「面会交流権(かつての面接交渉権)」とは、子どもと離れて暮らしている親(以下、非監護親といいます)と子どもが、直接会ったり、それ以外の方法(手紙や写真、学校の通知表の送付、プレゼントの受け渡し等)で、親子の交流をする権利です。
今回は、「離婚しても、子どもとは関わりを持ちたい」と望む方には知っておいていただきたい、
- 面会交流権とはそもそも何か
- 面会交流権の内容として決めるべきことは
- 希望通りの面会交流権を獲得する方法
- 面会交流権の内容の決め方
などについて、ベリーベスト法律事務所の離婚専門チームの弁護士がご紹介していきます。
離婚してもお子さんとお会いするためにどうしたらいいか悩まれている方の今後の対応のご参考になれば幸いです。
面会交流調停に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
目次
1、面会交流権とは?
そもそも面会交流権とは、誰のどういった権利なのでしょうか?
面会交流権は、離婚やその他の事情で親子が離れて暮らしているときに、親子が互いに面会をして交流する権利です。
かつては、「面接交渉権」と呼ばれていました。
たとえ離婚をしても、親子の関係がなくなることはありません。
また、子どもが健全に成長していくためには、両方の親からの愛情を感じられる環境が望ましいと考えられています。
そこで、親子が離れて暮らしているときには、互いに会ったり連絡を取ったりして関わりを持ち続ける権利である面会交流権が民法で認められているのです。
面会交流権は、離婚後だけではなく、離婚前の別居中にも認められます。
また、親子関係が認められていたら、認知した子どもや養子であっても面会交流を求めることができます。
離婚をしても、面会交流権を行使したら、子どもの成長を見守っていくことができます。
2、面会交流権の内容として決めるべきこと
面会交流を行うとき、夫婦が話合いをして、方法やルールを決めなければなりません。
具体的には、以下のような事項を決めましょう。
- 面会交流の頻度→例えば「月に2回」など
- 一回に何時間面会するか
- 面会交流の場所
- 宿泊の可否や頻度
- 旅行の可否
- 電話や手紙のやり取りをするかどうか
- 誕生日プレゼントなどを贈って良いか
- 運動会などのイベントに参加して良いのか
- 祖父母との面会を認めるかどうか
- 元夫婦のお互いの連絡方法
- 都合が悪くなったときの緊急連絡方法
- 子どもの受け渡し場所、方法
- 遠方に居住している場合などの交通費の負担
上記のようなことを細かく取り決めておけばおくほど、離婚後に話し合わなければならない点を減らすことができます。
できるだけたくさん会いたいという気持ちはあるでしょうけれど、子どもの都合もありますので、子どもの気持ちや予定を尊重して、楽しく面会できるように工夫することも大切です。
3、面会交流権を決めるタイミング
面会交流の方法を決めるのは、いつのタイミングが良いのでしょうか?
方法としては、離婚前に決めるパターンと離婚後に決めるパターンがあります。
離婚後でも、子どもが20歳になるまで、いつでも元夫婦の話し合いによって決めることができます。
ただ、お勧めは、離婚前に決めておく方法です。
離婚前に話合いで面会交流の約束をしておいたら、離婚後スムーズに面会を実現することができるケースが多いからです。
子どもは、離婚して父親(母親)と離れて住むようになると、だんだん父親のことを忘れていくものです。
そこには、「辛いから考えないようにしよう」という無意識の気持ちもありますし、父親に捨てられたという恨みの気持ちもあります。また、今一緒に暮らしている母親への遠慮もします。
そこで、離婚後時間が経つと、子どもの方から「もう、パパとは会わない、会いたくない」と言い出します。
母親の方も新しい生活になじんだところなので、「かき乱されたくない」と考えて強硬に面会交流を拒絶します。
このように、離婚後に面会交流の約束をしようとしても、かなりの困難を伴うことがほとんどです。
離婚前であれば、子どもも父親に懐いていますし、母親としても、離婚をスムーズに進めるためにある程度妥協しようと思いますから、面会交流の取り決めをしやすいです。
以上のようなことから、面会交流を取り決めるなら、必ず離婚前に妻と話し合って条件まで定めておきましょう。
4、有利な内容の面会交流権を獲得する方法
面会交流の取り決めをするときには、なるべく自分の希望を通したいものです。
有利な条件で面会交流方法を定めるには、どのように進めたら良いものでしょうか?
まずは、自分の希望を明確にすることです。
たとえば、週に1回会いたいのか2週間に1回会いたいのか、夏冬の長期休暇には旅行に行きたいのか、祖父母とも会わせたいのか、学校行事に参加したいのか、など、細かい希望を考えましょう。
そして、それを相手に伝えます。
そのとき、子どもの都合や相手の都合も考えることが重要です。
「毎日会いたい」など、無茶な希望を言っても、相手が拒絶してどんどん頑なになるだけです。
そして、子どもとなるべく接触して、子どもからも「会いたい」と思ってもらうことです。
離婚前の同居中なら、まだ子どもと関わるチャンスがたくさんあるはずですから、なるべく子どもと一緒に過ごす時間を増やして、妻が「引き離すのはかわいそう」と考えるように仕向けましょう。
妻が「面会交流を認めない」と言う場合には、面会交流が法的に認められた権利であることや、子どもの健全な成長のためにも重要な権利であることを説明して、理解させることが大切です。
もし、話合いが成立しなければ、調停をせざるを得ないことなども、ちらりと伝えておくと良いでしょう(あまり強調すると「じゃあ、調停したら!」ということになって決裂するので、そういった方法もあるよ、ということを知らせる程度でもかまいません)。
5、面会交流権の内容を決めたら離婚協議書にまとめておくべき
このように、離婚前に話合いをすることによって、無事に面会交流の条件を取り決めることができたら、その内容を「離婚協議書」内にて取り決めておきましょう。
離婚協議書とは、協議離婚をするときに、離婚条件を記載した夫婦間の契約書のような書類です。
一般的に離婚協議書内には、夫婦が離婚することや親権者、養育費、慰謝料や財産分与などの約束が書かれていることが多いのですが、面会交流についても、定めておくことができます。
離婚協議書にきちんと記載していないと、相手が離婚後に「そんな約束をした覚えはない」などと言い出して、子どもと会わせてくれない可能性があるので、きちんと書類を作成して、相手にもきっちり署名押印させておくことが大切です。
(1)文例について
文面の例としては、以下のようなものが考えられますので、参考にしてみてください。
「乙(母親)は甲(父親)に対し、甲が長男◯◯と、毎月第2日曜日、午前10時から午後8時まで、面会交流を行うことを認める。ただし、都合が悪い場合には、当事者間の協議によって日時を変更することができる。
〇〇の受け渡しについては、甲が乙の自宅に迎えに来て、甲が乙の自宅に送り届けるものとする。」
なお、詳細については、「具体的な日時、場所、方法については、子の福祉を尊重しながら当事者が協議して定める」としてもかまいません。
(2)宿泊を認める際の文例
宿泊を認める場合には、以下のような文面を入れることが考えられます。
「乙は甲に対し、長女◯◯と、以下のとおり面会交流することを認める。
月2回、第1日曜と第3日曜
毎年夏休みと冬休み、3日以上の宿泊を伴う面接
具体的な日時、場所、方法等については、当事者が子の福祉を尊重しながら協議して定める。」
(3)電話やメールによる交流を認める場合の文例
「乙は甲に対し、甲が長女〇〇と、メールや電話、FAXなどによって交流することを認める。」
また、離婚協議書を作成した場合には、公正証書を作成しておく方法もあります。
公正証書は信用性が高く、無効になりにくいので、相手が後になって反故にしにくいというメリットがあります。
ただし、金銭債権ではないため、面会交流については強制執行することはできません。
公正証書の作成方法について、詳しくは「離婚協議書を公正証書にする方法とその書き方として知っておくべき3つのこと」の記事をご参照ください。
6、面会交流の話し合いが進まない場合には調停!
面会交流は法的に認められた権利ですが、相手に理解がなく、応じてもらえないケースがあります。
その場合、家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てることができます。
面会交流調停をすると、裁判所の「調停委員」という人が間に入って、面会交流の話合いを続けることができます。
面会交流は、法的に認められた権利ですから、相手が拒絶しても、できるだけ認めようという方向で話が進められます。
相手に理解がない場合には、調停委員から説得してもらうこともできるので、かなり効果的です。
面会交流調停を起こすときには、相手が居住している住所地の家庭裁判所に「面会交流調停申立書」を提出します。
収入印紙1,200円分と郵便切手1,000円程度(各家庭裁判所によって異なります)が必要です。
離婚前の別居中でも離婚後であっても、子どもが20歳になるまでは、いつでも面会交流調停を申し立てることができます。
面会交流調停の利用方法について、詳しくは「面会交流調停とは?子どもと離れ離れになった親が知っておきたいこと」の記事をご参照下さい。
7、面会交流権が認められない場合とは?
面会交流権は法的に認められた権利ではありますが、ケースによっては認められないこともあります。
それは、面会交流を行うことが、子どものためにならない場合です。
面会交流を行う目的は、子どもが健全に成長していけることですから、会うことによって子どもに悪影響がある場合には、面会交流を実施することができません。
具体的には、親が子どもに対して暴力を振るっていた場合やその他の方法で虐待していたようなケースでは、面会交流調停を申し立てても、認めてもらうことができない可能性が高いです。
ただし、子どもではなく、妻に暴力を振るっていたとしても、面会交流が認められる可能性はあります。
面会交流は親子関係に関するものであり、夫婦間の関係とは異なると考えられているからです。
DV案件の場合、相手は強く面会交流を拒絶するでしょうし、実際に、「子どもにも暴力を振るっていた」「子どもも怖がっていた」と主張されるでしょうから、面会交流を実現することはかなり難しくなりますが、子どもとの関係が本当に良好ならば、諦める必要はありません。
面会交流権に関するQ&A
Q1.面会交流権とはどのような権利?
面会交流権は、離婚やその他の事情で親子が離れて暮らしているときに、親子が互いに面会をして交流する権利です。
かつては、「面接交渉権」と呼ばれていました。
Q2.面会交流の方法を決めるタイミングはいつが良い?
方法としては、離婚前に決めるパターンと離婚後に決めるパターンがあります。
離婚後でも、子どもが20歳になるまで、いつでも元夫婦の話し合いによって決めることができます。
おすすめは、離婚前に決めておく方法です。
離婚前に話合いで面会交流の約束をしておいたら、離婚後スムーズに面会を実現することができるケースが多いからです。
Q3.面会交流の話し合いが進まない場合はどうする?
面会交流は法的に認められた権利ですが、相手に理解がなく、応じてもらえないケースがあります。
その場合、家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てることができます。
面会交流調停をすると、裁判所の「調停委員」という人が間に入って、面会交流の話合いを続けることができます。
まとめ
夫婦が離婚しても、両親と子どもの関係は消えません。
子どもが健全に成長していくためにも、両方の親と関わりを持ち続けることが大切です。
離婚前に面会交流の約束ができなかったケースでは、離婚後に面会交流調停をすることで子どもとの面会交流権を勝ち取ることも可能です。
子どもと会えなくなって困られている場合には、お早めに弁護士までご相談ください。