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財産分与のやり方とは?損しない離婚のための5つのポイント

財産分与のやり方とは?損しない離婚のための5つのポイント

離婚をする場合に気になることというと、やはり「お金」の問題でしょう。

離婚時には、慰謝料や養育費などを取り決めることになりますが、婚姻生活の長い夫婦では、財産分与の金額が高額になる傾向にあります。
財産分与に含まれる財産は何か、どのように財産を評価するのかなど複雑な問題がありますので、事前に何も知らずに離婚をしてしまうと思わぬリスクを被るおそれがあります。

そこで今回は、

  • 財産分与のやり方
  • 財産分与の計算方法
  • 財産分与で少しでも多くもらうためのやり方
  • 財産分与のやり方における注意点

などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が紹介、解説します。

この記事が、離婚を検討している方々のご参考になれば幸いです。

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1、財産分与のやり方について知る前に〜財産分与とは?

財産分与のやり方を知る前に、まずは財産分与とは何かを知っていなければなりません。
以下では、財産分与の基礎知識について説明します。

(1)財産分与の目的

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を離婚時に分与する制度のことをいいます。

夫がサラリーマンで、妻が専業主婦という家庭では、夫の収入で夫婦が生活をしていくことになります。そして、夫婦の資産の多くは、夫名義のものとなっているでしょう。もし、財産分与という制度がなかったとすると、夫が夫名義の資産を持って離婚をすることになり、一緒に生活をしていたにもかかわらず妻にはほとんど財産が残されないことになってしまいます。

このような不都合性を回避するための制度が財産分与なのです。

(2)財産分与の内容

財産分与には、主に以下の3つの要素が含まれています。

①清算的要素

清算的要素とは、夫婦で築いた財産を夫婦の貢献度に応じて分配するというものです。財産分与の3つの要素の中で中心的な内容となる要素であり、「財産分与」というと清算的要素のことを指すことが多いです。

②扶養的要素

扶養的要素とは、離婚後に夫婦の一方が経済的に困窮することがないように経済的に援助するというものです。夫婦の一方が病気で働けない場合や経済力に乏しく安定した収入が見込めないなどの場合に認められることがあります。

ただし、扶養的要素は、あくまでも補充的な要素になりますので、扶養を必要とする事情と扶養をするだけの能力がある場合に限定的に認められるものになります。どの夫婦にも必ず認められる要素というわけではありませんので注意が必要です。

③慰謝料的要素

慰謝料要素とは、離婚にあたって有責性のある配偶者から慰謝料の意味合いで支払われるものをいいます。

通常は、離婚時には、財産分与とは別に慰謝料を請求しますので、慰謝料的要素が問題になることは少ないといえます。慰謝料的要素を含んだ財産分与がなされたとしても、その額が十分でない場合には、財産分与とは別に慰謝料を請求することもできます。

(3)財産分与の割合

財産分与をするにあたっては、夫婦の財産をどのような割合で分けるかを決めなければなりません。

財産分与の割合については、基本的には夫婦が話し合いによって決めることができますが、2分の1の割合とするのが一般的です。夫がサラリーマンで、妻が専業主婦の家庭のように資産形成が専ら夫の収入によってなされていたとしても、この割合は変わりません。妻も家事労働によって資産形成に貢献していたという事情があることから、2分の1の割合が原則とされています。

ただ、例外的に2分の1が妥当でないケースもあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

2、財産分与のやり方

財産分与をする場合には、以下のようなやり方で進めていきます。

(1)財産分与の対象となる財産の確認

財産分与をするためには、まずは、財産分与の対象となる財産を確認する必要があります。 

夫婦の財産であれば何でも財産分与の対象になるわけではありません。財産分与は、あくまでも婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のみが対象となります。

①財産分与の対象となる財産~共有財産~

財産分与の対象となる財産のことを「共有財産」といいます。共有財産には、財産の名義が夫婦共有になっているものだけでなく、どちらか一方の名義の財産であっても夫婦の協力によって築いたものであればそれも含まれます。

共有財産にあたる財産としては、以下のもの等が挙げられます。

  • 現金、預貯金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 不動産
  • 保険の解約返戻金
  • 退職金

②財産分与の対象とならない財産~特有財産~

財産分与の対象とならない財産のことを「特有財産」といいます。民法では、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産」(民法7621項)を特有財産として財産分与の対象から除外しています。

特有財産にあたる財産としては、以下のもの等が挙げられます。

  • 結婚前に貯めた現金・預貯金
  • 親から相続した財産
  • 住宅購入時に親から受けた援助金
  • 別居後に取得した財産
  • 浪費やギャンブルのための借金

③ローンは財産分与の対象?

ローンや借金については、夫婦の共同生活の中で生じたものであれば、財産分与にあたって考慮されます。考慮対象となるローン等は、たとえば、生活費のための借入、住宅ローン、自動車ローン、教育ローンなどがあります。

借金が財産分与で考慮の対象となる場合、プラスの財産からマイナスの財産を引いた残額を財産分与割合に応じて分与するという方法で処理します。マイナスの財産が上回る場合には、借金を夫婦で分けるということはせずに、財産分与をしないというのが実務上の一般的な取り扱いです。

なお、ローンや借金の負担を夫婦で取り決めたとしても、対債権者との関係で基本的には何の効力もありません。夫婦間での取り決めによって、債権者との関係で返済義務がなくなったり、新たに生じたりすることはありませんので注意しましょう。

(2)財産分与を決定する方法

財産分与をする場合には、一般的には以下のような流れで進めていきます。

①協議

離婚と同様に財産分与についても、まずは、夫婦の話し合いによって決めることになります。

財産分与の話し合いをする前提として、夫婦がお互いに保有する資産をすべて開示して、共有財産をリストアップする必要があります。

そして、リストアップした財産をもとに、誰が、どのような財産を、どのような割合で取得するのかについて話し合いを行います。

話し合いによって財産分与の条件が決まった場合には、後日争いにならないようにするために必ず書面に残しておくようにしましょう。

②調停

夫婦の話し合いによって財産分与の問題が解決しない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。一般的には、夫婦関係調整調停(離婚調停)の付随的な事項として財産分与の話し合いが行われますが、離婚後に財産分与のみを求めて調停を申し立てることもできます。

後者の財産分与請求調停が不成立となった場合には、自動的に審判という手続きに移行して、裁判官が相当と考える財産分与の方法を決定します。

③訴訟

離婚調停が不成立となった場合には、最終的に離婚訴訟を提起して解決を図ることになります。財産分与も離婚訴訟の請求内容として一緒に審理されることになります。訴訟になると、財産分与だけでなく、離婚事由の有無、親権者、慰謝料などその他の諸条件についても争わなければなりませんので、弁護士に依頼して進めていくとよいでしょう。

3、財産分与の計算方法

それぞれの資産について、分与の計算方法を説明します。

(1)現金・預貯金

現金や預貯金については、別居時の残高が基準となります。子ども名義の預貯金についても、夫婦の財産を原資として捻出されたものであれば、財産分与の対象に含まれます。

(2)不動産

不動産については、住宅ローンが残っているか否かによって以下のとおり計算方法が異なってきます。

①住宅ローンがない場合

住宅ローンがない場合には、当該不動産の評価額が財産分与の基準となります。 

不動産の評価については、現金や預貯金のような一律の基準があるわけではなく、固定資産税評価額、路線価、不動産会社の査定、不動産鑑定士の鑑定などさまざまな評価方法があります。

評価方法によって不動産の金額は大きく変動しますので、どのような評価方法を採用するかは慎重に判断しましょう。

②住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている場合には、不動産の評価額から住宅ローンを控除した金額が財産分与の対象となります。住宅ローンを控除した結果、マイナスになる場合には、当該不動産は、価値がないものとみなして、財産分与の対象から除外されます。

たとえば、3000万円の評価額の建物があり、住宅ローンの残額が3500万円であった場合には、当該建物は価値がありませんので、財産分与の対象外となります。

③不動産購入費を夫婦一方が特有財産で支払いしている場合

不動産を購入する際に夫婦の一方が特有財産から支払いをしていた場合には、財産分与の計算にあたっては、特有財産部分を控除する必要があります。

ただし、不動産は、購入時から価額が変動していることが通常ですので、単純に支払った金額を控除するのではなく、現在の評価額から当時支払った特有財産割合を控除するという方法をとります。

たとえば、5000万円の不動産を購入し、夫が独身時代に貯めたお金から1000万円を頭金として支払ったとします。そうすると、特有財産割合としては、20%になります。現在の不動産の評価額が4000万円であったとすると、夫の特有財産部分は800万円になりますので、3200万円が財産分与の基準となります。

(3)退職金

退職金については、離婚時の年齢によって財産分与の対象となるかどうかが異なってきます。 

既に退職をして現実に支払われた退職金については、当然財産分与の対象に含まれます。

しかし、まだ、退職をしていない場合には、定年が近いなどの退職金が将来支払われる蓋然性が高い場合に限って財産分与の対象に含まれるという取扱いが一般的です。ただし、定年がまだ先という年齢であっても、現在自主的に退職した場合に退職金がいくらになるのか計算が可能な場合には、その金額については財産分与の対象とするという扱いも多くなってきています。

退職金が財産分与の対象に含まれるとしても、財産分与の対象になるのは、あくまでも婚姻期間中に築いた財産の部分になりますので、婚姻前からその会社で働いている場合には、その期間分を控除した部分が財産分与の対象となります。

(4)生命保険

財産的価値のある生命保険についても財産分与の対象に含まれます。生命保険の保険金は事故が生じてから支払われるものですので、事故が生じる前の財産分与の時点では、保険金額ではなく、解約した場合の解約返戻金相当額が財産分与の対象になります。

ただし、財産分与の対象になるのは、あくまでも婚姻期間中に築いた財産の部分になりますので、婚姻前から加入している保険であれば、その期間分を控除した部分が財産分与の対象となります。

(5)その他

婚姻後に犬や猫などのペットを購入した場合には、当該ペットも財産分与の対象に含まれます。ペットの評価は、別居時の時価で行いますので、財産的価値はそこまで大きくはならないでしょう。

しかし、家族同様に生活していたペットをどちらが引き取るかで揉めるケースも少なくありませんので、ペットを引き取る代わりに一定の財産を支払うという取り決めが必要になることもあります。

4、財産分与で少しでも多くもらうためのやり方

財産分与で少しでも多くの財産を分けてもらうためのやり方としては以下のとおりです。

(1)離婚の意思を伝える前に共有財産を洗い出す

財産分与で少しでも多くの財産をもらうために重要となるのが、対象となる財産を漏れなく調査するということです。

婚姻中にお互いの財産をすべて把握しているのであれば問題はありませんが、多くの夫婦は、お互いにどのような財産を保有しているかを正確に把握しているということは少ないでしょう。そのため、相手が隠している財産があったとしてもそれに気付かずに財産分与を進めてしまうということもあります。そうすると本来得られたであろう財産に比べて低い金額しかもらうことができません。

離婚の意思を伝えた後では、相手も警戒して財産を開示してくれないこともありますので、離婚を検討している方は、相手に離婚の意思を伝える前に相手の保有している資産を調査することをおすすめします。

(2)財産分与の増額を離婚の条件にしてもらう

財産分与の割合や金額については、夫婦が話し合いによって自由に決めることができます。

相手から離婚を求められており、早期に離婚をすることを望んでいるという場合には、離婚に応じる代わりに財産分与の金額を増額してもらうように交渉してみるとよいでしょう。

話し合いで離婚が成立しなければ、調停や裁判を行わなければならず、離婚理由によっては、裁判をしても離婚が認められない場合もあります。どうしても離婚をしたいと迫られている場合には、有利な離婚条件を引き出すことができる可能性もありますので、相手の申し出にすぐに応じるのではなく、慎重に交渉を進めていくようにしましょう。

5、財産分与のやり方における注意点

財産分与をするにあたっては、以下の点に注意をするようにしましょう。

(1)共働きの場合は財産分与の割合が変化する?

財産分与の割合は、原則として2分の1ですが、共働きの夫婦であったとしても基本的にはこの割合は変わりません。

しかし、一方が画家やスポーツ選手など特殊な才能や資格によって高額な収入を得ている場合には、例外的に財産分与の割合が修正されることがあります。

(2)離婚原因が配偶者の法定離婚事由に該当する場合は財産分与を拒否できる?

財産分与は、夫婦の共有財産の清算が目的ですので、離婚にあたっての有責性などとは無関係です。そのため、DVや不倫など離婚にあたって有責性のある配偶者からの財産分与の請求も認められます。

ただし、離婚にあたって有責性のある配偶者に対しては、慰謝料を請求できますので、慰謝料と相殺をすることによって実質的には財産分与を拒否できるという場合もあります。

(3)配偶者に共有財産を勝手に処分されていたらどうすればいい?

財産分与の対象財産は、夫婦の協力関係が終了した時点である別居時までに形成された財産を対象とすることになります。

そのため、別居後に共有財産を勝手に処分されたという場合でも財産分与の対象財産の範囲には影響はありませんので、ご安心ください。既に処分されてしまった財産についても財産分与にあたっては存在するものとして扱われますので、不利になることはありません。

6、財産分与のやり方で困ったら…弁護士に相談しよう!

財産分与は、対象財産の調査、対象財産の評価、財産分与の割合・方法など財産分与のやり方次第によって最終的な金額が大きく異なってきます。経済的に余裕がなければ、離婚後に新たな気持ちで再出発をすることができません。そのため、離婚にあたって適切な財産分与の金額を獲得するということは非常に重要な事項となります。

弁護士であれば、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託を駆使して対象となる財産を漏れなく洗い出すことができます。また、複雑な財産分与のやり方に関しても、専門的知識に基づき適切に対応することができますので、安心して任せることができます。

離婚時には、財産分与以外にも親権、養育費、慰謝料など取り決めなければならない事項がたくさんあります。弁護士に依頼をすることによって、ご自身で交渉する必要がなくなりますので、時間的・精神的負担が大きく軽減されることでしょう。

自分一人で悩むよりも専門家である弁護士に相談をするようにしましょう。

まとめ

財産分与は、離婚に関する諸条件のなかでも特に争いになる項目の一つです。不利な条件で離婚をすることを避けるためにも弁護士によるサポートは欠かせません。納得できる条件で双方が合意して離婚をするためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

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