「義理の両親の介護をしながら、心と体が疲弊して、離婚の選択肢が頭に浮かんでしまうことがある…」
たとえ夫婦仲が良好でも、介護の問題が立ちはだかると、結婚生活に亀裂が入ることがあります。
この記事では、
法的に親の介護が義務かどうか
介護を理由に離婚できるケース
介護離婚を考える際に用意すべき3つのポイント
などについて紹介します。お役立ち情報となれば幸いです。
目次
1、介護離婚を考えてしまう理由
介護離婚は介護をしている人全員が一度は考えることなのでしょうか。
介護離婚を考えてしまう理由についてご紹介します。
(1)誰にも感謝されないから
義理の両親の介護は妻が行うという義務はありません。
親切と常識から介護を行っているにもかかわらず、誰からも感謝されなければ介護を行う気力はなくなっていくでしょう。
一言でもいいので「ありがとう。助かるよ。」などと、夫や兄弟、親族から言われていれば介護離婚は考えないかもしれません。もちろん、介護されている義理の両親からの感謝の言葉でもいいのです。
(2)夫や兄弟などの協力がないから
義理の両親には、子どもや兄弟がいるはずです。
他にも介護をできるだけの時間や身体的な余裕がある人がいるにもかかわらず、誰も協力してくれない場合には、だんだん介護が嫌になってくるでしょう。
そして、一人だけで介護をしている孤独感と、共感する仲間もいない状況では離婚したくなっても不思議はありません。
(3)そもそも夫の両親と不仲だったから
そもそも仲の悪かった姑や舅を介護すること自体が嫌だと感じる女性も多いでしょう。
元気だったときに嫌がらせを受けた相手なら尚更です。
そんな姑や舅の介護を任せられるなら、離婚をしたいと感じてしまいます。
(4)自分の時間が持てないから
介護に1日費やし、ほとんど自分の時間が取れない状態から解放されたいと感じるケースもあるでしょう。
少しは自由が欲しいという心から介護離婚を決意するケースもあります。
(5)心身共に疲れ切ってしまったから
精神的にも肉体的にも介護はキツイものです。
疲れがだんだん蓄積されることで、限界を感じ、いっそのこと介護離婚を決意してしまおうと感じる女性は少なくないはず。
(6)夫と不仲だから
そもそも、夫と不仲だったケースでは義理の両親の介護なんてしたくはないと感じてしまうかもしれません。
そして、介護中に協力も感謝もしない夫や、介護中に好きに遊んでいる夫などを見ると憎しみすら込み上げてくるものです。
もしも夫が介護中に浮気をしていたならすぐさま離婚を決意してしまうでしょう。
2、例から見る介護離婚にいたった人たちのきっかけ
では、実例から見た、実際に介護離婚に至るきっかけを見ていきましょう。
いったいどのようなきっかけで介護離婚に至るのでしょうか。
(1)長男だからと引き受ける
最初の実例は要介護になった姑の介護を夫が勝手に「長男だから」と引き受けた例です。
要介護者には実子の娘たちも近くにいるにもかかわらずに、長男だからと格好をつけて引き受けてしまうケースは少なくはありません。
しかし、引き受けた当の本人は仕事で介護ができないのです。その結果嫁が介護を担うというもの。
しかし、嫁にも仕事はあります。
それでも、夫とは仲が良いということもあり、できる限り尽くして介護を行います。
しかし、姑とはそもそも不仲だったために、介護に対する手抜きについて姑が娘に愚痴を言ってしまいました。
そしてその愚痴は娘を通して夫に伝えられてしまったのです。
長男としての面子を重視した夫は嫁を叱りつけてしまいました。
そして、「仕事をやめてくれ」と嫁に頼んだのです。
会社でやりがいを見つけてバリバリ仕事をこなしていた嫁は夫に従いまいました。
仕事がなくなり、四六時中姑と一緒にいる苦痛が始まったのです。
その結果、嫁は夫に「有料老人ホームに入所させてください」とお願いします。
しかし、それがきっかけで、仲の良かった夫婦は介護離婚に至ってしまいました。
この例の場合には、夫が少しでも介護を手伝うか、妻の提案を受け入れていれば介護離婚には至らなかったでしょう。
(2)妻が介護中に夫は不倫の末妊娠
中には、妻が介護で忙しい中若い女性と浮気をし、相手を妊娠させてしまったケースもあります。
妻は呆れて、こっそり離婚を決意します。
しかし、夫の方から相手女性の妊娠を理由に離婚を切り出されてしまいました。
もともと夫婦仲は良好で、妻は働く夫を助けるために介護にも愚痴をこぼさずに取り組んでいたのです。
介護が必要な母親の面倒は浮気相手では妊婦で子育てもあるからできないと夫は言います。
そして、離婚をしても母親の介護を頼みたいと呆れることを言いだす始末。
妻は、呆れ果てて、自分の貯金を持って家出をする結末を迎えました。
介護中の夫の裏切りほど嫌なものはないでしょう。
参考:WEZZY
(3)夫の介護に罵声を浴びせられる
脳梗塞を患った夫の介護を行った女性のお話です。
夫は、脳梗塞で体に麻痺が残り、下の世話も妻が行う状態でした。
毎日お布団に粗相をするため、紙おむつをして欲しいと頼んでも、「馬鹿にするな!」と怒り出す始末。
お布団の洗濯や自分の仕事などで心身共に疲弊しきった状態でした。
しかし、「ありがとう」の言葉もなく妻が夫の介護をするのは当たり前だと言い張り、リハビリにも通わず、パチンコに行っては散財する毎日。
妻は介護にも夫の浪費グセにも愛想が尽きてしまい、介護離婚を申し入れました。
すると、夫はあっさり「お前は不要だ!」とまた罵声を浴びせてきたのです。
妻は、夫の両親に夫を引き取らせて、住宅ローンがなくなった住居を手に入れ、夫の退職金や保険金も全て手に入れて無事に離婚ができました。
何もできない夫から代理で事務処理などを任されたため、自分の口座に夫の退職金などを移動することができました。
介護を頑張った妻が夫の財産をいただくことに法的にも成功した実例です。
参考:大人んサー
3、親の介護に関する義務と責任について
義理の両親の介護に関する義務と責任の所在は最初に知っておくべきことです。
果たして、嫁の立場は義理の両親を介護しなければいけないのでしょうか。
(1)義務
義理の親の介護を行う義務は法律的にはあるのかどうかが気になることでしょう。
実は、民法877条には、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があると記されています。
つまりは、血縁ではない嫁は介護の義務は法律としては認めていないのです。
また、家庭裁判所では、特別な事情がある場合には、三親等の親族間においても、扶養の義務を負わせることができるとなっています。
やはり、義理の両親を介護する義務は何一つありません。
ただ、民法752条には、夫婦は同居し、互いに扶助しなければならないと記しています。
つまりは、夫が両親の介護ができない場合には、夫を助ける義務はあるというわけです。
もっとも、あくまでも両親の介護の主体は夫になります。
しかし、義理の親と同居している場合は一定の義務を負います。
すなわち、民法730条は直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならないと定められていることから、扶助の義務が生じます。
そうだとすれば、義理の親に介護の必要がある場合、介護の責任を負うべきであるといえるケースもあるでしょう。
(2)責任
上述した義務を負わなかった場合の責任はどうなるのでしょうか。
刑法218条によると、老年者、幼年者、身体障害者または病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又は、その生存に必要な保護をしなかったときは、3ヶ月以上5年以下の懲役に処するとあります。
もっとも、刑法218条が適用されるかは、加害者被害者双方の状況によって大きく異なり、ケースバイケースです。
実際に保護責任者遺棄致死といえるようなケースは少ないでしょう。
4、介護を理由に離婚できるケースとできないケース
では、介護を理由に離婚できるケースとできないケースについてお話しします。
介護が苦痛だからといって、簡単に離婚できるものなのでしょうか。
(1)離婚できるケース
当たり前の話ですが、夫婦間で離婚に同意できている場合には、すんなり介護離婚は可能です。
もしくは、法定離婚事由がある場合にも離婚は可能。
法定離婚事由とは、民法で定められた離婚事由で、次の5つです。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意の遺棄にあったとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかではないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
介護が原因で夫婦関係が破綻している場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」に該当し、離婚できる可能性があります。
ここで、介護において「破綻」と言えるのはどのような状態なのでしょうか。
逆に「破綻していない」場合から考えていきましょう。
たとえば、あなたが介護が大変だと夫に伝え、夫はこれを解決しようと共に考える、そんなケースであれば破綻とは呼べないことはお分りいただけるかと思います。
まず、あなたが介護の大変さについて夫と共有を図ることから始まります。
「どうせ言ってもだめだ」と言う関係であっても、必ず行なってください。
それに対する夫の対応がどうだったかが重要です。
- お前がどうにかしろなどとして一切動こうとしない
- 話を聞かない
- 介護が大変なはずはない等と的外れな対応をする
これらのような対応は上記の扶助の義務を果たしていないといえますので、破綻への第一歩となります。
ただ、一度きりのやり取りでは客観的に破綻と言い切れません。
何をしても夫の対応がこれに終始するのだということを客観的に確定させるため、妻側も夫を動かすためのさまざまな工夫を施しそれでも同じ対応である、という状況が必要となります。
(2)離婚できないケース
離婚できないケースとは、配偶者が離婚に合意していないケースと、あなたが有責配偶者である場合です。
有責配偶者とは、あなたが不倫をしている場合やDVを行っている場合など離婚に至る責任があることを指しています。
必ずしも離婚できないわけではありませんが、離婚はスムーズには進まないと覚悟した方がいいでしょう。
5、まだ間に合う?! 介護離婚を回避するためにできること
もしもあなたが介護離婚を避けたいと考えるなら、今からでも間に合います。
介護離婚に至らないために行うべき6つのことをご紹介します。
(1)夫に介護の協力をしてもらう
一人で孤独に介護に向き合っている人は、夫に協力を要請しましょう。
確かに、夫は家族を養うために仕事に専念しているかもしれません。
しかし、介護離婚を避けたいなら、取り返しがつくうちに早い段階で夫に協力してもらいましょう。
そうすることで、夫と介護の大変さを共有できるため、精神的な苦痛から少しは解放されるはずです。
そして、一緒に介護をすることで、夫婦仲も円満な状態に保たれるかもしれません。
女性は一人で抱え込みがちです。
精神バランスが崩れる前に行動することが大切になります。
(2)夫の親族に介護の協力を頼む
夫の親族は三親等以内であれば介護の義務があるはずです。
そのため、介護の協力を要請しても正当な要請です。
もしも夫が長男で介護を買って出ていたとしても、夫の協力が得られないなら親族を頼ってみましょう。
もしも、夫に姉や妹がいたなら頼みやすいかもしれません。
自分の両親のことですから心配になり、介護にも協力してもらえる可能性が高いといえます。
無理をせずに早い段階で頼むようにしましょう。
(3)夫と話し合い、感謝してもらう
夫に介護の大変さや、自分の時間が持てないこと、仕事にも支障があることなどを知ってもらいましょう。
そして、いかに夫の両親のために尽くしているかを話し、夫から「ありがとう」と言ってもらうように仕向けてみてください。
夫から感謝されることで、前向きに介護ができるようになるかもしれません。
そして夫婦間のコミュニケーションは何よりも大切です。
大変なときだからこそ会話を絶やさずに夫婦円満を保てれば例え介護に疲れたとしても離婚は回避できるかもしれません。
(4)ホームヘルパーを頼む
時間が足りない、体力的に無理だと感じたなら迷わずにホームヘルパーに依頼してみるのもありです。
決して、介護の手抜きなどではありません。
義理の両親にしても、嫁にやって欲しくないことだってあるでしょう。
お互いのプライバシーを守るためにも、ホームヘルパーに依頼することは正しい選択です。
介護離婚にならないためにも、介護は一人だけで背負いこまないことが大切になります。
(5)施設に入居してもらう
介護に限界を感じたなら施設への入居も視野に入れるといいでしょう。
介護が原因で離婚に至っては元も子もありません。
夫や親族とよく相談をして、金銭的に余裕があるなら、適切な施設への入居を依頼してみてください。
(6)美しい女性でい続ける
介護離婚は、夫の浮気なども原因の一つに挙げられます。
介護にかかりっきりの女性では、身だしなみにも気を使えなくなる可能性があるでしょう。
もしも、介護疲れが原因で、自分のケアがおろそかになっていると感じたなら、少しだけ自分の時間を持つようにしてください。
そして、身だしなみを綺麗に整えて、美しい女性で夫に接することを忘れてはいけません。
それが、最悪な結末を回避する手段になるでしょう。
6、離婚を決意したらして欲しい3つの準備
どうしても、介護が原因で、夫との不仲が改善できないなら、離婚を決意してしまうでしょう。
そんな場合には、3つの準備を進めることで、スムーズに介護離婚は成立できます。
(1)自立して生活するための準備を始める
自立した生活をするための準備を行っておきましょう。
具体的には住居の確保や仕事の確保などです。
介護が原因なら、もしかしたら仕事はしなくても良い経済力があるかもしれません。
しかし、万が一に備えて、社会人としての地位は確保しておいた方が安心できるでしょう。
(2)お金の確保をする
もしも熟年離婚になるなら、お金の確保は知っておくべき事柄です。
夫の退職金も財産分与の対象になります。
これから退職金が支払われるケースでも、婚姻期間に応じて、財産分与対象になりますから、離婚時にしっかり請求しておきましょう。
その他の慰謝料や、未成年の子どもがいるなら養育費なども話し合うべき項目です。
そして、重要なのが、平成19年からできた年金分割制度の利用です。
あなたが専業主婦だったとしても、離婚後に夫の年金を分割してもらうことができるようになっています。
忘れずに離婚時に請求するようにしましょう。
年金分割の請求期限は離婚後2年間と定められています。
老後の資金確保のためにも重要になるでしょう。
(3)弁護士に相談する
離婚問題に詳しい弁護士に相談してみることを忘れないでください。
年金分割制度は仕組みが難しく、弁護士なしでは正しい請求ができないかもしれません。
そして、介護離婚に詳しい弁護士がいてくれることで、相手の親族ともめることなくスムーズに離婚に至れるでしょう。
弁護士サイトを検索してみたり、離婚問題の書籍の著者などを当たれば、離婚問題に詳しい弁護士と出会える確率は高いといえます。
弁護士に相談することで、交渉や調停、裁判なども弁護士が処理をしてくれて安心です。
離婚相手と顔を合わせる回数も少なくて済むでしょう。
介護離婚は厄介で難しい問題が山積しています。
弁護士に依頼しては高額請求されるのでは?と感じる場合には、まずは無料相談だけでもしてみることをおすすめします。
まとめ
介護離婚はできれば避けたい問題です。
しかし、介護に非協力的な夫や親族に囲まれている場合には、一人で思い悩む必要はありません。
心身共に疲弊してしまう前に信頼できる弁護士に相談して打開策を見つけることを忘れないでください。
あなたと要介護者の幸せのためにも介護は一人で抱えるべきではない問題です。
介護離婚を避けたいなら、周囲に協力を依頼しましょう。
それでも解決できない場合には、離婚を視野に入れてください。熟年離婚は増加傾向です。介護離婚は正しい選択になるかもしれません。