお金の準備が必要といいました。ここからは、離婚にあたってどのようなお金をもらうことができるのか具体的に説明していきます。
(1)財産分与
離婚に際しては財産分与を行う必要があります。財産分与とは、名義の 如何を問わず、婚姻後に増えた夫婦の財産は、離婚に際して二分の一ずつ分配するというものです。具体的には、結婚後に増えた預貯金や株等の有価証券、購入した不動産等を離婚に際して二人で半分ずつに分けるということになります。
もっとも、トータルの財産がマイナスになる場合、たとえば、自宅を購入したが、オーバーローンで売却してもローンが残ってしまうような場合というのは、分与すべき財産がないということになります。また、夫婦双方が婚姻前から有していた財産も基本的には財産分与の対象にはなりません。
財産分与について詳しくは以下の関連記事をご参照下さい。
(2)慰謝料
離婚の原因が夫にある場合には、夫に対して慰謝料を請求することができます。具体的には、不倫やDVといった事情があることが必要です。性格の不一致など、どちらかが一方的に悪いということができない事情が原因の離婚の場合には慰謝料を得ることはできません。
慰謝料について詳しくは以下の関連記事をご参照下さい。
(3)養育費
離婚後、シングルマザーとなり、お子さんの親権を獲得した場合には元 夫から毎月、養育費を得ることができます。養育費は、元夫とあなたの収入に応じて、家庭裁判所が用意している養育費算定表にしたがって金額がきまることになります。
調停離婚をする場合には、調停調書と呼ばれる合意事項の確認書に養育費についても記載があり、元夫が後に支払いを滞らせた場合にはこれをもって差押えが可能になりますが、協議離婚の場合には、注意が必要です。養育費について公正証書を作成し、不払いに備える必要があるでしょう。
養育費について詳しくは以下の関連記事をご参照下さい。
(4)婚姻費用
これは、離婚にあたり、協議中や調停中別居をする場合、離婚までの期間に夫から貰える月々の生活費です。相手方が任意に払ってくれればいいですが、支払ってくれない場合は調停を起こす必要があります。調停を申立てた月の分までさかのぼって支給を認めてもらえるので、別居をしたらなるべく早く婚姻費用分担調停を申立てましょう。
婚姻費用について詳しくは以下の関連記事をご参照下さい。
(5)年金分割
また、離婚にあたっては年金分割を求めることができます。年金分割とは、離婚後に片方配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し,それをもう片方の配偶者が受け取れるという制度です。将来、受け取ることのできる年金の額が変わってきますから、離婚の際は忘れずに手続きをとるようにしましょう。
あくまで,将来受け取ることのできる金額の変更をする手続ですので,すぐにお金が受け取れるというものではないので注意しましょう。
7、シングルマザーがもらえる手当と助成金
母子家庭では、自治体から各種の手当や助成金を受け取ることもできます。
(1)生活保護
生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活(憲法 25条)を保障するために支給されるお金です。
相談・申請先はお住まいの地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当です。
(2)児童手当
児童手当とは、0歳から中学校卒業までの児童を対象とする手当です。
申請先は各市区町村の役所です。
支給される金額は以下の通りです。
- 3歳未満の場合:月額 10,000円
- 3歳以上の場合:第1子と第 2子は月額 5,000 円、第 3子以降は月額 10,000円
(3)児童扶養手当
離婚などによって父母いずれかからしか養育を受けられない子どもを対象とする手当です。
申請先は各市区町村の役所です。金額については以下の通りです。
①子どもが一人の場合
- 全部支給の場合 月額 41,020円
- 一部支給の場合 所得に応じて月額 41,010円から9,680 円まで 10円きざみの額
※全部支給か一部支給かは所得により決まります。
②子どもが二人の場合 対象児童が 2人の場合、上記金額に5,000円加算
③子どもが三人以上の場合 対象児童が 3人以上の場合、上記金額に 1人につき3,000円ずつ加算
(4)児童育成手当
18歳の3 月31日までの子どもを養育する一人親を対象とする手当です。
申請先は各市区町村の役所です。
金額については以下のとおりです。
月額 13,500円
※所得制限あり
(5)母子家庭等の住宅手当
母子家庭等の住宅手当は、 20歳未満の子どもを養育している母子家庭で 10,000円以上の家賃を支払っている場合に給付される手当です。申請先は各市区町村の役所です。支給条件や金額は各役所にお問い合わせ下さい。
(6)ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親家族等医療費助成制度は、母子家庭等の医療費の一部を助成する制度です。
受給条件や受給額等詳細は各市区町村の役所にお問い合わせ下さい。
公的助成について詳しくは以下の関連記事で説明しています。
まとめ
今回は離婚してシングルマザーになってしまった場合に知っておきたいことを紹介していきましたがいかがでしたでしょうか。ご参考になれば幸いです。