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【DV慰謝料請求】効果的な請求方法と相場より多くもらうための8つのポイント

「DV夫に慰謝料を請求したい……。」

もし、暴力的な夫によって心身が傷つけられた場合、その考え方はまったくもって正当です。

配偶者からDVを受けている場合、基本的に慰謝料を請求することは可能です。DVは身体的・精神的な暴力であり、暴力行為は法的に明確に不法とされています。

重要なのは、慰謝料を請求するためには証拠が必要であるということです。

しかし、DVは一般的には自宅のような密室で行われることが多いため、証拠を確保する方法に戸惑う方も多いかもしれません。

そこで、この記事では以下の内容について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が豊富な解決経験に基づいて解説します。

・DVにおける慰謝料の相場と判例
・DV離婚で高額な慰謝料を獲得するための秘訣
・DV夫が慰謝料の支払いを拒否した場合の対処法

この記事が、配偶者からのDVに苦しむ方々の手助けとなり、問題を解決するための参考になれば幸いです。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、DVでの慰謝料額の相場は?

DVでの慰謝料の相場はどの程度なのでしょうか。

程度によってまちまちですが一つの目安としてご紹介します。

(1)DV慰謝料は数十万円〜300万円程度

DVに対する慰謝料の相場はおおよそ数十万円〜300万円程度といわれています。

大きな幅がありますが、ひと口にDVといっても被害者が肉体的精神的な苦痛を受ける度合いはさまざまですので、金額も変動するのです。

なお、DVの慰謝料は当事者同士の話し合いで合意すれば、相場にとらわれず自由に金額を決めることができます。

ですので、相場はあくまでも目安と考えて夫婦間で話し合うことも大切です。

(2)DV慰謝料額を上げる4つの要素

では、DVの慰謝料額はどのような要素によって左右されるのでしょうか。

慰謝料額が上がる要素として、DVの頻度や期間、度合い、原因の4点が挙げられます。以下で、1つずつみていきましょう。

①DVの頻度

DVが行われる頻度がどの程度だったのか、たった1度の暴力なのか、それとも毎日繰り返される暴力なのかによって慰謝料の金額が変動します。

もちろん頻度が高いほど慰謝料は高額になります。

②DVの期間

DVが行われた期間も重要な要素です。

婚姻期間が長く、DVの期間も長期間に渡っている場合には慰謝料の高額請求が可能になります。

一方で、婚姻期間が短い場合や、婚姻期間が長くてもDV期間がさほど長くなければ慰謝料は低くなる可能性があります。

③DVによるダメージの程度

DVによって被害者が受けたダメージの程度も、大きく慰謝料金額が変動する要素です。

例えば、暴力によって怪我をしたり、うつ病など精神の病にかかってしまった場合には、慰謝料額は高額になるでしょう。心身に後遺症が残ったような場合には、相当高額の慰謝料請求が可能となります。

DVを受けたものの怪我もせず、うつ病にもかからなかった場合はどうなのかというと、心配はいりません。上記のような大きなダメージが残った場合に比べれば低額になりますが、慰謝料請求は可能です。

DVの具体的な内容や程度を立証できれば、被害者が受けた精神的苦痛の程度はある程度公平に推認されますので、実際には大きなダメージが残っていないとしても慰謝料は認められるのです。

④DVの原因がもっぱら加害者側にある

DVの原因がもっぱら加害者側にある場合にも慰謝料は高額になる傾向があります。

あなたに非がないにもかかわらず、夫の思い込みでの一方的なDVだったような場合には、慰謝料は高額になります。

また、夫がDVもしてさらに浮気もしているような場合は悪質性が高いので、さらに高額の慰謝料請求ができる可能性があります。

(3)慰謝料1,000万というケースも

相場にかかわらず、当事者間の合意によって高額の慰謝料が支払われるケースもあります。

社会的地位や名誉など、お金に変えられないものが加害者側にある場合は、交渉によって高額を請求することができる可能性があります

このようなケースでは弁護士に交渉を任せましょう。

また、DVによってうつ病にかかってなかなか治らないような場合にも、相場を超える慰謝料が認められるケースが多くなっています。

後遺症のために働けない場合には、思うように収入が得られなくなりますので、その損害を「逸失利益」の賠償請求することも可能です。

この場合には、合計で1,000万円以上の賠償金が認められる可能性があります

もし、後遺症が残るなどの大きな損害を受けた場合は、損害に見合うだけの慰謝料等を請求すべきといえます。

2、一度手をあげられただけでは慰謝料請求は無理?

一度であっても、他人に暴力をふるうということは不法行為に他なりません。そのため、法律上は、慰謝料請求は可能です。

ただ、たった1度ということになると、多くの場合、暴力の証拠が残りづらく、精神的ダメージも少ないと判断される可能性が高いのです。

そのため、「精神的ダメージは少ないだろう」という推測を覆すことが必要です。一度のDVがどんなに傷ついたのか、傷ついたからこそ起こった事実についてまとめておきましょう。

慰謝料請求という形ではなくても、離婚をするなら財産分与の交渉等の離婚条件について有利にもっていく方法もあります

3、DV慰謝料は離婚後でも請求可能!ただし時効に注意

DV慰謝料は離婚後でも請求可能!ただし時効に注意

DV夫と早く別れたいため慰謝料を請求せず先に離婚したり、離婚時に慰謝料を請求したくてもDV夫が恐くて請求できなかったという人も少なくありません。

このような場合はどうすればよいのでしょうか。

(1)離婚後でも慰謝料請求は可能

DVに対する慰謝料は、DV行為が終了してから3年で時効にかかることに注意が必要です。

慰謝料は他人の不法行為に基づく損害賠償金であり、損害が発生したことと加害者が誰なのかを知ってから3年は請求可能だからです(民法第724条1号)。

例えば、夫のDVが原因で別居を始め、DV行為がない状態で3年以上が経過してから離婚した場合、DV慰謝料は時効にかかっています。

もし、時効期間が迫っている場合には、内容証明郵便を送付するなど証拠が残る形で請求すれば、6か月間だけ時効の完成を猶予することができます

また、話し合いによって相手が慰謝料の支払いを承認するか、調停や裁判を起こせば時効は更新され、時効期間はゼロに戻って新たに進行することになります。

(2)過去のDVで慰謝料請求するときの注意点

ただし、過去のDVに対して慰謝料請求をする場合にはいくつかの注意点があります。

①証拠集めが難しくなる

慰謝料を請求するときには、証拠が重要となります。
証拠がなければ、相手が事実を否定した場合にそれ以上問い詰めることができなくなるからです。

DVの場合は、リアルタイムで証拠を確保しておかなければ、過去の事実に関する証拠を集めようと思っても難しい場合があります。

②一度許した場合は慰謝料請求できない

DVを受けた事実があったとしても、一度相手と話し合って許した場合は、慰謝料の請求権を放棄したことになりますので、基本的に慰謝料請求はできなくなります。

ただし、その後もDV行為があった場合には慰謝料請求が可能です。
その場合、過去のDV行為も立証できれば、DVを繰り返したことで悪質性が高いと判断され、高額の慰謝料を請求できる可能性もあります。

③離婚協議書を作成していると慰謝料請求できないこともある

離婚時に「慰謝料は請求しません」「これ以上の請求はしません」などと記載した離婚協議書を作成している場合は、その後に慰謝料を請求することはできません。

ただし、DV夫から「この離婚協議書にサインしろ」と強要されて、逆らうことができずにやむを得ずサインしたような場合には、請求できる可能性もあります。

4、DV慰謝料の判例を見てみよう

DV慰謝料の判例を見てみよう

では実際の判例からDVが原因の離婚に関する慰謝料の相場を見ていきましょう。

あなたの事例と照らし合わせて参考にしてみてください。

(1)夫のDVで妻に慰謝料50万円が認められた判例

夫から暴力や暴言などのDVを受けていた事案で、妻に慰謝料50万円が認められた判例があります。

このケースでは、妻に通院歴はなく後遺症などが残っていないことと、夫のDV行為に対して妻も暴力的に応戦していたことなどから、慰謝料が比較的低額となりました。

(東京地裁H18年8月28日)  

(2)夫のDVとモラハラで妻に慰謝料100万円が認められた判例

夫から酷い暴力に加えてモラハラも受けていた事案で、妻に慰謝料100万円が認められた判例があります。

このケースでも妻が怪我をしたなどの事実はなく、さほど高額の慰謝料は認められませんでした。

しかし、婚姻期間が1年2か月と短く、その間に夫婦関係が良好な時期もあったことから、DVの期間も短期間にとどまっていました。それを考えると、慰謝料100万円は低額ではないともいえます。

(東京地裁H18年1月17日)

(3)夫のDVで怪我をした妻に慰謝料200万円が認められた判例

このケースでは、度重なる夫からのDV被害があり、妻は肋骨の不全骨折、腰の骨にヒビが入るなどの怪我を負ったことから、妻に慰謝料200万円が認められました。

ちなみに、婚姻期間は10年以上であり、DVの期間もそれなりに長期に及んでいたと考えられます。

このように、怪我などの実害が発生した場合には、高額のDV慰謝料が認められるようになってきます。

(東京地裁H18年7月27日)

(4)夫のDVで後遺症が残った妻に慰謝料300万円が認められた判例

このケースでは、度重なる夫からのDVが原因で後遺障害併合8級と診断された妻に慰謝料300万円が認められました。

「併合」というのは、複数の後遺障害が残った場合に総合的に評価し、より重い等級に認定される処理方法のことをいいます。

DVをした夫に対しては、慰謝料300万円の他に治療費などの入通院費用の支払いも命じられました。

このように、被害者に後遺症が残った場合には、単に怪我をしただけの場合よりも慰謝料が高額となります。

(東京地裁H18年11月29日)

(5)夫のDVでPTSDを発症した妻に慰謝料800万円が認められた判例

このケースでは、髪を掴む、顔面を殴るなどという夫からのDVによって妻が外傷を負い精神的な苦痛を受けた上に、子どもに対するDVもあったことから、妻は子どもを連れて別居しました。
別居後に妻がPTSDを発症したという事案です。

夫からのDVが原因でPTSDを発症したことを医師が認めたことから、妻に慰謝料800万円が認められました。

夫のDVが始まった原因は妻が体調不良を理由に性行為を拒絶したこととされていますが、それでも夫のDV行為の程度が酷く、妻に重大な損害が発生したことから高額の慰謝料が認められたといえます。

(神戸地裁H13年11月5日)

5、DV離婚で高額慰謝料を確実に獲得する2つの秘策とは?

DV離婚で高額慰謝料を確実に獲得する2つの秘策とは?

DV慰謝料の相場に大きな幅があるのなら、できる限り高額の慰謝料を獲得したいところでしょう。

そこで、確実に高額慰謝料を獲得するための秘策をご紹介します。その秘策は、以下の2点です。

(1)なんといっても「証拠」集め

慰謝料を獲得するために最も大切なことは、確実な証拠を集めることです。

いくらDVの事実を妻が主張しても証拠がなくては言い逃れされてしまうでしょう。

有効な証拠としては、例えば、夫のDV行為をとらえた動画や、罵声・侮辱などの音声の録音などが挙げられます。

DVによって怪我をしたり、うつ病を発症したような場合には、傷の画像や医師の診断書なども大きな決め手になります。

また、暴力を受けた事実を目撃した第三者の証言も証拠になります。

DVによって精神的に苦痛を味わったことを相談機関に相談した履歴も証拠になるでしょう。

友人や両親などへ送った相談のメールやLINE、手紙なども有効です。

慰謝料請求を考え始めたら、できる限り早い段階で有効な証拠数多く集めるようにしましょう。

どんな証拠が必要か迷ったら、弁護士に無料相談してみましょう。

(2)プロによる交渉で決着をつける

慰謝料を高額化させるためには、プロに交渉してもらうことが有効です。

自分で思うように交渉できないなら、迷わずに弁護士に相談してみてください。

法的根拠をもって加害者と交渉してもらえます。

弁護士はあなたに代わってDV加害者と交渉してくれますので、相手に対して恐怖心を抱いている場合でも安心して交渉を任せることができます。

6、DV夫が慰謝料を払わないときの対処法

DV夫が慰謝料を払わないときの対処法

DV夫に慰謝料を請求しても、素直には応じないことが多いものです。
そんなときはどのように請求手続きを進めるのかを解説します。

(1)内容証明郵便を送付する

口頭やメールによる請求で夫が応じない場合は、内容証明郵便で慰謝料請求書を送付するのが有効です。

内容証明郵便とは、誰が・いつ・誰に対して・どのような内容の文書を送ったのかを郵便局が証明してくれる郵便のことです。

慰謝料請求書の中に「応じてもらえない場合は法的手段を取る」と記載しておくことでこちらの本気度が相手に伝わり、心理的な強制力が期待できますので、話し合いが進む可能性があります。

(2)調停を申し立てる

内容証明郵便には法的な拘束力はありませんので、それでも相手が応じない場合は法的手段を取ることになります。

これから離婚する場合は、まず家庭裁判所に「離婚調停」を申し立て、その中でDV慰謝料について話し合います。

調停では、家庭裁判所の調停委員が相手方との話し合いを仲介します。調停委員にこちらの言い分を理解してもらうことができれば、相手方を説得してくれることもありますので、慰謝料の獲得が期待できます。

(3)裁判を起こす

調停も話し合いの手続きですので、相手が応じない場合は慰謝料を獲得することはできません。
その場合には、裁判を起こすことになります。

離婚調停をしていた場合には、「調停不成立」となった後に、改めて「離婚訴訟」を起こします。

すでに離婚している場合も、「損害賠償請求訴訟」を起こすことでDV慰謝料の請求が可能です。

裁判でDVの事実と損害を主張し、証拠で立証することができれば、判決で慰謝料の支払いが命じられます。

(4)債務名義がある場合は強制執行

債務名義とは、調停が成立した場合の「調停調書」や、裁判で勝訴した「判決書」または「和解調書」、離婚協議書の「公正証書」などで、金銭の支払い義務について法的な強制力が認められている書面のことです。

これらの債務名義があるのに相手方が慰謝料を支払わない場合は、裁判所に強制執行を申し立てて相手方の給料や預金口座などを差押え、強制的に慰謝料を回収することができます。

7、DV離婚における慰謝料の他の金銭請求権

DV離婚における慰謝料の他の金銭請求権

DVが原因で離婚をする場合は、慰謝料だけではなく他の金銭請求権もありますから、そちらも忘れずに請求しましょう。

仮に思ったほどの慰謝料を獲得できない場合でも、以下の名目で離婚後に必要なお金を確保することも可能です。

(1)財産分与

離婚をする場合には、婚姻期間中に共有で築いた財産の分与を請求できます。

たとえば、夫婦で貯めた貯金の半額はあなたにもらう権利があるのです。

その他、家具や美術品などの財産も相談で分与することが可能です。

しかし、生活費のための借金や住宅のローンなど負債はプラスの財産から差し引くことになるので、プラスがあるときだけ財産分与を請求できることには注意してください。

(2)養育費

離婚してあなたが未成年の子どもを引き取る場合は、養育費を相手に請求できます。

慰謝料と共に養育費の請求を忘れないようにしましょう。

養育費は子どもが成人に達するまでは継続して請求することができます。

一時金ではありませんから、しっかり請求しましょう。

養育費をもらえるのは、基本的には子どもが20歳になるまでですが、大学に入れることを想定しているなら、話し合いによって最初から22歳までと決めることもできます。

とはいえ、想定よりも子どもが早く就職したなどの理由で養育費の減額請求の調停を申し立てられる可能性もあります。
その場合には、状況に応じて対応していかなければいけません。

養育費の話し合いがまとまったら、確実に支払ってもらえるように合意書を公正証書で作成しましょう。

(3)婚姻費用

婚姻費用とは、離婚が成立するまでの間に受け取ることができる生活費のことです。

相手と別居して離婚や慰謝料の話し合いをする場合は、しっかり婚姻費用を請求しましょう。

(4)年金分割

年金分割を請求すれば、将来の年金受給額を増やすことができます

婚姻期間中の厚生年金や共済年金の記録は分割できますから、離婚の際には忘れないでください。

8、DVや慰謝料でお悩みの際は弁護士に相談を

DVや慰謝料でお悩みの際は弁護士に相談を

DVでお悩みの場合には弁護士に相談することをおすすめします。

慰謝料を高額にするためには証拠が重要ですが、証拠を残していなかった場合には弁護士に相談することで知恵を貸してもらえます。

思わぬ物が証拠として採用される可能性があるでしょう。

また、DVを受けている場合には離婚の交渉そのものにも多大な苦痛が伴います。

離婚協議の最中にまたDVを受けるのではないかと不安に怯えることもあるでしょう。

できることならDV加害者には会わずに離婚を進めたいはず。

弁護士に依頼することで、代理して離婚の協議を進めてもらえます。

もちろん裁判になったとしても、弁護士が法的観点から適切な条件で離婚を成立させてくれるでしょう。

DVの慰謝料請求に関するQ&A

Q1.DVを原因として慰謝料請求はできる

殴る・蹴るといった身体的暴力だけでなく、言葉による精神的暴力や生活費を渡さない経済的暴力をはじめとして、さまざまな態様の「暴力」がDVに含まれます。

いずれにしても、暴力は明白な不法行為ですので、DVが認められるならば慰謝料請求ができます。

Q2.DVでの慰謝料額の相場は?

DVに対する慰謝料の相場はおおよそ数十万円〜300万円程度といわれています。

大きな幅がありますが、ひと口にDVといっても被害者が肉体的精神的な苦痛を受ける度合いはさまざまですので、金額も変動するのです。

Q3.DV慰謝料額を上げる4つの要素とは

  • DVの頻度
  • DVの期間
  • DVによるダメージの程度
  • DVの原因がもっぱら加害者側にある

まとめ

DVによる離婚では、慰謝料を請求することも大切ですが、他にも考えなければならないことがあります。

酷いDVを受けている場合には、離婚手続きはさておきとにかく逃げること、そのための避難先の確保、接近禁止命令の獲得など、今の生活を変えていくためにさまざまな課題があります。

一人で乗り越えようとしないでください。悪いのはあなたではなく、DV加害者である夫です。

我慢せず、まずは弁護士に相談してください。

この記事があなたの今後の幸せのために参考になれば幸いです。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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